粗が目立つと思いますが、お許しください;;
設定としては現在連載中の「カカシ真伝II 白き閃雷の系譜」と同じです。
時期は、カカシくんが忍者学校に入学した年の6月
サクモさんは「白き…」と同じく、火影様の補佐役に就いています。
「白き…」を読んでいなくてもこれだけで読めるので、ほのぼの父子を楽しんでいただけると嬉しいです。
あー、なんでこんな事になっちゃったんだろう…
だいたい、あいつが悪いんだよ!
なんであんな落ちこぼれと組まされるのよ!
ここは火の国のとある山の中、大人の忍者でも里から1時間はかかる。
今日は
それがなぜこんなところにオレがいるかと言うと…
あいつだ!あのゴーグルくん!
オレがいう事にいちいちケチつけてくれちゃって…
イライラしながら樹上を飛び移っていた。
その時、脇から突然手が出てきて、茂みに押し込まれた。
「何す…ブ…モガ…」口を塞がれた…。
敵か!? 間者か!? 暴れてもどうしても振りほどけない…
「しぃー…、静かに…カカシ、父さんだ」
「とっ…フガッ!?」また口を塞がれた…
「静かに…ね」と、言いながら父さんは手を離した。
「何で父さんが、こんなとこにいるのよ」
「それは父さんも聞きたいな…、
「そ…それは…」痛いところをつかれて口ごもる…
父さんはニヤッと笑って言った。
「わかった、迷子になったんでしょ」
「まっ…」父さんの手がマスクの上に伸びてきて、オレは叫ぶのを止めた…
「迷子なんてなってないよ…、一緒のチームになった奴が迷子なんだよ…」
「え?同級生もこの近くにいるの?まぁ演習なら
「うん…」
「マズイな…。何人?」
父さんは厳しい顔になって聞いてきた。
こんな顔は今まで見たことがなかった…
なんとなく、オレは叱られている気分がしてぼそっと答えた…。
「あと二人…」
「そうか…、カカシはその子たちと途中ではぐれたのか」
「はぐれたっていうか…、まぁ、そうだね…」
「でもカカシ? 三人で2対1なら、お前がチームからはぐれたことになるよ…。作戦として途中で別れる事もあるけど、それなら合流ポイントと時間を決めておかないと…。そもそも、学校の演習で
「……はい」
もう少し言い訳がしたかったけど、こうなった時の父さんの話はいつも長いし…、言ってる事は正論だから、とりあえず返事しておこうと思った…
「そう言えば、父さんはなんでここにいたの?」
「火影様のお使いだよ。でもちょっと面倒な事になっててね…。さっき、あ……、助っ人を要請したから、その到着まで時間稼ぎするかと思ってたんだけど、そこにお前が現れて、しかもあと二人アカデミー生がここに居るとなると…出るしか無いなー」
あ……て、何だろう…。
「カカシ、いいか?お前一人にする方が危険だから一緒に連れてくけど、父さんの傍を離れちゃいけないよ?でも、父さんが離れろって言った時はなるべく遠くまで離れるんだ。後はいつもやってる修業の通り。いいね?」
「わかった…」
「ハハ、これが最初で最後の父さんとカカシの
「え?」
「家族は同じチームになれないからね。お前が忍者になっても父さんと組むことは無いんだよ。だからこれが最初で最後だけど、絶対無いと思ってたから、ちょっと嬉しいね」
父さんは「ちょっと」と言いながら、かなり嬉しそうな顔をしていて、それを見たらオレも「ちょっと」嬉しくなった。
「まずは、カカシがはぐれた場所まで案内してくれるか?」
…オレじゃなくて、あいつらがはぐれたところ! と、言いたいのを我慢して
「……こっちだよ」
「向こうからやってきて、この辺までは一緒だったんだ。それでしばらくして振り返ったら…あいつらが居なくなってたのよ」
「………それは、お前が先行し過ぎたって事じゃないのか?」
「だって、遅いんだよ!」
「カカシ、忍者として素早く行動する事は重要だけど、隊列ってものもあるんだ。チームワークを乱しちゃダメ」
「………はい」
オレが返事すると、父さんは優しく笑って、オレの頭をポンポンと叩いて言った。
「よし、じゃあ、ここから始めよう。お前はここからどっちに向かったんだ?」
「こっち」指さしてさっき通ったところを歩きはじめる。
「カカシ、ここから分かれてるな」
しばらく歩いたところで父さんが言った。
「え!? なんで分かるの?」
「ここからよく見てごらん、カカシが進んだのがこの右手、そして、この左手、枝が少し折れて、幹に跡も付いてるでしょ」
それは、よーく見てみないと分からない様なものだった…
「ホントだ…」
「父さんや、父さんと追いかけっこしてる人たちが入り込んでるから、その可能性もあるけど、その幹に付いてる跡はどう見ても大人の足跡じゃないから、お前の仲間のだよ」
「追いかけっこ?」
そう言って、父さんの方を振り返ると、父さんの姿が滲んで見えなくなった…。
「そ、追いかけっこしながらかくれんぼだね、こんな風に」
その声は少し離れた樹の陰から聞こえた。
木ノ葉のとは違う忍装束を着た男が、目と口を大きく広げて震えて立っていた。
オレは思わずクナイを構えたけど、その男の後ろから父さんがオレに微笑みかけた。
男は震えていたのではなくて、痙攣していたんだ…
父さんは右手に短刀を持っていて、それは白く光ってバチバチという音を立てていた。
ドサッ という音がして、男が倒れた。
その向こう側で、もう一人が同じ様に、目を見開いて倒れていた。
「これで二人片付いた…」
オレが振り返る僅かな間に、二人を行動不能にしていた。
オレはビックリするのを通り越して、ポカーンと口を開けてしまった…
これが父さん…、これが上忍…
パトロール演習なんかよりずっと面白い!
父さんの、上忍の戦闘をこんな間近で見られるなんて…
「さ、行こうか」父さんは事も無げにそう言って、さっきの僅かな跡をたどろうとする。
「え? あの人たち放っておいて大丈夫なの?」
「あぁ、しばらくは動けないだろうから大丈夫だよ。そのうち助っ人のお兄さん達が来て里に連れて行ってくれるだろう」
「よし、だいたい方向はわかったから、少し速度あげようか。あいつらに先に見付けられると厄介だからね」
また、厳しい顔に戻って、そう言いながら移動の速度を上げた。
もちろん、オレが付いていける速度だから、父さんにとってはそれほど速いものでもないんだろうけど…
「確かこの先に崖があるんだよ。そこに落ちちゃったのかなぁ…。怪我してないといいけどね」
「あいつなら落ちそう…」オレの呟きが聞こえたのか、父さんは振り返って笑った。
父さんの言っていた崖に辿り着いて、下を覗くと…
やっぱり…二人がその下にいた。
リンがオレの姿に気付いて叫ぶ。
「あ!カカシ―!ちょっと助けてよぉ!」
それを聞いて父さんが苦笑いする。敵に場所を宣伝してるみたいなものだからね…
「あの男の子の方は意識が無いのかな?ちょっと下まで行ってくるよ。カカシはここで待ってて」
そう言って父さんは軽々と崖を降りて行った。
たぶん、二人が転がり落ちた崖を…
父さんとリンが何か話しているけど、オレには聞こえない。
どうやら、ゴーグルくん、オビトの方は怪我をしてるみたい…
意識が無いっていうのは怪我の所為なのかな…?
オレは少し心配になってしまった。
その時、父さんがピクリと顔を上げて言った。
「4時だ!」
その声に反応して、オレは4時の方角に手裏剣を投げる。
その相手が倒れるよりも早く、逆の方から父さんの声が聞こえた。
「なかなかやるな!」
父さんはさっきと同じ様に、目と口をめいっぱい広げた男の後ろから声をかけてきていた。
「え?」
オレは崖の下を見るが、あっちにも父さんはいた…
こっちの父さんが言った。
「ハハッ、影分身だよ」
「…く…そ」
オレが手裏剣を投げた相手が動くより早く、父さんの雷遁がその男を捕らえる。
「オレが子供だけにするわけないだろ…」
父さんがその男に呟く…。
「さっきの手裏剣、良かったぞ!」父さんはそう言って、オレの髪をわしゃわしゃ撫でまわす。
迷惑そうな顔をしてやったけど、実は「ちょっと」嬉しかった…
その時、あっちの方の父さんがリンを抱いて崖を上ってきた。
リンを下ろすとまた崖を下りて行った。
「カカシ―、どこ行ってたのよぉ。オビトが怪我して大変だったんだからね!」
「…ごめん」
「それよりさー、今の人、カカシのお父さんなんだってね!」
「うん」オレは自慢げに返事した。
「カカシお父さんに似てるよね」
「そうだね、よく言われるよ」
「じゃあさ、カカシも大人になったらあんな感じになるのかな?」
リンはオレをキラキラした瞳で見ているけど、なんとなーく、オレを通り越して、父さんとそっくりなオレを見てる気がした…。いや、それもう父さんでしょ…
オレはなぜか「メラッ」とした。なんだろこれ?
オレが「メラッ」としたからでは無いけど、こっちの父さんから突然バチバチっという音がして、その直後、耳をつんざくような轟音が響いた。
バッシャーン!!
「キャァーーーッ!!」リンが悲鳴を上げた。
音がした方から、風がすごい勢いで吹いてきた…
その風がやむとこっちの父さんが言った。
「あぁ…、ごめんごめん…、驚かせちゃったね」
「今の…雷?」オレは悲鳴こそ上げなかったけど、実は心臓がバクバクいってる。
「いや、父さんの雷遁だ。ごめんね、ちょっと距離があったから」
その時、動物の仮面を着けた忍達が現れた…。
確かこの人たちは…
「あぁ、ご苦労さん…」父さんが言った。
「
「すまんな、せっかく来てもらったんだけど、多分これで終わりだ。この二人と、雷霆の場所に二人、あと、向こうの林に二人倒れてるはずだ」
父さんがそう言うと、仮面の忍が二人、指さした方に向かった。
あっちの父さんがオビトを抱いて上ってきた。
入れ違いにこっちの父さんは煙を残して消える。
「あと、医療忍術使えないか? この子怪我してるみたいなんだ」
「私が!」
「じゃあ、頼むよ。意識が無いのは、たぶんスタミナ使い過ぎただけだろうけど…」
医療忍者がオビトの治療をしている間、仮面の忍の隊長が父さんに尋ねた。
「この岩隠れは何なのですか?」
「オレもわからん…途中でつけられてるのに気付いて、人数的に、連れて帰るのが大変だと思って暗部要請しちゃったんだよ…。 お前らオレを狙ってたのか?」
父さんは岩隠れの忍に尋ねた。
「フンッ、とぼけてんのか? 白い牙が極秘で川の国から何かを持ち帰る…そこまで掴んでんだよ」
「………お前らの
「何?」
「お前らが奪わなきゃいけないような物なら、オレ一人で行くわけないだろ」
「白い牙が出張るのにくだらない物なわけない!」
「お前らオレを買いかぶり過ぎだよ…。お前らが命を懸けて奪おうとした代物…見せてやるよ」
「サクモさん?」仮面の隊長が驚いて尋ねた。
父さんは背中の鞄から巻物を出して、広げながら言う。
「大丈夫だよ。 ほら!これだ。 川の国の書道家が書いた『書』。お前らはこれに命懸けてたの。残念だったな…」
岩隠れの忍は目を見開いて、その『書』を見ていた…
「火影様の個人的なお使いだからオレが行くしかなかったんだよ。こんなこと暗部や、里の忍に依頼できないだろ…。でもまぁ、内容がこれだったとしても、火の国に侵入して里の子供たちを人質にしようとしてたんだから…、情報部でしっかりお世話になってくるといいよ」
父さんがそう言うと、岩隠れの忍は力が抜けた様に目を閉じた…。
ちょうど、オビトの治療を終えた医療忍者が父さんに言った。
「とりあえず傷の治療は終わりました。意識が無いのは仰るようにスタミナ切れでしょう…」
「あぁ、この子に聞いたら、なんでも崖を上るのにずーっとチャクラ練ってたらしいからね」
父さんはリンを指してそう言った。リンもうんうんと頷いている…
………おい、オビト、オレの心配返せ!
「オレはこの子達をアカデミーの先生の所まで送り届けるから、岩の六人お願いしていいか?」
「「「「ハッ」」」」
仮面の忍、暗部達がそれぞれ岩忍を抱えて里に帰って行った。
「さーて、次はお前らだ。演習はこの山じゃないんだろ?場所は分かるか?」
「分かるよ。隣の隣の山だから」オレは素直に答えた。
「カカシ…、分かってるなら、なんでこんなとこまで来たんだよ…」
「それは…コイツが…」オレが口ごもっていると、リンがクスクス笑っていた…
「まぁいいや、この子は父さんがおぶって行くから、カカシ道案内よろしくな」
父さんがオビトをおぶって、三人で隣の隣の山を目指す。
リンが父さんと楽し気に話していた…。
「さっきの医療忍者の人、女の人でしたよね?」
「そうだね、医療忍者は女性が多いかも知れないなー。緻密なチャクラコントロールとか必要でね、女性の方がそういうのは得意なのかも知れないね」
「へぇー、私も医療忍者目指そうかな!」
「いいねー。これからは戦場以外でも絶対に必要になってくるからね。ま、どんな忍者を目指すにしろ目標があるのは良い事だよ。頑張ってね」
「はい!」
リンと父さんが楽しそうに喋ってて、オビトは父さんの背中でスヤスヤ気持ちよさそうに寝てる…。
なんだろう…、なんか…、悔しい…
クッソ―、オレなんて、もう何年も父さんにおんぶしてもらってないのに!!
なんでオビトが!!
父さんの背中のオビトを半目で睨んでやる。
集合場所に着くと先生はオレを叱ろうとしたが、その後ろから来た父さんに気付いて口ごもった…。
「サクモさん!?」
「あぁ、すみません。ちょっと、こちらの戦闘に巻き込んでしまって…。この子は怪我もさせちゃったんですけど、それは医療忍者が治療しました。意識が無いのはチャクラの練りすぎだろうと」
他の忍者が同じことを言ったら、多分先生はすごい怒ると思う…。
だけど先生は笑いながら、父さんに言った。
「いやー、カカシくん達がなかなか帰ってこないから、心配で…、もう少しで捜索隊を要請してしまう所でしたよ」
父さんが居なかったら、オレもこっぴどく叱られてた筈だから、ちょっとラッキーかな…
「あー、その前に帰れてよかったな」
父さんはまたオレの頭をポンポンと叩いた。
「戦闘に巻き込んだって言うと…」
「ハハ、息子と
父さんはまた「ちょっと」と言ったけど、すごく嬉しそうな顔だった。
その時オビトの瞼がピクッと動いて目を開けた。
それには気付かずに父さんは言った。…言ってしまった。
「この子も、この
オビトの口が、にへら~とゆがんだ…
クッソ―!アイツ、絶対許さん!!
オレの父さんにおんぶしてもらっただけじゃなくて
ちゃっかり褒めてるとこだけ聞きやがった!!
「それじゃあ、私は里に戻ります。もう大丈夫だと思いますけど、怪我させちゃってますし、何かあれば火影室に連絡いただければ」
父さんは先生にそう言って、その後、オレに耳打ちした。
「カカシ、あの子にきちんと謝らないとダメだぞ?お前が先行し過ぎたんだからな?」
コクリと頷いておいたけど…
イヤだね!! 絶対謝らないよ!!
これが、オレと父さんの最初で最後の二人一組だった。