星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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 ーーコダマタウンーー

 

 や、やっと帰って来れた……。

 今は、ええっと……4時を回った辺りだね。なんかもうドッと疲れたよ……

 

「あっ、委員長だ。ゴン太とキザマロもいる……」

 

 BIGWAVEの付近は拓けているけれど、ベンチ程度の設備もあり待ち合わせや休憩にはもってこいのスペースになっている。

 

「(どうするんだ?疲れてるんだろ?そのまま帰っちまうか?)」

 

 いや、まぁ疲れてるけどさぁ……流石にブラザーをスルーしては帰れないよ……

 

「おーい、委員長……」

 

 若干声に覇気がないのは、仕方ないことだと思いたい。

 

「……スバルくん?」

 

 キョロキョロし出した委員長だけど、ボクの姿を先に捉えたのはキザマロだったようだ。委員長に何事かを告げて、手を振ってくる。委員長もキザマロの言葉を聞いてボクの位置を悟ったらしい。遠慮がちに手を振ってくる。何だか、照れてる?

 

「ご、ごきげんよう、スバルくん」

 

 ブフッ!何だよ改まって!吹いちゃったじゃやいか!

 

「ブフッ……ご、ごきげんよう、委員長」

 

「わ、笑ったわね!ワ、ワタシがあれからどんな気持ちだったか、スバルくんにも教えてやりたいくらいだわ!」

 

 だってさぁ、いきなりまた、ご、ごきげんよう、なんて言われたら吹いちゃうに決まってるじゃないか!

 

「あれからって、百合子さんの時のコト?……お迎えに上がりましたよ、ルナ。みたい感じで、挨拶すれば良かった?アハハ……って、委員長!?」

 

「」

 

 い、委員長が!顔から出る湯気の量がヤバい!冗談だってば!?

 

「委員長!大丈夫ですか!?」

 

「いいんちょう!いいんちょう!?返事をしてくれ、いいんちょぉぉぉぉッ!」

 

 ゴン太の雄叫びを意に介することもなく、委員長のオーバーヒートは止まらない。ど、どうしろって言うんだ!

 

「(コイツはオマエの自業自得だな)」

 

 ロックが訳知り顔で語る。いや、ロックは絶対わかってないだろ!?チクショウ!なら、やってやる!いや、乗りきってみせる!

 

「ほら、委員長。落ち着いて……深呼吸だよ、出来る?」

 

 優しく諭すように委員長の腰を支え、手をとり、耳元で囁く。委員長の体、柔らかいな……

 

「…………スバルくん……?」

 

「深呼吸、深呼吸……」

 

「(スバルくん、ボクたちは一度退散します。多分今ここにいると、後でとばっちりを食らいますから。ほら、ゴン太くんも)」

 

「(お、おう。頼んだぞ、スバル)」

 

「(うん、任せて。あ、ゴン太、今度新しく出来た牛丼屋に行こうよ。そこの牛丼は安くて美味しいって評判なんだって)」

 

「(フッ、このオレがそんな耳寄りなコト、つかんでいないとでも……?)」

 

「(フフッ、そっか。じゃ、来週辺り、どう?)」

 

「(おう!いいぜ。……それじゃあな!)」

 

 こういうやり取りも結構好きだ。ゴン太の牛丼屋サーチは中々侮れないからね。

 そのまま続けると、ようやく委員長も落ち着いてきた。

 

「……………………落ち着いたわ」

 

「良かった……心配したんだよ?」

 

「~~!……わ、悪かった、わね……」

 

 ショボくれた表情の委員長。頬が赤いのはご愛嬌だ。

 

「ボクは気にしてないから。それよりも、笑顔笑顔!もっと明るい委員長が好きだって、ボク前に言ったよ?」

 

 沈んだ顔の委員長なんて、見たくない。やっぱり女の子は笑顔が一番、だよ。

 

「ス、スバルくん……」

 

 何でもっと俯くんだ!?人差し指をツンツンしてもわからないよ……。

 

 ーーゴゴゴゴゴ!!

 

 な、何だ!?って、こっちもズレ込んだのか!?

 

「キャッ!」

 

「わぷっ!?……ちょっと、委員長!?」

 

 抱きついてきたぞ!?ちょっとニヤけてたのは、気のせいだと思いたい……。

 

「これは……やっぱり、天地研究所やヤシブタウンの時と同じ……!」

 

「な、何コレ!?」

 

 ウェーブロードが見える。ということは、あのデンジハボールがまた……っていうかゴン太とキザマロが危ない!?

 

「フ、フンギャーーーッ!!」

 

「や、やめろ!」

 

 キザマロ……叫び方位、もうちょっと頑張ろうよ……

 

「……ゴン太、キザマロ!?」

 

「……うん!急ごう!」

 

 声が聞こえた方向……キザマロの家の前まで急行するボクたち。一緒に行った方が守りやすいってのもあるけどね。

 

「……あっ!」

 

 いた。ジャミンガーが3体。何だ雑魚か……

 

「ゲヒヒ……ノコノコ人間が二人、出てきやがったぜ」

 

 アンタら、笑いかたで見分けてんの?ってくらい統一感がないな……

 

「チクショウ、はなせ!はなせってば!!」

 

 HA☆NA☆SE!流石にゴン太。ネタをわかってる、わけはないか。

 

「た、助けてください~!!」

 

 二人とも屋根の上だから、結構キツそうだ。

 

「委員長、離れてて」

 

「スバルくん!?」

 

 いいの?とばかりにボクの顔を伺う委員長。ええい、袖を掴むな、袖を!

 

「バカ!お前じゃ無理だ!逃げろ!」

 

「誰か大人を呼んできてください~!」

 

 ま、そうなるか、普通は。心配してくれてるんだろうけどね。そこは理解しないと。彼らの優しさだ。

 幸いここはデンジハボールの影響で、ウェーブホールなしでも電波変換出来る。

 

「おうおう!カッコいいじゃねぇか!どうやって守るんだ?あぁん!」

 

 このチンピラジャミンガーめ。その命、神に返しなさい!(753感)

 

「トランスコード!……じゃ、ないね。……ゴホン!電波変換!星河スバル、オン・エア!」

 

 ウェーブホールが無いから、間違えそうになったよ……

 

 ーーコダマタウンのウェーブロードーー

 

「青き戦士、ロックマン参上!ってね。待ってて二人とも。こんなヤツら、一捻りだから!」

 

 ボク、超ノリノリである。

 

「お、お前は……!!一人で数々のFMプラネットの戦士たちを倒してのけた……」

 

「……ロックマン!?そんな、まさか……」

 

「スバルくんが……ロックマンだったなんて……!」

 

 演出(解説)ご苦労!

 

「意外だったかな?」

 

「そ、それはもう……」

 

 キザマロも気づいてなかったのか。疑ってるかな、とは思ってたんだけど。

 

「チィッ!相手がワリィぜ!」

 

 途端、逃げ出す雑魚(ジャミンガー)たち。もうちょっと、やる気見せようや……

 

「ハッ!」

 

 一気に跳び上がり、最小院家の屋根に乗る。ジャミンガーたちは、向かいの牛島家の屋根の上だ。

 

「これでも、食らいな!」

 

 攻撃をする前に、宣言するなんて!戦隊モノの見すぎなんだよッ!放り投げてきた小さめのデンジハボールをロックバスターで撃ち落とし、ジャミンガーどもを睨み付ける。

 

「逃がさないよ、キミたちは!」

 

「チクショウ!!」

 

「待てやコラァッ!」

 

 ロック……それじゃこっちが893だよ。

 よーし、3対1か。ボク、張り切っちゃうぞ!

 

「行くよロック!」

 

「おう!」

 

 スターフォース!

 フハハ!制空権を譲ることの恐ろしさを教えてやる!

 

 

 

 

 

 

 

 

「オ、オレたちといつもつるんでたアイツが……」

 

「ロ、ロックマンだったなんて……」

 

 二人は顔を見合わせて呟いた。未だに信じられなかったのだ。

 

「二人ともーっ!大丈夫ーっ!?」

 

 屋根の下から委員長の声が聞こえる。あんまり慌てていない?……もしかして知っていた?

 

「ええ、大丈夫ですよ~!」

 

 

 

 

 

 

 

「キミたち、ウィルス?ウィルスだよね?ウィルスだな?……首、置いていきなよ」

 

「ヒィィッ!」

 

 ドリフターズ式の恫喝は効いたらしい。

 

「ヒィィッ!お、お前ら、やるぞ!」

 

 お、遂に観念したらしい。

 

「やるよ、ロック」

 

「あ、あぁ……」

 

 ちょっとドリフターズ式はキツかったかな?

 

「ほら、しっかりして!ウェーブバトル、ライドオン!」

 

 しっかし、緊張感ないなぁ……

 

 

 ーー二分後ーー

 

「二分!?僅か二分で俺たち三人を全滅させるなんて…………ウ、ウ、ウギャーーーッ!」

 

 ストフリ乙。大した敵ではなかった。

 

「フゥーーッ!よし、終わり。上からヘビーキャノンゲーだったね」

 

「バトルってこんな一方的なモンだったっけか……?」

 

 ロックが戦いの意義について考えだしたぞ。きっと熱でもあるに違いない。(錯乱)

 

「あ、デンジハボールを破壊しないと……あった!」

 

 出血大サービスだ!(移動がめんどくさいとも言うけれど)行くぞ、マジシャンズ・フリーズ!

 

 ーーバキバキバキ…………パリィン!

 

 砕け散った氷柱と共に四散するデンジハボール。これでやっと終わりか……

 

「よし、ウェーブアウトして戻ろう」

 

 ーーコダマタウン・現実世界ーー

 

「お疲れ様、スバルくん」

 

 まず労いの言葉をかけてくれる委員長。ちょっと、照れるじゃないか……

 

「いやぁ……委員長が応援してくれたお陰だって」

 

 照れ臭さから、つい誤魔化すようなコトを言ってしまった。だって、委員長がマネージャーみたいな雰囲気出してくるんだもん。

 

「そ、そうかしら……?……フフッ」

 

 嬉しそうな委員長。何とか誤魔化せたかな?

 

「ところで二人とも、ケガとかはない?」

 

「…………あ、あぁ。そんなコトよりよ……まさかお前がロックマンだったなんて……何で黙ってたんだよ!」

 

「だって二人とも、口が軽そうだったし……」

 

「「ギクゥーーッ!」」

 

 わかりやすいな。

 

「ま、そんなワケで……」

 

「なぁ、スバル。……前にオレがおかしくなっちまったとき、たすけてくれたのはお前だったのか?アマケンのときも、学校のときも……そうか、そうだったのか」

 

「ロックマンはボクらの中ではちょっとしたヒーローだったんです。それが毎日顔を会わせていたスバルくんだったなんて……ボ、ボク、ちょっと感動してます……」

 

 そんなに大層なモンじゃないんだけどね。

 

「そんなに気にしなくていいのに……」

 

「いや、すまねぇ!ありがとう!そして助かった!」

 

 そう言ってカラカラと笑うゴン太。いいね、こういうの。本当に、いいよね。

 

「なら今度の牛丼屋に行くときは、奢ってもらっちゃおうかな~?」

 

「おう!任せとけ!……それで、その……ス、スバル!オレとブラザーになってくれ!」

 

 ありゃ?そうなるの?

 

「はぁ……」

 

「オレ、ずっとロックマンに憧れていたんだ。オレもロックマンみたいになりたいって、そう思ってて……だから頼む!オレとブラザーになってくれ!……ダメか?」

 

 委員長の方を見る。委員長は無言で自分のトランサーを示してきた。なるほど。ブラザーだからこそ、信用出来ると言い切れるワケか。

 

「うん、いいよ。これからもよろしく」

 

「ホントかぁ!?じゃあ、お前からオトコってヤツを学ばしてもらうぜ!」

 

 大袈裟だなぁ……

 

「いいからいいから。今まで通り、仲良くしていこうって」

 

「へへっ、ま、よろしく頼むぜ!」

 

「うん!」

 

 最後に拳を合わせてブラザーバンドの契約は終了した。男の友情ってヤツだね。

 

「うぅ……ボクもブラザーになりたいですけど……今は恐れ多くてブラザーになんてなれません……けど、いつかは……」

 

「いつかって、今さ。結ぼうよ、ブラザーバンド」

 

「ご、ごめんなさい……もう少し、もう少し勇気が湧いたら……」

 

 ま、しょうがないか。強制するモンでもないし。

 

「フフフッ…………さぁ!アナタたち、行くわよ!」

 

 あ、そうだ。ボクは帰宅途中なんだった。

 

「安心しな、お前のコトは絶対誰にもしゃべらねぇ。オトコとオトコの約束だぜ?コイツは破れねぇよ。……じゃあな!」

 

「失礼します!」

 

 そう言って委員長たちは行ってしまった。

 

「あんまり気を抜くなよ?これからFM星人たちとの戦いにケリをつけなきゃなんねぇんだからな」

 

 わかってるって。

 

「でも、どうやって『絆』まで行くか……アンドロメダも、多分そこにあるんでしょ?」

 

「そうだな……あの天地ってヤツなら何か知ってるんじゃねぇか?」

 

 時刻は午後4時30分……ギリギリかな?

 

「じゃあ、天地さんのところに寄っていくか……」

 

「別に、明日でもいいんだぜ?」

 

「いや、調べなきゃいけないコトとかがあったら、直ぐにはわからないかもしれないよ。だからなるべく今日の内がいいのさ」

 

 さ、人探しミッションも含めると……これは無理だね。

 今日は天地研究所に行ったら一度帰ろう。恐らく、あと一日は余裕があるハズ。というか、ステーションの残骸を直すまではジェミニも探知出来なかったんじゃないかな……?

 

 

 ーー天地研究所・研究室ーー

 

 幸いなコトに、研究室には天地さんの姿があった。用事とかで席を外していたら目も当てられないからね。よかったよ。

 

「こんにちは、天地さん」

 

「どうしたんだい、スバル君?」

 

「実は、宇宙ステーションに此方から通信する方法を探しているんですけど……」

 

 こんな時間にこんな相談をしても眉一つ動かさず真摯な対応をしてくれるのはありがたいよ、本当に。

 

「……うーん、正直それは難しいと言わざるを得ないだろうね……宇宙の、それもどこにあるのかもわからない宇宙ステーションを探し出すなんて、広い海の中からたった一粒の真珠を見つけ出すようなものだ」

 

 実際真珠なんて目じゃないくらい難しいからね……

 

「そうですか……」

 

「確かに目の付け所はいいと思うんだけど……あ、そうだ。たった一つだけ、方法がある……!」

 

「…………………………ゴクリ」

 

 唾を飲むボク。ここは、こうしなくちゃいけない気がしたんだ。

 

「あの事故の後、地球に先輩のステーションの一部が落下してきたのはキミも知っているだろう?」

 

「ええ。確か……ニホン海に落ちたとかなんとか……」

 

「そうだ。もし、その機体の一部を起動させるコトが出来れば……宇宙ステーションにコンタクトがとれるかもしれない」

 

 コンタクト……融合……キモイルカ……ハッ!ボクは一体……!?

 

「それで、その機体の場所はわかるんですか?」

 

「……すまない。その情報を知る人は今のNAXAにはいないんだ。知っているのはただ一人……当時のボクらの上司で、FMプラネットとのブラザー計画最高責任者だった人さ。あの事故の後、事故の調査を担当していたんだが、ある日突然全ての情報と共にNAXAを去って……それ以来音信不通になってしまったんだ」

 

 人探しミッションの場合、大抵は最初の町にいるのはなぜだろう。

 

「それで、少し前にこの近所で見たというウワサを聞いたけど……とはいえ、キミはそんなに頑張らなくても、きっとNAXAが何とかしてくれるよ。NAXAもステーションからの電波をキャッチしているはずだし。NAXAには高性能の電波兵器もある……おっと、これは誰にも言っちゃいけないよ」

 

 それってもしかして、ノイズキャンセラー?

 

「(ケッ、電波兵器だと?そんなモン、アンドロメダにエサをやるようなモンだぜ……!)」

 

「天地さん、その元上司の方の特徴ってわかりますか?」

 

「そんなコト聞いてどうするんだ?」

 

「何かの役に立つかもしれないと思って……」

 

「ハハハ、そうかい……ボクの上司はね、暫く会ってないけど、上品な老紳士だったな」

 

 間違いない。コダマタウンの、あの人だ。(棒)

 

「老紳士……ありがとうございます、天地さん!」

 

「スバル君、色々言ったけどこんな状況だからね。あまりお母さんを心配させてはいけないよ」

 

 そのあかねさんのために、こうして頑張ってるんじゃないか!大吾さんを連れてこないと、あかねさんは本当の意味で立ち直れないんだから。ま、ステーションにはいないんだけどね……

 

「はい、わかってますよ。それじゃ、天地さん、ボクは失礼しますね」

 

「あぁ、気を付けて行くんだよ……」

 

 よし、日も暮れてきたし今日は帰るか……




委員長の安定感。ぶっちゃけミソラちゃんより書きやすいです。

感想・評価が私の魔術回路の本数です。

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