私立幻想学園   作:黒鉄球

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お待たせしました(?)。とか言っておきながら「東方新記伝」のほうに着手するので少しこちらはお休みです。申し訳ありません


9話 : 昔を思うのは今じゃない

 あと二日。この数字は学園生活支援部(仮)のデッドラインである。今日明日で結果を出さねばならないというこの状況で俺の幼馴染ときたら……。

 

 「お、おはようだぜ……」

 

 「お、おう、隈がくっきりだな魔理沙。何かあったのか」

 

 「お前のせいだろうが!!!お前が珍しく夜中に電話してきたと思ったらあんな事件の話しやがって!」

 

 そう、俺のせい。俺が魔理沙にどっかの一家惨殺事件の詳細を事細かに説明した結果こうなったのである。いや、途中で切ってくれてもよかったんだけどこいつが律儀にも切らないでいたからついつい話してしまったのだ。いうなれば自業自得。俺のせいではない。そう主張したい。因みに霊夢にも話したが「へ~」だと「ふ~ん」だのしか返ってこなかった。レミリアにはてけてけの話をしてやった。多分アイツも隈だらけだな。

 

 「まぁそんな事言わずに。学校行こうぜ。今日はたまたま俺も早起きしたんだしとっとと行かないと勿体ねぇし」

 

 「お前サボるだろうが……」

 

 そんなのは知らん。行くことに意義がある。というわけで俺は魔理沙といつものように登校するのだった。え?霊夢?あいつは何故か先に行くって言ってたからそのまま放置した。

 

 

 

 

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 教室というのは居心地が非常に悪い。今までの俺なら速攻でイヤホンをつけて自分一人の世界へ逃げ込んでいたとこだろう。その点で言えば教室の居心地は良かった。だが今は違う。天と地ほどの差がある。なぜなら……。

 

 【クソ野郎】【女たぶらかし】【社会のごみ】

 

 俺の机に落書きがあったからである。うむ、こんなものがあったらそりゃ居心地もクソもなくなるわ。犯人は分からないが理由は分かる。恐らく昨日のレミリアと咲夜の件だろう。どうやら本気で嫉妬の対象にされてしまったらしい。まぁ別にこんなことで怒りはしないし机拭けばいいだけの話だし。そういや前にもこんなことがあったな。俺でなく俺の知り合いがだが。まぁそこはいい。今は目の前の事をどうにかしなきゃだな。いや、机でなく。

 

 「誰がこんな真似を……劉斗は悪いことしてねぇのに……!」

 

 目の前にいる魔理沙をどうにかしきゃならん。こいつは情に厚いが厚すぎて周りが見えなくなることがある。早い話いい人すぎるのだ。自分に親しい人がこんな目に合えば真っ先に察知してどうにかこうにか解決しようとする。そのお蔭でよく事件に巻き込まれるんだがな。まぁあれだ。魔理沙の怒りを収めるには机そのものをぶっ壊せば済む話だから……。

 

 「はいどーん」

 

 多少の衝撃は被るが折れていない左腕で机を砕いた。周りは勿論何やってんのコイツみたいな驚いた顔をしたがそんなことはどうでもいい。破片も飛び散ったけどどうでもいい。俺の左拳が多少痛むがどうでもいい。今は魔理沙の怒りを鎮めるのが先決。こうして実物そのものを壊してしまえば後は俺が弁償するだけでいい。後は俺が気にしていない態度をとればそれで万事解決。

 

 「魔理沙、俺は気にしてねぇしここには何もなかった。いいな?紫さんには俺から報告しておくから」

 

 「な!で、でもお前はそれで……」

 

 いいんだ、と一言いれて俺は教室を後にした。実際気にはしてない。落書き程度の可愛いものは気に留めるようなものではない。だが魔理沙が悲しい顔をするとこは見たくない。ならば俺が普通にしていればいい。それでいい。そう思っている。だがそうもいかなかった。後ろから、俺の教室から怒号が聞こえたからである。魔理沙……いや、もう一人いるな。明らかに女子の声。……戻るか。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 「誰だこんなことやった奴は!落書きなんてやりやがって!謂れのない事書きやがって!」

 

 こんなにキレたのは久しぶりだ。劉斗の机は今や無残に砕かれ、見る影もないが落書きの断片は見える。私の目に入ってきたのは【社会のごみ】という文字の断片。なんで劉斗がそんな事言われなきゃいけないんだ。あいつはレミリアを助けただけなのに。咲夜からの依頼を受けてレミリアを助けて友達になっただけなのに。それなのになんでこんな……。頭の中はもうぐちゃぐちゃだ。自分でも何を言っているのか理解が出来ない。頭でなく感情で叫んでいる感じだ。でも、その感覚ももう一人の声で吹き飛んだ。

 

 「何よ……これ。なんで劉斗の机が砕かれてるの……なんでそこに【社会のごみ】なんて文字があるの……?………誰よ、誰がこんなこと書いたのよ!」

 

 たった今登校したであろうレミリアがそこにはいた。机の破片、文字、それだけですべてを理解し、怒りを顕わにしているようだった。自分の事の様に。

 

 「正体を現しなさい!誰!?こんなことしたのは!」

 

 レミリアの怒号は怒りそのもの。誰にも止められない。あの咲夜でさえ驚いている。恐らく見たことがなかったのだろう。ここまでに怒ったレミリアを。それの証拠に咲夜は一歩も動けていない。レミリアのお蔭で今私は冷静を取り戻せたがこのままではダメだ。誰かが止めないと多分レミリアは……犯人を殺しかねない。

 

 「あーあ、ほんと誰だろうね。こんなガキじみたことやった奴は。精神年齢7歳なんだろうなぁ。ほんと馬鹿だよな。こんなことで張本人を怒らせ、あわてさせ、楽しもうとしてるやつは」

 

 後ろから声がした。さっき出て言った声だ。まさか……。

 

 「まったく、俺がうぜぇんなら直接言えばいいのに。まぁそんな度胸もないチキン野郎なんだろうな。頭も性格も」

 

 そこには劉斗がいた。いつもの仏頂面で、興味のなさそうな顔で。なんだよ、これじゃあ怒った私たちが馬鹿みたいじゃないか。そんななんにも気にしてないような顔されたら……。そんな感情など知らない劉斗はレミリアの元へと歩いて行き、事もあろうか頭をなで始めた。おい、おいおいおいおい!そんなことしたらさらにエスカレートするだろうが!何考えてんだアイツ!

 

 「レミリア、俺は気にしてねぇしお前らがいるから大丈夫だ」

 

 「でも、こんなのひどいじゃない!」

 

 「それを砕いたのは俺だ。まぁ魔理沙もキレちまったし実物さえなくなりゃそれで済むと思った俺が愚かだった。お前らは優しいからな。俺のために怒ってくれてありがとな。そのせいで涙まで流させちまってんだからな」

 

 頭をなで、人差し指でレミリアの涙を掬い上げる劉斗。その表情は穏やかだった。それと同時に私は見逃さなかった。明らかに顔色を変えた奴らがいたことに。窓際の三人……あいつらか。

 

 「あー、お前ら。一つ言っとくぞ」

 

 私が犯人と思しき奴らのもとへ行くのを阻止するよう劉斗が言葉を発した。

 

 「別に俺の事をうぜぇだのなんだの言うのは構わねぇし思うのも自由だけどさ……こういうのもう止めてくんね?俺のレミリアが泣いちゃうから」

 

 ………今此奴なんて言った!?俺の!?何告白じみたことしてんだ!?空気読めよ!あとなんか胸が痛い!

 

 「てめぇいい加減にしろよ!!!!!」

 

 「はい釣れた♪」

 

 劉斗の言葉に我慢できなかったであろう奴が声を荒げた。うん、私が睨んだ奴らの一人だ。そうか、こいつらを釣るためにわざと……コイツ性格悪いな。

 

 「まったく、まさか三人同時につれるなんて思わなかったぞ。まぁ犯人も分かったことだしこれでお開きってことで。あー、んじゃあとよろしく」

 

 そう、声を荒げた奴のほかに二人が止めようとしたのがいた。コイツ、それを見越してわざと……いや待て、あとよろしく(・・・・・・)って誰に任せる気だ……?

 

 「そこの三人はあとで生徒指導室に来るように。あと、劉斗君は保健室へ行くように!」

 

 いつの間にか藍がそこにいた。それもかなりの般若顔で。そんなことしてると結婚できないぞ。

 

 「あと魔理沙は紫様のところへ行くように!今の事を報告へ行け!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 事が済み、今は二限目。俺はそこそこ久しぶりに屋上でサボっていた。いや、しょうがねぇじゃん。机砕いちまったし。左手地味に痛いし。そういや保健の永琳先生からやべぇこと言われたな。

 

 『次やったら右に響いて完治するの遅れるわよ』

 

 今は無茶すんのやめよう。しかもあの後藍さんが我が子の様に大丈夫かどうか確認しに来たし。まぁ悪い気はしなかったがな。紫さんは……まぁ始末書があるとかで死んだ魚のような眼をしていた。ほんと、マジすんません紫さん。

 

 「……なんであんなことしたの?」

 

 「どぅわっ!?ってなんだ、レミリアか。おいおい、授業は?」

 

 「サボりよ」

 

 「ディオラのおっさんに怒られるだろうが、俺が」

 

 いつの間にか上ってきていたレミリアがそこにはいた。どうやら俺を糾弾しに来たらしい。まぁあんなこと言ったらそうなるよな。キモいもんな。あーあ嫌われた。

 

 「……単純にお前らを冷静にさせるためってのとあとは犯人を煽るため。レミリアにはわりぃことしたな」

 

 実際悪いとは思ってる。「俺の」なんてマジできもい、申し訳ない。

 

 「別にいいわ。わ、悪い気はしなかったもの」

 

 「そ、そうか」

 

 な、なんで照れてんだお前!そんでなんで照れてんだ俺!いや、悪い気はしなかったってのは正直嬉しいけど……急に恥ずかしくなってきた。

 

 「……ありがとね。止めてくれて」

 

 「!…………こちらこそあんがとよ。その、俺なんかのために怒ってくれて」

 

 「当たり前でしょ。私たちは友達なんだから」

 

 ……今日はまぁいい日だな。そう思いながら俺は目を瞑り、そのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 「そんなことがあったのね。どうりであんたの机が無残に砕けてたわけだ」

 

 「まぁだが気にすんな。藍さんと紫さんがこってり絞ってくれてるみたいだから」

 

 時刻は4時ジャスト。放課後である。みんながこの時間まで地獄のような時間を送っていた時俺は夢の中だったがな、レミリアと一緒に。いやぁ、起きたときはマジビビった。クラスでも指折りの美少女が俺の隣で寝てんだもんよ。しかも腕枕状態だったってのが一番びっくり。え、なに?そんなフラグ建てたっけ俺?ってレベルで。レミリアは平常心だったし……まぁ気にしない事にしよう。今は依頼優先だしな。

 

 「それでなんで霊夢とアリスはそんなに人形を抱えてんだよ。なに?もしかしなくても俺も参加する感じ?俺そういうの苦手なんだけど……」

 

 霊夢はどうやら人形作りの手伝いをしていたらしい。朝方いなかったのはそのせいである。お前ら仲良いな…ってそうか、俺が憶えてなかったってだけであいつらはずっと一緒だったのか。まぁそれはどうでもいい。俺はこういった行事はそもそもとして苦手だ。なんかこう……無理。だから俺は脇役でお願いティーチャー!

 

 「え、あんた主役だけど?」

 

 ……は?what did you say?アンタシュヤクナンダケド?あぁ……マジですか?俺主役なん?待ってやめてほんとに止めろ。俺そういうの苦手だって霊夢知ってたよね?だからそんなやってやったぜみたいな顔すんな確信犯。お前は俺を助けてくれると思ってたのに裏切りやがってこの守銭奴が。

 

 「待て、俺は脇役が……」

 

 「人形劇のテーマは白雪姫よ」

 

 「は?俺に姫様やれってのか?冗談だろ?」

 

 コイツ馬鹿だろ。白雪姫の主役は姫様だろうが。こんな野太い姫様に目覚めのキスさせられる王子様マジ可哀想だわ。もうお笑いの域だぞ。

 

 「馬鹿ねぇ。あんたがやるのは王子様役よ。白雪姫はアリス」

 

 コイツ馬鹿ねぇというような冷たい視線を送る霊夢。怖い怖い、怖いからその眼をやめろ。その眼だけで石化しちまう。

 

 「でもそれでいいのかしら?ありきたりすぎない?」

 

 レミリアから意見が出た。レミリア的には少しアレンジを入れようと思ったらしい。まぁありっちゃありだけど……期限的にはアウト。明日が発表で、明日が期限切れの日だ。そんな余裕はない。

 

 「そんな余裕はないわ。明日が本番で、明日が期限一杯なんだもの。もう時間もないし猶予もない。それに白雪姫ならセリフも簡単に覚えられるし人形劇としてもアリスの人見知り直しにも十分よ」

 

 「まぁそういうこった!んじゃあ付け焼刃だろうがなんだろうが必ず明日成功させるぞ!」

 

 魔理沙の掛け声とともに「おー!!」と掛け声をかけた。ここから始まる人形劇の練習。部室を出て、校門を越え、住宅街へ出た。……待て、この方向は見覚えがあるぞ。というか見覚えしかない。そう、俺んちである。

 

 「さぁ、着いたな」

 

 「着いたなじゃねぇよ。なんで俺んちだ。まさかとは思うが俺んちに泊まるとかじゃねぇよな」

 

 俺んちを勝手に練習場にされ、泊まられたら堪ったものではない。そこんとこは分かるよな魔理沙?

 

 「ん?泊まる気満々だが?」

 

 だそうだ。いやふざけんなよ。俺んち親いねぇぞ。お前ら女子だぞ。そんなとこに泊めてもらえるわけねぇだろ。

 

 「ちなみに全員了承は貰ってるから諦めろ劉斗」

 

 …………理性、持つかなぁ。

 

 

 

 

 

 

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 「ぬぅ……レミリア………よもやあの小僧の家へ行くなど…なぜ許したのだ!」

 

 「だってこんなこと初めてでしょう?行かせてあげたいじゃない?それに……」

 

 「なんだ?」

 

 「孫の顔が拝めるかもしれないじゃない♪」

 

 「やはり認めんぞぉぉぉォォォォォォ!!!!!」

 

 

 

 

 

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 「!?」

 

 「ど、どうしたのよ急に」

 

 「いや、なんか悪寒が……」

 

 風邪でも引いたのかと思ったがそういう感じではない。誰かに噂をされたような、殺気を感じ取ったような、そんな感じだ。まぁもう夜だし、寒いからしょうがないか。

 

 「もうすぐで出来ますからもう少しお待ちくださーい」

 

 厨房には咲夜とアリス、ソファーには俺とレミリアと霊夢(眠)、床には魔理沙(眠)がいる。先ほど予行演習をし、今は休憩中。咲夜とアリスがどうしてもというので厨房を任せることにした。アリスはともかく咲夜はメイド長だ。料理の腕前は料亭レベルだと聞く(レミリア談)。非常に楽しみである。俺は返事をしてまた向き直った。

 

 「………………」

 

 「………………」

 

 暇である。いや、本当にやる事なさ過ぎて暇。レミリアなんてうつらうつらしてるし超眠そう。そのまま寝てろ。飯時になったら起こしてやるから。

 

 「……zzz」

 

 「本当に寝やがったよこいつ……肩重いけどまぁいいや……」

 

 と思ったらもう片方も重くなった。言うまでもなく霊夢である。うん、よくないな。実によくない。重いとかじゃなくて俺の理性が。何かで気をそらさなくては………そういえばこんなこと前にもあった気がする。

 

 『…zzz』

 

 『…zzz』

 

 『ちょっ、おもっ……』

 

 『あー!!二人ともズルいですよ!私もそこで寝たいです!!!』

 

 『いや、重いだけなんだけど……ってちょっと待て!なんで前!?乗っかんな!!』

 

 『えへへ………』

 

 「ちょっと、劉斗。早く起きてください。ご飯出来ましたよ」

 

 「……んあ?咲夜?って寝てたのか………わりぃな、すぐ行く」

 

 どうやらいつの間にか寝ていたらしい。何やら懐かしい物を見た気がするが……思い出せん。なんだろうか、まぁいいや。夢なんてそんなもんだろ。頭にあるもやもやを振り払ってダイニングテーブルに向かった。

 

 「どんな夢だったのでしょうか。すごく、楽しそうにしていましたが………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 飯も食い終わり、今は女子陣が風呂にいる。そして俺は自室に向かっている。ふっ、俺レベルになると先読みしてラッキースケベに掛かりにはいかん。自分の部屋こそは安置であり何をしていても文句は言われない謂わば私のワールド、THE WORLD(ザ・ワールド)である!さぁ!思いっきり扉を開けようではないか!!!!

 

 「………え?」

 

 「………なんでいるんすか?アリスさん?」

 

 自室には何故か半裸状態のアリスさんがいた。そこ俺の部屋っすなんで半裸状態でいるんすか誘ってるんすかだとしたら俺は……襲うわけねぇだろ!!!あっっっっっっっぶねぇ!!!!何とか保った俺の理性。そこで俺は一言謝罪を入れて勢いよくドアを閉めた。しばらくするとどうぞ、と声がかかったので入った。そこには顔を真っ赤にしたアリスがいた。それも恨めしそうに。まって不可抗力だろ。つーかここ俺の部屋………。

 

 「…………なんで俺の部屋にいたんだ?お前あいつらと風呂行ったんじゃなかったのか?」

 

 「いえ………実は私、先に入ってて早めに出たんです。それで………」

 

 どうやら早めに風呂に入ってあいつらが入ってきた時に出て、服を物色していたらしい。魔理沙が俺の部屋に連れて行って。あの野郎面倒臭い事態にさせやがって。つーかなんであいつ俺の服の位置知ってんだよ怖えよ。

 

 「……………………」

 

 「……………………」

 

 気まずいにも程がある。あんな豊満ボディ見た後で話なんて出来るわけがない。考えろ、意識を逸らすんだ。煩悩退散させよう。

 

 「あの………少しいい?」

 

 「え、あぁ。なんだ」

 

 煩悩退散を試みている俺に追い打ちをかけるように話しかけるアリス。声のトーンからしてまぁ緊張してるのは分かった。

 

 「武御君は……」

 

 「劉斗でいい」

 

 「………劉斗君は確か小学生の時すごく明るかった記憶があったんだけど……中学校からいなくなってて……今会えたけど、その………」

 

話が見えてきた。どうやらこいつは俺自身の変化に驚いているのだろう。小学生の時は魔理沙と一緒にバカやってたから明るいと言うイメージが付いていたのだろう。しかし今はどうだろう?明るいとは言えない。あの頃より明らかに暗い。人と関わらず、適当にあしらっている。そこに違和感を覚えたのだろう。あの事件を知ってるのは八雲家と博麗家、霧雨家、道具屋の霖兄、その他数名だけだ。だから、アリスが俺の変化に驚いても致し方ない。あの事件と中学時代、この2つの影響でこうなったとしか言えん。まぁ説明することもねぇから察してほしいものだ。

 

 「俺のこういう性格は中学時代からだ。色々あった結果こうなったから気にすんな」

 

 俺の言葉に納得はしていなかった様子だった。だが察したのかこれ以上は聞いてこなかった。俺は少なくとも中学時代のことを話すつもりはない。今はまだ。いや、これからも話さないのだろうけど。今は、これでいい。今は……依頼の事だけに集中しなければならない。

 

 

 

 

 




次回をお楽しみに

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