軍大学に通っている私達は街の中にある家で暮らしている。ここはシュテルの持ち家で、家賃も全部シュテルが払っている。シュテルはヴァルゼライドさんに連れられて軍でのお仕事もしているので、お金を持っているの。私も一緒にアルバイトをさせてもらっている。そのおかげでパパからの仕送りもあって有意義な生活ができている。ここは都会なので自給自足ができないのが問題だよね。
現在、リビングで必死に勉強している。もうすぐテストだから頑張らないとだめ。
「フェイト、休憩にしましょう」
シュテルが飲み物とお菓子を持ってきてくれる。テーブルの上に置かれたカップにはラテアートで可愛らしい猫の親子が描かれている。お菓子は焼き菓子で、シフォンケーキの上に生クリームが塗られていて、生クリームの上に可愛い猫達が描かれている。それはもう、芸術作品で売れるレベル。
「相変わらず凝り過ぎで、食べるのが勿体無いよ」
「そうですか?」
「うん」
家にある家具も含めて、全てが高級品に見える芸術作品。でも、それらすべてはシュテルが作ったもので、売りにだすだけで一つ数十万から数百万になる。その筋では有名らしい。
「さあ、食べましょう」
「あぁ~」
「はい、あ~ん」
別けられていくにゃんこちゃん達。そして、一口差し出されるのでパクっと食べる。口の中でとろける美味しいケーキ。カフェラテを飲んでいく。
「勉強はどうですか?」
「順調だよ。もう英語も覚えたし、後は歴史とかだけかな」
「単位の習得も問題ないですしね」
「うん。一年でだいぶ取ったから」
入学して一年でほぼ単位を修得してある。戦闘関連の単位は簡単に取れたから、戦闘の授業時間を他の時間にあてた。夜と朝の鍛錬だけで大丈夫だからね。
「まあ、軍大学ですから卒業してから数年はここに居ないと駄目ですけどね」
流石に軍大学の卒業生を簡単に海外に流すわけにはいかないよね。まあ、私は日本からの留学生だから、任務をこなせば大丈夫なんだけどね。私の後ろ盾はシュテルのお父さんであるヴァルゼライドさん。ヴァルゼライドさんは軍のトップになったから特に大きいよね。
「日本に早く帰りたいから、さっさと卒業して免許を取らないと」
「ですね。ああ、それと晩御飯は何がいいですか?」
「ハンバーグがいい」
「では、任せてください」
シュテルの料理はとっても美味しいから、頑張れるしね。沢山の読書をしながら勉強する。シュテルも一緒になって勉強する。
「そういえばフェイトは衣装を決めましたか?」
「衣装?」
「ヒーロースーツですね。我が国の技術力は高いですよ。日本とも技術提携をしていますしね」
「そうなんだ。でも、特にイメージとかないからシュテルにお任せしていいかな? シュテルのデザインなら信頼できるから」
「いいですよ。フェイトは高速戦闘が得意ですから……装甲は削って……可愛さも両立させて……」
シュテルがデザインを書いてくれている横で、私は電子回路の勉強をする。武器に電子回路を刻み込んでそこに電流を流すことで効率化を計れればいいね。
「フェイト、こんなのはどうですか?」
「可愛いけど、これは?」
「魔法少女をイメージしてみました」
「シュテルもやってくれるよね?」
「えっと……」
「私だけじゃ嫌だよ」
「私はこちらですね」
私は黒色のワンピースの水着みたいな感じで真ん中に白色。薄い桃色のスカートにベルト。ガントレットと黒いニーソックス。それにグリーブと裏地が赤色で白いマント。シュテルは黒色と赤色で構成された制服のような感じ。
「シュテル、私の露出が多いのは?」
「フェイトのは装甲を減らしています。逆に私は装甲を厚くしていますから」
「なるほど。まあ、高速戦闘だと邪魔になるし……」
「構わないですよね? もうこれで出してしまいますよ」
「任せたわけだから、いいよ」
「わかりました。任せてください。完璧なスーツを作ってもらいます」
「お願い」
それにしても、魔法少女……確か日本でシュテルと見たし、どうせなら近づけた方が楽しいよね。よし、そうしよう。となると、魔法陣の開発もしよう。電子回路を魔法として再現してみるのもいいかな。
数年後
無事に国際免許も習得し、規定の任務も終了して私達は無事に日本に帰国できることになった。それとお父さんから手紙がきた。なんでも、後継者をとったみたい。お父さんの"個性"は引継ぎ方で、その人に譲ったみたい。私に渡してくれなかった理由は、ヴァルゼライドさんが私の戦闘データを送っていて、それを見た感じでは必要ないと判断したらしい。それに雄英高校で働くことにもなったとのこと。
「フェイト、帰るのですか?」
「うん。帰る。お父さんが大変みたいだから、私が手伝うの」
「では、私もいきましょう」
「いいの?」
「ええ、問題ないです。それで、どこですか?」
「雄英高校だよ」
「雄英高校……日本のヒーロー育成校ですね。では、連絡を入れましょう」
「え?」
「任せてください。ですので、私の分も準備してくださいね」
「うん、わかった」
こちらでの手続きはシュテルの方が得意だし、任せよう。トランクに二人の下着や衣類を入れていく。
二日で準備を終わらせて、お仕事で忙しいヴァルゼライドさんのところに挨拶にやってきた。
「帰るのか」
「はい。お世話になりました」
「シュテルもいくのだな」
「はい。日本でフェイトと一緒に過ごします」
「そうか。これが滞在ビザだ。すでに話は通してある。それと技術部からお前達用の装備ができている」
「装備ですか?」
「可変式の実験装備らしいから、データを送ってこい」
「ありがとうございます」
「フェイトのは逆刃刀にしてある」
「助かります」
「餞別だ。気にせずに持っていけ。ああ、しいていうなら生温い日本に思い出させてやれ。平和が崩れるということを」
「了解です」
ヴァルゼライドさんは立ち上がって、私達の頭に軽く手を置いてからさっさと部屋から出ていった。秘書の人が後ろについていっていることから、すぐに仕事のようだ。
「お父様も身体には気を付けてくださいね」
「いらぬ心配だ。自分のことを考えておけ」
ぶっきらぼうだけど、優しい。シュテルも嬉しそうにしている。
「では、いきましょうか」
「うん」
二人で手をつないで反対の手でウエポンケースを縛り付けたトランクを持って空港へと向かっていく。飛んだ方が速いかもしれないけれど、流石に辛いし密入国になるのでこのまま向かうことにする。
シュテルはそのまま。フェイトは無印にマントだけ色違い。
USJ乱入か、体育祭からか考え中