遊戯王VRAINS 幻影の咆哮~青き天使との日常~   作:kajoker

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第2話です、今回は葵視点で書いてみました。
しばらくはこういった日常を中心に書いて、ある程度進んだら原作に入るという感じにしていこうと思います。
それでは本編をどうぞ!



第2話 ライバル登場!?

「結局、今日もこんな時間に来ちゃったわね…」

 

まだ、誰も来ていない教室で一人そう言葉を溢す。

 

私が、こんなに朝早くの教室に来ているのは理由がある。

 

それはある一人の男の子を待つため。

 

普段、この時間に来るからといって、今日も来るとは限らないのに、気がつけばこんな時間に教室の自分の席に座って彼が来るのを待っていた。

 

私がしばらく窓の外の空を眺めながら、彼のことを待っていると教室の扉が開く音がした。

 

その音がする方を見ると、ちょっと癖っ毛のある黒髪の少年が目に入った。

 

「おはよう、神薙君」

 

「おはよう、財前さん」

 

そうして、いつも通りの挨拶を交わして神薙君は私の隣へと座った。

 

こんな、何でもないやりとりが最近の私の密かな楽しみになりつつある。

 

私がこんな時間に教室に来ているのも、ほとんどが神薙君と、話したいがためだったりする。

 

「財前さん、いつもどれくらいに家を出てるんだ?いつも俺よりも早く学校に来てるし…」

 

「それは、教えられない」

 

「だよな…そういえば、なかなかデュエル部の部員増えないな」

 

「確かにそうね、まぁでも出来たばかりの部だしそう簡単に部員も増えないわよ」

 

「それもそうか…ま、気楽にいくか!」

 

「うん!」

 

神薙君とそんな会話をしながら、このなにげない時間を心地よく感じる。

 

部員は確かに増えてほしいけど今はこのままで良いかな…だって、今は神薙君のことをもっと知りたい、そう思う自分がいるから。

 

私は、そんなことを思いながら神薙君との会話を続けた。

 

 

////////////

 

 

今日、最後の授業も終わりに差し掛かかろうとしている中、私は過去へと思いを馳せていた。

 

それは、私がLINK VRAINSでPhantomに出会ってしばらく経ったときのことだった。

 

あの時の私は、ブルーエンジェルとしての私と現実の私とのギャップで本当の自分がどっちなのかがわからなくなっていた。

 

「どうしたんだよ、なんか悩みごとか?俺で良ければ相談に乗るけど?」

 

そんなとき、そう声を掛けてくれたのがPhantomだった。

 

最初は話そうかどうか悩んだけど結局はPhantomに今の自分の悩みを打ち明けた。

 

私の話しを彼は否定するでもなく、頷くわけでもなくただ黙って話しを聞いてくれた。

 

「ふむ、なるほどな…よくわかんないけどさ、そんなことで悩む必要はないんじゃないか?」

 

「どういうこと?」

 

「だってさ、ここにいるお前も、現実のお前もさ、結局はお前自身であることに変わりはないだろ?」

 

「あ…」

 

そのなにげない一言がどれほど嬉しかったか、きっと彼は知らないだろう…

 

初めて私という人間が認められた気がして、私という一人の人間を見てくれた気がして…

 

「それにさ、俺は現実のお前のことは知らないけど、現実のお前ともこんなふうにデュエルしたり、楽しく話したりして一緒に過ごせる気がするんだよ…だから、大丈夫だ!」

 

「何が大丈夫なのか…わからないわよ…」

 

「まぁ、長々と話したけど、結局言いたいことはさ…ブルーエンジェルとしてのお前も、現実のお前も、両方ひっくるめてお前自身だってこと!どっちが本物とかないって!」

 

その言葉を聞いた瞬間、感情が爆発し、抑えきれなくて気づけば涙を流していた。

 

でも、それは悲しみとかじゃなくてむしろ―――

 

「え、ちょっと待て!なんで泣いてるんだ?俺、なんか悪いこと言っちゃったか?だったら謝るけど…」

 

「うんうん…そうじゃなくて…嬉しくて…」

 

嬉し泣きといった方が正しかった。

 

「そんなふうに言われたこと、なかったから……まぁ、私が誰にも相談したことがなかったからかもしれないけど…」

 

「じゃあ、俺に相談してくれたってことは、それだけ信用してくれてるってこと?」

 

「そうかもね…本当になんであなたには相談できたんだろう…?」

 

「お、おう…そう返されるとは思ってなかったから返答に困るな…まぁ元気になったなら良いか…」

 

「……ありがとう、Phantom…」

 

「良いよ、別に気にしなくて…」

 

そう言いながら、彼は私を背にして歩き始めた

 

「あ、そうだ…一つ言い忘れてた」

 

「うん?」

「やっぱり、ブルーエンジェルには笑顔の方がよく似合ってるよ!」

 

最後に、そんな爆弾発言を残して…

 

 

////////////

 

「おーい、財前さん!デュエル部に行こうぜ!」

 

神薙君の私を呼ぶ声に現実に引き戻される。

 

何で私、あの時のことを思い出してるんだろ…?

 

まぁ間違いなく目の前にいる神薙君のせいなんだろうけど。

 

「わかってる、今行くわ!」

 

そうして、いつも通り放課後のデュエル部へと歩を進める。

 

「そういや、さっきボーッとしてたけど考え事でもしてたの?」

 

「まぁね、ちょっと考え事してたの…」

 

「そっか…何を考えてたんだ?」

 

「それは秘密!」

 

「だよな、わかっちゃいたけどさ…」

 

そんな会話をしながら、気づけばデュエル部の部室の前へとたどり着いていた。

 

「部室に入ったら部員がいた、みたいなことにならないかな?」

 

「さすがにそれは難しいと思うわよ」

 

「そう、即座に返されるとへこむんだけど…」

 

そんなやりとりをしながらデュエル部の中に入ると、人影が見えた。

 

「え、嘘…!」

 

まさか神薙君の言った通りになるとは思っていなくて、思わずそう声を上げた。

 

神薙君も半分放心状態になっていて、驚いているのが目に見えてわかった。

 

「あの~、すみません…ここってデュエル部の部室ですよね?」

 

私達にそう尋ねてきたのは私と同じぐらいの身長のショートポニーの少女だった。

 

「そうだけど…君は、あれ?見たことあるような…」

 

「もしかして、神薙君と財前さんですか?ほら、私、同じクラスの葉山 美月(はやま みづき)ですよ!」

 

「あぁ、そんな人がいたような気がする」

 

「ごめんなさい、私もあなたのことは見たことがあるような気がする程度の認識しかないんだけど…」

 

私と神薙君の言った言葉を聞くと見るからに落ち込んでいるのがよくわかった。

 

「しょうがないですよ、まだ学校が始まってそんなに経ってませんし…それにお二人とは話したことなんてほとんどありませんから」

 

「まぁ、それはさておき葉山さんは何でデュエル部に?」

 

なんとなく暗い雰囲気になったのを変えるためか神薙君が葉山さんにそう声を掛けた。

 

「はい、実は私、デュエルが大好きで!ぜひ、デュエル部に入りたいなって思って!」

 

「へぇ、そうなんだ!もちろん、こっちとしては大歓迎さ!な、財前さん!」

 

「えぇ、歓迎するわ…よろしくね、葉山さん」

 

口ではそう言ったけど、なぜか彼女が部員になることを素直に喜べない自分がいた。

 

部員が増えるのは良いことのはずなのにそれを拒みたい、そんなことを思ってしまう…

 

なんでだろ?

 

「大丈夫か?財前さん…なんか様子が変だけど」

 

「そ、そう?よくわかるわね…」

 

「一応は、ね…まぁ話したくないならそれでもいいし、無理に聞いたりしないよ」

 

「ありがとう、神薙君…」

 

どうやら、神薙君にはお見通しだったみたいだ…まぁ私が何を考えていたかはわかってないと思うけど。

 

 

「神薙君と財前さんって仲が良いんですね、まるで恋人同士みたいです!」

 

「「はい!?」」

 

葉山さんのいきなりの発言に思わず神薙君とハモりながら聞き返す。

 

「こ、こ、こ、恋人!?わ、私と神薙君はそんな関係じゃ…」

 

「そ、そうだよ…俺と財前さんはそんな関係じゃないって!」

 

「むぅ…」

 

「なんで、そこで俺を睨むんだよ?」

 

「教えない…」

 

確かに事実だけど、ここまでハッキリと言われるとそれはそれで嫌…

 

はぁ、私ってこんな面倒くさい女だったかな…

 

「そ、それはそうと葉山さんはどんなデッキを使ってるんだ?」

 

この空気に耐えかねたのか、神薙君が葉山さんに問いかけた。

 

「私はですね、青眼デッキを使ってるんです!しかも、このデッキ、Phantomさんにもアドバイスしてもらったんですよ!おかげで最近、調子がいいんですよ!」

 

「そ、そうなんだ…」

 

「葉山さんはPhantomと、どういう関係なの?」

 

「実は、PhantomさんがLINK VRAINSに初めて来たときにLINK VRAINSの中を案内したんですよ!それで、お礼にってことでデッキのアドバイスをしてくれたんです!」

 

「へぇ~、そうなの」

 

「ちょっと待て、なんでそんなジト目でこっちを見るんだよ、財前さん…」

 

自分は関係ないと言わんばかりの態度の神薙君をおもいっきりジト目で見つめる。

 

だって、神薙君がPhantomだとしたら葉山さんの正体も勘づいているだろうし…

 

まぁ神薙君がPhantomだとは限らないけど…可能性は充分にある。

 

でも、まだ確証が持てない…なにか確証を持てるようなものがあればいいんだけど…

 

「神薙君、私とデュエルしましょうよ!」

 

「もちろん、受けて立つよ!葉山さん!」

 

私が一人思考の海に沈んでいるなか、神薙君と葉山さんのそんな会話が聞こえてきた。

 

「それじゃあ、さっそくーーーー」

 

「待って!」

 

気づけば私は声を上げていた、なぜかはわらない、ただ、神薙君と葉山さんがデュエルするのはなんだか嫌だった。

 

本当にどうしちゃったんだろう…私

 

「財前さん、もしかして、葉山さんとデュエルしたいのか?なら、先にデュエルしても良いよ!俺も財前さんと葉山さんのデュエル、見てみたいし」

 

「私も構いませんよ」

 

「えぇ、そうさせてもらうわ…あなたがデュエル部に入る資格があるか、入部テストといきましょう…」

 

「え、デュエル部にそんなの無くないか?」

 

それはそうだ、だってこれは私のわがままで、私が勝手にやっていることだから…でも、こうなった原因である当の本人にはもう少し自覚をもってほしい。

 

「と、とにかく!葉山さん、デュエルよ!」

 

「なんだか、よく分かりませんが受けて立ちます!」

 

こうして、私と葉山さんのデュエルが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




新キャラ、美月が登場しました、最初は美月のデッキは聖杯にするつもりだったんですがリンク・スパイダーとアウラム抜きで聖杯を回すのはキツイなと思って青眼デッキにしました。

それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございました!

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