転生レ級の鎮守府生活   作:ストスト

34 / 87
58「軽巡や駆逐がいてオリョクル無理でち」

???「構わん、行け」


「能力の応用」

「この事象を利用して、お前らをぶちのめす」

 

そう言いながらサンズが構えた。

そして、長門を見据えて駆け出す。

 

「ビッグ7の力、そう簡単に舐めるなよ‼︎」

 

「いいや、俺はお前の事は舐めちゃいない」

 

長門の主砲が火を噴く。

同時にサンズは腰を低くして一歩踏み出した。

 

「むしろ尊敬してんだぜ?……これでも、と

言った方が良いかな?」

 

踏み出した足がぐにゃりと海面に沈み込む。

次の瞬間、海面の弾力によってサンズが

大きく打ち上げられた。

 

「ヒャーハハハハーーッ‼︎」

 

サンズは叫びながらトマホークを取り出し、

真っ向から飛んで来た砲弾を弾く。

そして、長門の脳天目掛け斧を打ち下ろした。

 

「ッ‼︎」

受けるのはまずいと長門が横に身体を動かして

紙一重で回避する。

 

トマホークが空を切る。サンズはそれを

腰の後ろにしまうと、再び海面を弾体化し、

高く飛んだ。

電や長門が砲撃するが、身をよじらせてそれを

回避すると、長門のすぐ後ろに着地(着水?)し、

長門が振り返ると同時に素早く足払いをかけた。

 

「ぐうっ‼︎」

バランスを崩して転ぶ長門にサンズが

踵落としで追撃する。

だがその前に、サンズの胸に錨が叩きつけられた。

 

「うがッ⁉︎」

電が錨を投げたのだ。サンズは胸を抑えて

よろよろと2、3歩下がった。

そして、膝をついて崩れ落ちた。

 

「ガッ……カハッ……カ……」

 

体勢を立て直した長門が立ち上がり、

電に礼を言った。

 

「すまない。助かった」

 

「そいつぁどうも。………おい、そこの

トカゲ男。お前、演技してるだろ」

 

「な……なんだって⁉︎錨の直撃を喰らったんだぞ⁉︎

普通なら動ける訳が……‼︎」

 

サンズはうずくまったままだった。

 

「グ……ク……カ……カカ」

 

「カハーハハハハハハハハハハッ‼︎

ヒィーヒハハハハハハヒャハハハハ‼︎」

だが、電の指摘した通り、サンズは本当に

芝居で痛がるフリをしていた。

狂ったように笑いながらサンズが立ち上がり、

そして言った。

 

「まさかねぇ。そこのガキに見破られるなんてよ。

こいつは想定外も想定外。……ガキ。

名前なんつーんだ?」

 

電はスカートのポッケからタバコを取り出し、

彼の問いに答えた。

 

「暁型駆逐艦4番艦、電だ」

 

「電……覚えたぜ。その姿も、中身も」

 

サンズはそう言い、ステップを刻み始めた。

右に、左に。何度もそれを繰り返す。

繰り返す内に、段々とその間隔が早くなり、

足が海面にぐにゃり、ぐにゃりと柔らかく

沈み込む。

 

「……電‼︎」

 

「分かってる」

 

長門の声を制して、電が素早く7.7mm機銃を

(本来なら対空に使うのだが)サンズに

撃ち込んだ。

 

刹那、サンズの姿が消えた。

……正確には消えたのではなく、見失う程の

速度で右に飛んだのだ。

次の瞬間、サンズは長門に向けて突っ込んで来た。

 

「これが‼︎」

長門の砲撃を受け止め、サンズは思い切り

長門に回し蹴りを叩き込んだ。

 

「ぐううっ‼︎」

 

長門はギリギリ腕でガードしたが、それでも

衝撃を逃がし切れず、腕の骨が軋む。

サンズは回し蹴りをしたのとは逆の足を

弾体化した海面に沈ませて、その反発力で

距離を置いた。

 

「これが能力の応用ッ‼︎」

 

再びサンズが空高くジャンプする。

長門はその軌道を目で追って、主砲と副砲で

撃ち抜こうとした、が。

 

「ッ‼︎馬鹿、見るな‼︎」

 

サンズは太陽を背後にしてジャンプしていた。

つまり長門の目には直射日光が当たり。

その眩しさに思わず長門は手を顔の前に出した。

 

その行為が長門の命を守った。

ナイフが長門の顔目掛けて飛び、手の甲を

貫いたものの肝心の顔までは到達しなかった。

 

「ぐあッ⁉︎」

 

「そして真に能力の限界を理解した者こそが‼︎」

 

続いて踵落としが長門の頭を狙い振り下ろされる。

長門はそれを回避した。

サンズはそのまま半身まで沈み込む。

浮力の調整を失敗したらしく、海面の弾力は

なかった。

長門が守勢から攻勢に一転する。

 

「油断したな‼︎全主砲……」

 

その言葉が終わる前に、右の主砲がサンズの

拳によって叩き潰された。

 

「……勝者となれる。Do you understand?(理解したか?)

 

サンズが左肘を海面に叩きつける。

ぐにゃりと、サンズの肘が海面に

柔らかく受け止められる。

 

(ま……ずい……‼︎)

 

一瞬の出来事であった。長門はガードの

体勢をするのが精一杯だった。

……その次の瞬間、サンズが高速のラッシュを

繰り出した。

 

その拳の数はまるで、数十、数百にも

錯覚させる程の速さであった。

長門の身体が信じられない事に、

ラッシュによって浮き上がる。

 

(こ、こいつ……肘を弾体化した海面に

ぶつける事で、その反動でラッシュを

更に速くしているのか⁉︎)

 

丙型生命体はその生い立ちの特殊さのため、

深海棲艦より圧倒的に数が少ない。

そして、同族意識の稀薄さが、能力を

活用する必要性を生み出した。

たった一人で生き残る為に、彼らは

自身に与えられた能力を理解して、応用した。

それが出来ない者は死ぬのみ。

そうして生き長らえてきたのが、

リヴァイア・サンズであり、

丙型生命体なのだ。

 

長門が吹っ飛ばされる。

 

すでに両腕は堅い甲殻に覆われた拳によって

あちこちにひびが入っていた。

 

「ぐッ……つう……腕、が……」

 

「俺だって元頭格だ。舐めちゃ困る」

 

そう言いながらサンズはひらひらと

手を振った。

 

「にしても痛え……右の小指が折れた」

 

その背後に、7.7mm機銃の鉛弾が

大量に撃ち込まれる。

だが、その弾は全身を覆う甲殻に弾かれた。

 

「……おい、電、とか言ったか。

バトンタッチしてやれ。こいつより

お前の方が強いのは分かってんだぜ?

錨を喰らった時点でな」

 

こいつ、と言いながらサンズが長門を

指差す。

電はチッ、と舌打ちした。

 

「戦艦級と駆逐艦じゃ勝負にすら

ならねぇだろうが」

 

「闘わざるを得ないけど?」

 

「……仕方ねぇ……本気で行くぞ」

 

電が空手の構えを取る。

サンズもその誠意に対し、カポエイラの

構えを取るのだった。




サンズの能力解説。
≪海面の弾体化≫
浮力を加減することで自身が触れている
海面を弾体化させる。
サンズはこれを利用して蹴り技を
繰り出す他、拳のラッシュの際は肘を
ぶつけてその反動を利用して高速で
拳を繰り出す。
尚この技術自体は艦娘にも可能である。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。