転生レ級の鎮守府生活   作:ストスト

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「オリョクル」と聞いて、てっきり
「オリョールクルセイダース」の
略語だと思ってました。
それだと58がスタンド使いに
なりそうですね。


「すれ違い」

「……ここが……」

俺達の目の前にあったのは、赤煉瓦の

大きな建物であった。

しかしそれは横須賀鎮守府に比べ

真新しく、そしてやや小さめだった。

 

「そう……ここが内房鎮守府です」

 

「俺達は何回も来てるぜ」と天龍が呟いた。

 

俺達の目の前には、二人の艦娘がいた。

一人はこの間俺と演習をした翔鶴。

そしてもう一人、駆逐艦娘の不知火がいた。

 

「わざわざ横須賀鎮守府から来て下さい

ましてありがとうございます」

 

「御鞭撻御指導の程、よろしくお願いします」

 

二人が丁寧な挨拶をする。

 

「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。

ところで、芝浦提督はどこに?」

 

「不知火がご案内致します」

 

「では艦娘の皆さんは私と演習場に

来て下さい。既に皆が待っています」

 

俺達は神崎さんとわかれ、翔鶴に連れられて

演習場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらです。では不知火はこれで」

 

「ありがとうございました」

 

神崎は執務室の扉をノックして、中に

入った。

そこには、机から崩れ落ちた書類を

拾う芝浦の姿があった。

 

「……俺に何の用ですか?」

 

「貴方からの報告レポートを見まして。

……大丈夫ですか、被害は、どのくらい

続いているんですか?」

 

芝浦は煩そうに顔をしかめ、

「……貴方には関係ないでしょう。

なんですか、援助でもしてくれるとでも?

はっ、どうせ口約束だけでしょう?」

 

「いえ、そんなことは」

 

「何処の鎮守府もそうです。自分の

地位を上げる為に成績を立てるのに

誰もが必死だ。他人を助けるなんて

二の次三の次なんですよ」

 

イライラしながら髪をかきむしる芝浦。

それはまるで自分以外の全てに怒って

いるようであった。

 

「芝浦君……」

 

「帰って下さい」

 

「ですが」

 

「帰ってくれって言っているんだッ‼︎

兄者を見捨てた男(・・・・・・・・)

顔など見たくもないッ‼︎」

 

「……ッ……」

 

「……失礼致しました……非礼を

お許し下さい」

 

神崎は軍帽を胸に当て、

「申し訳ありませんでした。

艦娘達の演習を見届けてから

帰らせて頂きます」と言って

退出した。

 

芝浦はしばらく額に手を当てていた。

提督とはいえまだ15の子供だ。

彼の心中は拘泥の如くどろどろと

渦巻いていた。

 

「司令官、司令官に会いたいと言っている

人が来てるにゃ」

 

「帰らせてくれ」

 

「でも……提督のお兄さんから

何か託されたものがある、って

言っていたにゃ」

 

芝浦は、それを聞いて顔を上げた。

 

「兄者から……だと……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハロー皆。レンゲだ。

今俺は演習を翔鶴と一緒に見学している。

 

「ねぇ、翔鶴さん……」

 

「なんですか?」

 

うわ、めっさいい匂いする。

……そうじゃなくてだな。

 

「あの、神崎提督と内房の提督って

何か因縁でもあるんですか?」

 

翔鶴はそれを聞いて首を傾げ、

「さあ……因縁はあると聞いたんですけど、

それがどんな因縁なのかは知らないですね」と

言った。

 

「……教えてあげましょうか」

 

驚いて振り返ると、そこには神崎さんがいた。

 

「神崎提督……」

 

「……私と芝浦君との因縁は、5年前から

始まったんです……」

そう言って、神崎さんは語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー私は芝浦君のお兄さん、

悠斗さんと同期でした。

悠斗さんは私達の中でも秀才で、

皆、彼を目標として頑張っていましたよ。

彼の家は代々軍人家系でしてね、

深海棲艦が現れたときもお父上と共に

船に乗って闘ったそうです。

……最も、その時から地獄は始まって

いたんです。

その後、芝浦君のお父上は深海棲艦に

船を沈められて大火傷を全身に負ったんです。

助けられた時、息はまだありましたが、

到底、助かるとは思われていませんでした。

数日後に息を引き取りました。

まだ、芝浦君が9歳の時です。

芝浦君が10歳の時。これこそが私と彼を

決別させた一番の理由でした。

 

その時日本は深海棲艦相手に劣勢で、

ある計画を以って起死回生を狙ったんです。

即ち、殆どの艦を使用して深海棲艦を

撃滅するという作戦を実行しました。

私は第三艦隊、悠斗さんは第一艦隊を指揮

して、敵を迎撃しました。

最初は優勢でしたが、やがて敵はどんどん増えて、

後少しで包囲されるという状況に

追い込まれました。

 

私は悠斗さんに退くべきだ、と提案しました。

ですが悠斗さんは、こう言ったんです。

 

「先に行ってくれ。後から追いかける」と。

私はそれを信じて、残存した艦を率いて

離脱しました。

 

……あの時……もっと引き止めていれば、

いや……私が代わりに残るべきでした……

彼は、悠斗さんは、乗組員を逃がしてから、

燃料庫に火をつけて自爆したんです。

それによって、多数の深海棲艦が轟沈し、

一旦は追い返すことが出来ました。

 

国民は作戦の成果に喜び、舞い踊りました。

でも、芝浦君だけは違いました。

彼は深海棲艦との戦いで、父と兄を

失ったんです。

そして、悠斗さんの出棺の日、

彼は私を睨んでこう言いました。

 

「裏切り者」。

そう、言いました。

私は何も言いませんでした。

私は彼の言葉を信じたとはいえ、

彼を置き去りにしたんです。

彼を見殺しにした、そう思われても

おかしくないと私は思っていたんです……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……その後私は横須賀鎮守府に着任して、

芝浦君は内房鎮守府に着任した。

その後はお分かりでしょう。

まだ、彼は私と深海棲艦を心の底から

憎んでいるんですよ」

 

「……なんで、ですか」

そう、翔鶴が呟いた。

 

「なんで何も言わないんですか‼︎

貴方には感情があるんでしょう⁉︎

司令官の兄上は、神崎司令官達

生き残った人達が、後のことを解決して

いけると信じて死んでいったんですよ‼︎」

激情の羅列の如く、翔鶴は叫ぶ。

 

「その思いを芝浦司令官に、

他の人達に伝えないでどうするんですかッ‼︎

それこそ、本当の裏切りですッ‼︎」

 

「……‼︎」

神崎さんがハッとした顔をする。

 

「‼︎ し、失礼しましたッ‼︎」

翔鶴は自分の言った事に気づくと、

口を抑えて何処かに走って行ってしまった。

 

「あー……どうするんですか?

あのままほっておくのはまずいですよ」

 

「いますぐ追いかけて、謝ってきます」

神崎さんはそう言って、翔鶴の後を

追っていった。

皆、相手を思って生きている。

たとえ殺意だろうと愛情だろうと。

相手を思うからこそ行動出来るのだ。

俺は神崎さんの背中を見ながら、

そう思っていた。

 

 

 

 




次回何しよう。
お気に入り100いったら
またコラボ描こうかなーー。

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