遊戯王VRAINS 幻影の咆哮~青き天使との日常~ 作:kajoker
今回でハノイの塔編は終了になります。
次回からはちょっとした日常編を書いていくつもりです。
それでは、本編をどうぞ!
「ふぅ…終わったか」
リンクヴレインズから戻ってきた俺はそう呟く。
プレイメーカーとリボルバーのスピードデュエルが引き分けで終わった時はどうなるかと思ったが、俺達の作ったプログラムを使いプレイメーカー達が戻ってくる時間を稼いだ。
その後、プレイメーカー達のマスターデュエルが始まり、さっそくそれを見にいったわけだが…一言で言うとすごいデュエルだった。
リボルバー、凄すぎだろ…リンク4のモンスターだけでエクストラリンクとか…あれは圧巻だった。
プレイメーカーもプレイメーカーですごい…あの状況から巻き返すんだもんな…ライフ13とか初めて見たよ。
それに、リボルバーがミラーフォースを使いこなしていたことも驚きだった…ミラーフォースってかませみたいな扱いをよく見るけど、やっぱ強いカードだよな。
他にもミラーフォース・ランチャー…まさか、ミラーフォースの専用サポートが出るとは思いもよらなかった…無限ミラフォできるのってかなり良いよな。
「う…ん」
…とそんな風に、リボルバーとプレイメーカーのデュエルについて思い出していると、葵の声が聞こえてくる。
「気がついたか…」
「…うん、おはよう…侑哉」
「あぁ、おはよう」
目を覚ました葵に、そう言葉を返す。
「終わったのよね…」
「あぁ、俺がこの目で見たから間違いない」
実際、俺はプレイメーカー達とのデュエルをすべて見ていた。
デュエル中に遊作が俺の復讐は終わったと言っていたのも覚えている。
そういえば、柄にもなく遊作が俺にお礼を言ってくれたっけ…俺は特に何もしていないし、お礼を言われるとは思っていなかった。
「…ねぇ、侑哉…体は大丈夫?今回のことで結構無茶したでしょ?」
「それに関しては大丈夫だよ…まぁ、しばらくはリンクヴレインズには行けないかもしれないけど…」
「そう…それなら良いけど…」
葵は安心したように、そう口にする。
「二人共、お疲れ様…疲れたでしょ?」
「まぁ、確かに…あ、そうだ!花恋にも話したいことがあるんだ」
「話したいこと…?」
「あぁ、実は…」
そうして、俺はダークナイトプリンセスという名前の少女と出会い、その少女とデュエルすることになったこと…その少女は俺と葵のことを知っていて、葵にとてつもない殺意を抱いていること、そして、その少女が俺に情報を渡したことなどを話した。
「…そんなことがあったのね…ダークナイトプリンセス…何者かはわからないけど警戒しておいて損はないわね」
「あぁ…一応、俺はダークナイトプリンセスが前に俺がいた世界から来たんじゃないかって仮説を立ててはいるんだけどな」
実際、これはただの仮説だ…もしかしたら、単純に俺と葵について調べただけかもしれないしな。
ただ、そうすると何で俺達について調べたのか、それがわからない…ダークナイトプリンセスの口ぶりから察するに俺と彼女には何かしらの接点があると思って良い。
だけど、その接点がわからないんだよな…だから、一番あり得そうな仮説を立てたわけなんだけど。
まぁ、他にも理由はある…ダークナイトプリンセスは精霊の力を使えていた、誠の世界に行った時に俺達の世界では精霊の存在があまり知られていないことがわかっている。
俺のような人間が珍しいタイプなわけだから、そうそう精霊の力を使える人間はいないだろう。
だから、神様転生みたいな感じで、俺達の世界に転生して所謂、転生特典で精霊の力を使えるようになったのかもしれない。
「まぁ、結局は推測の域をでないな…」
…ダークナイトプリンセスか、やっぱり何者かさっぱりわからないな。
俺はそんなことを思いながら、フゥ、とため息を吐いた。
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「…ただいま」
「お帰り、侑哉!葵ちゃんをちゃんと送ってきたみたいね」
「あぁ、ちゃんと送ったよ」
ダークナイトプリンセスについて話した後、花恋が葵を家に送るように提案してきて、それに従うことにした。
晃さんも心配してるだろうし、顔ぐらいは見せておいた方が晃さんも安心できるだろうと思って葵を送ることにしたんだけど…正直言って、葵とはもうちょっと一緒に居たかった。
まぁ、他にも理由はあるんだけどな。
「…それで?葵を家に送らせた本当の理由は何だ?」
「さすがは侑哉…勘が鋭いわね!実は、ある人物から私達に会いたいってメッセージが届いたの…ただ、その人物と葵ちゃんを会わせるわけにはいかないから葵ちゃんには家に帰ってもらったの」
「ある人物…?」
「多分、そろそろ来ると思うわ……あっ、噂をすれば」
花恋が話している途中で急にインターホンの音が響き、花恋が玄関へと来訪者を迎えにいく。
そして、その来訪者を家へと招き入れ、俺の目の前に連れてきた。
その人物は一言で言えばイケメンだ…銀色の髪に整った顔立ちをしている青年で、年は多分俺より上だろう。
恐らく、年の差は2、3歳ぐらいか?何となくだけどそんな気がした。
「えっと…どちらさまですか?花恋の知り合いか何かでしょうか?」
全く面識のない人だったこともあり、思わず丁寧な言葉遣いになりつつそう尋ねる。
「そうか、こちらで会うのは初めてだったな…私は鴻上了見…いや、お前にはリボルバーと名乗った方がわかりやすいか」
「…!リボルバーだって!?」
リボルバーって、俺の知ってるリボルバーだよな?じゃあ、俺の目の前に居る人は…
「驚いたよ…まさか、リボルバーと現実で会うことになるとはな…それで、わざわざ俺達に会いに来た理由は何なんだ?あと、花恋とはどういう関係なんだ?」
「そうだな…まず、花恋さんがかつて父の研究を手伝っていたのは知っているな?」
「あぁ、花恋から聞いたよ」
「そうか、それで私は花恋さんによく面倒を見てもらっていたのだ」
「あぁ、なるほど…そういうことか」
リボルバーの父…恐らく、鴻上博士のことだろう。
花恋は元々鴻上博士の研究を手伝っていたわけだし、その時に面倒見の良い花恋がリボルバーの面倒を見ていたとしても不思議はない。
「私から見た彼女の印象は知的で好奇心旺盛であり、とても面倒見の良い女性だ…そして、容姿端麗ではにかむような笑顔が素敵な女性といったところか…まぁ、それは今でも変わらないが」
そう言って、リボルバー、もとい了見は笑みを浮かべる。
うん…?リボルバーってこんな感じだったけ?
「…えっと、リボルバー、とりあえず座って良いぞ…俺達への用件をまだ話してくれてないからな、立ったままというのも話しづらいと思うし」
俺は若干、困惑しつつそうリボルバーに促す。
「そうね、遠慮しなくて良いわよ、了見君」
「では、お言葉に甘えて」
そう言って、リボルバーは近くの椅子へと腰かける。
というか、花恋はリボルバーのことを了見君って呼んでるんだな…俺はリボルバーという呼び方が定着しているせいで、了見と呼ぶのはなかなか難しそうだ。
「それで俺達への用事って何だ?」
「…その前に聞きたいことがある」
「何だ?」
「お前は私のことを信用するのか?」
「うーん…まぁ、確かに色々と悪いことはしているけどお前自身は悪い奴ではないと思うし…それに、花恋がお前のことを信用しているわけだから、それなりに信用してるよ…まぁ、疑いがないといえば嘘になるけどね」
実際、リボルバーはやっていることは悪いけど、人間性まで悪いとは思えないんだよな。
まぁ、俺の勝手な願望なのかもしれないけど。
「そうか…それだけ聞ければ充分だ」
「お、おう…」
「それで、了見君、結局私達に用事って?」
俺達の話しを聞いていた花恋が近くの椅子に腰かけ、そうリボルバーへと尋ねる。
「それは…我々ハノイの騎士とある種の同盟関係を結んでほしい」
「え…?どういうことだ?」
俺はリボルバーの言葉に思わずそう聞き返す。
「…リンクアクセスについては、花恋さんから聞いているな?」
「あ、あぁ…一応は」
「お前のリンクアクセスの力は強大な力だ、それこそお前の力を狙うものはごまんといる…SOLテクノロジーはもちろん、イグニスですらお前の力を狙うだろう」
「イグニスも…でも、それと今回の話しにどんな関係があるんだ?」
俺がそう言うと、リボルバーは少し間をあけて言葉の続きを口にする。
「…お前の力は謂わば、イグニスと人間、双方の希望であり、絶望だ…お前がイグニス側に協力するのであれば人間を支配しようと考えているAIの行動により拍車がかかる…人間側に立つのであれば、AIを滅ぼすことは容易いだろう」
「あぁ、なるほど…だから希望であり絶望か」
つまり、俺がどちらかの側に立つのであれば、俺が協力する側にとっては敵対する相手を倒すための希望となり、敵対した相手にとっては自らを滅ぼす絶望となるということだと思う。
「だからこそ、我々はお前達を守ることにした、我々としてもリンクアクセスの力が他の勢力に渡るのは避けたいからな…それに」
「それに…?」
「父との約束だからな」
「約束…?」
リボルバーの言葉にそう反応を示したのは花恋だった。
「…父は6人の被験者に対応するイグニスをそれぞれ作り出し、研究は成功した…だが、イグニスがこれから起こす行動について何度シミュレーションを繰り返してもAIによって人類が滅ぼされるという結論に達してしまった」
「なるほどな…それでそうなる前にイグニスを滅ぼそうと考えたわけか…だけど、その結論は花恋がすでに出していて、鴻上博士にもちゃんと忠告していたけど?」
「…その通りだ、だからこそ父はそのことを酷く後悔していた…『もし、私が彼女の忠告を無視しなければこんなことにはならなかった』と、父はそう言っていた」
「ふーん…一応、後悔はしてるんだ…まぁ、あんまり信じられないけど」
花恋は鴻上博士が後悔をしているとは思っていないのか、その声はどこか疑っているように聞こえる。
「えっと…それで、それが俺達を守ることと何か関係があるのか?」
「あぁ…そのことを後悔していた父はせめてもの償いとして、花恋さんとその家族、友人などを我々の手で守り抜くことを決めた、その為にまず、花恋さんが父の研究の研究員であったことや花恋さんが調べていた研究についての情報を抹消した…私達がリンクアクセスについて知ったのもその時だ」
「そうだったのか…ありがとうって言った方が良いかな?」
「礼など必要ない、私達が自らの意志で行ったことだ…それに、こんなことで許されるとは思っていない」
「そうか…でも、ありがとな…花恋のことを守ろうとしてくれてさ」
俺はそう言って、リボルバーに感謝の言葉を告げる。
リボルバー達のしたことは確かに許されないことかもしれない、だけど、花恋のことを守ろうとしてくれたことについてはお礼を言うべきだと思ったから。
「…気にするな」
「私からもお礼を言わせて、了見君…ありがとう」
「やれやれ…あなたはやっぱり変わってませんね…もちろん、良い意味で、ですが」
「フフ、そう簡単に人は変わらないわよ…それで、結局ある種の同盟関係を結ぶって具体的にどういうことなの?」
「はい、簡単に言えばあなた達が助けが欲しい時には、我々、ハノイの騎士が協力するということです、逆にこちらが助けが欲しい場合はあなた達に手を貸してほしい」
「なるほど、お互いに困った時は助け合おうってことね
私は別に構わないけど、侑哉はどう思う?」
「俺か?俺は…」
さて、どうしたものか…リボルバー達と協力し合うのは悪くはない…ただ、いくつか疑問点があるな…まずはそれについて聞いてみるか。
「…ハノイの騎士に協力って言っても具体的にどうするんだ?言っておくけど、今回みたいなテロには協力しないぞ?」
「わかっている、そんなことをすればお前達に危険が迫る…だから、協力と言ってもお前達と利害が一致する事以外は手を貸してもらうつもりはない」
「利害が一致する事?」
俺はリボルバーの言葉にそう返す。
俺達とリボルバー達の利害が一致する事なんてあるのか?
まぁ、とりあえずリボルバーの返答を待つか。
「あぁ…例えば、私達やSOLテクノロジー以外の別の勢力が現れた場合などだろう…それが、お前達と私達の倒すべき共通の敵なのだとすれば協力する」
「別の勢力…」
リボルバーの言葉を聞いた俺はサイバース世界で戦った敵のことを思い浮かべる。
あの敵はサイバース世界に攻撃を仕掛けてきた、あのタイミングではハノイの騎士はハノイの塔計画を実行するために動いていただろうから、サイバース世界を襲撃したのはハノイの騎士とはまた別の組織ってことになるな。
後、これは関係ないかもしれないけどダークナイトプリンセスも別の勢力と言えるな…まぁ、俺達が狙いっぽいけど。
俺はそんなふうに考えながら、言葉を続ける。
「なるほどな…後は俺はプレイメーカー達と行動することが多いけど、それについては大丈夫か?俺はプレイメーカー達を裏切るつもりはないからな」
「フッ…わかっている、お前が簡単に誰かを裏切るような人間ならばこんなことを話したりはしない…お前は今まで通りに過ごしてくれれば良い」
「そっか…わかった、そういうことなら協力してもらうよ…よろしくな、リボルバー…いや、了見」
俺はそう言って、了見へと手を差し出す。
了見は一瞬、驚いたような表情をすると、そのまま俺と握手をした。
「よろしく頼む、Phantom…いや、お前に習うなら侑哉と呼ぶべきか」
「まぁ、呼びやすい方で構わないよ」
「では、侑哉と呼ばせてもらおう…改めてよろしく頼む、侑哉」
「あぁ!よろしくな!」
こうして、俺達と了見達の間にある種の同盟関係が結ばれた。
それにしても…これから色々と大変なことになりそうだな。
まぁ、でもそれと同時に嬉しく思う…こんなふうに遊作と了見もわかりあえる日がいつかきっと来る…というか来てほしいな。
俺はそんなふうに未来への希望を抱きながら、1日を終えた。
といった感じの第52話でした!
そういえば、昨日の遊戯王はすごかったですね!ヴァレルロードサベージドラゴン…めちゃくちゃかっこよかったです!
話しも一気に進んだ気がしますし、次回もとても楽しみです!
それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!