遊戯王VRAINS 幻影の咆哮~青き天使との日常~   作:kajoker

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第25話です!

いよいよウィルスとの決着が着きます!

果たして、葵はウィルスを倒し、侑哉を助けられるのか?

それでは、本編をどうぞ!


第25話 VS覇王烈竜

「……い…」

 

声が聞こえる。

 

「……お……い」

 

その声は変わらず私に言葉を掛けてくる。

 

一体、誰が…?

 

「葵!目を覚ませ!」

 

「…っ!」

 

今度ははっきりとその声が聞こえ、慌てて起き上がる。

 

「やっと、目が覚めたか…良かった…」

 

「…え?侑哉…?」

 

起き上がった私の目に入ったのは、今まさに私が助けようとしていた人物、侑哉だった。

 

正確にはアバターの姿の侑哉だけど、そんなことはどうでも良かった。

 

「…私は夢でも見てるの?」

 

「夢なんかじゃないと思うよ…多分だけどね」

 

「でも、侑哉は!」

 

電脳ウィルスのせいで目を覚ましていないはず…それがどうして?

 

「俺もよくわかんないんだよね…葵とのデュエルが終わって真っ暗な空間に居たと思ったらいつの間にかここに居て、倒れている葵を見つけたんだ」

 

侑哉は自分でも何が起きたかわからないといった様子でそう言った。

 

その顔も仕草も声も、私がずっと求めていたもので…会いたくて仕方がなかった侑哉そのものだった。

 

「もしかして、偽物とか思われてるのか……まぁ、今の状況なら仕方ない―――――」

 

「侑哉!!」

 

「…へっ!?あ、葵…?いきなりどうしたんだ?」

 

侑哉の腕を引っ張り、思いっきり抱きしめる。

 

侑哉は少し驚いたような声を上げながら、戸惑いながらも私のことを優しく抱きしめてくれた。

 

「侑哉…良かった、生きててくれた…」

 

「まぁ、まだ完全に復活したわけじゃないけどね…でも、今、この瞬間ぐらいは葵との時間を楽しんでも良いよな…」

 

 

「侑哉…」

 

そう呟き、侑哉を抱き寄せる…そして、そのままキスを交わす。

 

何だかこんなことをするのは随分と久しぶりのような気がする…侑哉が意識を失ってからそんなに経っていないのに。

 

「何だか不思議な感じ…」

 

「あぁ、それは何となくわかるかも」

 

「ねぇ、もう少しこのままでも良い?」

 

「もちろん…構わないよ」

 

「ありがとう、侑哉…」

 

 

//////////////

 

「ふぅ…」

 

「侑哉、大丈夫?」

 

「あ、あぁ…大丈夫だよ、ちょっと疲れたけど…」

 

「ごめん、侑哉に会えて舞い上がっちゃって…」

 

侑哉は少し疲れたような声で大丈夫だと言って笑った。

 

ちょっと舞い上がりすぎたわね…気をつけないと。

 

「そういえば、葵はどうやってここに?」

 

「それは、侑哉が花恋さんに頼んでたプログラムを使って……そうよ!私、まだデュエルの途中で…」

 

私はオッドアイズレイジングドラゴンの攻撃を受けて…それで…!

 

「えっと…葵、状況を説明してくれないか?もしかしたら葵の助けになるかもしれないし」

 

「うん…実は…」

 

侑哉に促され、ここに来るまでの経緯を説明した。

 

 

 

 

「…なるほどね、まさか葵を助ける為のプログラムが、俺を助ける為に使われるなんてな…」

 

「花恋さんも同じ事を言ってたわ……そういえば、侑哉はあのデッキをあまり使いたがらないって聞いたけど、どうして?」

 

「うーん、あのデッキは確かに強いんだけど、俺のやりたいデュエルとは少し違うっていうか…まぁ、本気で叩き潰したい相手には使うかもしれないけど…」

 

侑哉は困ったようにそう言った。

 

なんとなく侑哉の言っていることはわかる気がする…あのデッキはエンタメと言うよりは蹂躙に近いデッキだと思うし…

 

確かに侑哉のやりたいデュエルとはほど遠いかもしれない。

 

「そういえば、葵…その髪はどうしたんだ?」

 

「え…?」

 

侑哉にそう聞かれ、自分の髪を見てみると、いつものブルーエンジェルの髪型ではなく、髪を下ろしている状態になっていた。

 

あの攻撃を受けた時にほどけたのかな?

 

「変、かな…?」

 

「いや、そんなことないさ…こんなふうに髪を下ろしている葵も新鮮で可愛いよ!」

 

「そ、そう…?あ、ありがとう…」

 

照れくさくなって、思わず目を逸らす。

 

本当に侑哉は…こういうことをさらっと言うんだから。

 

「…侑哉はこっちの髪型の方が好きだったりする?」

 

「うーん、そう言われると返答に困るんだけど…今の髪型もいつもの髪型も好きだからさ…」

 

侑哉は少し照れくさそうに、そう呟いた。

 

「ふふっ、ありがとう…侑哉」

 

「俺は思った事を言っただけだよ……そ、そういえば葵はデュエル中だったんだよな…戻らなくても大丈夫なのか?」

 

「…そうね、戻らないと…でも、もう少し侑哉と一緒に居たい…」

 

だって、やっと侑哉とこうして話すことができたから…侑哉と一緒に居ることができるから。

 

「そっか…なぁ、葵…」

 

「どうかした?」

 

「お前は何を怖がっているんだ?」

 

「…っ!私は何も怖がってなんか…」

 

「強がらなくても良いよ……それとも俺の気のせいかな?まぁ、それなら良いんだけど…」

 

「………」

 

「葵?」

 

そっと、侑哉に私の体を預ける。

 

侑哉の体から体温が伝わる、それは安心する温かさで、とても心が落ち着いた。

 

「…侑哉の言う通り、私、怖いよ…もし、デュエルに負けてしまったら侑哉を助けられなくなる…そうなったら二度と侑哉とこんなふうに話したりできなくなるかもしれない…そう思うと怖くて堪らない…」

 

私が負けてもplaymakerが勝てば侑哉を助けることができるかもしれない…でも、playmakerが絶対に勝てる保障なんてない。

 

「そっか…でも、大丈夫だよ!葵なら絶対に勝てるから…」

 

「どうして、そう言い切れるの?」

 

私がそう尋ねると、侑哉は笑みを浮かべてこう言った。

 

「何度もデュエルしてきたからな…葵の実力は俺が一番よくわかってるつもりだよ……それに…」

 

「それに?」

 

「きっと、俺のカードが葵に力を貸してくれる…だから、大丈夫だよ!」

 

侑哉はそう言って、私に真っ直ぐな目を向けてくる。

 

はっきりとした根拠なんて侑哉にはない…でも、何故か不思議と安心した。

 

あぁ、そうか…私、侑哉にこう言ってもらいたかったんだ…はっきりとした根拠なんかなくても、侑哉に私なら勝てるって言って欲しかったんだ。

 

「…ありがとう、侑哉…おかげで元気になった!」

 

「そっか、それなら良かった…」

 

「待っててね、侑哉…私は絶対に勝ってみせるから!」

 

「あぁ、待ってるよ……あ、そうだ!葵」

 

「どうかした?ゆう―――んっ!」

 

侑哉の方を振り返ると、唇と唇が触れあった。

 

「不意打ちはズルいわよ……侑哉」

 

「葵にだけは言われたくないな…」

 

そう言って、侑哉は少し照れくさそうに笑った。

 

侑哉とこんなふうに会話をするのが楽しくてしょうがない。

 

「ねぇ、侑哉…現実世界に戻ったらさっきの続きをしよ?」

 

「うん、さっきの続き…?」

 

侑哉は少し考え込んでいるような様子で、そう呟いた。

 

「えっと、葵…それはもしかして…」

 

「それじゃあ、行ってくるわね!」

 

「ちょっ、葵!?」

 

侑哉は慌てたようにそう声を掛ける。

 

私はそれを聞きながら、さっきまでデュエルをしていた場所を思い浮かべる。

 

そして、そのまま意識がその場所に向かっている感覚に襲われる。

 

あのウィルスは確かに強い…でも、不思議と負ける気がしない。

 

さっきまで、怖がっていたのが嘘みたいに活力が溢れてくる。

 

待っててね、侑哉…私は絶対に勝って、侑哉を助けてみせるから!

 

私はそう再び決意しながら、ウィルスとのデュエルに戻っていった。

 

 

 

「行っちゃったか…結局、この空間についてもよくわからなかったな…まぁ、でも葵と一緒に居られたわけだから良かったかな…」

 

 

///////////////

 

「う…ん…」

 

『葵ちゃん!良かった目が覚めたのね!」

 

花恋さんの声が聞こえ、そのまま起き上がる。

 

『大丈夫?何回呼び掛けても反応がなかったから、心配したのよ!』

 

「はい!もう大丈夫です!」

 

『それなら良かったわ…葵ちゃんの身に何かあったら侑哉に顔向けできないわ…』

 

花恋さんは本当に私のことを心配しているような声でそう言った。

 

「花恋さん、心配してくれてありがとうございます…でも、大丈夫です!今の私は負ける気がしません!」

 

『もしかして、侑哉に会えたの?葵ちゃん…』

 

「えっ…!どうしてわかったんですか?」

 

『やっぱりね…葵ちゃんがこんなに元気になるなんて、そんなことができるのは侑哉ぐらいなものだし…』

 

花恋さんは納得したようにそう言った。

 

「いつまで話しているつもりだ?」

 

目の前のウィルスは少し不満そうな表情をしながら、そう言った。

 

その言葉にすぐに気を引き締める。

 

そうだ…まずは、デュエルに勝たないと…!

 

「まぁ良い…我はカードを1枚伏せて、ターンを終了する、この瞬間、オッドアイズレイジングドラゴンの攻撃力は元に戻る」

 

 

 

ウィルス LP3200

手札1(EMレインゴート)

 

場 EXモンスターゾーン 覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン攻撃表示(ATK3600→3000)

 

メインモンスターゾーンなし

 

伏せ1

 

Pゾーン 相克の魔術師(スケール3)

 

相生の魔術師(スケール8→4)

 

 

 

 

ブルーエンジェル LP400

手札1(トリックスター・キャンディナ)

 

場なし

 

伏せなし

 

Pゾーンなし

 

フィールド魔法なし

 

 

「私のターン、ドロー!」

 

「この瞬間、罠発動!『ペンデュラムスイッチ』!このカードの効果で、Pゾーンの…」

 

「なら、それに対して手札から速攻魔法、『魔力の泉』を発動!このカードの効果であなたのフィールドに表側表示で存在する魔法、罠カードの数だけデッキからカードをドローできる!私はデッキから3枚のカードをドロー!」

 

ブルーエンジェル手札2→1→4

 

「そして、その後私のフィールドの表側表示の魔法、罠カードの数だけ手札を捨てる、私は手札を1枚墓地へ送るわ」

 

ブルーエンジェル手札4→3

 

「我のPゾーンのカードを利用して、大量にドローしたか…だが、ペンデュラムスイッチの効果は止められん!このカードの効果により、Pゾーンの相克の魔術師を特殊召喚する!」

 

相克の魔術師攻撃表示(ATK2500)

 

ペンデュラムスイッチ…本当に厄介なカードね…でもそのおかげでドローする枚数が増えたから、むしろ良かったかもしれないわね。

 

「さらに、私は魔法カード、『手札抹殺』を発動!お互いに手札を全て墓地に送り、同じ枚数のカードをドローする!」

 

「ちっ…!」

 

ウィルスはそう舌打ちをし、手札を全て捨て同じ枚数のカードをドローした。

 

これで、レインゴートは使えなくなった…後はあのカードを引くだけ!

 

「…さらに、魔法カード『カップオブエース』を発動!コイントスを行い、表なら私が、裏なら相手がカードを2枚ドローする!」

 

私はそう言って、コイントスを行う。

 

「結果は……やった!表!よってデッキからカードを2枚ドロー!さらに、魔法カード、『強欲で貪欲な壺』を発動!デッキトップから裏側で10枚除外し、2枚ドロー!」

 

ブルーエンジェル手札2→1→3→2→4

 

『侑哉も少し引きそうなくらいのドロー連打ね…葵ちゃん、絶好調すぎるわ…』

 

「そうですね、侑哉成分をたっぷり補充しましたから!」

 

『ちょっと待って葵ちゃん…侑哉成分って何?一体侑哉に何したのよ…そもそも葵ちゃんってそんなキャラだった?』

 

花恋さんが困惑したようにそう聞いてくる。

 

「まぁ、色々とありまして…とにかく、今はデュエルに集中しないと!」

 

『え、えぇ…わかったわ』

 

花恋さんはさっきと同じように困惑した様子で、そう呟いた。

 

「さぁ、いくわよ!私はスケール1の『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』とスケール8の『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』でPスケールをセッティング!」

 

「ペンデュラム…だと!?」

 

ウィルスが驚いた様子でそう声を上げる。

 

ここに来る前に、花恋さんに頼んで侑哉のカードを何枚かデッキに入れさせてもらった…

 

侑哉も多分、それがわかっていて自分のカードが私に力を貸してくれるって言ってたのかな。

 

「…いくわよ!ペンデュラム召喚!来て!『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!」

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン攻撃表示(ATK2500)

 

「オッドアイズ・ファントム・ドラゴン…!」

 

「さらに、私は墓地の『トリックスターリンカーネイション』の効果発動!墓地のこのカードを除外して墓地の『トリックスター』を特殊召喚できる!私は『トリックスターキャンディナ』を特殊召喚!」

 

トリックスターキャンディナ攻撃表示(ATK1800)

 

「だが、そのモンスター達では我のモンスターを倒すことはできんぞ」

 

「それはどうかしら?」

 

「何…?」

 

「私は手札から魔法カード、『トリックスターブーケ』を発動!このカードの効果でキャンディナを戻し、キャンディナの攻撃力分だけ『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』の攻撃力をアップする!」

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン攻撃表示(ATK2500→4300)

 

「攻撃力4300…!」

 

「いくわよ!バトル!オッドアイズ・ファントム・ドラゴンで『覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン』に攻撃!夢幻のスパイラルフレイム!」

 

ウィルスLP3200→1900

 

「ぐあああぁ!!ぐっ、だが我のライフはまだ残っているぞ!」

 

「いいえ、これで終わりよ!あなたが取るに足らないと言ったダメージがあなたを倒す決め手になる!」

 

「どういう意味だ?」

 

「こういうことよ!オッドアイズ・ファントム・ドラゴンの効果!ペンデュラム召喚したこのカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、Pゾーンのオッドアイズカードの数×1200ポイントのダメージを与える!Pゾーンのオッドアイズカードは2枚、よって2400ポイントのダメージをあなたに与える!」

 

「何…!?」

 

「喰らいなさい!幻視の力、アトミックフォース!!」

 

「ぐあぁぁぁ!!」

 

ウィルス LP1900→-500

 

 

「勝った…これで侑哉を助けられる…」

 

デュエルを終えると、目の前のウィルスが消えていった。

 

『葵ちゃん、お疲れ様…後はアバターから出れば侑哉が目を覚ましているはずよ!』

 

「なら、早く出ましょう!どうやって出れば良いんですか?」

 

『LINK VRAINSからログアウトするのと同じやり方で大丈夫よ』

 

「わかりました!」

 

そう言って、私はすぐにログアウトした…目を覚ました侑哉に会えることを楽しみにしながら。

 

 

////////////////

 

「ん……はっ!侑哉は?」

 

目を覚ますと、目の前には眠っている侑哉の姿があった。

 

どうやら、元の場所には戻れたみたいだけど…

 

「侑哉、起きて!お願いだから!」

 

そう声を掛けたが、反応がなかった。

 

嘘……もしかして、失敗したの?電脳ウィルスを除去できなかったの?

 

心がどんどん沈んでいくのがわかる…せっかく、助けられたと思ったのに…

 

「うん…?」

 

「え…?」

 

「あれ、葵…そっか、俺は…うっ、体の節々が痛いな…」

 

私が諦めそうになっていると、侑哉が目を覚まし、体を起こした。

 

「侑哉!!」

 

「ちょっ、葵!く、苦しい…」

 

「侑哉!!侑哉!!夢じゃないわよね?侑哉がここに居るのって!」

 

「う、うん…夢じゃないよ、というか本当に苦しいよ…し、死ぬ…」

 

「ご、ごめん!侑哉…」

 

侑哉の一言に我に帰り、慌てて距離をとる。

 

「大丈夫?侑哉…」

 

「あ、うん大丈夫…ちょっとびっくりしたけど…」

 

侑哉はそう言って、微笑んでくれた。

 

言わないと、侑哉に言いたかったことを…それも、とびっきりの笑顔で。

 

「…お帰りなさい、侑哉…!」

 

色々な感情が混ざりあって上手く笑えたかはわからないけど…侑哉は私の顔を見て、少し笑みを浮かべながらこう言った。

 

「あぁ、ただいま…葵!」

 

 




といった感じの第25話でした!

何だかイチャイチャフェイズを書くのは結構久しぶりな気がしますね…そんなに期間は空いていないと思うんですけど…

次回からはplaymakerとリボルバーのデュエルに侑哉が何かしら関わるようになると思います。

それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!


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