転生レ級の鎮守府生活   作:ストスト

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後2、3話で区切りつきます。
楽しみにしててね。(そうでもないけど)


「顛末」

ーーーーーーその頃、三宅島付近。

電とサンズは未だ肉弾戦を続けていた。

 

サンズの蹴りを電が受け流し、腹に

正拳突きを食らわす。

だが、その一撃は堅い甲殻と鍛えられた

腹筋によって衝撃を分散された。

 

「ッ……‼︎この威力、この速さ……唯の

空手を習った奴じゃ出せねーぞ‼︎

お前……実戦慣れしてやがるな。一体どれほどの

修羅場を潜り抜けてきたんだ?」

 

「お前は今まで食ったパンの数を覚えているのか?」

 

サンズはそれを聞いて、ニヤリと笑い返した。

 

「知るかバカ‼︎お前こそ覚えてんのかよ食った

パンの数をさァ‼︎」

 

「俺も知らん」

電の返答にサンズはずるッ、とこけた。

 

「聞くんなら覚えておけよッ‼︎

……と、あら?あららら?」

 

サンズは側頭部を抑え、あさっての方向を

向き、首を傾げた。

 

「……あらららららら、イカリが……

死んだ……つーことは」

 

傾げていた首を戻し、サンズは電を見て

言った。

 

「負けた負けた、俺達の負けだ。

三宅島は、潔く諦めて帰るよ」

 

「いきなり負けた、だと何を抜かしているんだ

貴様は‼︎」

 

肩をすくめ、足元から潜行していく。

 

「だから、仲間がやられたら撤退する気なの‼︎

分かる?正真正銘、お前らの勝ちだよ。

イカリが事故とかそんな理由で死ぬ訳があるかい」

 

肩まで沈み込んだ。電はサンズに向けて

掌底を叩き込もうとした、が、

それは海面から飛び出したサンズの尾に

横から叩かれ、サンズの肩のすぐ横に外れた。

 

「そんじゃ、また。

Let's meet again if you live(生きてたらまた会おう)

 

その言葉を最後に、海中へとサンズの姿は消えた。

電は、サンズの消えた後を眺めていたが、

やがて「くそっ」と吐き捨てて長門の元に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、三宅島。

 

ゲンブもサンズと同じく、イカリが死んだ事を

感知した。

 

「死んだのは……イカリか。全く、まさか

奴が最初に死ぬなんてね。まぁ、いいさ。

燃料はとっくに回収し尽くした。

……撤退するぞ‼︎電磁パルスを発生しろ‼︎」

 

その号令をかけた途端、フジツボ達の身体に

赤い紋様が走る。

 

そして、その命令を即座に実行した。

 

 

 

 

 

 

 

「……‼︎電探が上手く作動しません‼︎

何らかの妨害電波が放たれているみたいです‼︎」

 

「こっちもです‼︎」

 

艦隊の間で連絡が飛び合う。

ふと、一人の艦娘が島を指差して叫んだ。

 

「み……見て下さい‼︎敵が……敵が

撤退していきます‼︎」

 

「何ッ⁉︎……そうか、妨害電波を放ったのは

追跡をかわすためか‼︎すぐに魚雷を放つんだ‼︎」

 

「駄目です‼︎魚雷を撃ったとしても先に敵に

逃げられてしまいます‼︎」

 

その言葉の通り、フジツボ達は何百といたはず

なのに、今や数十程の数しか見えなかった。

 

「あー、テステス。聞こえるかな艦娘の諸君。

我々は潔くこの島を明け渡すことにした。

よって、この闘いは君達の勝利だ。

喜びたまえ」

 

最後に残ったゲンブは拡声器で

艦娘達に呼びかけると、素早く海中に

飛び込み、姿を消した。

 

「いきなり、なんなんだ……その気になれば

我々等容易く追い返せたはずだぞ……」

 

こうして、艦娘達にとって不安や疑問を残す

形で三宅島奪還作戦は成功したのだった。

だが、その結果がレンゲ達によって

作られたものだということに、果たして

何人が気づく事が出来ただろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どろりとした眠りから、俺は目覚めた。

 

「……ん、気付いたか。安心しろ。

もう全て終わった。奴らは三宅島から

撤退したよ」

 

芝浦提督が俺の顔を見て言う。

天龍も、翔鶴に肩を借りて航行していた。

58達は、顔だけ出して時折こちらを見ていた。

 

「そうですか……んッ……身体が重いや……」

 

俺の身体はもうガタガタであった。

指一本動かすことすら気だるい。

 

「無理するなよレンゲ。あの烏賊野郎と

散々やりあったんだからな」

 

そして、俺は芝浦提督の顔を見て言った。

……あまり突っ込みたくなかった事だが。

 

「あの……なんで俺、芝浦にお姫様抱っこ

されてんの?」

 

「呼び捨てにするなと言ったろうが」

 

そう、俺は芝浦提督にいわゆるお姫様抱っこを

された状態で運ばれているのだ。

 

「恥ずかしいんですけど……下ろして下さい」

 

「駄目だ。お前が一番の重傷者なんだからな」

 

確かに、俺の肋骨は1、2本が折れ、

尾が中途からなくなっている。

どう考えても一番の重傷者です。

というか、この傷船渠で治るのかな?

治るとしたら高速修復材を被ったら

尾の先から肉が再生して……うわ、見たくねぇ。

R18指定のグロ映画のワンシーンみたいに

なっちまうよ……。

 

「お……見えた。内房の鎮守府だ。

戻ったら、全員船渠に行くぞ。

それと……」

 

「レンゲ、お前が奴の弱点を見抜いたおかげで

奴を倒せた。礼を言う」

 

その言葉は、裏も表もなく、単純な感謝として

俺に聞こえた。

 

「……俺こそ、芝浦や皆のおかげで

助かったんです。こちらこそ、

ありがとうございました」

 

俺達は戻って来た。内房の鎮守府に。

生きて帰って来れたのだった。




疲れたァァァァァァァッ‼︎

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