転生レ級の鎮守府生活   作:ストスト

22 / 87
小説を読む時は音楽かけながら読みます。
MEGALOVANIAとか。
backboneとか(マイナーなのしか言ってねぇ)


「弱肉強食」

 

三宅島が襲撃された。

その情報に、その場にいた全ての人間が

凍りついた。

 

「なんだと⁉︎鎮守府の電探に反応は

あったのか⁉︎」

 

芝浦の問いに霞は首を振った。

但し、縦ではなく横に。

 

「全く。うんともすんとも反応しなかったわ。

……壊れてるんじゃないのここの電探?」

 

辛辣な言葉が霞から放たれる。

それはいつもの事なのだが、霞の声色からは

焦りが感じられた。

 

「いや、そんな事はないはずだ。

二ヶ月前に交換したばかりだぞ?

……いや、そんなことはどうでもいい‼︎

早く艦隊を出せ‼︎船が沈められる前に

そいつらを叩くぞ!」

 

「了解‼︎」

 

霞はそれを聞いてすぐさま退出する。

芝浦の横で聞いていた神崎が言った。

 

「我々も艦隊を出させて頂きたい」

 

芝浦はそれを拒否した。

 

「駄目です。三宅島は内房鎮守府の

担当海域。横須賀鎮守府の担当じゃないでしょう。

しかも、レ級の監視もそちらが

しているんじゃないんですか?

まだレ級は眠っているから、そっちの

看病でもしていて下さい」

 

それと、と芝浦は付け加えた。

 

「俺は、まだあんたの事は赦していない」

 

そう言って芝浦は白く透き通った髪をなびかせて

執務室から出て行った。

その背中を神崎は直視できなかった。

 

「司令……」と愛宕が滅多に出さない

深刻な表情を見せる。

 

「やはり……私はずっと赦されないまま

生きていくのでしょうね。ですが、

親友を裏切った者には当然の報いですよ」

 

神崎はポツリと、そう漏らした。

その言葉は、赦しを得ようとした自分に

対しての皮肉であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー気を失ってから、俺は夢を見た。

燃え盛る船や沈んでゆく艦娘達を尻目に、

サンズやイカリが跳梁跋扈している夢だ。

夢の中で俺は、何も出来ずにただ立ち尽くして

その様を眺める事しか出来なかった。

やがて、殺戮をしていたサンズがこちらに

向かってきた。

そして、目を逸らすことも、指一本動かす事すら

出来ない俺に、サンズは近づき、

そして俺の額に人差し指を当ててこう言った。

 

「お前よォ、くだらない正義感とかそんなの

捨ててさア、こっち(・・・)に来いよ」

 

その言葉と同時に自分の足元が黒い何かに

呑まれていく。

 

こっち(・・・)は楽しいぜ〜♪

好きなようにどんちゃんやれて。

やりたいことはなんでも出来る!

ほら……来いよ、来いよ‼︎」

 

嫌だ。お前達なんかと同じになるものか。

だがその言葉は出ない。口から出せないのだ。

身体が闇に呑まれてゆく。

サンズの高笑いが空間を揺らす。

俺は諦めない。

たとえこの身が闇に呑まれても。

心まで黒く染まらないと。

俺は決意に満たされた。

そして、そこで目が覚めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……んん……」

上半身を起こす。ベッドに俺は横たわっていた。

 

「ここ、は……内房の船渠?

だとしたら、58は?」と俺は周りを見る。

 

俺以外誰もいない。どうやら俺より先に

元気になっているようだ。

内房の提督……芝浦と言ったか。

彼も恐らく俺より先に起きているだろう。

それより、みんなどこにいるのだろうか。

と、俺の耳に会話が飛び込んできた。

 

「金剛さん‼︎早くしないと船が‼︎」

 

「わかってマース‼︎それにしても

提督も心が狭いネー。横須賀の助勢を

断るなんテ。でも、私は提督のこと」

 

「そんなこと言ってないで早く‼︎」

 

どうやら、深海棲艦でも出現したのだろうか。

しかし、神崎さんの助勢を断るとは。

かなり芝浦提督に嫌われてるようだ、神崎さん。

俺はそんな事を思いながら、皆を探しに

船渠を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三宅島。

その海岸に、一体の丙型生命体がいた。

三宅島の防衛を担当しているゲンブだ。

 

「は〜ぁ……全く、やはり来ないか」

 

ため息をつき、ゲンブは待っていた。

と、海岸近くの海面が盛り上がり、

そこから一本、二本、そして三本の

巨大な機械のような白い足が現れた。

その先端は尖っており、海岸の砂浜に

突き刺さる。

 

「……来たか‼︎ ダイダラ‼︎」

 

ダイダラと呼ばれたその怪物は、

巨大な機械のような三本の足に

カクカクしたカプセルがぶら下がったような

奇怪なフォルムをしていた。

 

「……オレヲヨブナンテ、ヨッポド

ダレモコナカッタンダロ?」

 

「まぁ、僕とフジツボだけだと不安が

あるからね。来てもらった訳さ」

 

「フン。タノシイカリヲサセロヨ?」

 

ダイダラの蜘蛛みたいな単眼が妖しく光る。

 

「無論、そのつもりさ」

 

ゲンブはそう言って、口に手を当てて

笑った。




今回登場したダイダラはウミグモが
モチーフです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。