紫からのスーパーボディブローを食らい魔理沙から受けたところに命中して悶絶していた俺だが昼には復活し、授業を受けそしてついさっきまで紫さんから二時間の説教を食らった挙句帰りが6時40分ごろになり今は帰り道である。あたりは暗くなっており微かに橙色の空が見える程度だ。そろそろ月も上り本格的に「夜」になる。カバンを背負い、両手は学生服のズボンに突っ込み、ただひたすらに帰路を辿っている。その状況に「違和感」を覚えながら。
「…………」
あたりを見渡しても誰もおらず、街灯のみが闇を照らしていた。そこに移る影はなんの変哲もないただの人の影。その事に俺は若干の違和感を覚えた。きっと「あっちの世界」に慣れすぎたのだろう。俺の前には銀色の何かを持った奴、後ろには打撲痕の残った奴がいた。そんな過去を思い返しながらふと中学校生活最後の「あっちの世界」の事を思い出した。あの時は本当に無茶したな。なんせ暴力団相手に単身で乗り込んで潰したんだからな。あの頃の俺は荒れてたなー、今はただのめんどくさがりに成り下がってるけど。
「あいつ……今何やってっかな」
「何一人でぶつくさ言ってんだ?」
背後から聞き覚えのある声が聞こえた。振り向くと金髪ロングの美少女幼馴染である霧雨魔理沙がいた。いきなり声をかけられたからびっくりして胃が飛び出るかと思ったわ。つーか今の聞かれてないよな?
「お前………おつかいか?」
「その帰りだぜ。つーか劉斗は………紫の説教帰りか?」
ニヤニヤしながら尋ねる魔理沙。すげぇ腹立つぶっ飛ばしてぇって言うかお前ら行きは一緒なのに帰り置いてくとか酷くね?まぁ良いけどさ。
「まぁな。お陰で特売行き損なったわ」
まったく苦学生にとっては特売に行けるかどうかは死活問題なのに誰のせいだ!あ、俺でした☆
「ふ〜ん、そっか行き損なったのかぁ。わ・た・し・は行けたけどな」
くっそムカつく………。ムカつくから拳をこめかみにグリグリと押し当ててやった。
「イデデデデデデ!!悪かった!悪かったからそれやめてくれだぜ!!」
物凄い早口で言ってくるところマジで痛いんだろうから止めてやろう。俺の慈悲深さに感謝しやがれ。
「お前……本当に昔から変わんないよな劉斗。子供の時もこうやって茶化しては何かしら罰をくらっったもんな」
「マゾ?」
「ちげぇよ!?」
ただこうやって他愛のない会話をして帰路を辿る。そんな当たり前が今の俺には新鮮に感じた。横で魔理沙がこめかみを抑えながら、俺はそんな魔理沙を見て懐かしさを感じていた。
「ちょっとなんなんですかあなたたちは!?やめ、離して!」
住宅街の十字路、俺たちの進行方向より右から声が聞こえた。声の主は明らかに女性の声、そして何やらただならぬ声色をしていた。これはあまり関わらない方が身のためだな。まぁ横の此奴はそう思ってないみたいだけど。だってもう走ってるしそっち側見てるし。
「何やってんだお前!」
「あぁ?お前こそなんなんだ?俺たちの邪魔すんなよ」
声からしてバツの悪そうな……不良か何かだろう。銀の十字の首飾りに黒のタンクトップ、黒い長ズボンというお前はカラスか何かかと突っ込んでくれと言わんばかりの服装をしていた。状況としては女の子が右腕を男に掴まれている…………明らかに穏やかじゃない。痴漢か強姦かストーカーかナンパかのどれかだろうな。そんなとこに首を突っ込む魔理沙……の後ろにただ立っている俺。相手は一人か。ま、どうでもいいや面倒だし。
「邪魔も何もその子嫌がってるだろ!離してやれよ!」
「てめぇにゃ関係ねえだろ。それとも何か?お前がコイツの代わりに気持ちイイことしてくれんのか?」
「誰がするか!私はお前を咎めに来たんだぜ!」
男に指をさして堂々という魔理沙。どうやらこの御三方は俺の姿が見えてないらしい。暗闇とはいえ街灯あるし見えると思うんだけどなぁ。
「いいねぇそういう気が強ぇ奴好きだぜぇ?」
男の表情がぐしゃりとゲスイ顔に変わった。ゲスを極めた人も真っ青になるくらいに。
「なんせぶっ壊れた瞬間の表情がさいっっっっっっっっっっこうだからな!面白れぇんだよたまんねぇんだよ!気の強ぇ女が俺のテクでぶっ壊れる様を見るのはよぉ!!!」
「!!!!?」
男の言葉には悪意と自分の欲求を乗せてあった。魔理沙はそれに気おされるように2、3歩後ずさった。そら見たことか。お前じゃ荷が重いっての。こういう相手はきちんとぶっ飛ばさなきゃな。言葉じゃ無理だぜ?
「だから…………お前をもらうぜ!!!」
男が先ほどまでつかんでいた腕を離して魔理沙に襲い掛かってきた。距離にして5m。普通なら逃げきれずつかまってズッコンバッコンされるところだが生憎今は俺がいる。友達が襲われるってのに面倒だなって考えるほど腐ってないんだよ。魔理沙の肩をつかんで俺の後方に寄せた。男の顔が一瞬強張ったが余裕で倒せると思ったのだろう。構わず突っ込んできた。俺は右手を構え、瞬時に打ち出した。
「ぶふっ!?」
男は勢いよく飛び、地面に大の字になって気絶した。鼻から血を流し、ピクリとも動かなかった。ちょっと強すぎたかもしんないな。
「あーあやっちった。ま、記憶飛んでんだろ。それよりもあんた大丈夫か?」
俺は5m先の女の子に声をかけた。肩を震わせていたのにはすぐに気が付いた。それを見た魔理沙がその子に駆け寄って「大丈夫だからな」と声をかけていた。落ち着かせることって大事だよね!
「あ、ありがとう…。私、あのまま犯されちゃうんじゃないかって………」
「安心しろよ、コイツ気絶してるし帰りも私たちが送るぜ」
「おいこら魔理沙何勝手に俺を巻き込んでんだよ。まぁいいけどさ」
昔からそうだが魔理沙はいつも俺たちを巻き込んで何かに首を突っ込んでいく。その度にフォローする俺の身にもなって欲しい。小学生の頃に魔理沙が同学年の男子が上級生に苛められているところを見て首を突っ込んだところ今度は魔理沙がいじめの対象になって後にそれを知った霊夢が俺にそのことを伝えに来て俺がそいつらをフルボッコにするということがあった。一人は金的を蹴り上げて、一人はアパート2階から3階にかけて上る階段からタックルで下に落としたっけか。そいつがクッションになったおかげで俺はそこでの怪我はなかった。それで金的野郎にまた遭遇して全力で握りつぶしたっけかな。何をとは言わないけどな。思えばいつも魔理沙が先走ってるな。死に急ぎ野郎の称号を与えたいレベル。
「いいんならなんも言うなよ。さ、いこうぜ」
その言葉に続いて俺は魔理沙の後を追った。その時魔理沙がなにかを決めたことに気づかずに……。
魔理沙「次回何かが動くぞ!」
霊夢「面倒事じゃなければいいんだけど…」
劉斗「もう手遅れじゃね?」