転生レ級の鎮守府生活   作:ストスト

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皆さん、北と南、どっちがいいですか?


「連合艦隊」

俺達は、誰も死なさずになんとか鎮守府に

戻ってくることが出来た。

 

「よかった……通信が途中で切れた時には

どうなることかと……」

 

桟橋には扶桑達が待っていた。

俺達はすぐに金剛達を船渠に入れ、

神崎提督と芝浦提督がいる執務室に向かった。

 

「まさか……内房鎮守府の精鋭が

やられるとは、な……」

 

「本当にレンゲさん達が来なかったら……

金剛さん達は轟沈していたかもしれません。

レンゲさん達には感謝しきれません」

 

俺達が到着した時、正に危機一髪の状態だった。

あの時いなかったら……と思うとゾッとする。

榛名の話だと仲間を容赦無く盾にしたという。

そんな奴らなら、迷いなく金剛達を殺し、

その首を鎮守府に送り付けるくらいの真似は

普通にするだろう。

 

「最早、あの作戦を発動するしか……」

 

芝浦提督のその言葉に神崎さんが動揺した。

 

「‼︎まさか……横須賀の艦娘を全員、

出撃させるつもりですか⁉︎」

 

0作戦。それは、鎮守府及び日本本土に深海棲艦が

上陸しそうになった際に発動される作戦だ。

この作戦が発動された場合、その鎮守府の

艦娘は残らず深海棲艦の掃討に出撃する為に、

鎮守府内から艦娘が残らずいなくなる……

0になるから、いつの間にか「0作戦」の名がついた。

発動されたのは僅か2回。

しかも、全て発動してから間も無く

事態が良くなった為撤回されている。

 

「本気であの丙型生命体の拠点を潰しに

かからないと、本土に上陸される可能性がある。

だから俺は0作戦を発動します」

 

確かに、三宅島から本土までは目と鼻程の

距離しかない。もたもたしていると上陸される。

 

「……分かりました。

……これより、内房鎮守府及び横須賀鎮守府は

この所属の艦娘に対して0作戦を発動す。

そう、建物放送で連絡します。

勿論、私がいない横須賀鎮守府にも」

 

「神崎提督‼︎貴方まで発動しなくても……」

 

神崎さんはその問いに首を横に振り、

 

「私は金剛さん達が出撃する前、

貴方に言いましたよ。

“これはもう、内房鎮守府だけの問題ではない”と。

貴方だけには背負わせる気はありません。

最後まで私達も一緒に戦います」

と答えた。

 

「神崎提督……フッ、俺も馬鹿ですが、

貴方も馬鹿ですね……」

 

「ええ、馬鹿は馬鹿らしく、盛大に

サポートしますよ」

 

ニヤリと二人は笑うと、芝浦提督は

放送室に向かい、神崎さんは俺達に

向かって言った。

 

「という訳です。我々横須賀鎮守府は

0作戦を以て内房鎮守府と共に

三宅島奪還を行います‼︎」

 

無論、俺達が返す返答は一つだけである。

野望の為に殺された三宅島の人々の為に。

ドス黒い悪意(丙型生命体)を倒す為に。

 

「了解ッ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー三宅島。

その内陸のコンビニ。

その中で一人の少女が棚のおにぎりの

包装を開け、匂いを嗅ぎ、顔をしかめた。

 

「駄目だ、腐ってる……」

 

島から電気が消えて約1日。

既に夏の気温で粗方の食糧は腐っていた。

電気だけではなく、全てのライフラインが

停止し、生き延びた残りの島民は

サバイバル生活を強いられていた。

 

少女は他に食糧を探したが、

菓子などは全て持っていかれ、

残っている弁当類などは腐っていた。

 

「もうッ‼︎皆自分勝手‼︎こういう時こそ

助け合うべきでしょ⁉︎」

少女は弁当を投げ捨てると、怒るように

叫んだ。

 

「ホント、冗談じゃないわ……

訳分からない内に殺されるなんて真っ平ゴメンよ」

 

「だよね〜。昔、空襲にあった奴らも同じこと

思ったんじゃね〜かなァ」

 

「ッ⁉︎」

 

突如、聞こえてきた声に少女が驚き、振り向く。

そこには、商品の棚に左腕を乗せたサンズが

こちらを見下ろしていた。

 

「夜分に大変だねェ食糧探しなんてさ」

 

タバコの箱からタバコを取り出して

口に加え、サンズはライターの火をつけた。

 

「あ……あんた達のせいでしょ‼︎

あんた達のせいで皆殺された‼︎

どうせここであたしも殺す気でしょう⁉︎」

 

タバコに火をつけて、サンズは一服吸う。

 

「お前が殺してほしいってんならね。

大体殺戮をしたのは俺じゃあない」

 

「黙認した時点で、あんたも同罪なのよ‼︎」

 

それを聞いてサンズが一瞬怯んだが、

すぐに元の調子に戻る。

 

「なるほど……黙認した時点で同罪、ね……

ところで、お前は俺達を恨んでいるか?」

 

サンズが少女の勝気そうな瞳を覗き込み、

そして、問うた。

 

「そりゃ……恨んでるけど……あたしには

あんたにどうすることも出来ないのよ……」

 

花と鈴の髪留めで止められたサイドテールを

力なく揺らしながら少女はサンズに呟く。

 

「ふ〜ん……じゃあ」

 

タバコの灰を床に落としながら、サンズは

少女の前に乾パンの缶を一個落とした。

 

「流石に水ぐらい自分で見つけられるだろ?

……生き延びろ。そして俺に復讐しに来い」

 

そう言うと、サンズはさっさと外に

出て行った。

 

少女は、震える手で缶を手に取った。

震えるのも無理はない、今さっきまで

化け物相手に虚勢を張り続けていたのだ。

彼女はこれ以上ない程に恐怖していた。

だが、サンズに向かって言った事は

本心から出た言葉であった。

 

「絶対……生き延びてやる。

そして絶対に……あいつに復讐する」

 

少女はそう力強く呟くと、缶を持って

どこかに行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

タバコを吸いながら、サンズは

漁港に歩いて行く。

 

「レ級に、さっきの少女に……

将来が楽しみな奴らがいっぱい出て来たな」

 

静かに、サンズは呟くのだった。




さあ三宅島事件もそろそろ1番
盛り上がるぐらいになってきました。
ちなみに途中で出てきた少女、
分かる人は分かります。
割とガチで。

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