俺の嫁は史上最強の剣士です   作:ネギ丸
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どうも、作者のネギ丸です。
2日続けての更新となりますね。書きたいことは大体できていたのでサクサク進みました。
それでは、俺の嫁は史上最強の剣士です第5話をお楽しみください。


第5話 : 夏だ!海だ!巨大イカだ!

新婚旅行2日目の朝。大きな窓から差し込む柔らかい朝日を浴びて俺はゆっくりと目を開けた。現在の時刻は6時前。朝食は7時からと聞いているから、あと1時間は余裕がある。
………散歩にでも行くか。
俺は隣のベッドで気持ちよさそうに寝ているクレアを起こさないように静かにベッドから降り、着替えて部屋から出た。



部屋を出てしばらく廊下を歩いていると、前方で小さな女の子がオロオロしながら歩いている。迷子かな?
俺はその少女に近づいて話しかけた。

「君、ひょっとして迷子?部屋がわからなくなっちゃったのかな?」

少女はこちらに気づいたようでくるっとこちらを振り返った。

「あ、いえ。散歩しようと思って外に出たいんですけど、ロビーまでの道がわからなくて………、ってオルトかよ!」

「ん?え、ええっ!シェリナかよ!」

俺が迷子だと思っていた少女は何を隠そう俺のギルドメンバーのシェリナだった。髪を下ろしていたせいでわからなかった。





「普通自分のギルドメンバーを他の人と間違えるか?オルトの中で私はそんな存在だったの?クレアしか見てないからこんなことになるんだよ、この恋愛盲目男!」

「だから悪かったって。いつものお前って、あれじゃん?ツインテールの印象が強いからさ、後ろから見たらわからなかったんだよ。」

俺は完全にヘソを曲げたシェリナをどうにかして宥めようと考えながら絶賛お散歩中だ。多分シェリナのことだからすぐに機嫌を直すと思うんだけど………。

「まあ、そんなことより海行こ海!まだ朝だし人いないと思うし。」

俺が思ってたよりも早くシェリナの機嫌が直った。

「あ、ああ、そうだな。わかったからそんなに強く腕を引っ張らないでくれ。」

なんだかシェリナの保護者になったような気分で、俺はシェリナについて行った。



ホテルを出てすぐ目の前にある砂浜まで移動してシェリナと喋りながら散歩を続ける。

「それでねー、ダリオが後ろから追いかけてね、面白かったなー。」

「へえ、ダリオが振り回されるなんて珍しいな。」

そんなくだらないことも話しながら俺たちは海に沿って浜辺を歩く。

「みんなといるとやっぱり楽しいなあ。明日になったら私たち帰っちゃうけどね。その後はクレアと2人でラブラブデートだねえ。」

シェリナはからかうように笑いながらそう言った。

「まあな。みんなが帰った後はめい一杯クレアと楽しむつもりさ。」

俺もからかうようにシェリナに笑いかけた。

「………でも、少し寂しくなるな。」

「うん、そうだね……。」

少ししんみりとした空気が辺りに漂う。

「オルトはさ、どうして私たちを新婚旅行に招待したの?」

シェリナはいつになく真剣な表情でそう聞いてきた。

「元々はクレアの案だよ。と言っても俺もお前達と旅行行きたかったしな。」

俺はそんないつもとは違う雰囲気を誤魔化そうと笑いながらそう言った。

「2人とも優しいんだね。………でもね、私はさ、やっぱり2人の時間ていうのはとても大切だと思うの。」

シェリナは朝の太陽を反射して白く輝く海を眺めながらそう言った。意外に大人っぽいことを言うんだな。

「いや、俺も2人の時間は大切だと思ってるよ。だから、旅行の期間も2人の時の方を長くとったわけだし。」

やっぱりこの空気はどこかこそばゆい感じがするなあ。

「確かにそうだけど、私が言いたいのはね、そう言うことじゃないの。ただ、オルトは優しいからさ、私たちのことにも関わってくれてクレアとの時間を削っちゃうかもしれないと思っちゃってさ。」

シェリナはその場でしゃがんで足元にある貝殻を触り始めた。
俺もシェリナの隣でしゃがみこんで貝殻を拾って眺めたりした。

「確かに、俺はギルドのみんなも騎士団の人たちも大切だと思ってるよ。それでも、俺にとって今はクレアが一番大切だと思ってる。」

シェリナは自分の本音を話してくれたんだ。俺もシェリナに思ってることを伝えないといけないな。

「今はギルドのみんなが大切じゃないって言いたいわけじゃないんだけど、俺は今はそう思ってる。だから、シェリナも俺を信じて欲しい。クレアを、絶対幸せにしてみせるから。」

俺はシェリナの方を向きながらそう言った。気がつくと、シェリナの目から小さい雫がポタポタと落ちている。

「うあっ!?ご、ごめん!そんなに心配させたかな!?」

「じゃあ、約束しろよ……。」

俺がシェリナが泣いてるのを見てオロオロしていると、シェリナは涙を拭いながらそう呟いた。

「絶対にクレアを幸せにするって、約束しろよな!」

シェリナは震えた声でそう言うと、俺に向かって拳を突き出した。俺は手に持っていた貝殻を地面に置いて、しっかりとシェリナに体を向けた。

「ああ、約束する。」

そう言って俺は突き出されたシェリナの拳に自分の拳を軽くぶつけた。






今の時刻は午前11時。あの後俺たちは散歩から帰って朝食を食べてから準備をして今に至る。

「ひゃーー!昼になるとやっぱ人が多いなあ。」

「わーい!海だあー!!」

目の前に広がるのは青い海、青い空、白い砂浜。俺たちは今からこの海で海水浴をするつもりだ。とは言っても、さっき散歩がてらに歩いてたとこなんだけどね。
それでも人がいるとやっぱり雰囲気は違ってくるもので、とても賑やかな様子だ。
俺たちははしゃいで走っていくシェリナとアルバートを追いかける感じで浜辺までやって来た。

「それじゃあ、先にビーチパラソル立てるからみんな手伝ってくれ。」

俺はホテルで借りてきたビーチパラソルを抱えながらそう言った。




みんなでビーチパラソルを立てるのを終えて、俺たちは一休みしていた。ギラギラと降り注ぐ太陽の光がものすごく暑い。

「そろそろ私たちも泳ごうか、オルト。」

クレアはそう言って立ち上がった。そして着ていたパーカーを脱いで白い肌を晒した。クレアの水着は白い生地をベースに赤い装飾がされているビキニで、とても清潔感が感じられる。俺がクレアに見惚れている横で、ルーシーもその姿に見惚れていた。こいつ女じゃなかったっけ?
昔は液体の日焼け止めを男性が女性に塗ってあげてイチャコラすることもあったらしいが、今の時代は魔道具で誰でも簡単に日焼け防止できるので、そんなシチュエーションはないだろう。くそう!その魔道具が開発されなかったらなあ、俺もクレアに日焼け止めをぬってあげれたかもしれないのになあ。
日焼け防止の魔道具を開発した人に少しばかりの殺意を覚えながら、俺はその魔道具を使って全身に日焼け止めのおまじないをかけた。これ便利だな。

「私はここでコイツと荷物の見張りやってるから2人とも楽しんでおいでよ。」

ルーシーはそう言ってダリオの肩にポンと手を置いた。

「わかった。2人ともありがとね。それじゃあ、行ってきまーす。」

こうして俺たちは海へ向かった。




俺はルーシーの言葉に甘えて今はクレアと一緒に海に浮かんでいる。
さっきまでは水の掛け合いや、泳ぎの競走をしたりしていたが、少し疲れたので休息中だ。

「そろそろお昼の時間だね。私少しお腹空いてきた。」

「俺はかなり減ったなー。今何時だろ?」

俺は左腕に付けてある腕時計を見て確認する。

「今丁度12時だからそろそろ昼ごはんにしようか。」

俺はクレアにそう告げると、体を起こした。

「そうね。それじゃあ、シェリナちゃんとアルバートを呼びに行かなきゃ。」

俺たちは岸へ上がろうと泳ぎ始めた。すると、後ろの方で轟音とともに激しく水しぶきが上がった。
俺は慌てて後ろを振り返るとそこには、俺が住んでるギルドの宿舎よりはるかに大きいイカのモンスターが暴れていた。

「こいつは、クラーケンじゃないか!餌を求めてこの浅瀬までやってきたのか!?」

「取り敢えず岸に上がろう!このままじゃ私たちが餌になっちゃうよ。」

俺たちは慌てて逃げる観客を掻き分けながら急いで岸へと上がりルーシー達の元へ戻った。

「2人とも無事だったんだね!シェリナたち見なかった!?」

ルーシーは張り詰めた様子だ。隣では珍しくダリオも警戒態勢に入っている。

「いや、見ていない!あまり遠くへ行ってないはずなんだが。」

辺りを見渡すとほとんどの観光客は逃げ切れたようで人の姿はあまりなかった。

「取り敢えず、これ以上被害が出ないようにあいつを足止めしないと!」

俺は周りに武器になるものがないか探すが、それらしいものは見当たらない。

「俺は海の家に武器になるものがないか探してくるから、3人はなるべくあいつの気を引いてくれ!」


そう言って俺は海の家へと全力で走った。

「ルーシー!私は自分の剣があるからあのクラーケンの気を引いてるから、あなた達は魔法で援護して!」

クレアはそう言って自分が普段使っている剣を荷物の中から取り出してクラーケンに向かって行った。

「あなた、こんなところまで武器を持ってきてたの!?いや、そんなこと今はどうでもいいわ!ダリオ!あなたは攻撃魔法得意じゃないから後ろに下がってなさい!」

ルーシーはそう言ってクレアに続いて走り出した。

「女2人に戦わせといて、男が黙っていられるかよ。俺も行くさ。」

そう言ってダリオはゆっくりと立ち上がった。

「はあ!?あんた武器持ってないでしょ!こんな時に変な強がりはよしてよね!」

「安心しろ。武器ならここにある。」

そう言ってダリオは立ててあったパラソルを掴んだ。







クラーケンが暴れまわっている海へ向かって私は全力で走っている。砂に足を取られてうまく走れないが、今はそれどころではない。これ以上被害が出る前にこいつを仕留めないと。
ようやくクラーケンのそばまで来た。後方ではルーシーが魔法でクラーケンに攻撃しているが、杖がないためいつもより威力はかなり落ちている。私も攻撃に参加したいが、相手は海の中にいるので迂闊に近寄れない。どうしたらいいのか悩んでいると、クラーケンは私に気づいたようで長い腕をこちらに伸ばして攻撃してきた。
私はそれを素早く斬りつけて切り落とした。傷みに悶えながらクラーケンはどうやら怒りをこちらに向けたらしく、他の腕を一斉にこちらに振り下ろしてきた。
腕の速さはそこまで速くないので交わせるが、一撃でも食らったら大怪我しそうだ。
私はクラーケンの攻撃を防ぐのに精一杯でなかなか反撃ができない。暫くその状態が続いたが、突然、クラーケンが何かに殴られたように吹っ飛ばされた。

「よっし!今のはクリーンヒットだね!」

私はその声のする方を見ると、そこには宙に舞うシェリナちゃんの姿があった。
シェリナちゃんの武器はその拳。どうやらクラーケンの腕を伝って接近したところを攻撃したようだ。

「シェリナちゃん、大丈夫だった!?」

私は慌てて着地したシェリナちゃんに駆け寄った。

「へーきへーき。クレアがクラーケンの気を引いてくれてたから助かったよ。」

シェリナちゃんは明るい笑顔を見せてそう言った。かわいい。

「取り敢えず私があいつの攻撃を受け止めるから、シェリナちゃんはさっきみたいに攻撃してね。あと、私にも身体強化の魔法お願い。」

「わかった。『パワーエンハンス』!」

シェリナちゃんがそう叫ぶと、私の体が白い光に包まれた。
そして体が軽くなった。これならあいつの攻撃を全て捌ける。

「ありがとう。あ、あいつが起き上がってきたよ。もう一踏ん張りと行きましょう。」

「オーケー。攻撃は私に任せてね。」

完全に体制を立て直したクラーケンはこちらを睨みつけて、攻撃を再開してきた。
すると、今度はすべての腕が横から飛んできた雷によって弾かれた。

「すみません。杖になりそうなものを探して遅れました。」

そう言ってやって来たのは右手に長い木の枝を持ったクォーツくんだった。

「クォーツがいれば遠距離から攻撃できるからかなり優勢になったね。」

「こいつは僕に任せて2人はあっちでクラーケンの子分と戦ってるアルバートを手伝ってあげてください!」

クォーツくんはそう言って続けて雷魔法を放った。

「わかった。シェリナちゃん、アルバートの所へ行きましょう!」

「りょーかい!それじゃあクォーツ、こいつは頼んだ!あっちが片付いたらそっちへ向かうから!」

こうして私たちは向こうの浜辺で戦ってるアルバートの所へと向かった。頑張って、クォーツくん。






武器を探すためにみんなと別れたあと、俺は今海の家の中にいた。

「おい、親父さん!まだ逃げてなかったのか!いや、それより何か武器になるものは無いか!?」

俺は大声で店員らしき人にそう言った。

「あんた、冒険者のモンか?武器になるものか…。こいつならどうだ?俺が長年愛用してきた魚を捌くための特注の巨大包丁だ。」

そう言って親父さんが店の奥から取り出してきたのは1mは優位に超えている巨大包丁だ。

「サンキュー親父さん!こいつ借りてくぜ。壊したらすまねえ。」

「おう!頑張ってこいよ!」

そう言った親父さんは俺の背中をドンと叩いてくれた。
俺は急いで店を出てクラーケンのところへと向かう。するとそこには魔法で応戦しているクォーツとルーシーの姿があった。

「クォーツ!他のみんなはどうした!?」

クォーツはこちらに気づいたようで攻撃を続けながらこちらに向かって叫んだ。

「他のみんなは周りの雑魚を片付けています!暫くしたらこっちに戻ってくるはずです!」

「わかった!2人とも、俺があいつを仕留めるから、それまであいつの攻撃を防いでくれ!」

「はあ!?あんたそんなことできるの!?あいつさっきシェリナの全力を食らってもピンピンしてるんだけど!」

どうやらルーシーはかなり必死のようで俺に対する口調がいつもダリオに怒る時の口調になっている。

「ここはオルトを信じましょう!彼はやる時はやる男ですから!」

クォーツがそう言ってくれて俺の心は熱くなっていく。

「っわかったわ!私もあんたを信じるから!」

ルーシーもそう言って攻撃に集中した。

「2人ともありがとう!それじゃあ、少しの間頼むぜ!」

俺はそう言って貸してもらった巨大包丁を構えた。そして、己の魔力を包丁に集中させる。
魔力が集まるに連れて、巨大包丁から魔力が漏れ始めてきている。もうちょっと耐えてくれ!

「クォーツ!お前の雷魔法であいつの動きを止めることは可能か!?」

「!?はい!数秒ほどなら感電して確実に動きを止めることは可能です!」

「よし!なら俺の合図であいつにお前のありったけをぶつけてくれ!その間ルーシーは攻撃の防御に専念してくれ!」

「了解しました!」

「わかったわ!」

俺は包丁に魔力を貯めつつ相手の様子を伺う。クォーツは魔法の詠唱を始めた。
そしてルーシーは魔法の出力を上げ、クラーケンの、攻撃に対応する。
そして、魔法に困惑してクラーケンに隙ができた。

「クォーツ、今だっ!!」

「『エクステンドサンダー』!!!」

俺の合図とともにクォーツが持っている木の枝の先端から雷が放たれた。それはクラーケンの腕を全てくぐり抜け、本体に直撃した。すると雷は一瞬で膨張し、クラーケンの全身を覆った。
雷が治ると、クラーケンは感電したようで痺れている。

「オルト、今です!」

クォーツのその合図とともに俺はクラーケンに向かって魔力を纏った巨大包丁を思いっきり振り下ろした。

「『オーガブレード』!!!!」

包丁から放たれた斬撃はクラーケンの巨体を真っ二つにし、その後方の海にまで届いた。
大きな水しぶきとともに真っ二つになったクラーケンの体は海に沈んでいき、やがて消滅した。

「まだだ、急いでアルバートたちのところへ行こう!援護しないと!」

俺は大量の魔力消費により、疲れ果てた体をなんとか奮い立たせ、応戦に向かおうとした。

「おーーい!そっちは無事かー!?」

向こうから図太いアルバートの声が聞こえた。どうやらあっちも片付いたらしい。俺は気が抜けてそのまま地面に倒れた。

「おい!オルト、大丈夫か!?」

慌てて周りのみんなが俺のところに駆け寄ってきた。

「あ、ああ。かなり魔力を使ったからなあ……。でも大丈夫だ。怪我はしてないし、暫く休んでいれば魔力も回復して歩けるようになるだろう。」

俺は空に向かって大の字になりながらそう言った。

「オルト……。あんまり無茶はしないでね?私も全力で支えるから。」

クレアの方を見ると、涙目になりながらこちらを見つめている。
ああ、俺ってみんなに心配されてばっかだなあ。
俺はみんなを守れるようにもっともっと強くならないとなあ。
俺はそんなことを思い、青空に向かって何かを掴むように手をかざした。



次回は番外編にしようと思います。
期待していてください。