怪我も治り、毎朝、臨海公園で訓練していると綺麗な歌声が聞こえてくる。歌をききながら練習に励み、時間が経てば家に戻ってからシャワーと朝食を取って学校へと向かう。
学校では僕達は教室で席に着きながら先生を座って待っている。
「まさか、魔法少女がここに来るとは思わなかったな」
「そうだね。彼女達はエースだから、普通なら国外にでることないんだけど……」
「まあ、そのうちの一人は日本の国籍をもっているからじゃないかしら」
飯田君と梅雨ちゃんと話す。フェイトちゃんは確かにオールマイトの娘らしいし、日本にいるのがいいのかもしれない。
「しかし、一体何をしにきたのだろうか?」
「目的は一切、わからないのよね」
「でも、小さいのに強かったな」
「それはそうよ。国際免許を持っているのだから、トップクラスよ」
「トップクラスといっても、ピンキリだけどね~」
「国連加盟国で本当のトップはオールマイトやエンデヴァー、ヴァルゼライド、マトリックス、アヴェンジャーズ。他にもいるけど、とりあえず、この人達が有名かな」
どの人達もとても凄いヒーローだ。例えばマトリックスというヒーローは全身が液体金属でできており、瞬時に再生したり弾丸を通過させたりする。その上で力が強いので色々な隙間に入り込んで、救助したりできる。どの人達も人類の限界を超えたような強さをもっている。
「そんな彼等に近いっていうんだから、小さいのに凄いよな」
「アイツはオールマイトの娘らしいからな」
「なんだと!?」
「本当なのか、轟!」
「くそ親父が言っていた。確実だろう」
轟君はエンデヴァーの息子だから流石に知っているみたいだ。オールマイトの娘ってみなが驚く。
「ねえ、出久君」
「どうしたの?」
「オールマイトの妻って誰なのかな?」
「さ、さあ?」
話していると扉が開いた。しかし、誰も入ってこない。前の席の人は驚いている。教壇から頭が少しみえた。
「なんだ?」
立ち上がってみると、魔法少女の二人が制服姿で入ってきていた。フェイトちゃんが教壇の後ろに椅子を置いてその上にのった。その横にもう一人の子も乗る。二人はかなりくっついている。
「おい、あれって……」
「はい、静かにしてください。私はシュテルと申します。こちらはフェイトです。私達は怪我を負った相澤先生の代わりに副担任となりました。よろしくお願いいたします」
「フェイトです。よろしくお願いします。これから出席をとります。シュテル」
「はい。では、順番に返事をしてくださいね。騒いだら焼きます。基本的に軍隊式しかしらないので容赦はしません」
シュテルと名乗った女の子の指先に炎が灯る。かなり恐ろしいことを言っている。その後ろでフェイトちゃんがぴょんぴょんして黒板に文字を書こうとしている。しかし、制服姿なのはなんでだろうか? サイズがなかったのか? 今のも少し大きそうだが。
「ああ、可愛い……」
「そうだね」
「台が一つしかないのね」
次第にバチっという音がしてフェイトちゃんの身体が浮き出した。そのまま名前を書いていく。フェイト、シュテルという名前が書かれていく。
「ああ、質問はあとにしてください。とりあえず、出席です。一番……」
出席が取られていく。
「17番、爆豪君」
「けっ」
「欠席っと」
「おい!」
「18番」
完全に無視して進めていくシュテルちゃん。凄い怒っている。これ、やばい。だけど、シュテルちゃんは気にしていない。
「では、続いてですが……皆さんには殺し合いをしていただきます」
「「「ぶっ!?」」」
無表情なシュテルちゃんの言葉に僕達は噴き出して、慌てて周りをみる。皆、騒然としたり、一部は睨み付けています。
「冗談ですよ? おかしいですね。日本の有名な映画監督の言葉だったはずですが……すべってしまいました」
「だからやめようって言ったのに……」
「バトルロワイアルかよ!」
「正解です。まあ、冗談はおいておいて、それに近いことはしてもらいます」
「近いこと?」
「はい。黒板をご覧ください」
いつの間にか黒板には雄英体育祭と書かれていた。
「はい。これが何時書かれたかわかった人はいますか?」
「え?」
「えっと、シュテルちゃんが殺し合いって言った時?」
「麗日さんですね。正解です。あの時、視線が私に集中しました。その隙に書かれたものです。さて、何がいいたいかわかる人はいますか?」
「はい」
「八百万さん」
「視線を誘導され、その間に気づかれずに準備されたことです。これは
「そうです。どういう手段かはさておき、相手の視線を誘導し、意識の空白を作り上げてしまえばことは簡単に運びます。くれぐれも視野を広くもってください」
「この技術はヒーローとしても、
シュテルちゃんの言葉をフェイトちゃんが引き継ぐ。確かに視線を集められれば、可能なんだろう。
「どれくらい恐ろしいかと言われれば、今の一瞬で皆さんの半数が何もできずに死ぬくらいです。足元をみてください」
「っ!?」
僕達の足元には紅炎の玉が浮かんでいた。それらはすぐにシュテルちゃんの所へと戻っていく。
「これの威力はこんな感じです」
開いている窓から光の一つが飛び出し、途中で爆発を起こす。それは人ひとりを吹き飛ばすには十分の威力をもっていた。
「わかりましたか? こんな風に殺されるので気をつけましょう」
「シュテルの言葉は極端かもしれないけれど、ヒーローになるとどうしても
「人は感情がある生き物です。時には合理的な選択をとれなくなります。こちらは人類の戦争の記録が証明しています。何がいいたいかというと、常在戦場を意識するように。それができるようになったら、メリハリをつけてコントロールできるように。普段からずっとだと疲れますからね」
「少なくともこれは覚えておいて損が無いことです」
逆恨みや名声を求めて襲われる。確かにそんなことが起きている。何回かヒーローの家族が捕らえた
「まあ、常に気を張るのは無理だから、ヒーローでもツーマンセルやスリーマンセルを組むといいよ。これなら一時的でも警戒を任せられるからね。だから、私とシュテルはずっと組んでいるの」
「ヒーロー単独としても背中を預けられる友、戦友を作っておいたほうがいいです。っと、脱線がすぎましたね」
「話は雄英体育祭だよ。年に三回、行われてヒーローになるためにプロの人やスカウトの人にみてもらえるのは知っているよね」
「喜んでください。中止ではなく、警備を大幅に強化して開催されることになりました。」
つまり、この二人も警備の強化要員ってことなのかな。
「あの、二人も参加するんですか?」
「私達は先生側で参加するよ」
「正直言って、私達が生徒として参加はできません。私達はすでに国際免許を持っていますし、学校に雇われているのでスカウトされる必要性がありませんし、あくまでも学生の祭りですので」
「まあ、まだ私達じゃ相手にもならないだろうし……」
「私とフェイトは別のことで忙しいのもありますけどね……」
「そうだね……」
フェイトちゃんとシュテルちゃんはどんよりしている。なんだか、急にテンションが下がっている。
「っと、仕事仕事。えっと、訓練施設の使用とか申請がいるので早めにだしてくださいね」
「"個性"の個人練習は問題ありませんが、教師の居るところでお願いします。事故が起こった場合が大変なので。特に模擬戦は事前に申請が必要です。もし、やぶった場合は体育祭期間中の停学や退学だと思ってください」
かなり厳しいな。でも、仕方ないか。あんな事件があったんだし、納得だ。
「ヒーローに最短でなりたいなら準備はちゃんとしてくださいね」
「じゃあ、次は質問を受け付けるね」
「はい!」
「蛙吹さん」
「ずばずば聞いちゃうけど、オールマイトの娘って本当なの?」
「本当だよ。私が娘です」
「誰が妻なんだ!」
「オールマイトの私生活って!」
一斉に質問が飛び出す。黙っていると思ったのに、まるで気にしていない。
「ごめんなさい。お母さんはしらないの」
「え?」
「私は
「「「「(思ってたのより重い!)」」」」
「こないだ襲ってきた青い髪の子は残っていた私のデータの一部から培養したクローンみたいだよ。あの子を相手にする時は気にせず攻撃していいからね? 寿命もほぼないみたいで、捕まえたあとにすぐ死んじゃったらしいから」
「強制的に成長させて使い捨ての量産兵器として作ったようです。もしも、襲われた場合は命を最優先にするようにお願いします。フェイトと同じ顔の人が知り合いを殺す姿はみたくありませんので」
かなり重いことを平気でいってくる。というか、これって教えていい情報なのかな?
「教えた理由は皆さんが関係者だからです。上にもちゃんと許可をもらっています。フェイトと同じ顔を見たのですから、不信感を募らせて敵だと判断される場合があると困りますからね」
疑心暗鬼に陥って、変な所に情報がいったらまずいからか。いや、そもそも国際免許を持っているんだから、その程度の情報は簡単に覆せるんだろう。というか、プロパガンダにできそうな内容だよね。オールマイトが娘と認めたことで、美談にできるし。フェイトちゃんも助けてもらった恩を返すためにヒーローになって頑張ってるんだから。
「それで、お父さんの私生活は……数年、離れていたから小さい頃になるけどいいいかな?」
「「「いまでも小さい……」」」
それから、引き取られてからの話を色々と聞いていくと、なんていうか過保護なお父さん。でも、その印象は本格的な修行を始めてからは変わった。彼女自身も物凄い訓練をしていたが、オールマイトも参加しだすと無茶苦茶厳しい。というか、ヴァルゼライドさんとシュテルちゃんがきてからとっても厳しくなっている。僕がやった修行なんて生温いんだ。もっと頑張らないと。
「英才教育にもほどがあるわね」
「英雄クラスのヒーロー二人に鍛えられたら、あの強さも納得だな」
「そういば、皆さんは体術を使えるのかな?」
「体術?」
「必要か?」
「希望する人に教えてあげるよ。戦いの基本は身体の動かし方。ヒーローになるのなら、覚えておいた方がいいから」
「特に接近戦を考えている方は受けた方がいいです。遠距離の人も護身用に覚えるといいでしょう。はっきり言って、接近戦ができないと死亡率がかなり高くなります。接近されて終わりだと、ワープやテレポートの"個性"持ちとあたったら何もできずに死にますからね」
「あ、といってもこれは基本的に体育祭が終ってからです。基礎訓練のメニューくらいは作ってあげられますが、私達も体育祭は忙しいので……ごめんなさい」
二人があやまってくるが、それほど忙しいのか。何かするみたいだから仕方ないよね。しかし、戦い方の勉強か。確かに強くなるためには必要だよね。でも、できたらオールマイトに教えてほしいな。
その後、麗日さんと飯田君と食事を取ろうとするが、オールマイトに呼ばれて僕は一緒に食事をすることにする。部屋に入ると、フェイトちゃんにシュテルちゃんがいた。
テーブルの上には沢山の料理が並んでいる。どれも料亭のような料理でとても美味しそう。いや、匂いだけでも美味しいってわかる。
「いらっしゃいませ。どうぞ」
「あ、はい」
「お父さん、身体は?」
「大丈夫だよ。フェイト君は心配しすぎなんだよ」
「だめ」
オールマイトがフェイトちゃんに無茶苦茶世話をされている。食事を終えてから、僕はオールマイトに雄英体育祭で目立つように言われた。僕が来たってことを全世界に知らしめるように言われたのだ。でも、"個性"をコントロールできない僕には難しい。色々と考えないといけない。
相澤先生は強制的に治療に専念です。
あんな怪我で仕事させられるか!
どんなブラックなんですか!
まあ、実際の中学校と小学校もブラックらしいですが。