星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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流星のロックマン2・真ベルセルク編開幕ゥッ!


真ベルセルク編・第一話『ファントム・クライシス』
1


 ーーFM星人との戦いから二ヶ月後ーー

 

 ーーコダマタウン・公園ーー

 

「遂に、遂にこの時が来てしまった……!」

 

 予約から二ヶ月待ちとも言われる程の最新型携帯端末、『スターキャリアー』の梱包された箱が今、ボクの目の前にはある。

 

「オイ、スバル。やけに悲観的じゃねぇか」

 

 ロックの声がする。ロックだって、他人事ではないというのに!

 

「ボクがどれだけこの日を憂鬱な気持ちで待っていたか……ロックだって知ってるでしょ?」

 

「まぁ確かに、イヤってほどしってるぜ。最近のオマエ、魘されてたもんな。『スターキャリアーが、スターキャリアーがこっちにやってくる……!』ってよ。中々退屈しなかったぜ。クククッ!」

 

 チクショウ!人の悪夢を娯楽にしやがって!

 

「酷いよロック!ロックもきっと、スターキャリアーの仕様を見たら青ざめると思うからね!?」

 

 まったく、しんじらんないよ!

 

「フン、どうだかな。ところでよ……今のオマエ、他のヤツから見るとかなり危ないヤツじゃねぇか?頭抱えて段ボールの梱包を解いているヤツなんて、サテラポリスを呼ばれても不思議じゃねぇぜ?クククッ!」

 

「グヌヌ……!その余裕も、いつまで続くかな!?」

 

 フン!今からロックが吠え面をかくのが目に浮かぶようだ!

 

「まぁ取り敢えずその箱を開けてみろよ」

 

 ロックの催促に従って、ゆっくりと包みを開けていく。最後の足掻きのように。うう……嫌だなぁ……!

 

「これがスターキャリアー……学校でも話題なんだよね。ちっとも嬉しくないけど!ちっとも嬉しくないけど!」

 

 だって委員長やミソラちゃんも既に代えてるって言うし……仕方ないにしても、未だかつて、これ程ワクワクしない機種変があっただろうか?いや、ない。

 

「スバル……」

 

 何だよもう!哀れむな!チクショウ覚えてろよ!

 

「それで、ソイツはなんなんだ?強力な武器でも買ったのか?」

 

「それならどれだけよかったことか……」

 

「オイオイ……」

 

 ホント、弱体化するためにお金を払うなんて屈辱過ぎるよ……!どうして、どうしてフォーマットされてしまうんだ!

 

「これは新型の携帯端末。いや、電波端末だっけ?以前着けていた『トランサー』をより発展させたモノなんだ……」

 

「普通に便利じゃねぇか。なんだってそんな嫌々なんだ?」

 

 よくぞ、よくぞ聞いてくれたね……!

 

「このこのスターキャリアーに使われているシステムの関係上、既存のバトルカードは入力出来ないんだ。つまり、フルコンプリートしているボクのトランサーがほぼガラパゴス化したってことさ……」

 

 しかも最近の電波技術の発展は電波世界にも影響を及ぼしている。以前の電波世界では基本的にウェーブロードの上を通っていたけど、今は普通に地面の上も通れるようになっている。その辺りの対応がトランサーでは出来ないから、かなりの不便を強いられているんだよね……

 

「あ、あ、あ…………あぁんまぁりだぁぁぁぁぁ!!」

 

 愉悦。これ以上の表現はないだろう。

 

「さて、説明書によると……『スターキャリアーには、最新のエア・ディスプレイが搭載されています。表示させる際は、このように叫んでください……「ブラウズ!」』」

 

 絶望しているロックを尻目に、スターキャリアーの新機能を試してみることにする。というかブラウズって……わざわざ叫ばせるという変態仕様をどうにか出来なかったのだろうか。

 

ーーブォーーーン!

 

「おお~!」

 

 ハエが飛ぶような音を出しながら目の前に現れたのが新機能、エア・ディスプレイだ。これがあるからスターキャリアーの開封は屋外が推奨されている。当たったら痛そうだもん。

 

「説明書によると、『エア・ディスプレイは、手で触ったり、持ち運んだりすることが出来ます』か。どれ、早速……」

 

 へへへ。ちょ~っとお兄さんに触らせてなぁ?大丈夫、ほんのちょっと、さきっちょだけやから。

 ……何やってるんだろう、ボクは。

 

ーーガシッ!

 

「セアァッ!」

 

 天空へ向けてェッ!スパーキング!

 

ーーシュルシュルシュル……

 

 な、投げることも出来るのか……。そして戻ってきた。ブーメラン仕様なんですね。凄い。

 

「こうやって直接操作(攻撃)するんだね。良くできてるなぁ……」

 

 さっきからロックの返答がない。

 

「ロック?大丈夫?」

 

「真っ白に、燃え尽きたぜ……」

 

 まぁ、なんだかんだでカード集めを一番楽しんでたのがロックだし、仕方ないか。しかしここで、更なる絶望を与える!絶望には、鮮度というモノが(以下略)

 

「実はロック、機種変をするとボクたちのステータスも初期化されるんだよね」

 

「」

 

 神は死んだ!いや、ロックが死んだ!

 

「さ、続きを読むよ。ええっと、『パーソナルビューを選択すると、自分の個人情報を映し出すコトが出来ます』だってさ」

 

 ブラウズの画面をタッチして、個人情報を映し出す。一応、一通り入力済みだ。

 

ーーブゥン!

 

「お、映ったよ!見てみてロック!やっぱりHPは100、アイテムの類いもフルリセットだ!ロックの装備もトランサーと連動してたから、今は初期装備かな?ここまでされると清々しいね、まったく」

 

「」

 

 大変!ロックが息してないよ!元々だけど。

 

「続きは……『パーソナルビューは自分で見ることは勿論、個人情報を他人に教える際にも利用出来ます』……つまり名刺みたいなものってことかな?」

 

「」

 

 ダメだ。まだ復帰してない。……もう!

 

「ほらロック!元気だせ!キミはボクの相棒なんでしょ!?」

 

「………………そ、そうだな。それに考えようによっちゃあ、マジなバトルがまた出来るいい機会かもしれねぇ」

 

 よし、それでこそウォーロックだ!

 

「それじゃあ、パーソナルビュー機能を試してみようか?」

 

「おう、そうだな……あそこにいるオンナとか、いいんじゃねぇか?」

 

 ロックが指差したのは、BIGWAVEの側でエア・ディスプレイをいじっている女の人。勿論赤の他人だ。

 そして結構美人だ。

 

ーーゾクッ!

 

 唐突に寒気が。なんだろうか。まぁいいや。

 

「そうだね……すいません!」

 

「あら、こんにちは。どうかしたのかしら?」

 

 結構人当たりもいい。

 

ーーゾクッ!

 

 なんだろう、さっきから。

 

「ええっと、実は……」

 

 ーー少年説明中ーー

 

「なるほど……パーソナルビューを使うのが初めてなのね。いいわ、よろしくね」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

 なるべくニコニコと。初対面とはいえ、美人に嫌われるのはちょっと気が引ける。

 

ーーゾクッ!

 

 もういい加減にしろォッ!

 

「まずは私のパーソナルビューを見てね。頭上に表示されてるでしょ?特に顔の画像が自慢なの!」

 

 唐突な自分語りが始まったぞ……意外と地雷だったのかもしれないね……

 

「確かに、お姉さん結構美人ですからね」

 

「あら、お上手ね。実はここだけの話、このパーソナルビューで何人もの男をメロメロにしてきたんだから!」

 

 す、凄い……!まさに奇跡の一枚ってヤツなんだね。元も良いけど。

 

ーーチクッ!

 

 痛ッ!なんか首筋に針でも刺さったような……いや、特に刺したような跡はない。気のせいか……?

 

「ウフフ、冗談よ。じゃ、キミのパーソナルビューも見せてね!……スバル君か、ちゃんと覚えておくわね」

 

「わぁ、嬉しいですね!こんな美人のお姉さんに顔を覚えてもらえるなんて!」

 

「ちょ、ちょっとスバル君?」

 

「冗談ですよ、冗談」

 

 お姉さんの顔が引きつったような気がした。多分気のせいだろう。

 

「ま、まぁ。こんな感じでお互いのコトを知り合うの。あっ、それから……自分のパーソナルビューを頭上に表示し続けることも出来るわよ!ただし、個人情報のバラ撒きに近いから、あんまりオススメは出来ないわね」

 

「なるほど……ありがとうございました!」

 

「ええ、それじゃ……良い出会いを!」

 

 ホントに良いお姉さんだったな……

 

「なぁスバル。さっきからずっと気になっていたんだが……空に浮いてる、あの妙な物体はなんだ?」

 

 あぁ、そういえば何か浮いてるな……あ、ゴーストクライシス。ということは今日が2のスタートか。

 以前、倉庫でベルセルクを確認しているから、ベルセルクルートで間違いないのはわかってるんだけど……

 

「あれはコマーシャルシップだよ」

 

 空に浮いている、黄色い消しゴムにプロペラを着けたような機体について説明する。

 

「何だそれは?新しい兵器か?」

 

 ロックは鋭いな……

 

「コマーシャルシップの役割は『宣伝』なんだけど、ロックの言う通り情報兵器としては役に立つかも……まぁ、ありえないけどね」

 

 むしろそのまま敵地で落とした方が強いまである。マテリアルウェーブじゃないし。

 

「ふーん、宣伝ねぇ……」

 

「ほら、ああして宣伝したい内容をエア・ディスプレイとして映すのさ。上空なら、色んな人が見れるでしょ?今は……『ホラー映画の傑作、その名もゴーストクライシス!ただいま大ヒット上映中!』だってさ。オバケの映画……結構面白そうじゃない?」

 

 何せゴーストクライシス(危機)だからね。というか、某幽霊退治屋のパクリでは……?いや、今さらか。

 

「ウィルスバスティングの方が楽しくねぇか?早くフォーマットされたライブラリを埋めたいもんだぜ」

 

 ロックがカードコレクターになっていた件について。

 

「まぁまぁ……」

 

「って、オイ。何かおかしくないか?あのコマーシャルシップ……」

 

 そりゃ元々おかしいって。あんな危なそうなモノを住宅街に浮かべるとか、正気の沙汰じゃないよ。

 

「確かに、動きがフラフラしてるね……」

 

ーーバチバチバチ!!

 

 うわっ、バチバチいってる……一応離れておこうかな。

 

「オイオイ、滅茶苦茶動いてるぞ!?」

 

 パーフェクトジオングも真っ青な高機動っぷりを見せつけるコマーシャルシップ。いや、普通に制御不能なだけなんだけどね。

 

「あ、止まった」

 

 止まったというか……

 

「落ちて来るぞ!」

 

 しかし既に範囲外に出ていたので、慌てることなくバックステッポゥ。決まった。

 

ーードォーーーーン!!

 

 やっぱり大質量じゃないか!こんなもん飛ばしてたら苦情が来るに決まってる!

 

「危ない危ない……」

 

「元々範囲外だったじゃねぇか」

 

 塩!

 

「こういうときは、余裕感を出すのがだね……」

 

 ーーざわ……ざわ……

 

 

 野次馬か。

 

「オイ、オレたちも、もっと近くで観察しようぜ。さっきの動きからして、何かいるかもしれねぇしな?」

 

 ニヤリと笑うロック。いいねぇ、楽しくなってきた!

 

「……コマーシャルシップから音声が聞こえてくるね。『ホラー映画の傑作、その名もゴーストクライシス!ただいま大ヒット上映中!』だってさ」

 

「さっき聞いたな、ソレ」

 

 確かに。このまま待てばいいのだろうか。

 

ーーギギギ~~ィ……ホラー映画の傑作……ギギギ~~ィ……その名も……ゴースト……ギギギ~~ィ……クライシス!……ギギギ~~ィ……ただいま……ギギギ~~ィ……大ヒット……ギギギ~~ィ……じょうえい……ギギィ……ギギギ~~ィ……ギギギ~~ィ……

 

 が、頑張れ!あとは『中』だけだぞ!最後まで諦めるな、コマーシャルシップゥゥッ!

 

 ギギギギ~~~~ィィィ!!!

 ギギギギ~~~~ィィィ!!!

 ギギギギ~~~~ィィィ!!!

 

 こ、これは……キツい!

 

『こ、この騒音はまるで……!』

 

『ガラスを引っ掻くような……!発泡スチロールを擦るような……!!』

 

『や、やめてくれ~~!!』

 

 野次馬たちにとってもキツいらしい。喋ってる暇があったら行っちゃえよ!と思ったボクは悪くない。

 

『うわぁ~~~っ!!』

 

 あ、逃げた。だけど……これで!

 

 ギギギギ~~~~ィィィ!!!

 ギギギギ~~~~ィィィ!!!

 ギギギギ~~~~ィィィ!!!

 

「しっかし、これは結構、キツい!」

 

「スバル!もうわかってるな!?」

 

 ああ!元々わかってる!

 

「ウィルス、でしょッ!?ビジライザーをッ!」

 

 カチャッとかけると、コマーシャルシップの周りをウィルスが取り囲んでいるのが確認出来た。こんなの、FM星人よりタチが悪いぞ!

 

「コマーシャルシップが落っこちてきたのも、この騒音も、全部ウィルスのせいだ!バトル、バトルの時間といこうぜェッ!」

 

 ヤバい。ロックがこの縛りプレイに快感を覚え始めている。こんなのは縛りじゃない!踊らされているんだ!メーカーに!露骨に環境テーマを禁止制限しやがって……!って、何の話をしているんだろう。

 今じゃベルセルクも使えない。天地さんにでも、データを移動させて貰わないと……!

 

「オッケェッ!蹴散らすよ、ロック!」

 

「それでこそだ!」

 

 よし、方針は決まった!まずはウェーブホールを……えっと、確か……あった!ラッキー、ウチの庭の側だ。人目に着きにくくなっている。もう、展望台までわざわざ行かなくてもいいんだ!やった、やったぞ……!

 

「それじゃウェーブインだ!」

 

「おう!」

 

 全力疾走タイムだ!

 

「……よし、いくよ!」

 

「さぁ、やっちまうぜ!」

 

 電波変換!星河スバル、オン・エア!

 

 

 

 ーーコダマタウンの電波ーー

 

 おお……!凄い、地面の上にウェーブインしたのは初めてだ!確か、トランサーを使ってた時の電波世界は、地面の上を移動すると通信速度が落ちるとか何とかで、かなりの行動制限がかかってたんだよね。ボクも最近までは……っと、そう考えると機種変も悪くなかったのかも。

 

「地面の上でも、以前のようにスイスイ動けるようになるとはな……電波技術の発展もバカにならないぜ」

 

「確か、ここ最近からなんだよ。大幅なバージョンアップがあったとかで、ウェーブロードのつくりごと変わっちゃったんだよね。でもトランサーを使ってたボクたちはその恩恵に預かれないから、苦しい思いをしてたってワケなんだ」

 

 ホントに酷いと思う。何で三年も使ってたトランサーをすぐにスクラップ扱いに出来るんだ!? ダイゴさんの時代から使ってたっていうのに……やってらんないよ。

 

「なるほどな……だが地面の上か。上等だ、コイツは戦術が広がる予感がするぜ!」

 

 ロックの目がキラキラしてる。確かに三次元的な機動のしにくいウェーブロード上では、ウォーロックアタックの性能を完全に活かしきれているとは言いづらかったもんね。このバージョンアップされた電波世界なら、アクロバットな戦闘も可能かもしれない。楽しみだ。

 三角跳びとかしてみたいし。あと壁キックも。

 

「ああ、それと……ウェーブロードの大部分を、上空……空の上に移動させたんだよね。それで電波の通信距離も飛躍的に向上したとか……」

 

 スカイウェーブのことなんだけどね。

 

「へぇ、オマエ意外と物知りなんだな……」

 

 あのねぇ……

 

「戦場の理解は命に繋がるんだよ?それに、最近はロックだって不便な思いをしてたじゃないか」

 

 FM星人のロックらしくない反応なんだよね。どうしたんだろう。ここ2ヶ月で色んな電波で荒らし回ったからかなぁ?

 確か一時期暴蒼(ライオット・ブルー)とか呼ばれてたような気も……いや、多分気のせいだろう。気のせいだよ。多分。

 

「グヌヌ……いや、悪い。ちょっと無関心過ぎたな、すまねぇ」

 

「ロック、水くさいことはナシだよ!相棒なんだから、さ?」

 

 今更そんなことで一々、目くじらたてたりはしない。煽りには全力で応えるけどね!

 

「ヘヘッ……おうよ!」

 

「よーし、それじゃ行きますかァ!」

 

 とっととデリートしちゃおう!どうせ雑魚しかいないし。新フォルダの肩慣らしに丁度いい……かもね!




この2ヶ月の間に、スバル君たちは割とやらかしてました。なんだよライオット・ブルーって……

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