遊戯王VRAINS 幻影の咆哮~青き天使との日常~ 作:kajoker
今回からハノイの塔編へと突入していきます。果たして、どうなるのか?
それでは本編をどうぞ!
それは、いつもと変わらない日のはずだった。
葵や花恋、遊作やデュエル部のみんな…そんな人達と変わらない日常を送っていた。
そんな時だ、それが突如として現れたのは。
「何だよ、これ…塔か?」
「そう見えるわね、でも何でいきなりこんなものが…」
俺と花恋はLINK VRAINSの映像を見ながら、そんなことを口にする。
花恋の話しを聞いてから数日が経ち、いつも通りにLINK VRAINSの中継を見ている時だ、突如として巨大な塔が出現し、LINK VRAINSの建物やログインしていた人達がその塔へと吸い込まれていく姿を目の当たりにしたのは。
最近、葵や花恋、さらにはレイにまでLINK VRAINSに行くことを禁止され、ここ数日は一度もログインできていない。
ただ、遊作からファウストというハノイの三騎士の1人とデュエルしたことは聞いていた。
正直、そのデュエルはすごく見たかったが葵達に止められてしまった。
まぁ、今はそんなことより…
「これは一体どういうことだ?」
「わからない、だけどこの塔が完成した瞬間に世界が終わるわ…それだけは断言できる」
「確かにな…詳しい原理はよくわからないが、大量にデータを吸い込んで、塔ができた瞬間にそれを放出することで、ネットワークを壊すみたいな感じか」
詳しく調べていないから何とも言えないが、この推測はあながち間違いではないような気がする。
「いよいよ、ハノイの騎士がイグニスを葬りさるために最終手段に出たってことか…レイ、この塔がどれくらいで完成するかわかるか?」
『はい!少し待っていてください……わかりました!この塔はこのペースでいけば、1時間ごとに塔が一部完成します…このことから、完全に搭が完成するまで約6時間ほど掛かると考えられます』
「6時間か…それまでに何とかしてこの塔を止めなくちゃならないってことか…」
リンクアクセスの力を使えば、止められるか?
リンクアクセスの力はあらゆるネットワークシステムに干渉し、それを自在に操る力だと花恋は言っていた…それならこの塔も止められるかもしれない。
「侑哉、言っておくけどリンクアクセスの力を使って、この塔を止めようだなんて考えないでね」
「…何でだ?リンクアクセスの力を使えば可能じゃないのか?」
「確かに、可能だとは思うわ…だけど多分、この塔を止めた後、侑哉が死んでしまうわ」
「俺が死ぬ?どういうことだ?」
花恋の言葉に思わずそう聞き返す。
「この塔…仮に、ハノイの塔と呼ぶけど、この塔には大量のデータが集まっていると考えられるわ…だから、それに触れた人間はただではすまないはずよ」
「確かに、そうかもしれないな…だけど、死ぬまではいかないんじゃないか?」
「…考えてもみて、侑哉がリンクアクセスの力を使えば、その大量のデータが一気に侑哉の頭に流れこんでくるのよ?そんなの普通の人間なら、頭がパンクして脳の機能が停止するわ…いくら侑哉が世界移動によって脳が進化していたとしても、それに耐えられるとは思えない」
「なるほどな…」
確かに、リンクアクセスの力を使うにしても、結局の所俺がハノイの塔をコントロールするには、俺がハノイの塔に集まったデータを1人で処理するしかない。
あの膨大なデータ量を1人で処理するのは、さすがに厳しいかもしれない。
「だとしたら、別の方法を考えないとな…」
きっと、ハノイの塔を止める方法はあるはずだ…考えろ…まず、ハノイの塔を起動させたのはハノイの騎士で間違いないだろう。
と、すればリボルバーが起動させた可能性が高い…リボルバーは俺とプレイメーカーとの決着を望んでいる、だとすると、ハノイの塔を止めるにはリボルバーを倒せば良いのかもしれないな。
「…よし、そうと決まれば…」
俺がそう言うと同時に、インターホンの音が響いた。
「…葵かな?ちょっと出てくるよ」
「わかったわ」
俺はそう言って、玄関へと向かい、そのまま扉を開けた。
すると、そこには思った通り、葵の姿があった。
「侑哉…!LINK VRAINSの様子は見た?」
「あぁ、ちょうど見ていたところだよ…とりあえず、上がってくれ」
「うん…それじゃあ、お邪魔するね」
そう言って、葵は家へと上がった。
「花恋、状況は?」
「さっきと変わらないわ…うん?あれ、この人って確か…」
「この人って、AI部隊でハノイの騎士を倒そうとして、負けて…ボロクソ言われてた人じゃないか」
名前は何だっけ…まぁ、良いか…それよりもこの人の相手は一体…見たところハノイの騎士なのは間違いないけど。
「あ…負けてる、早くないか?これは敵が強すぎるのか?それとも、こいつが弱いのか?」
俺がそんなことを言っていると、先ほどまでハノイの騎士と戦っていたはずの、男が消えていった。
「これは…LINK VRAINSで起こっていることと同じじゃないか!」
やっぱり、ハノイの騎士の仕業か…
俺がそんなことを考えていると、映像に映ったハノイの騎士が言葉は紡ぐ。
『警告です、今LINK VRAINSにはいれば彼と同じ目に遭います…それでも構わないという方はどうぞご自由に』
とんでもない悪人面をしながら、俺達を挑発するかのように。
「行くしかないな…結構休んだし、もうLINK VRAINSに行っても良いだろ?」
「「『ダメに決まってるでしょう!!』」」
俺がLINK VRAINSに行こうとすると、葵と花恋、レイの3人が同時にそう口にする。
「えぇ!?何でだ?ここは行くことを許すところじゃない?」
『ダメです!侑哉さんのダメージは完全に快復したわけじゃないんですよ!それなのにLINK VRAINSに行くなんて…1ダメージでも喰らったら、アウトなんですよ!』
「私もレイと同じ意見よ…今、LINK VRAINSに侑哉が行くのは危険だと思う…」
「私も大体二人と同じ意見よ…まぁ、仮にダメージが快復しても行かせるつもりはないけど」
「それは酷くないか?」
「だって、侑哉のことだから無茶しそうだし…」
花恋の言葉に葵とレイは同意するように頷く。
え?俺ってそんなに無茶してるっけ……無茶…うん、してるかもしれないな。
「でも、みんなが戦っている時に俺だけ戦わないってわけにもいかないだろ」
「大丈夫よ!侑哉!私達は絶対に負けないから!」
葵はそう言って、俺に笑みを向けた。
俺を安心させるためかもしれないが、逆にその笑顔に不安を覚えてしまう。
もし、葵が負けて…ハノイの塔に吸収されたら、この笑顔を二度と見られなくなってしまうかもしれない…そう思うと、怖くて仕方がない。
「侑哉…」
葵は俺の名前を呼びながら、そっと俺を抱きしめる。
抱きしめてくれた葵の体は温かくて、恐怖が少しだけ和らいだ気がした。
「私なら大丈夫よ…侑哉が待っているのに、負けてなんていられないもん…絶対に戻ってくるわ」
「葵…わかったよ、だけど危険と判断したら無理をしてでも助けに行くからな?」
「うん、わかった…なら、侑哉に心配をさせないように頑張らないとね!」
葵は笑みを浮かべながらそう言って、俺をさらに強く抱きしめる。
「はいはい、イチャイチャしてる所悪いけど、そろそろ行った方が良いんじゃない?」
「確かにそうですけど…だけど、もう少しだけ…もう少しだけ侑哉とこうしていて良いですか?」
花恋の言葉に葵が名残惜しそうにそう口にする。
葵も全く恐怖を感じていないわけじゃないんだろう…それも当然だ…負けたら、データになってあの塔に吸収されるかもしれない…恐怖を覚えるのは当たり前だ。
…なら、俺が背中を押さないといけないよな。
「葵…俺はお前を信じてる、だから安心して行ってこい…この戦いが終わったら、続きをしよう」
「侑哉…」
「安心しろ、俺がいる限りは葵を絶対に守ってみせる!」
「うん…!ありがとう!侑哉!それじゃあ行ってくるね」
葵はそう言って、俺の頬へとキスをする。
俺もお返しとばかりに、葵と唇を重ねる。
「おっふ…見てるこっちが恥ずかしくなるくらいにラブラブね…まぁ、葵ちゃんも元気が出たみたいだし、これで良かったのよね」
花恋の言葉に俺と葵は思わず顔を赤くしつつ、距離を取る。
「そ、それじゃあ改めて…イントゥザヴレインズ!!」
そう言って、葵はLINK VRAINSへと向かっていった。
…さて、俺も自分のできることをしないとな。
「…レイ、頼みがある」
『何ですか?侑哉さん』
「葵のことをサポートしてやってほしい…レイが行ってくれればできることも増えるだろうしな」
『なるほど…わかりました!侑哉さんの頼みとあらば仕方ないですね…それに、葵さんと私は目的が一緒ですからね』
「目的…?」
『侑哉さんを守ることです!あなたを守るためなら、私と葵さんは何だってやってみせます!』
レイはそう言って、笑みを浮かべる。
「そっか、ありがとな…頼りにしてるよ」
『はい!お任せください!』
そう言って、レイは葵のデュエルディスクに向かっていった。
…本当に2人には敵わないな…いや、3人か。
俺はそんなことを考えながら、花恋へと視線を移す。
「花恋、大至急作ってほしいものがある、頼んでも良いか?」
「構わないけど…時間はあまりないわよ?」
「大丈夫だ、リンクアクセスの力を使って、時間を短縮する」
「なるほどね、わかったわ!それじゃあさっそく作りましょう!」
「あぁ!この戦い、誰一人犠牲は出させない!」
そうして、俺達は作業を開始した。
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「何としてでも、リボルバーを倒さないといけないわね」
『そうですね…私達の誰かがリボルバーを倒せば、ハノイの塔は止まります!頑張りましょうね!』
LINK VRAINSに来た直後にプレイメーカーとGo鬼塚と合流して、今のLINK VRAINSの状況を説明してもらった私はレイとそんな会話を交わしながら、ハノイの塔へと向かっていた。
ハノイの塔を止めるため、データとなってハノイの塔へと捕らわれた人達を救うために。
「それにしても、レイが私のデュエルディスクから出てきたのは驚いたわ」
『侑哉さんに葵さんのサポートをお願いされたので…多分、侑哉さんは最悪のケースを想定して私にサポートをお願いしたんだと思います』
「ふふっ!侑哉らしいわね」
そう、侑哉はいつだって皆が助かる道を考え続けてる…例え、それが自分を犠牲にすることだったとしても。
それは侑哉が優しいからだとわかってはいるけど、もう少し、自分を大切にしてほしい。
今回だって、まだダメージが残っているのにLINK VRAINSに行こうとしていた…だからこそ、今回は私達で何とかしなきゃ!
私を何度も救ってくれた侑哉を助けるためにも!
『一応、先ほどプレイメーカーさんから聞いた話しを侑哉さんに伝えておきますね!まぁ、侑哉さんのことですから、ほとんど推測しているとは思いますけど』
「確かに、侑哉ならこのハノイの塔を止める方法も、ハノイの塔が完成したら何が起きるかも全部予測してそうね…」
『侑哉さんなら、さらにその先まで予測してる気がしてならないですけど…うん?葵さん、誰か居ます!』
「そうみたいね……隠れてないで出てきなさい!」
「おや…私の思いが届いたのでしょうか」
「あなたはさっきの…」
そこに居たのは、ここに来る前に侑哉と一緒に見ていた映像に映っていたハノイの騎士だった。
「スペクターです…会うのは二度目ですね、ブルーエンジェル」
「二度目…?」
こんな人に会った記憶は私にはない。
「では、心の奥の扉を開けましょう」
目の前のハノイの騎士がそう言うと同時に、私が電脳ウィルスを仕込まれた時の記憶が甦った。
そうだ…私はあの時、このハノイの騎士からダークエンジェルのカードを受け取った。
「…あなたが私に電脳ウィルスを仕込んだのね!」
「えぇ、結局Phantomによって阻止されてしまいましたが…」
「教えなさい、どうしてあなた達はこんなことを?」
「話しても無駄です、趣味と信念が相容れないのと同じですよ」
「趣味?」
「崇高なる信念を持つ者の考えは、アイドルをやってるような雑魚にはわからないということです」
「言ってくれるわね…」
「リボルバー様からこの世界に侵入する者はすべて殲滅しろとの命令を受けています…逃げるなら今ですよ」
「その言葉、そっくり返すわ!私はあなたを倒し、リボルバーを倒す!」
「聞き捨てなりませんね…雑魚が何人来ようともリボルバー様の足元にも及ばない…まぁ、Phantomならばリボルバー様と互角かそれ以上に戦えると思いますがね」
「どうしてここでPhantomの名前が出てくるの?」
スペクターの言葉に思わずそう聞き返す。
本当にどうしてこのタイミングで侑哉のことが出てくるの?
「リボルバー様は彼に一目置いていましたからね、私も彼のデュエルを少しばかり観戦してみたのです…彼のデュエルは実に素晴らしかった!あらゆる戦略を使いこなすタクティクスはもちろん、逆転の一手を引き寄せる幸運…この私ですら彼のデュエルには魅了されました!」
そうやって実に愉快そうに、目の前のハノイの騎士は侑哉のデュエルを絶賛する。
この人、色々とダメな気がする…この絶賛だって侑哉が聞いてもあんまり喜ばない気がするし。
「それで、デュエルするの?しないなら私はこのまま進ませてもらうわ」
「おっと、これは失礼しました…では、始めるとしましょう…」
「「デュエル!!」」
そうして、私とスペクターのデュエルが始まった。
といった感じの第46話でした!
いよいよ、スペクターとブルーエンジェルのデュエルが始まります。
果たして、葵はスペクターとのデュエルに勝利できるのか?
それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!