「お父さん、こんなことになっているなら連絡をしてくれてもよかったのに……」
「いや、父親としての見栄がね……」
「知らない」
「はははは」
病室のベッドの上でお父さんが頬をかきながらばつの悪そうな顔でそっぽを向く。私は頬っぺたを膨らませている。ここは雄英高校の医務室。本当は病院に運ぼうとしたのだけれど、リカバリーガールがいるとのことなのでここにした。ちなみに後始末は全部シュテルに丸投げしておいた。こういうのはシュテルの方が得意だし。
そもそも、到着した飛行機の中で入国手続きを終えてたので、マスコミを撒くためにそのまま飛行して雄英高校を目指していた。その途中で雄英高校の校長先生から緊急連絡を受けて私達は現場に急行。
シュテルの先制攻撃で天井を破壊して、そこから中に入ってみると私と同じ姿の女の子がいて、私は最優先でお父さん達の救助を行った。助けたお父さんはすでにマッスルフォームを解除していたので、隔離して助けておいた。久しぶりにみたお父さんは痩せていて病人のような感じだったので、終ってから慌ててここに運び入れたのだ。
「それで、彼女達はどうなったんだい? まさか、殺してないよね?」
「全員、ちゃんと生きてるよ」
お父さんが私の頭に手をポンと置いて撫でてくるので、そのまま撫でられながら話していく。
「シュテルの攻撃は全てコントロールされているから、切断と同時に焼いて止血もしているの。それは私も同じ。基本的に逆刃刀で殴って感電させて確保しているけど、斬ったとしても傷口を焼いて止血までしてる。だから、誰も死んでないよ」
「今度からは手足の切断もやめてあげて欲しいな」
「シュテルにとってはそれが一番効率的だからね。斬られて焼かれる激痛で対外の人は気絶してそのまま確保されるから」
「やはり、預ける人選を間違えたか……」
お父さんが色々と悩んでいるみたい。
「まあ、あの前に進むしか考えていない馬鹿に預ける時点で間違ってるさね。はい、お茶だよ」
「ありがとう」
「ありがとうございます、リカバリーガール。それで、お父さんの容態はどうですか?」
「悪いね。今回のことでもさらにまずくなるね」
リカバリーガールから説明を聞いていく。かなり悪いようで、日常生活は大丈夫みたいだ。
「つまり、お父さんをこれ以上戦わせなければいいんですね」
「そうだね」
「いや、それは……」
「ああ、一つだけ治す方法があるかもしれない」
「フェイト?」
「お父さん、私を食べてみる?」
「ちょっ!?」
「オールマイト?」
お父さんが凄く慌てて、リカバリーガールが冷たい目をしている。私はよくわからなくて、小首を傾げている。
「フェイト君、どういうことかね?」
「えっとね……」
私が伝えると、お父さんはなんともいえない表情をした。リカバリーガールも同じだ。私が提案したのはそれほどおかしいもの。というか、かなり危険がある。
「それは最終手段にしようか、うん」
「まあ、確かに治せそうな可能性はあるがね」
「そもそも、私の"個性"は引き継いだからね」
こんな話をしていると、扉が開いて急患が運ばれてきた。それは緑色の髪の毛をした少年だった。
「お、オールマイト……それに魔法少女……」
「また怪我をしたのかい。仕方ないから治療してやるかね」
隣のベッドに寝た彼を置いて、お父さんの世話をしていく。
「あの、オールマイト?」
「治療が終わったようだね」
「ああ、終ったよ。二人共、しばらく安静だ」
「はい。さて、緑谷少年。紹介しよう。彼女はフェイト。私の娘だ」
「むっ、娘ぇえええええええええぇぇぇぇぇぇぇっ!? でも、でも、彼女の顔って
「そうだね。だが、まあ……色々と極秘情報があるんだよ。それで、彼は緑谷出久君。私の弟子だ」
「フェイトです。よろしくお願いします」
「はっ、はいっ! 緑色出久です! こちらこそよろしくお願いします!」
頭をなんどもふってくる。ちょっと面白い。女の子に慣れてないのかな? まあ、でも……
「一つだけ言っておく。お父さんの"個性"を引き継ぐに値しないと判断したら……」
「し、したら?」
「引き渡してもらう。拒否したら……どうしよう?」
「考えてないのか!」
「うん。でも、引き渡すように誘導する手段なんていっぱいあるって、向こうで習ったから……大丈夫。どうにかできるよ」
握り拳を作って、大丈夫だとお父さんにみせる。緑谷君は何故か頭を抱えていた。
「あ、お父さん。シュテルも一緒に家で住んでいいよね?」
「ああ、いいよ。そういえばシュテル君はどうしたんだね?」
「事後処理しているとおもうよ」
「そうか。私はもう大丈夫だから、手伝っておいで」
「本当に大丈夫?」
「私が見張ってるから大丈夫さ。いっておいで」
「うん。お願いしますね、リカバリーガール」
「任せな」
「し、信用ないな」
「数年間も大丈夫だ、心配ないって嘘を言い続けてたお父さんに信用なんてないもん」
「あぁ~~」
項垂れているお父さんを放置して、シュテルのところに向かう。警察の人とあって、事情聴取を受けてから校長先生に挨拶をしにいったり、色々とやっていく。
襲撃から数日。私とシュテルは学校の会議に参加しています。
「え~彼女達は臨時講師として雇い、仕事のない時はクラスに生徒として通うことになっている。まあ、彼女達には戦闘訓練の補佐役だね」
「つまり、普通の授業はしないということですね」
「そうだよ。戦闘訓練は必要ないし、その時は講師側に立ってもらう。
「まあ、それは適任だろうね」
私達は戦闘技術を教えることはしない。だって、日本には正直言って不適合だから。国際免許を習得すれば別だけど、日本国内だけで活動するのなら捕獲をメインにおかないといけない。これが他国から日本は平和ボケしていると言われる一つの原因。お父さんの抑止力が高過ぎるという問題もあるんだけどね。
「この子達なら
「では、その雄英体育祭。私達は障害として立ちはだかっていいですよね? 流石に生徒として参加するのは問題がありますから」
「それでたのむよ。しかし、くれぐれも手加減をしてくれよ」
「もちろんです」
「ああ、それと一つお願いがあるんだよ。というか、これは絶対ね」
ネズミの学園から告げられた内容に私とシュテルは愕然とした。
「マイク、頼むね」
「おうよ。俺に任せておきな!」
「くっくっく、これで今回の体育祭の集客はばっちりさ。国外からもいっぱいきてくれるだろう」
「黒いですよ、校長」
「これでも経営者だからね。集客効果があるところはしっかりとしないとね」
私とシュテルは手を繋ぎあって、不安に震える。ある意味で、ヴァルゼライドさんの修行より無茶ぶりされた。シュテルはともかく、こんなの私には無理だよ。