東京喰種:re 皇と王   作:マチカネ

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 現在の季節は真夏なのに、クリスマスネタ。
 原作でクリスマスパーティーがあったので。


第6章 笑う

「こんばんわー」

 クインクスが共同生活をしているシャトーに訪れたライ。

「いらっしゃい」

 ハイセがエプロン姿でお出迎え。

 シャトーにはジューゾーと阿原、伊東倉元(いとう くらもと)一等捜査官と黒磐武臣(くろいわ たけおみ)二等捜査官、有馬と暁が来ていた。

 到着はライが、一番最後。

 才子、シラズ、伊東はゲームで勝負。結果は才子の圧勝。ゲームでは無双で強い。

 有馬と暁とジューゾーはソファーでくつろぎ、六月と阿原と武臣は、ハイセを手伝い、パーティの準備。

 ただ今、六月に命じられ、ウリエは買い物中。

 オークション戦で暴走しかけたウリエは、六月の乳固めで正気に返った。あれ以来、妙な旗が立っている。

 

 『人間オークション制圧作戦』から、一月、今日はクリスマス。ハイセは、多くの捜査官をクリスマスパーティーに招待した。

 

 買い物に行っていたウリエが帰ってきて、クリスマスパーティーが始まる。

 

 

 テーブルに並べられたハイセ手作りのクリスマス料理の数々。

 ハイセの料理の腕前は一流。だけど、ハイセは普通の食べ物は食べられない、喰種と同じく。

 

 

 クリスマス料理を食べながら、ガヤガヤザワザワ雑談が飛び交う。

 オークション戦でのクインクスの活躍が評判ななり、増員の話が出ていること。

 傘で喰種を倒したなど、数々の有馬貴将の武勇伝。

「正確には、クリスマスはイエス・キリストの誕生日じゃないんだ」

 ライが話し始める。

「元々、ローマでは不滅の太陽神、ミトラスを信仰するミトラス教が、広く信仰されていてね。もしキリスト教が無ければ、今のキリスト教の地位はミトラス教が占めていたと言われるほど。ミトラスは死んでも春になると、生き返ると言われているんだ。だから、冬に枯れた植物も春になると復活すると。これを死後3日、復活したイエス・キリストに重ね合わせた。このミトラスの誕生日が12月25日で、日本で言うところの冬至に該当する」

「おっ、カボチャ食って、ゆず湯に入るヤツだな」

 横から口を挟んだのはシラズ。そうだよと、ライ。

「ローマで廃れたミトラス信仰は、東へ東へと流れて行き、やがて仏教に取り込まれ、弥勒になった」

「ライは物知りなんですね」

 料理を食べながら、ジューゾーは褒める。

「じや、イエス・キリストの誕生日っていつ?」

 伊東が質問してくる。

「それは解らないよ、聖書には書かれていないから。いろんな学者が研究はしてね、聖書に出てくるヘロデ王の在位中の年代を割り出し、ベツレヘムの星を一種の天体現象と考え、例えば木星と土星の会合説や木星蝕、超新星、彗星などと考え、ヘロデ王の在位中と合わせて計算し、いくつかの候補は上がっているけど」

 まだまだクリスマスパーティーは続く。

 

 

「ウリエくんには、イヤフォン、高価めの」

 ハイセのプレゼントタイム。

「才子ちゃんは、例のゲーム。シラズくんには、バイク―の模型」

 良く出来ている模型をプレゼント。

「六月くんは……、なにが欲しいのか解らなくて、アイパッチ……とか、買ってみたけど、革の良さげな……」

 ことのほか、大喜び。

 暁には髪留め。有馬には馬の銀のネクタイピン。

「ライくんには、水晶の数珠。パワーストーンっとしての効果が高いから」

 天然水晶の数珠をプレゼント。

「ありがとう、大事に使わせてもらうよ」

 裏表のない、素直な気持ちのニッコリ笑顔。

 

 こうして、楽しいクリスマスパーティーは終わった。

 

 

 翌朝、シャトーの玄関には、3つのプレゼントが置かれていた。

 1つは“メリークリスマスHySyより”とのメッセージ付きの眼帯のマスク。

 もう1つは“誕生日おめでとう”とのメッセージ付きの高槻泉の小説『吊るしビトのマクガフィン』。金木研へとの高槻泉の直筆のサイン入り。

 カネキケン、その名前はオークション戦以降、調べていた名前。あの【オウル】がハイセのことをカネキケンと呼んだのだ。

 調べて解ったことは嘉納により、喰種にされた青年で、多くの仲間がいたこと。

 そして最後の1つはピルケース。中には赤いカプセルが1つだけ入っていた。備え付けてあったメモには“これは【柘榴】。飲むのも捨てるのも自由。ただ飲まないと後悔する”と印刷してあった。

「? ? ? これ何て呼ぶんだ?」

 柘榴が呼べないシラズ。

「ザクロだよ」

 ハイセは教えてあげる。

「ザクロって、つぶつぶの赤い果物のアレの事」

 と六月。確かにザクロには赤い印象がある。

 ピルケースから、赤いカプセルを摘み上げる。

「サッサン、捨てちまえよ、そんな気味の悪いもん」

 赤いカプセルを疑わしそうに見ていたかと思うと、いきなり、ハイセは口に放り込む。

 誰も止める間など無かった。

「先生!」

「サッサン!」

 しばし、じっとしていたハイセは口元を抑える。

 六月とシラズは吐くのかと思ったが、吐くことは無かった。代わりに驚きの表情を見せる。

「……これはRc細胞。でも、これは……」

 喰種は人間を喰うことでRc細胞を補給する。ハイセも、その味を知っている。

 でも赤いカプセルのRc細胞の味は薄い、天然の物よりも。

 天然ではありえない薄さのRc細胞。ここで、ハイセは1つの可能性を導き出す。

「まさか、このカプセルは人工のRc細胞……」

 

 

 

 

 

 以前より、回数は減ったものの、ライは時間を作っては、喫茶店『:re』での家庭教師のバイトを続けてくれている。

 

「ライさん、その数珠、どうしたんですか?」

 ライの左手首の水晶の数珠のことを聞くリオ。

「佐々木一等捜査官からのクリスマスプレゼントだよ」

 聞いた途端、コーヒーとモンブランを運んできたトーカの表情が固まる。

(“あいつ”からのクリスマスプレゼント? 私だって貰っていないのに!)

 下手すれば修羅場になる状況、どうしたらいいのか解らないリオは、ヨモに視線を送り、助けを求めた。

 求められたヨモは、巻き添えはごめんだと視線を逸らす。

「どうしたの、トーカさん。そんな顔して、笑ている方が綺麗なのに」

 『あんていく』に来ていた月山習(つきやま しゅう)も、こんなセリフをおくびもなく言っていたが、決定的にライは違うところがある。

 それはライは意図して言っているのではなく、天然で言っているところ。

 それが功をなし、トーカの表情が柔らかくなった。

「お待たせ致しました」

 ライの前に、コーヒーとモンブラン、リオの前にはコーヒーを置く。

 修羅場にならなくて、リオとヨモは、ホッと胸を撫でおろす。

 

 

 夕暮れが始まる時間。

「今日の授業は、ここまで」

「はい、ライさん」

 全くリオは疑ってはおらず、ただトーカとヨモは、当初、ライのことを警戒していた。お客様に不快感を与えるわけにはいかないので、表には出すことないが。

 喰種の天敵である《白鳩》になったライ。警戒するのも当然と言えば当然。

 トーカは家庭教師のバイトを断ろうとも考えたが、いきなり、断るのも不自然で、逆に疑われる危険性があるので続けさせておいた。

 『ここは喰種の喫茶店だな』と、ライが言うことは訪れることも無かった、いつまでも。

 

「リオくん、トーカさん、ヨモさん。それじゃ」

「またね、ライさん」

 喫茶店『:re』を出て行くライを見送るリオ。

 とってもリオは、ライのことを信頼している。

 そんな2人を見ているトーカとヨモ。リオほどに無いにしろ、ライのことを信頼できる人物だと判断している。ハードな喰種の世界に生まれながらも人間との共存を目指しているので、多少なりとも人を見る目は養われている。

 

 

 

 

 最初は普通に歩いていたライだが、途中で方向を変えた。帰路とは違う道を進んで行き、たどり着いたのはデパート。

 デパートと言っても、辺りには人の姿はない。一昔前は繁盛していたが、近場にショッピングセンターが出来たため、客足が遠のき、今は廃墟となった場所。

 誰もいないデパートの壊れた入り口を潜り抜け、中ほどまで進むと、

「出ておいでよ」

 振り返る。

「あら、やっぱり、気が付いていたのね」

 ひょつこり出てきたのは包帯で顔を隠したエト。右手にリンゴを持っている。

「ライは読んだことあるわよね、旧約聖書の『創世記』。賢そうだもの」

 廃墟となったデパートで向かい合うライとエト。

 捜査官と『アオギリの樹』の幹部が向かい合っているのにも関わらず、緊張感は漂ってはいなく、戦闘の空気も漂ってはこない。

「リンゴは知恵の実、禁断の果実とか言われているけど、なんで神様は『エデンの園』に知恵の樹を置いたんだろう。とても悪意を感じない?」

 シャクとリンゴを一口齧る。

「それは『エデンの園』に知恵の樹を置いたのはアイオーンだからだよよ」

 それを聞いた途端、エトの目が見開かれる。

「鳥は卵の中から抜け出そうと戦う、卵は世界だ。生まれようと欲するものは一つの世界を破壊しなければならない。でも外から卵を叩き叩き割ってしまったら、雛鳥は死んでしまう。だから雛鳥自身が卵の殻を割らないと、内側からね」

 エトは笑い出した。腹を抱えて、まるで無邪気な子供の様に。

 そんなエトに、捜査官でありながら、攻撃しようとはしないライ。

「面白い、面白い答えね。私的には、その答えは“大正解”」

「そりゃ、どうも」

 ようやく笑いを終えたエト。

「あなたを誘拐しようと思っていたけど、気が変わったわ。ライ、あなたは嘉納の玩具にするのは勿体すぎる」

 デパートの入り口に向かって跳躍。

「じゃあね、ライ」

 ライに向かって、まるで親しい友達にするような振り方で手を振り、ライも同じように手を振り返す。

「出来れば、今度、会うときは、包帯の下の可愛い顔の時に会いたいな」

 天然砲の炸裂、最初はキョトンとしエトだったが、また笑いだした。

「本当に面白い子ね、“あいつら”の手の内にあるのは癪ね」

 そう言い残して、ガラスの割れた作動しない自動ドアから去って行くエト。

 ライも追おうとはしない。

「さて、帰るか」

 

 

 

 

 春がやってきた4月。

 

 

「伊東倉元、佐々木琲世、半井恵仁(なからい けいじん)、林村直人(はやしむら なおと)一等捜査官。諸君らを上等捜査官に任命する、和修吉時本局局長」

 正装し、任命を受けるハイセたち。

「不知吟士、米林才子、桜間ライ、諸君ら三等捜査官を二等捜査官に任命する」

 『人間オークション制圧作戦』の活躍によって、昇進してする捜査官たち。

 情報入手、内部潜入、『オークション』の主導者であり、長年、CCGの追っていた、SSレートの喰種【ビックマダム】駆逐に貢献したことで六月は二階級昇進した。

 ウリエも一階級昇進で、一等捜査官に。

 ジューゾーと政は特等捜査官への昇進を果たす。

 

 

 式の後はパーティの時間。

 長テーブルに並ぶ、様々な美味しそうな料理、酒類、ノンアルコールの飲み物、立食タイプのパーティ。

 シラズや才子、六月たち、捜査官たちは料理を楽しむ。

 

 どんな豪華で美味しそうな料理もハイセは食べることが出来ない。場の雰囲気だけを楽しむ。

 【柘榴】のことは誰にも話してはいない。

 人工のRc細胞。そう判断した見たものの、確証のないことを報告するわけにもいかず、また、誰が届けたかもわからない品物、真偽を確かめようのないものを報告するわりにはいかない。

 シラズと六月にも口止めをしておいた。

「立派なものだな、その年齢で上等とはな」

 ハイセと同じように、正装した暁が祝福してくれた。

「真戸暁準特等捜査官」

 暁も昇進していた。

「その年齢で、準特等もとてつもないですよね」

「これまでと単純比較はできないがな。今は激戦続きで、功績を挙げやすい。私は、ようやく母に肩を並べたが」

 母親の真戸微(まど かすか)準特等捜査官は【隻眼の梟】と戦い殉職した。

「そうか、お前も上等捜査官か」

 ハイセの指導者の暁にしてみれば、いろいろ感慨深いものがある。

「アキラさん、ハグしても」

 以前、やったところ、速攻で『否だ』と拒否された。今回もネタのつもりでやってみた。

「よくやったハイセ」

「!」

 今度はしっかりと、ハイセを抱きしめる暁。

 

 

「あの時は助けていただいて、ありがとうごさせいました」

「どうも、ありがとうございます」

 陶木と久木山はライに、大きくお辞儀。

 ライも正装して、食事をしていた。未成年なのでお酒は飲まないけど。

 そんなライを見つめる陶木。

「本当に男の方なんですね」

 恐る恐る尋ねてみた。

「うん、そうだよ」

 何の気兼ねもなく返答。自分の容姿に、やはりライは自覚がない。

 その返答を聞いて嬉しそうな陶木と、残念そうな久木山。陶木からは、少々、腐臭が漂う。

 

 

 ライの二等捜査官昇進は有馬やジューゾーを抜いて、最年少記録を更新した。

 有馬もジューゾーも、多くの喰種を駆逐し、それが評価され、若くして昇進。

 有馬とジューゾーに比べ、ライの喰種駆逐数は、それ程多くない。

 今まで多くの捜査官を殉職させた【黒兎】と、『人間オークション制圧作戦』に突如現れ、大いなる脅威として、喰種捜査官の脳裏に刻み込まれた【オウル】と戦い、無傷で撃退したことを評価されての昇進。

 

 

「何が二等捜査官だよ。喰種捜査官は顔でするんじゃないぞ」

「ケッ、防御ばかりで駆逐できなかっただけだろう」

 酒が入ったことにより、不満が口から、飛び出す。

 『人間オークション制圧作戦』のライの活躍は話題になっていた。直に助けられた陶木と久木山が、その時のことを話したりしているし、ジューゾーも褒めていた。

 最年少の出世に対するやっかみ。女性の捜査官に人気があるのも気に食わない。本人にその自覚がないのが、尚、気に食わない。

「そんな言い方は感心せんな」

 背後から掛けられた窘め。

「ああん」

「誰だ」

 振り返った男の捜査官たちは硬直。そこにいたのは黒磐巌(くろいわ いわお)特等捜査官。

 29歳の時、襲撃を仕掛けてきた【隻眼の梟】を撃退、『20区梟討伐作戦』で左腕を失うも、捜査官を続けている。

 一気に男の捜査官たちの酔いも覚める。

「防戦に専念、攻撃を受け流すことにより、体力の消耗を避ける。新人が驚異的な力を持つSSレートと戦う方法としては合格だ」

 歴戦の戦士である黒磐特等に、言われれば真実味が輝く。

「すいません」

「すいません」

 委縮してしまう男の捜査官たち。

 捜査官、主に女性の捜査官たちと、雑談しているライを見る黒磐。

「しかし、あの若さで、どこであれほどの技術を身に付けたものか……」

 

 

 

 

 春の陽気も届かない場所、喰種収容所『コクリア』にやってきたライとハイセ。

「ライくん、くれぐれも気を付けて。“あの男”は一筋縄ではいかにいから」

 前代未聞なことに、ライは『コクリア』に収監されている、“あの男”から、ぜひ会いたいと指名を受けたのだ。“あの男”は、ライの噂を聞いて、会ってみたいと。

「解ったよ、十分に注意するから」

 そう言い、SS層へ向かうライの背中を見るハイセ。

 以前、六月と来たときは、完全に脅され、立ちくらみを起こしていた。

 心配しつつも、ヒナミに会いに行く。

 

 

 

 

「よくぞ来てくれた、是非とも君と話してみたくてね、桜間ライくん」

 ガラスの向こうには初老の男が立っていた。

 “あの男”ドナート・ポルポラ、ロシア系のSSレートの喰種。カトリック系の孤児院を経営していて、院の子供を捕食していた。通称『神父』。資料は、ちゃんと読んでいるライ。

 本来は処分されるべき、凶悪な喰種だが、聡明さから、プロファイラーして生かされ、実際、いくつもの事件解決に役だっている。

 ガラス越しにお互いを見合うライとドナート。

「これは随分と、美味しそうな“御使い”だな。喰えばさぞかし、至福の時間を味わえるだろう」

 と言っておいて、ライの反応を待つ。そこにはどんな反応を示すのか、楽しそうに見ている。

「ふーん、あなたには、僕がそんな風に見えるんだ」

 それがライの見せた反応。驚くのてもなく、怯えねのでもなく、怒るのでもない、平常心のまま。

「なら、君は私が、とんな風に見えのかな?」

 興味が芽生えたドナートは問いかけを投げかける。どんな答えが来るのか、そこには期待が隠れていた。

「『放蕩息子の帰還』」

 即答。

 その即答を聞いた途端、ドナートは笑い出す。

「フハハハハハハハ、君には、私がそんな風に見えているのか」

 とても楽しそうに笑い、一頻り笑う。

「桜間ライくん、君は実に楽しい。君とも捜査に関係なく、話してみたくなった。また来てくれたまえ、今度はチェスでも楽しみながら、話そうではないか」

「是非に」

 微笑みドナートに、微笑み返すライ。

 

 

 

 

 ヒナミとの面会を終えたハイセ。『アオギリの樹』に関する有効な情報が引き出せるうちはCCGは生かしておく。

 しかし、いずれ必ず“時期”が来る。

 ハイセの中で、ヒナミを助けたいという感情が木霊していた。

「ハイセさん、どうしたんですか」

 暗くなっていたので、声を掛けてきたライ。

「何でもないよ、ライくんこそ、大丈夫。怖いことされなかった?」

 ハイセは気を取り直す。

「全然、むしろ、中々、面白い話が出来ましたよ」

 ハイセ以外にドナートが、悪態をつかないのは珍しい。

 珍しいこともあるもんだ、でもドナートなら、ライくんを気に入るかもなと、ハイセが思っていたら。

 カツンカツンと床を打ち鳴らす金属音が、聞こえてきた。

「こんにちは、佐々木上等捜査官に、桜間二等捜査官どの。お2人の噂を耳にしておりますよ」

 そこにいたのは、優男を連れた黒装束の顔にツギハギのある男。金属音は男の義足が鳴らしていたもの。

「キ、キジマ式準特等捜査官!」

 ハイセが驚くのも無理はない。キジマ式準特等捜査官は2年前、【JAIL】との戦いで殉職したはず。

「私はキジマ式準特等の双子の弟のキジマ岸(きじま きし)と申します。階級も兄と同じ、準特等」

 資料の中には【JAIL】に襲われた捜査官の生存者の中には、確かにキジマ式とキジマ岸の名前が書かれていた。

 言われてみればキジマ式は顔の右側にツギハギがあり、右足が義足だったが、キジマ岸は顔の左側にツギハギがあり、左足が義足。それを除けばそっくり。

「建前は『ロゼ』の捜査に来たのですが、『人間オークション制圧作戦』で兄の仇の【JAIL】が現れたと聞きましたのでね」

 『ロゼ』とは大量誘拐を起こしている主犯喰種の総称。

「では行こうか、旧多くん」

 カツンカツン、『コクリア』の奥へ。

 優男、旧多二福(ふるた にむら)一等捜査官は、

「失礼します」

 ぺこっと一礼してから、キジマ岸の後を追う。

 一瞬、冷たい氷のような視線で、ライは旧多を見た。

 

 

 




 キジマ式は、ああなりました。リオくんとの関係で、どうしょうかと思っていたら、ピンと双子の兄弟とのアイデアが出てきました。
 なら、ツギハギと義足は左右対称にしようと思い、名前もしきをひっくり返して、きしになりました。漢字も式と同じく、一文字にしたかったので岸。

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