東京喰種:re 皇と王   作:マチカネ

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 ちょこっとだけ、クインクスの新メンバーが出てきます。


第11章 重大発表

 『月山家駆逐作戦』から半年が過ぎた。

 クインクス班に新メンバーが介入。三等捜査官の髯丸トウマ(ひげまる トウマ)は、代々、自衛官や警官、消防士などを輩出している名家の出身。

 一等捜査官の小静麗(シャオ ジンリー)は有馬やハイルと同じ《白日庭》(はくびてい)出身で台湾生まれ。《白日庭》はCCGが全国で優秀な子供たちを集めて喰種捜査官への英才教育を施す特別教育機関。何故か出身者は身体能力の高いものが多い。

 特等の安浦清子の甥の安浦晋三平もクインクスに入った。

 副班長になったのは才子。

 

 

 クインクスを始めとするCCGの猛攻により『アオギリの樹』は、みるみる規模を縮小をしてゆく。

 

 

 

 特等捜査官会議、各区の特等捜査官が集まって開かれる会議。

 

 CCGと『アオギリの樹』との戦いも終焉に近づいてきていた。【隻眼の梟】との戦いを始まりとするなら、実に13年にも及ぶ。

 まさに『アオギリの樹』との決戦のための大詰め会議。

「その戦いの一端にかかわる奴が、2人も欠席ですがね」

 丸手斎(まるで いつき)が言うと、

「重要な立ち位置ですのにね」

 と安浦清子が繋ぐ。

 来てない特等捜査官の1人は有馬。普段から、よく有馬は特等捜査官会議に欠席する。多忙なのかさぼりなのか解らないが。

 有馬の代理としてハイセが来ていた。宇井郡が準特等だったころに特等捜査官会議に参加していた前例あり。

「まことにすいません」

 もう1人来ていないジューゾーの代理の阿原半兵衛は謝罪。一等捜査官が参加した前例はない。

「致し方あるまい、鈴屋ボーイもショックだったであろう」

 田中丸望元はジューゾーに同情的であった。

 

 

 

 

 檻の向こうのキリンを眺めているジューゾー。

 動物園には親子連れやカップルが、楽しそうに行きかっている。

『什造、私はお前が死んだら悲しいよ』

 この場所で篠原に言われた言葉をジューゾーは忘れたことはない。

 動物園にいてもジューゾーは楽しそうにはしていない、暗く沈んでいる。

「ここにいたのですね」

 特等捜査官会議を終えた阿原半兵衛が動物園来ていた。

「やぁ、はんべー」

 振り返った顔には暗さはなく、いつもの明るい顔。

「東京湾内にある、ル島が『アオギリの樹』の根城の可能性があるので調査するとのこと。結果次第では『アオギリの樹』との決戦になるそうです」

 簡潔に特等捜査官会議の内容を話す。

「そう、ついに『アオギリの樹』との決戦ですか……」

 いつもの明るい顔のまま、再びキリンの檻を見つめる。

「すいません、まだ篠原特等の行方は解りません」

 被っていた帽子を脱いで謝罪。

「はんべーが悪いんじゃないですよ」

 半年前、病院から篠原が消えた。寝たきりの篠原が自分で姿を消すことは無理、何者かに誘拐されたのは疑う余地は無し。

 鮮やかな犯行で警備員を掻い潜り、一つたりとも手がかりを残してはいない。目撃者も0、警備員さえ、何にも見ておらず。

 そのスマートな手口から『アオギリの樹』の仕業とも考えにくく、喰種の犯行にしてはおかしすぎる。

 生きている捜査官に戦いを吹っかけ、名を売ろうとする喰種はいても、態々警備員を掻い潜り、寝たきりの捜査官を襲ってもリスクは高いし、名を挙げるどころかひんしゅくを買いかねない行為。報復するにしても誘拐するのは意味がない。

 金銭目的にしても、この半年、脅迫は全くなし。

 犯行の目的も手口も不明な不可解な事件。

 篠原とジューゾーとの繋がりは親子そのもの、例え血は繋がっていなくとも。

 パートナを組んでるだけあり、阿原半兵衛は表面の明るさに惑わされない。ジューゾーのことが心配でたまらない。

「篠原さんのことですから、きっと元気でやっていますよ」

 この時、見せた元気は空元気ではなかった。篠原のことは心配であるが、何故かジューゾーは篠原は無事、そんな気がしてならない。

 

 

 

 

 局内にあった自動販売機で、ライは炭酸入りのグレープフルーツジュースを買う。

 プルトップを開け、ジュースを飲んでいると、取り巻きを連れた政が歩いてくる。

 ライと政の目が合うと、ピタっと足が止まる。

「貴様が桜間ライか」

「そうですよ」

 上から目線の政に、ジュースを飲みながら答えるライ。

「噂は聞いている。報告書によると歳の割には、中々の実力者のようだ」

 一旦、言葉を切り、睨み付けるような目でライを見る。

「ここは子供がいつまでも生き残れる世界ではないぞ、覚えておくんだな」

 取り巻きと共に去って聞く。去り際に、

「有馬の様な逸材は、そう簡単に出て来るものではない」

 と言い残す。

 最年少で二等捜査官になったライを有馬の再来と噂する者もいる。

「噂通りの人だな」

 飲み終えたジュースの空き缶をゴミ箱に投げ捨てる。

 政の言動に、どうしてもライを認めたくないとの感情が潜んでいるのをライは見逃さなかった。

 

 

 

 

 床に白く大きくVと書かれた部屋。《V》人間と喰種の混在組織。

 被った帽子のてっぺんから爪先まで黒ずくめのスキンヘッドの男、芥子(カイコ)が立っていた。クチャと口元で咀嚼音がする。

 芥子の後ろには有馬と旧多が立っていた。2人の態度から《V》における立場は芥子の方が上。

「ライの身体能力は常人よりも、まぁまぁ高いですし、武術をしっかやっていて、そこそこの腕前はあります」

 ニヤニヤしながら旧多が報告する。

「で、ライの戦闘の特徴は防御を中心にしているということ」

「防御だと」

「ハイハーイ、多くの捜査官は攻撃を中心にしています。だからケガが多いんだけど。逆に攻撃よりもライは防御を中心にして、隙を突いての攻撃かカウンターばかり。いうなれば防御一辺倒にすることでSレートやSSレートを“退けて”いるだけ。ただ頭が良いので注意はしておいた方がいいと思いまーす」

 “退けて”の部分を強調する。

「報告書でも討伐数自体少ない、最年少の出世も【オウル】を“退けた”からだと聞く。それなら邪魔になるとしても、手の打ち方は幾らでもある」

 クチャと咀嚼音、微笑む口元。

 芥子と旧多の会話にに有馬は無言を貫き、何の意見も言わなかった。

 

 

 

 フードを上げ、町を歩いているリオ。

 ヨモさんがキジマ岸の遺体をうまく処分してくれたので、未だキジマ岸は消息不明扱い、リオのことはCCGには知られてはいない。

 それでも迷惑が掛かるかもしれないので喫茶店『:re』には、まだ帰ってはいない。

 この半年、【JAIL】に対する捜査が強化はされてはいない、CCGは『アオギリの樹』殲滅のために全力を尽くしている様子。

「ライさん、僕が急に居なくなったこと、どう思っているのかな」

 トーカたちや習には、何度か会っていて、口には出さないが、早く戻って来いとサインが何度もあった。

 ただライと会うのには、少々の不安があるリオ。ライは捜査官、半年行方をくらましていたことをどう思うのだろうと。

 “高槻泉”の名前が聞こえてきたので、立ち止まりオーロラビジョンをを見上げる。

 カネキに勧められて読んだ小説の作者。何冊か読み、リオ自身、高槻泉のファンになった。

『こんなにも大勢を前に、話をするのは“黒山羊の卵”以来でしょうか』

 そこには笑顔の高槻泉と無表情のハイセ、“彼”金木研(カネキ ケン)、カネキが映っていた。

『長年温めてきた作品、私が最も書きたかったもの、このような場所でその作品の発表できることに感謝します』

 高槻泉は人気作家、多くの人が立ち止まり、放送を見ている。

『それは文字通り作家生命、“高槻泉”の個人のいのちをかけたものになります』

 

 

 放送は多くの人たちが見ていた。屋外で室内で。

 

 

『作品の紹介の前に“私について”、みなさんにお伝えしておきたいことがあります』

 ナキやミザ、アヤトたち『アオギリの樹』の高槻泉の記者会見を見ていた。

 

 

 ウリエ、才子、髯丸、晋三平、小静麗、クインクスのメンバーも高槻泉の記者会見を見ていた。

 今、六月は鉢川班と共にル島への調査に向かっているので不在。

 

 

 同じ時間、人間も喰種も同じ番組を見ている。

 

 

 

『私は喰種です』

 ソファーに座り、ライは放送を見ていた。

『“最後の作品”は私と同じように、この世に“生まれ間違え”血肉を貪る――孤独な同胞たちの為に書きました』

 リモコンを手に取り、テレビを消す。

「とうとう自分でばらしてしまったのか……」

 

 

 




 高槻泉、エトの逮捕と重大発表まで行きました。
 篠原特等の『什造、私はお前が死んだら悲しいよ』は名台詞だと思います。

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