雷魔法少女のヒーローアカデミア   作:ヴィヴィオ

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第7話

 

 

 

 温かいぬくもりで目が覚める。目の前にはシュテルの顔がある。私とシュテルは抱き合いながら寝ていた。でも、これは正確にいえば夜間訓練で気絶した私達をヴァルゼライドさんかパパがベッドに入れてくれているだけ。後は気温が下がってきたので、互いに抱き合っているだけ。

 

「シュテル、朝だよ」

「ん……おはようございますフェイト」

「うん、おはよう」

 

 ベッドから出て着替えていく。着替え終わったら、外に出て二人で柔軟体操をおこなう。互いに身体を押してから、一緒に今日も頑張る。柔軟体操が終ると、ヴァルゼライドさんがやってくる。

 

「さて、今朝はフェイトに俺が抜刀術を教える。シュテルはオールマイトに体術を鍛えてもらえ」

「よろしくね」

「「はい!」」

 

 マッスルフォームのパパがシュテルの相手をして、私がヴァルゼライドさんに抜刀術を教えてもらう。どちらもとても厳しくてちょっとでも間違えれば斬られる。

 

「"個性"ありで"個性"なしの俺を超えてみろ。刀の軌道をしっかりと意識しろ。お前は"個性"に頼り過ぎている」

「う~」

「難しいのなら、ひたすら抜刀と帯刀を繰り返して効率化しろ。そうだな。"個性"を使って一万回行え」

「ひぃっ!?」

 

 高速で引き抜いてすぐに戻す。ただひたすら行う。自己進化をふるに使って必死にこなしていく。一週間ほどでようやく合格をもらえた。

 

「では、次は"個性"なしでやってみろ」

「あう~っ!」

 

 午前中は基本的に戦い方を教えてもらって、午後からパパやヴァルゼライドさん相手に厳しい戦闘訓練をシュテルと組んで行う。夕食後に反省会をシュテルと行って駄目な点を洗い出して報告して合格をもらえば普通の勉強。もらええなければ反省のやり直し。常に自分達で考えて駄目なところを改善するように教えられる。

 勉強が終るころにはくたくたになって仮眠を取る。深夜にヴァルゼライドさんが襲撃してきて、たたき起こされる。その後は森に連れていかれて夜間訓練。気絶したら、パパ達に身体を洗われてからベッドに寝かされる。そして、朝起きてまた繰り返す。

 本当に厳しいけれどどんどん実力がついていっているのがわかる。だから、頑張って頑張って、強くなる。

 

 

 

 数日後、汗を大量にまき散らしながら必死に刀を振るう。今は一刀ではなく二刀の練習をしている。一刀の練習だけでもしんどく辛いけれど、二刀だとさらに辛くなる。それでも一振り一振り効率化していく。

 

「一振り一振りに魂を、意思を込めろ。意思の籠っていない一撃など、軽すぎて話にならん。理想は一刀が一刀が必殺の一撃となるのが理想だがな。かまえろ。教えてやる」

 

 構えを取って警戒する。

 

「っ!?」

 

 高い技術で高速で抜刀された一撃は私の刀をすり抜けるように斬り落とされる。反撃しようとするけれど、そのまま切り飛ばされる。そのまま戦うけれど、本当に一撃一撃が必殺の一撃の威力となって致命傷を与えられる。

 

「理解したか? 先ずは俺の攻撃を身体で覚えろ。次にそれを再現しろ。ただし、込める思いはお前自身のものだ。お前は俺ではない。お前自身の心を込めろ」

「はい」

 

 模擬戦を徹底的におこなってヴァルゼライドさんの剣戟を覚える。覚えた剣戟は一生懸命に再現して、駄目だしをもらいながらも頑張る。とても厳しいけれど、構わない。

 

 

 

 更に数日が過ぎ、私とシュテルは数ヶ月ぶりの休日を過ごしている。今日は遊園地にやってきているの。というのも、銀河さんが私達の現状をしって激怒したから。二人は似たところもあって、やりすぎてしまったらしいの。私とシュテルは平気だけど、子供には遊ばせなさいということ。そんなわけで、シュテルと一緒に遊びにきています。

 

「さて、どれから乗りましょうか」

「楽しそうだね」

 

 無表情なんだけど、瞳だけはとっても楽しそう。心なしかわくわくしている。反面、後ろの両親二人はベンチでぐったりしている。

 

「あ~説教が長かったね。まあ、私達が悪いんだが」

「確かに飲み込みが良いのでやり過ぎたな」

「技術的にはどうなんだい?」

「そこらの雑魚に遅れはとらん。すでにトップとはいかんまでもそれなりに使える。そもそも空を飛べるのだ。上空からの攻撃に対処できなければ瞬殺だ」

「うむ。空を自由に飛ばれるのは厄介極まりない」

 

 行く場所が決まったので、パパ達のところにいく。

 

「パパ、ジェットコースターに行きたいです」

「お前達は普通に空を飛べばジェットコースターになるだろう。行く意味がわからん」

「あははは、いっておいでと、言いたいんだけど身長制限があるからね」

「「っ!?」」

「ああ、あと私達はこういうところは苦手でわからないから、保護者は別の人を呼んでおいた」

「え?」

「どういうことですか? お父様」

「お前達を鍛えるのに休暇をほぼ使ったからな。仕事が色々と入っている。保護者をつけるから、三人で行って来い」

「なるほど」

「ごめんね。私も色々と仕事があるんだ。もう傷もほぼ癒えたし、フェイト君の保護観察も終わった。だから本格的に復帰することになる」

 

 確かにそれは仕方ないよね。むしろ、今まで殆ど独占していたんだから、我慢しないと。それに一人になるわけじゃない。シュテルも一緒だし寂しくない。

 

「っと、来たようだね」

 

 パパの視線の先からローラースケートみたいなので滑ってくるお姉さん。その人はテレビでも何回か見た事のあるヒーローさん。

 

「こんにちは~。はじめまして。私は中島スバル。レスキューヒーローをしています。お姉ちゃんからお願いされて、今回はお二人の保護者としてやってきました!」

「ありがとう。悪いね」

「いえいえ、正式な依頼になってますからね」

「依頼?」

「お前、俺とシュテルは一応、国外からの来賓だぞ」

「あっ、なるほど。シュテル君の護衛か」

「ああ、そういうことで頼んでおいた。まあ、必要ないだろうがな」

「なんだ。娘のことを心配しているんだね」

「当然だ。シュテルも俺が守るべき国民だからな」

「国のためなら平然と犠牲にするでしょうけどね」

「それも当然のことだ」

「やれやれ」

 

 お姉さんはやれやれっといった感じで、こちらにやってきて私達の手をとった。

 

「それじゃあ、大人の人達はおいておいて。お姉さんと一緒に遊ぼうか、フェイトちゃん、シュテルちゃん」

「「はい」」

「それで、何からいきたい?」

「ジェットコースターです」

「フェイトちゃんもそれでいい?」

「うん。お願い」

「じゃあ、行きましょう」

 

 スバルさんにジェットコースターに連れてきてもらった。ちゃんと乗れたけれど問題はあった。あんまりおもしろくなかった。

 

「悔しいですが、お父様の言った通りこれなら自前で飛んだ方が面白いですね」

「そうだね。全然速度が足りないよ。すくなくとも三倍は欲しいよ」

「いやいや、普通に速いからね? 一部じゃ速度は120キロ超えてるからね? 360キロオーバーとか無理だから。これだとジェットコースターは駄目だね。別のところにいこうか。何がいい?」

「じゃあ、これ。魔法使いの城」

「本当に魔法が使えるみたいですね」

「えっと、ここか」

 

 移動してからローブと杖をもらって魔法を使ってみる。でも、声に反応して映像と音がでるくらいだった。杖に乗って飛ぶのも今一だった。

 

「……駄目だ。この子達を楽しませるのはなにかないかな……今度はこっちに行こうか」

 

 船に乗ったり、食事をしたりした。あとは映画をみたり、楽しい時間を過ごした。美味しい物が多かった。

 

「た、楽しかった?」

「美味しい食べ物が多かったですね」

「そうだね」

「……食べ物が一番よかったって……遊園地だよ? 遊園地なんだよ?」

「スリルが今一足りません」

「なんだか不完全燃焼だったね。後で空を飛ぼうか」

「夜間飛行は特に綺麗ですからね」

「えっと、"個性"の使用は禁止だからね?」

「敷地内ですから」

 

 敷地内なら、まだ許されるんだよね。"個性"が勝手に発動したりする時もあるから、訓練するために申請して許可がでれば大丈夫なんだよね。ヒーロー免許や自衛隊など特別な免許をもってる人は取りやすい。

 

「まあ、いいか。それより、遊園地の次は服を買いにいこうか。成長なはずだし……」

「それが……」

「全然成長していないんだよ。シュテルもだよね?」

「まあ、原因はわかっていますし、気にしませんけど。飛ぶのに大きくなると邪魔ですし」

「確かに体重が増えると動きづらくなるし」

「いやいや、それは……」

「こんな錘をつけることになりますしね」

「そうだね」

「ちょっ!? 痛いっ、痛いからっ!」

 

 スバルさんの胸を鷲掴みにしてみた。柔らかい。ちなみに私は成長するかどうかもわからない。寿命も短いと思うし。まあ、運が良ければ自己進化と自己増殖で細胞も常に新しく大量に作っているから生きられるとは思うけど。

 

「そういえばスバルさんの"個性"ってなんですか?」

「私? 私は振動破砕。掴んだ物に振動を与えて破壊する"個性"だよ」

「強力ですね」

「これ、レスキューヒーローとして便利なんだ。瓦礫とかを簡単に壊せるからね」

「そうなんだ。あと、格闘技とかやってる?」

「ストライクアーツって奴をやってるよ」

「一手、お手合わせをお願いします」

「私も相手をしてもらいたいです」

「時間があえばいいけどね。正直、私じゃ相手をするのも辛いんじゃないかな~私の"個性"って人に対しては使えないから」

「なるほど」

 

 相手のことを思っているんだね。私もシュテルも気にしないけど、レスキューヒーローとしては駄目なんだろうね。

 

「あ、こっちもいいかな。フェイトちゃんは黒がいいよね」

「うん」

「じゃあ、こんなのも可愛いね」

 

 ゴシックドレスとかいうフリフリのを渡された。シュテルも同じで、着せ替え人形みたいにされる。銀河さんも合流して、いっぱい女の子の服や小物を買う。帰ってからパパ達にみせてみる。

 

「うん、いいんじゃないかな」

「俺にはわからんが、問題ないだろう」

「お父様は軍服しか着ませんしね」

「当然だ」

「HAHAHA。さて、フェイト君。話がある」

「なに?」

「君、留学してみる気はあるか?」

「留学?」

「もしかして、EUですか?」

「それか、アメリカだな。どちらにしろ、飛び級制度がある国だ」

 

 つまり、私に飛び級制度を利用しないかって提案だよね。

 

「俺とシュテルはそろそろ帰国する。これ以上、本国を開けて仕事をすることができないのでな。まあ、シュテルはおいていっても構わないのだが……こちらの制度では飛び級もできん。無駄な時間を過ごすくらいなら、連れて戻ったほうがいい」

「そこでだ。フェイト君も一緒にシュテル君と一緒に向こうにいってみないかい? 私は日本国内で居るので、一緒にはいけないが……」

「パパは一緒じゃないの?」

「ああ。代わりにシュテルが一緒だ」

「ヴァルゼライドさんは?」

「俺は基本的に仕事だ。休日は剣技を見てやってもいいが、いい加減部下共が五月蠅いのでな」

「つまり、私とシュテルだけで生活することになりますね。私はフェイトと一緒がいいです。一人は寂しいですから」

「ちょっと、考えてみるね」

「まあ、明日明後日辺りに決めるといい。来週には彼等は帰国するからね」

「はい」

 

 一旦、別れてから空を飛んで雲を超えて綺麗な夜空を見ながら考える。パパと別れるのは嫌だけど、でもパパの役に立つにはヒーローの資格はいる。それを日本で取るには時間がいっぱいかかる。でも、海外だとそんなことはない。私の実力はヴァルゼライドさんやパパに捨て身で一撃を入れられるくらいはある。シュテルと組んでなんとか戦えるくらい。

 

「フェイト」

「シュテル」

 

 振り向くと、シュテルも炎の翼を作って飛んでいた。下に向かって常に炎を出して重力を振り払っている。

 

「私はフェイトと一緒にヒーローになりたいです。フェイトはどうですか?」

「私も一緒がいい」

「なら、一緒にいきましょう。オールマイトなら大丈夫です。今はまだ、ですが」

「え? どういうこと?」

「彼の傷はかなり深いです。おそらく、ヒーローとしての限界は後数年でしょう。それまでに彼の代わりになるヒーローにならなくてはいけませんよ」

「そのためには早く免許がいる……」

「そうです。私と一緒に飛び級して取りましょう。大丈夫です。取ってから、こっちに戻って学生生活をするのも問題ないでしょう。とりあえず、免許と卒業資格だけとって、何時でも"個性"を使える状態にしておけば問題ないと思います」

「確かにそれだったら、パパを助けやすい……うん、わかった。一緒にいくよ」

「では、景気づけに一戦やりましょうか」

「負けないよ」

「こちらこそ」

 

 私は刀を構え、シュテルは炎を出す。シュテルが放つ爆撃を雷を纏って高速で移動して斬り払う。互いに笑いながら雷撃と炎をぶつけ合う。楽しい遊びは幾つもの軌跡を空へと刻んでいく。次第に雲が吹き飛んで地上の光が見えてくる。

 

「あ、どうせなら競争しようよ」

「競争ですか?」

「一番最初に地面に到着した方の勝ちだよ」

「いいですね。いきます」

「あっ、ずるい!」

「ハンデです。速度は圧倒的にフェイトの方が速いですから」

 

 二人で極限まで速度を高めて落下する。地面がすぐ近くになり、あと数十センチというところで止まる。私のところはそうでもないけど、シュテルのところは地面に大きな焼け焦げ、陥没した。

 

「やはり競争は勝てませんか」

「速さじゃ負けないよ。でも、やっぱりジェットコースターより、こっちの方が楽しいね」

「速度が全然違いますしね」

「言い訳はそれでいいかな?」

「「え?」」

 

 振り向くと、パパがマッスルフォームで立っていた。家の方をみると、風圧で窓が割れ、ログハウスの一部分が壊れていた。

 

「二人共、危険なことをしたお仕置きだ」

「「お、お仕置き?」」

「子供へのお仕置きはお尻ぺんぺんだろう」

「「ひっ!?」」

 

 二人で急いで逃げるけれど、すぐに捕まってしまってお尻をいっぱい叩かれた。おかげで次の日は二人してろくに動けなかった。流石に瞬間再生で私だけ治すのはシュテルに悪いしね。

 

 

 

 

 

 

「いいかい? くれぐれも生水には気を付けて。後、不審者にはついていかないこと。それとそれと……」

 

 パパは私を抱きながらいっぱい注意してくる。別に大丈夫なのに。今は空港にいて、銀河さん達も来てくれている。

 

「大丈夫だよ。シュテルもいるし」

「そうだね。だけど、毎日一回は電話して……いや、私が取れないか。一週間でいいから、しっかりと連絡をくれ。あと、毎日どちらかがヴァルゼライドに連絡をいれること。何かあれば彼が対処してくれるだろうし……いや、チトセ君に頼んでおく。ヴァルゼライドはこういうことでは役に立たないしな」

「う、うん……」

「おい、そろそろ飛行機の時間だ」

「いきましょう」

「はい。行ってきます」

「気を付けていっておいで。別に寂しくなったら戻ってきていいから」

「大丈夫。今度会う時はヒーローになってるから」

「本当に実現しそうだね」

「もちろんだよ」

 

 別れをしてから、銀河さん達から食べ物や服を渡される。

 

「また遊ぼうね」

「訓練ばかりじゃ駄目だからね」

「はい。がんばります」

「もう」

 

 お二人と別れてから政府専用機に乗って移動する。報道陣がいっぱい写真を取ってくるけど、気にせず乗り込んでいく。これから楽しい日々が送れますように。そう思っていたのだけど……まさか、寝ている間に無人島で放置されるとは思ってもみなかった。

 

「シュテル?」

「お父様からです。現在この無人島では軍大学の入試試験が行われているようで、参加者を殲滅しろとの命令です」

「軍、大学? ヒーロー育成校じゃなくて?」

 

 シュテルが投げ渡してきたアダマンタイト製の軍刀を二つ受け取る。ヴァルゼライドさんからの餞別かな。

 

「ええ、そうです。でも一応、ヒーロー科ですので問題ないかと。それよりも、オーダーは殲滅です」

「殲滅って殺してもいいの?」

「構いません。ですが、捕らえた方がポイントが高いようなので、捕らえましょう」

「そうだね。こちらの実力を教えてもらおう」

「がっかりしそうですけどね」

 

 私とシュテルで一緒になって他の参加者を倒していく。どの人も話しにならなくて、ほぼ"個性"を使わず、使っても最低限で終わってしまった。なんていうか、刀一つで事足りたよ。サバイバル一週間を行って、その次の試験会場へと移動する。流石に強くなってきて、"個性"を使わないと勝てない。それでも順調に勝ち進んで、私とシュテルは見事に合格して飛び級に成功した。後は必死に勉強するだけ。国が変われば法律も変わるし、言語も違うので覚えるのが大変だよ。でも、ヒーローになるために頑張る。

 

 

 

 


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