遊戯王VRAINS 幻影の咆哮~青き天使との日常~ 作:kajoker
今回から本格的に原作に入っていきます!さて、どうなることやら…
それでは本編をどうぞ!
「ふぅ、今日も楽しかったわね…」
デュエル部の活動が終わり、家に帰ってきた私はそう言葉を溢す。
ただ、今日見学に来た藤木君と侑哉が何故か仲が良かったことは驚きだったけど。
ある意味、そのおかげで侑哉とデートの約束ができたから、それはそれで良かったかな、と個人的には思っている。
「テレビでも見ようかな…」
そう言って、何気なくテレビをつけると、兄さんがマスコミから色々と質問されているニュース画面が目に入った。
その内容としては、この前のGo鬼塚とplaymakerのデュエルはSOLテクノロジー社が仕組んだという噂があるが実際のところ、どうなのか?という内容だった。
「兄さんも大変ね」
テレビの電源を切り、そのままベッドへと歩を進めた。
「……侑哉」
ベッドに横になりながら、彼の名前を呼ぶ。
家に帰ってきたというのに考えるのは侑哉のことばかり、侑哉と明日はどんなことをしようか、とかどんな会話をしようか、とか挙げればキリがない。
「ちょっと電話してみようかな…侑哉も家に帰ってきてるだろうし」
そう思い、携帯を取り出すと、着信音が響いた。
「…兄さん?何の用かしら…とりあえず出ましょうか」
少し、怪訝に思いながら電話に出ると、画面に兄さんが映し出された。
「どうかしたの?兄さん」
『葵、お前は何が不満なんだ』
「え…?」
『いつまでアイドルごっこを続けるつもりだ』
「……」
なるほど、つまり兄さんは私に説教をするために電話を掛けてきたってことね…
そうなると、大体話しの内容がわかってしまう……多分スピードデュエルは危ないから止めろとかそういう内容の電話だと思う。
「心配しなくてもわかってるわよ、兄さん」
『そうか、なら良い…』
「それじゃあ、切るわね」
『あぁ…』
最後に兄さんはそう言って、通話を終わらせた。
兄さんには悪いけど、私はブルーエンジェルを辞めるつもりはさらさらない。
だって、私のデュエルを見てほしい人がいるから。
もちろん、観客の人達にも見てほしいけど、それよりも侑哉にもっと私のデュエルを見ていてほしい。
ーーーーーだから
「playmaker、あなたは私が倒す…!」
我ながら、酷い嫉妬だと思う。
でも、この黒い感情を抑えることは出来なかった。
「into the VRAINS…」
見ていてね、侑哉…
私は心の中でそう呟きながら、意識を手放した。
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「playmaker、私とデュエルしなさい!見てるんでしょ!隠れてないで出てきなさい!」
「葵の奴、急に何言ってるんだ?」
画面に映されたブルーエンジェルの姿を見ながら、そう呟く。
playmakerにデュエルを申し込んでいるのか?…そういえば、この前…
『大丈夫、侑哉の手を患わせなくても私がplaymakerを倒すから…』
って、言ってたな…もしかして、それでか?
「……ちょっと様子を見にいくか、花恋…留守番頼んで良いか?」
「葵ちゃんの所に行くんでしょ、良いわよ」
「ありがとう、それじゃあ行ってくるよ!デッキセット、into the VRAINS!!」
俺はそう宣言して、LINK VRAINSへと向かった。
「…さてと、葵を探さないと」
LINK VRAINSに来て、さっそく葵を探すために走り出す。
確か、葵が映っていたのはこっちの方向のはずだ!
俺は葵の映っていたであろう方向に全力で走る。
走って、走って、走って…そこでようやくブルーエンジェルの姿を見つけた。
「ブルーエンジェル!やっと見つけた!」
「あれ?Phantom…どうしてここに?それに私は何でこんなところに…」
「え…?もしかして、覚えてないのか?」
「確か、playmakerにデュエルを申し込んで…結局、playmakerが出てこなくて、それで…あれ?その後、どうしたんだろ?」
葵が困惑の表情を浮かべながら、そう言った。
どうやら、葵はplaymakerにデュエルを申し込んだところまでは覚えているらしい…ただ、その後の記憶がないってことか。
どういうことだ?誰かが葵に何かしたってことなのか?
「……まぁ、とりあえず元気そうで良かったよ、ちょっと心配だったからさ」
「ふふっ、心配してくれてありがとう…侑哉」
「どういたしまして!…とりあえず、一安心したよ!それじゃあ、また明日な!葵」
「うん…!また明日、侑哉!」
俺はそう言って、ログアウトした、ある不安を胸にかかえながら…
「お帰りなさい、侑哉…思ったより早かったわね」
「うん…ちょっと気になることがあってさ」
「気になること?」
「なぁ、花恋…デュエルディスクを介してその人の記憶に干渉することって可能か?」
「え…?何言ってるの、侑哉」
俺の突然の発言に花恋が驚きの声を上げる。
まぁ、当然の反応だよな…俺だってこんなこと聞かれたら驚くし。
「いや、実はさ…」
俺はさっき葵と話した時のことを花恋に説明した。
「なるほど、それでさっきの質問をしたのね」
「そういうこと…もしかして葵の記憶を誰かがいじったのかもしれないから、一応聞くだけ聞いておこうと思ってさ」
「なるほどね…とりあえず、さっきの質問の答えを返すと、現実ではまず不可能よ」
「やっぱ、そうだよな…俺の考え過ぎか…って現実ではってことは…」
「さすがは侑哉、察しが良いわね!そう、多分だけどLINK VRAINSでなら可能よ」
「そう、か…じゃあやっぱり誰かが葵の記憶をいじったのか?」
「それはわからないわ…ただ、とんでもない科学力を持っていることだけは確かね」
「確かにそれは間違いないな…」
記憶をいじるなんて真似はとてもじゃないが、普通の人にできるようなものじゃない。
考えられるとしたら、ハノイの騎士かSOLテクノロジーか……どちらかと言えばハノイの騎士の方が確率としては高いな。
「…とりあえず、花恋はLINK VRAINSでデュエルディスクを介して、アバターの中に侵入できるプログラムを作ってくれ」
「了解!任せて、ちゃちゃっと完成させるから!」
「頼りにしてるよ!花恋!」
俺はそう花恋を激励し、キッチンへと向かった。
さて、今日の夕飯は気合い入れて作らないとな!
俺はそう決意して、夕飯を作り始めた。
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「あのさ、葵…」
「どうかしたの?侑哉」
「そんなに抱きつかれると動きにくいんだけど…」
朝食を終えて支度をしていると、葵が俺の家に迎えにきてくれた。
俺としても葵と一緒に登校できることは嬉しいから、喜んでOKしたんだけど…
その後に急に腕に抱きつかれ、今に至る。
まぁ、嫌ではないから、これ自体は別に良いんだけど。
「もしかして、照れてる?」
「まぁ、そりゃあね…それにデート以外でこういうことをやるのって何か新鮮な気がしてさ」
「確かにそうかもしれないわね…毎日、こうして登校する?」
「う~ん、さすがに俺のメンタルが持たないから、たまにで良いかな」
毎日、葵に抱きつかれて登校する…嬉しいけど、俺の理性が持つか不安だ。
「なら、しょうがないわね…」
そう言って、葵はさらに体を密着させてくる。
ちょっ!待って!本気でメンタルがやばいって!
「ふふっ、放さないわよ、侑哉…」
俺が心の中で格闘している最中、葵はふと、そんなことを呟いた。
何か今日の葵は妙に甘えてきてるな…まぁ、嫌ではないし、むしろ嬉しいくらいなんだけど…
昨日のこともあるし、ちょっと不安だな。
俺はそんなことを思いながら、歩き続けた。
「あれ?侑哉と財前か」
「うん?お、遊作!おはよう」
歩き続けていると遊作と出くわし、そのまま挨拶を交わす。
まさか、こんな時間に遊作と出くわすとはな…正直、驚いた。
「あぁ、おはよう…お前達は何というか…平常運転だな」
遊作は少し微妙な表情をしながらそう言った。
「まさか遊作にまでそういう認識をされているとは…」
「違うのか?」
「いや、確かにそうかもしれないけど…」
まぁ、デュエル部のみんなは俺と葵が付き合っているのを知ってるから、そんな風に思うのも当然かもしれないな。
「侑哉…いつまで藤木君と話してるの?」
「え…?」
ふと、葵の声が聞こえて目を向けるとそこには頬を膨らませて、むくれている葵の姿があった。
え?何その表情、すごい可愛いんだけど…
「あ、うん、ごめんごめん…それじゃあ学校でな遊作」
「あ、あぁ…」
そう最後に言って、俺は歩き始めた。
その時に葵がすごい遊作を睨み付けてたけど、何でなんだ?
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「なんで授業ってこんなにめんどくさいんだろう」
「そんなこと言ってないで集中しなさい」
「わかってるよ…」
授業が始まって少しして、俺が授業についての文句を口にすると、葵にそう注意された。
結局、あの後学校に着くまでずっと葵に抱きつかれたまま歩き続けることになり、着いたころには精神的にかなり疲れた。
しかも、途中で遊作にバッタリ会ってしまい、すごい微妙な表情でこっちを見られる始末。
「………」
…それにしても、こうして見ると甘えてきていること以外はいつも通りの葵に見えるな…
やっぱり俺の考えすぎなんだろうか?
俺がそんなことを考えながら、葵の様子を見ていると葵が携帯を取り出しているのが見えた。
メールでも来たのか?でも一体誰が…
「すみません、体調が優れないので保健室に行ってきても良いですか?」
「え…?」
俺がメールの送信者について考えていると、葵が手を上げてそんなことを言った。
多分、体調が優れないというのは嘘だろう…さっきのメールが何かしら関係しているに違いない。
「それじゃあ、俺が葵を保健室に連れていきますよ」
俺がそう言いながら立ち上がると、担当の先生は意外とすんなり許可してくれた。
それに、何というか生暖かい目線をこちらに向けていた。
「えっと、とりあえず行こっか…葵」
「うん…」
俺はそう言って、葵の手を引きながら教室を後にした。
「さて、事情を説明してくれないか?」
教室を後にして、しばらく進んだところで葵にそう質問する。
「やっぱり、侑哉に嘘はつけないわね…」
そう言って、葵は携帯の画面を俺へと見せてくる、そこに書かれていたのは…
「『今なら相手になってやる。playmaker』…なるほどね」
「今からplaymakerとデュエルをしてくるわ…だから見ていてね、侑哉…私は絶対に負けないから」
葵はそう言って、走り去っていった。
「……悪いな、葵…ただ見ているだけなんて俺にはできないよ」
だって、さっきから嫌な予感がするんだ…今行かないと取り返しのつかないことになる、そう頭の警鐘が鳴り響いて止まらない。
俺は、はやる気持ちを抑えながら葵の向かった所へと走り出した。
//////////////
「はぁ、はぁ…!どこだ?」
葵の後を追いかけてLINK VRAINSにログインしてきた俺は葵を探してあちこち走り回っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ…!あれは?」
しばらく探し続けていると、playmakerとブルーエンジェルの姿が目に入った。
幸いにもまだデュエルは始まっていないようで、二人は睨み合っていた。
「やっと見つけた!!ふぅ、なんか最近ずっと走ってばかりな気がするな…」
「…Phantom!どうしてここに?」
俺の姿を見た葵が驚きの声を上げる。
まぁ、そりゃそうか…葵は俺がここに来るとは思っていないはずだしな。
「なんとなく嫌な予感がしてね…居ても立ってもいられなくてさ…ごめんな」
「Phantom…」
葵に謝罪の言葉を伝え、playmakerに向き直る。
「playmaker、状況の説明をしてもらって良いか?」
「あぁ、わかった」
そうして、playmakerから今の状況について説明してもらった。
今回のデュエルはplaymakerのデュエルディスクに入っているAi(名前はアイらしい)によって仕組まれたことだということ、そして、Ai曰く葵のデッキにハノイの気配を感じるという話しを聞き、大体の状況説明は終わった。
「なるほどね…ブルーエンジェルの様子が変だったのはやっぱりハノイの騎士が絡んでいたのか…」
「やっぱり、ということはお前はハノイの騎士が絡んでいるという可能性を考えていたのか?」
「うん…確証はなかったけど、その可能性が高いとは思ってた…まさか、本当にそうだとは思わなかったけど」
そうなると、花恋の言った通りとんでもない科学力を持っているのか、ハノイの騎士は…
「……悪い、playmaker…このデュエルは俺にやらせて欲しい」
「…本気か?ブルーエンジェルのデッキにはハノイのカードがある、何が起きるかわからないぞ」
「あぁ、構わない…もし、ブルーエンジェルがハノイに何かされたんだとしたら、俺はあいつを助けたい!」
「…わかった、そこまで言うなら止めはしない」
「ありがとう、playmaker…もし俺が負けたら後は頼んだよ…ま、負けるつもりはないけどね」
俺はそう言って、デュエルディスクを操作する。
そして、出てきた画面からカードを数枚選択する、このデュエルディスクは花恋のおかげで現実のカードをLINK VRAINSに持ってくることができるようになっている。
つまり、デュエルする直前にデッキ編成が可能になるというわけだ。
本当に花恋ってすごいよな…多分、ああいう人のことを天才って呼ぶんだろうな。
俺はそんなことを思いながら、先ほど選択したカードをデッキへと加える。
「お待たせ、ブルーエンジェル!さぁ、俺とデュエルしようぜ!」
「ちょっと待って!私はあなたとデュエルしにきたわけじゃないわ!」
「まぁまぁ、俺に勝てたらplaymakerとデュエルして良いからさ…それに…」
「それに?」
「それに…正直、ブルーエンジェルとスピードデュエルしたいんだよ!ほら、ブルーエンジェルとは一度もスピードデュエルしたことないしさ…この前だって何だかんだでできなかったし…」
「確かに、そうね……わかった、そのデュエル、受けて立つわ!」
「そうこなくっちゃ!それじゃあさっそく始めよう!」
俺がそう言うのと同時にデータストームが吹き荒れ、俺と葵のボードがどこからともなく飛んできた。
そして、それに飛び乗りバランスを整える。
「さぁ、いくよ!ブルーエンジェル!」
「「スピードデュエル!!」」
といった感じの第19話でした!
次回からはいよいよ侑哉と葵のデュエルが始まります!
さて、勝つのはどちらか?そして、侑哉は葵を助けられるのか…
それでは今回はここまで、ここまでの拝読ありがとうございます!