遊戯王VRAINS 幻影の咆哮~青き天使との日常~ 作:kajoker
今回でデータバンク編は終了です。
それはそうと、もうすぐマスターリンクが発売しますね!シューティングコードトーカーやサイバースの新規カードが収録されるようなのですごく楽しみです!
それでは、本編をどうぞ!
「これは10年という俺の思いがこもったデッキ、必ず俺を真実へと導く!…ドロー!」
playmakerはカードを引き、そのカードを確認する。
「俺はカードをセットし、ターンエンド」
「どうやら何もできないようだな、だがそれが君の運命なのだろう…復讐などやめるんだ、私に全てを任せて君は元の生活に戻るんだ、それが君の為だ」
「…復讐をやめろ、か…あいつとは言っていることが真逆だな…」
「あいつ…?」
「Phantomだ…あいつは俺に復讐をやめろとは言わなかった、ただ、デュエルを復讐の道具としか見れないのは悲しい…だから、デュエルを楽しめる時は全力で楽しめと、あいつはそう言っていた」
「プレイメーカー…」
playmakerの言葉に俺は思わずそう呟く。
playmakerの言葉は俺が草薙さんのホットドッグ屋で初めて遊作と会話をした時に俺が言った言葉だった。
その言葉は頭の片隅にでも覚えてくれてれば良いと思っていた言葉で、その言葉を未だに遊作が覚えていてくれているとは思っていなかった。
「彼がそんなことを…」
「変わった奴だと思った…世間一般的にはあんたの言っていることの方がまともだろうからな…だから理由を聞いた、そしたらあいつは自分がもし大切なものを奪われたら、自分だって復讐に走るかもしれない、だから復讐をやめろとは言わなかった…そう言っていた」
確かに、俺は遊作に理由を聞かれた時にそう答えた。
「それに、自分が復讐をやめろと言ったところで薄っぺらくしか聞こえないだろうから、とも言っていたな…あいつの言葉を聞いてから、何故かあいつの言葉が頭から離れなかった…それと同時にあいつと過ごす時間を心地よく感じるようになっていた」
「…何故Phantomがここに居るのかがずっと気になっていたが…ようやくその理由がわかった…君が彼に助けを求めたんだな」
晃さんは納得したようにそう口にする。
「あぁ、だがそれ以外にも理由はある…」
playmakerはそう言って、俺の方に視線を移す。
「あいつなら俺の復讐に最後まで付き合ってくれそうだからな…それに、あいつは簡単にはくたばらないだろうからな」
「お、おい!相変わらず俺に対する扱いひどくないか?」
playmakerの発言に思わずそう返す。
最初は良い感じの言葉だったのに、急にそんなことを言い出すんだもんな。
『いや、お前はまだマシな方だって…俺なんかいつも黙れとか言われてるんだぜ、それにお前との間に友情などないとか言われたし…』
「お前は少し黙っていろ」
『ほら!また黙れって言った』
「あはは…まぁ、Aiに比べればマシだと思っておくよ…そういえば、そろそろ話してくれないか?」
「…10年前の事件のことか?」
「あぁ、さっきから10年前の事件について話しているけど、そろそろ具体的にどんなことがあったのか話してくれても良いんじゃないかな?」
playmakerと晃さんのデュエルをすべて見ていたわけではないから何とも言えないが、10年前の事件について色々と話していたみたいだしな。
さすがにそろそろ具体的に説明をしてほしい。
『俺も知りたいなプレイメーカー様よ、どうせあいつは知ってるんだろ?いずれお前の秘密はバレるんじゃないか?』
「私から話そう、何が起きたのか…10年前、ある事件が起きた、それはロスト事件と呼ばれていたらしい…6人の子供が次から次へと行方不明になった。ある組織により誘拐されたのだ」
「誘拐…!?ってことは…」
「そう、その被害者の1人が…」
「プレイメーカーってことか…」
その言葉にゴーストガールは小さく頷いた。
ということは草薙さんの弟も…しかも、それ以外に後4人ぐらい被害者が居るのか。
そういえば、俺の両親が事故に遭ったのも10年前だ…葵と晃さんの両親も10年前に事故に遭ったんだよな、何か関係があるのか?
「もういい、財前…自分の過去を他人になど語られたくはない」
そう言って、playmakerは自分の過去について話し始めた。
「誘拐された俺達はある場所に1人ずつ監禁された。そこは何もない部屋だった。唯一あるのはVR装置のみ…VRに映るのはデュエル空間だった、そこで俺達はデュエルを強要された」
「デュエルを強要だって…!?」
つまり、まだ小さい子どもを誘拐して、監禁して…それでデュエルを強要したっていうのか?
…ふざけてる、首謀者は何でそんなことをしたんだ?
「そこにあるのは食事と睡眠、そしてデュエルだけだった…毎日がその繰り返し」
「やがてそこでの生活はすべてデュエルで管理されるようになった、デュエルで勝利しなければ食事さえ得られない」
…何だよそれ…10年前ってことはまだ遊作は5、6歳だぞ…!そんな子どもにそんな生活をさせたって言うのかよ!
俺の中に怒りにも、悲しみにも似た感情が渦巻く。
この感情は一体何と呼べば良いんだろう…その答えを俺は持っていない。
…とにかく、今は話しを聞かないと…そうしないと何も始まらない。
「いつここから出られるのか、いつまで自分が生きられるのか何もわからない不安の中で俺達はデュエルを続けた」
「くっ…!」
playmakerの言葉に俺はそう呟くしかなかった。
「そこがどこなのか監禁されてどれだけの時間が経ったのか、誰も教えてはくれなかった」
「だが、半年後事件は突然解決した」
playmakerの言葉に晃さんはそう続けた。
「そして君達は救われた、しかし犯人はわからず事件自体が隠蔽されマスコミが騒ぎ立てることはなかった」
「…事件自体が隠蔽されただって?…っ!ぐっ、何だこれ?」
頭が痛い…それに何か映像が、頭に…
〈良い?侑哉…あなたはこれを使って早くここから逃げなさい!私も後で行くから!〉
頭に流れ込んできた映像は、ある女性が俺を引っ張りどこかに連れて行こうとする映像だった。
〈そんな…!こんな時に故障!?せめて、侑哉だけでも…!〉
そう言って、映像の中の女性は何かを操作し始める。
(何だ?これ…こんなことがあった記憶はないぞ…いや、実際起きてはいたが俺が覚えてないだけか?)
それにしても何なんだ?急にこんな映像が流れ込んでくるなんて…
〈よし、これなら何とかなりそう…待っててね、今作動させるわ〉
映像の女性がそう言って、俺に笑みを向ける。
〈ごめんね、侑哉…私も付いていけたら良いんだけど…それは無理みたい…〉
そう言って、映像の女性は俺に顔を近づける。
〈またね、侑哉…安心して、あなたがどこに居ようとも私が必ず見つけてみせるから!〉
そう言いながら、涙を浮かべる女性の顔は見覚えのある顔だった。
「花恋…?」
俺がそう呟くと同時に辺りの景色が光に包まれる。
「どういうことだよ…どうして泣いてるんだ?俺に一体何があったっていうんだ!」
そんな叫びに映像に映る花恋が答えてくれるはずもなく、そのまま俺は意識を手放した。
//////////////
『マスター…マスター!目を覚まして下さい!』
「…う、うん…あれ?ここは…」
「目が覚めたか、侑哉」
俺が目を覚ますとそこは、データバンクではなく草薙さんの店の中に居た。
「遊作…そうだ!結局デュエルはどうなったんだ?」
『もちろん、俺達が勝ったぜ!』
俺の質問にデュエルディスクからAiがそう答える。
『それにしても、あの時はビックリしたぜ…お前が急に倒れてさ…』
「倒れた?俺が…?」
『はい、急にマスターが苦しそうに頭を抑えて、そのまま…結局、マスターは遊作さんのデュエルが終わっても目を覚まさなくて…』
レイはそう言って、悲しそうな表情をする。
…どうやら、かなり心配を掛けてしまったみたいだな。
「えっと…ごめん、心配させちゃったな…でも、もう大丈夫だ!この通り元気になったからさ!」
俺はそう言って、元気になったと言わんばかりに腕を軽く回してみせる。
『そうですか…それなら良かったです!』
その様子に安堵したのか、レイは笑みを浮かべてそう言った。
「だから言っただろう、こいつは簡単にはくたばらないと」
『またまた、何だかんだ言ってお前も、侑哉のことを心配してたくせによ~!相変わらず素直じゃねぇな』
「…黙れ」
「あはは…心配かけて悪かったな」
遊作とAiのいつも通りのやりとりを見ながら、そう謝罪する。
どうやら遊作にも心配をかけてしまったみたいだな…それにしても、結局あれは何だったんだ?
あの時、頭に流れ込んできた映像を思い出しながら、そう思考する。
…やっぱり、花恋に聞くしかないよな。
「そういえば、遊作達は今何をしてるんだ?」
『Aiさんが補食したデータを解析しているところですよ、マスター!』
「なるほどな…あのさ、レイ…俺が意識を失っている間の話しを聞いても良いか?」
『もちろんです!お任せください!』
そうして、レイから俺が意識を失っている間の話しを聞いた。
遊作の逆転劇や、ロスト事件が別名ハノイプロジェクトと呼ばれていたこと、晃さんが首謀者のことを何か知っていたことなど、俺が意識を失っている間に起きた出来事を事細かく教えてくれた。
その話しを聞いている途中で、遊作の正体もバレてしまったのかと、一瞬不安になったが、ロスト事件の被害者の情報については国家のSランク保護プログラムによって守られていたらしい。
それは逆に言えば国家ぐるみで隠蔽されたレベルというわけなんだけど。
…それにしても、データバンクにもリンクアクセスの情報がなかった…ロスト事件の情報はあったみたいだけど、何でリンクアクセスについては何もなかったんだ?
隠蔽されたロスト事件とデータバンクにも情報がなかった、まるで歴史上から完全に消されてしまったかのようなリンクアクセス…俺の持っている能力は俺が思っているよりずっとヤバい能力なのかもしれない。
「草薙さん、これだ!」
「ドクター鴻上…本名、鴻上聖…ハノイプロジェクトを立案実行?」
その会話を聞き、俺もそのデータを見る。
「この男は…SOLテクノロジーの研究者だ!」
「SOLテクノロジーの研究者…なるほどな、だからこそこの記録が残ってたわけか」
「あぁ、そういうことだろうな」
俺と同じ考えなのか、遊作が同意するようにそう口にする。
「ここには鴻上博士が独断で事件を起こしたと書いてある、だが、内部告発により事件がSOLテクノロジー社に発覚」
「独断、ね…絶対に独断でやったわけじゃなさそうだけどな…大方、SOLテクノロジー社に責任を押し付けられたってところかな」
草薙さんの言葉を聞き、俺は自分の考えを口にする。
仮に、鴻上博士が責任を押し付けられたとすればリボルバーがSOLテクノロジーに恨みを持っている理由もわかるしな。
まぁ、もしかしたらそれ以外にもSOLテクノロジーが鴻上博士に何かした可能性もあるけど。
「…そういえば、事件の目的は何なんだ?」
「それは書いていない…それよりこれは!?」
草薙さんが驚いたような様子でそう口にする。
「鴻上博士は七年前に死んでいる…」
「七年前に死んでいる…だって?」
どういうことだ?いや、待てよ…何かこれに似たような状況の人間が居たような…
「…そうか、その可能性もあるか…」
「どうした?侑哉…」
「遊作、草薙さん…もしかしたら、鴻上博士は生きているかもしれない」
「それはどういうことだ?」
俺の言葉に遊作はそう聞き返す。
「生きているって言えるかはわからないけど、鴻上博士は意識をデータ化することでLINK VRAINSで生きているかもしれない」
「意識をデータ化だと…?」
「そんなことができるのか?」
「まぁ、あくまで可能性の話しだけどね…」
鴻上博士がSAOの茅場のように自分の精神をネットワーク上に移した可能性もゼロじゃない。
もしくは、リボルバーがそれをした可能性もあるけど…どちらにせよ、その可能性について考えておいて損はない。
「…例えそうだとしても、俺達のやるべき事は変わらない」
「あぁ、そうだな…乗りかかった船だ、最後まで付き合うよ!それに、リンクアクセスについてまだまだわからないことだらけだからな…その事についてハノイの騎士から聞かなくちゃならないからな」
俺はそう言って、遊作に笑みを向ける。
「あぁ…これからも俺達に付き合ってもらうぞ、侑哉」
「おう、任せてくれ!…って、やばい!もうこんな時間か…!早く帰らないと花恋と、もしかしたら葵にも大目玉を喰らうかも…それじゃあな!遊作!」
「あぁ、またな」
「気をつけて帰れよ」
遊作と草薙さんに1度頭を下げ、そのまま二人に見送られながら、帰路についた。
…そういえば、レイについてはどう説明したもんかな…まぁ、元々花恋がレイを作ったらしいし、気付けばレイがデュエルディスクに居た、みたいな感じで説明するか?
俺はそんなことを考えながら、走り続けた。
////////////
「ただいま!」
「お帰り、侑哉!」
「あぁ、ただいま…葵!」
家に帰ってくると葵が俺を出迎えてくれた。
「葵も家に来てたんだな」
「まぁね、侑哉に用事があって来てたの…だって侑哉が電話に出てくれないんだもん」
「えっ…!」
葵にそう言われ、電話を確認すると確かに葵から連絡がきていた。
「ごめん…葵、ちょっと立て込んでてさ」
「ふーん…何があったのかちゃんと説明して」
「えっと…」
さて、どうしたもんか…素直にデータバンクに侵入してたことを言うべきか、それとも誤魔化すか…
いや、葵にはそのうちバレそうだよな…仕方ない、ちゃんと話すか。
「…わかった、ちゃんと話すよ…花恋も呼んでくれ」
結局、葵に嘘をつくことはできず、データバンクに侵入したことを話すことにした。
「はぁ…」
「ちょっ、花恋!?何で急にため息ついてるんだ?」
葵と花恋にデータバンクに侵入したことと、そこで起きた事について話していると、花恋が急にため息をついた。
「まさか、SOLテクノロジーのデータバンクに侵入するなんて…呆れて言葉も出ないわ」
「言葉なら出てるじゃないか…」
「揚げ足取らないの!良い?侑哉!あなたがやったことはすごく危険なことなのよ!一歩間違えたら大変なことになってたわよ?」
花恋が珍しく声を荒げてそう言った。
「うっ…ごめんなさい、反省してます」
「…まぁ、わかったなら良いわ…次からは気をつけるのよ?」
「わかったよ…次からは気をつけるよ」
花恋に怒られ、そう謝罪する。
それにしても、こんな花恋は初めて見たかもしれない…まぁ、確かに今回はさすがに不味かったかもな。
…ただ、俺は花恋と葵に他にも謝らなくちゃならないことがある…確かに、データバンクに侵入したことを話したが、playmakerの正体については話していないし、俺が意識を失った時に見た映像についてもまだ話していない。
「…それにしても、驚いたわ…まさか、侑哉専用のサポートAIを作るつもりだったのに、そのAIが自分の意志を持って、しかも侑哉のカードになるなんて…私の想像をはるかに越えているわ」
花恋は実体化しているレイに目を向けながら、そう言った。
「ふふん!愛の力が成せる技です!マスターと私は運命共同体ですからね!」
「それは聞き捨てならないわね…」
レイの言葉に葵がそう反応する。
あれ?何か嫌な予感が…
「あのさ…何となく嫌な予感がするから言うけど喧嘩は止めような?」
「…ふふっ、もちろんですよマスター!喧嘩なんかしませんよ…ただ、葵さんに私の方が侑哉さんにふさわしいって言いたいだけですから」
「私もレイと同じよ、喧嘩なんかするつもりはないわ…ただ、侑哉の恋人は私だから運命共同体という言葉は私の方がふさわしいってことをレイに教えようと思っているだけよ」
葵とレイはお互いに笑みを浮かべながら、そんな口論のようなものを行っていた。
うん、もう既に喧嘩してるね…葵とレイの間に火花がバチバチ散っているのが目に見えるし。
「まさか、AIに恋をさせるなんて…さすがは侑哉…他にも女の子タイプのAIが居たら侑哉に恋するのかしら?ちょっと試してみたいわね」
「うん、花恋…それは止めような」
花恋の発言にそうツッコミを入れながら、あの時頭に流れ込んできた映像について改めて考える。
あれは、間違いなく花恋だった…だとすると、あれはこの世界の俺の記憶…?
「あのさ、花恋…」
「うん?どうしたの?侑哉」
「…やっぱり何でもない、ごめん、気にしないでくれ」
「そう…?」
結局、俺は花恋にあの時見た映像のことを聞かないことにした。
何故、その事について聞かなかったのかは自分でもよくわからないが、まだ聞くべきじゃない…そんな気がした。
「さて、夕飯の用意をしないとな!葵、手伝ってくれるか?」
「侑哉…!もちろん!」
葵はそう言って、笑みを浮かべた。
「ま、待ってください!私も手伝います!」
「…これからますます騒がしくなりそうね…まぁ、楽しそうではあるけど…」
(侑哉は…まだあの事を知らないのよね…私だけが知っている事実…いずれ全てを話す時が来る)
「…それでも、今はこの瞬間を楽しまないとね!侑哉、今日は私も手伝うわよ!」
「え!?花恋まで…というか花恋って料理できないんじゃ…」
「それはそうだけど、たまには良いじゃない!」
「わ、わかったよ…それじゃあよろしくな!」
そう言って、俺達は夕飯の用意を始めた。
その後、案の定、夕飯の用意の途中で花恋が色々と失敗しそうになりいつも以上に疲れることになったのは言うまでもない。
といった感じの第36話でした!
最近、新しく発売されたパックを5パックほどかったんですが、ブルーアイズソリッドドラゴンや強靭!無敵!最強!等のカードが当たって、テンションが上がりました!
これを機に新しく青眼デッキを組んでみましょうかね…
それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!