ロクでなし魔術講師と死の支配者   作:売れない画家

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みなさん、こんにちは売れない画家です!

このSSを書き始めた理由は…

はい、単にアインズ様を教師にしたかっただけです!( ゚д゚)




プロローグ

西暦2138年現在、DMMOーRPGという言葉がある。

<Dive Massively Multiplayer Online Role Playing Game>の略称であり、サイバー技術とナノテクノロジーの枠を集結した脳内ナノコンピューター網ーーニューロンナノインターフェイスと専用コンソールとを連結。そうすることで仮想世界で現実にいるかのごとく遊べる、体感型ゲームのことである。つまりはゲーム世界に実際に入り込んだごとく遊べるゲームのことだ。

 

数多開発されたそんなDMMOーRPGの中に、燦然と煌くタイトルがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーYGGDRASIL

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは12年前の2126年に、日本のメーカーが満を持して発売したゲームであった。

ユグドラシルは当時の他のDMMOーRPGと比較しても、「プレイヤーの自由度が異様なほど広い」ゲームだった。

 

広大な世界、膨大な職業、幾らでも弄れそうな外装。

 

そんな日本人のクリエイト魂にニトロをぶち込むような弄りがいこそ、後に外装人気とも言われる現象を生み出す。そうした爆発的な人気を背景に、日本国内においてDMMOーRPGと言えばユグドラシルを指すものだという評価を得るまでになった。

 

 

そんなユグドラシルでもサービス終了まで、あと1時間足らずである。

 

 

爆発的な人気を誇ったゲーム、ユグドラシルの中でも最凶最悪と詠われたギルド「アインズ・ウール・ゴウン」、その正体は全員異業種を扱う社会人プレイヤーであり、最高1500人までの構成が出来るにも関わらずたったの41人でギルド順位9位まで上り詰めた。

 

41人の少数精鋭の伝説は数知れず、有名なもので言えばかつて八ギルド連合および関係ギルドのプレイヤー合わせて1500人というサーバー始まって以来のLv100プレイヤーの大軍がナザリック地下大墳墓の制圧を目指し、1500人、一人残らず全滅させた。

 

そしてユグドラシルに200しかない究極のアイテム、世界級アイテムの全ギルド中最高保有数11個所持している。世界級アイテムと言われパッとしないかもしれないが、世界級アイテムに対抗するには世界級アイテムを使うしか無いのだ。しかも物によっては運営にシステムの一部変更すら要求できるぶっ壊れアイテムである。ちなみに世界級アイテムの所持数は続くギルドで3つであり、アインズ・ウール・ゴウンがどれだけ桁違いかを物語っていた。

 

だがそんな最凶最悪のギルドも、今日で終わり。そして今ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」のギルド長モモンガは、かつて共に戦ったギルドメンバーの一人、ヘロヘロとサービス終了前に会話していた……

 

「いやー、本当におひさーです、モモンガさん」

 

最初に口を開いたのはヘロヘロでアバターは「古き漆黒の粘体」と、スライム種では最強に近い強力な種族だ。

 

「リアルで転職をされて以来ですから、どれぐらいになりますかね?……二年ぐらい前ですかね?」

 

対するギルド長のモモンガは「死の支配者(オーバーロード)」。死者の大魔法使いの最上位者であり死の概念が無い物にも、命が無い物にも等しく"死"を与える超越者である。

 

「あーそれぐらいですねー。うわー、そんなに時間が経っているんだ。」

ヘロヘロの声のトーンはどんどん下がって行く。

「……やばいなぁ。残業ばかりでこのごろ時間の感覚が変なんですよね」

 

「それかなり危ないんじゃないですか?大丈夫ですか?」

モモンガは(顔は動かないが)心配そうに問いかける。

 

「体ですか?超ボロボロですよ。」

「流石に医者にかかるまではいかないですけど、それに近いレベルでヤバいっす。」

 

「うわー」

 

死の支配者ーモモンガは頭を引いてドン引きしている。

 

次第に会話は二人の現実世界の愚痴なって行ったが、いつの間にか社畜のヘロヘロの一方的な愚痴となりモモンガは聞く側になっていた。

 

ふと、ヘロヘロが何かを思い出したように…

 

「そういえば、モモンガさん"アレ"覚えてます?」

 

「ん?"アレ"って何ですか?」

 

モモンガはアレと言われて何か心当たりは無いか考えてみるが、モモンガの思考を遮る様にヘロヘロが喋り始めた。

 

「え〜と、ほらモモンガ様女体化計画!」

 

モモンガは頭にガッツン‼︎と、衝撃を受けたように顔を(動かないが)しかめる。

 

モモンガ様女体化計画ーー通称モモちゃん計画は4年前に、ぶくぶく茶釜の「モモンガくんって女子力高くね?」発言が発端となりギルド中に広まったものである。

 

男プレイヤー共は想像(妄想)を膨らませ「実現させよう!」という声も上がり、ついにペロロンチーノ,ぶくぶく茶釜,タブラ・スマラグディナ,ヘロヘロ,ホワイトブリムが動いた。絵の担当はペロロンチーノとタブラ・スマラグディナ、仕草(プログラム)の担当はヘロヘロ、服の担当はホワイトブリム、そして声の担当は声優のぶくぶく茶釜と、豪華なメンバーが揃った。

 

だが完成まで、何度も巨大な壁にぶち当たった。

 

例えば、ロリ好きなペロロンチーノとギャップ萌えのタブラが妙にロリで気が合いロリキャラになりかけた所を他のメンバーが慌てて止めたり…服が全部メイド服で少しも譲らないホワイトブリムを説得したりと、日常酷判事だったらしい。

 

 

そして、とうとう最高傑作が完成した。

 

 

いざ、みんなでモモンガに頼みに行ったら、いつもは温厚なモモンガが初めて断固反対してボツ案として沈んで行ったらしい。

 

ヘロヘロは楽しそうにその頃の話をする。

 

モモンガはそれを聞いて罪悪感と申し訳無さに心に支配される…

当時は恥ずかしいからと断っていたが、まさか裏で皆がここまで頑張っていたなんて思ってもいなかった。

 

 

そして、モモンガは決心する。

 

 

せめての罪滅ぼしの為に計画に関わったヘロヘロに…

 

「ヘロヘロさん…今なりましょうか?」

 

「……えっ!何に…?」

 

「いえ…その、計画のアバターにです」

 

「良いんですか?っていうか資料ってまだあったけ?」

 

「はい。確かあの時みなさんに頂いた資料はまだ残ってますし…」

 

モモンガはそう言うと自分のアイテムボックスから一つのスクロールを取り出す。

 

ボツ案になったとしても、皆から貰った物なのでちゃんと残しておいたのだ。

だが、アバターのlv100のまま、なおかつ種族も変えずにオリジナルアバターに変える方法など今は一つしか無い。超位魔法《星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)》だけである。

 

この魔法(スキル)は消費した経験値のパーセントに応じただけの数が、選択肢としてランダムに浮かぶシステムになっている。そしてその選択肢から一つ、叶えて貰いたい願いを成就する魔法である。

 

アインズは自分のアイテムボックスから指輪を取り出す。アインズが取り出した指輪は、超々希少レアアイテム、《流れ星の指輪(シューティングスター)》である。これを取り出した時ヘロヘロは「えっ!」っと声を出し、目が付いていたら瞬きを何度も繰り返した事であろう様に驚いている。

 

それもそうであろう、これこそがモモンガが夏のボーナス全てぶち込んでまで当てたガチャアイテムであり、アインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーの中でもこの指輪を持っているのはモモンガとやまいこの二人だけである程に希少なアイテムだ。指輪の効果は超位魔法《星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)》を経験値消費無しに、三度まで使うことが出来る。

 

モモンガは《流れ星の指輪(シューティングスター)》を手に嵌め、上に掲げ…

 

 

「さぁ、指輪よ。I wish!」

 

 

本当は、こんな台詞など吐かなくても起動させることは出来るが自分が苦労して手に入れたアイテムの記念すべき一回目の使用でありモモンガのこだわりもあった。

 

隣ではヘロヘロが「サマになってんな〜」と呟き、それを聞いて少し赤面したが今は最大十個の選択肢にオリジナルアバターにそのまま改変出来る願いがありますように…と願うばかりであった。

 

指輪は主の声に応える様に光りだす。

その光は一言で表すなら神々しく、モモンガ達がいる部屋をより一層明るくする。

下を見ると十メートル以上の魔法陣が展開されており蒼白い光を放ち、発動と共により一層光を強める。

 

そして十の願いが表示される……

 

モモンガは十個の願いを一通り見て、迷わず一番下のを選ぶ。

 

選ばれた願いは……

 

《アバターをノーコストで変化。その後全ステータスを40%アップ、そして自分の得ている種族の最高の物より一つ上の種族がレベルMAXで得られる》というものだった。

 

モモンガは息を飲む…

超位魔法《星に願いを》の200個以上の選択肢はそれなりに覚えていたが、とんでもない大当たりを引いてしまったのだ。

この選択肢はユグドラシルのサービス終了の1ヶ月前に、運営がトチ狂って入れたと思われている。当時それを聞いたプレイヤー共は消費したレベルやスキルを顧みず、ただこの選択肢を当てる為に《星に願いを》を使いまくったそうだ。結局当てたとしてもレベルが常に低いのでステータスも種族もろくに上がらなかったらしい…

 

だが、この選択肢を当てたのはたったの六件。

つまりモモンガが第七件目と成るのだ。

 

そしてモモンガはスクロールを上に翳す。

このスクロールはモモンガの仲間達が睡眠時間をも削って作ったモモちゃん計画の資料であり、ナザリック大墳墓の記憶でもある。

 

それが今、粉々に砕け散り願いが成就される…

 

瞬間、モモンガの周りを神々しい光が包み込み時間と共に四散する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其処に立って居たのは、絶世の美女だった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶世の美女ーーそれ以上に例える言葉をヘロヘロは持ち合わせていない。

 

「…あの、どうですか?」

 

驚愕と感嘆の時間も束の間。

いつも通りの我等がギルド長の声が聞こえヘロヘロはハッとする。

 

「き、綺麗ですよ。モモンガさん!」

 

モモンガの見た目の所為なのか、ついつい喋るのに緊張してしまう。

 

「え〜、そうですかぁ?」

 

対するモモンガは、いじけた声で応じる。

 

(モモンガさん、こういうの嫌いだからなぁ〜)

 

と、ヘロヘロが思って居たらドッ!と何かが押し寄せて来た。

 

睡魔だ。

 

さっきは、モモンガが女体化計画を実行に移してくれる事に驚き睡魔はどっかに飛んで行ったが…

流石にもう限界が近いらしい。

ヘロヘロは残った力を振り絞り、言葉を紡ぐ。

 

「も、モモンガさん…アイテムボックスを確認してみてください…」

 

「あっ、はい。」

 

モモンガはそう言うとコンソールを開きアイテムボックスを確認する。

すると、聖遺物級の欄に見覚えの無いアイテムが入っていた…

 

「"夜空の宝石"っていうんですよ…装備して見たらどうですか?」

 

モモンガはヘロヘロに言われたアイテムをタップする。

 

モモンガを禍々しいオーラや、黒い花弁が包み込む…

 

目を開くと豪華な漆黒のドレスを身に纏っていた。

よく見るとドレスに飾られている宝石がレジェンドアーティファクトだったり、左側には黒い薔薇がある。

 

「えっとー、これって…」

 

「み、皆んなで作った装備です…」

 

素材欄を見たら、限定のゴッドアーティファクトが二つもあった…

 

二つ共、倒したもん勝ちの七つの大罪悪魔シリーズの嫉妬と色欲からドロップするゴッドアーティファクトであり首飾りが"色欲のネックレス"、左側に付いている黒薔薇は"嫉妬の薔薇"である。

 

両方共、耐性系のアーティファクトであり"色欲のネックレス"は炎への完全耐性、"嫉妬の薔薇"は正・光・神聖属性攻撃、エリアでのペナルティを無効する効果だ。

 

「ヘロヘロさん!この二つってユグドラシル内で一個しか手に入らない限定アーティファクトですよ!」

 

モモンガは少し興奮気味に語る。

 

「はい…皆んながモモンガさん専用に作った代物ですから…」

 

「良いんですか?自分なんかが…」

 

「良いんですよ。」

 

「(よ、邪な気持ちの人もいたけど)ゴッドアーティファクトを使う程にみんな熱中しゅてたので…」

 

「へ、ヘロヘロさん?」

 

(もう無理だ、睡魔のせいでうまく喋れない…)

 

「…すいません。もう睡魔がヤバいので…」

 

「あー、お疲れですしね。すぐにアウトして、ゆっくり休んで下さい」

 

「本当にすいません。……モモンガさん。いや、ギルド長はどうされるんですか?」

 

「私はサービス終了の強制ログアウトまで残っていようかと思います。時間はまだありますし、もしかするとまだどなたか戻ってくるかもしれませんから」

 

「そうですか……」

 

ヘロヘロはそう言うと姿勢を正しモモンガに目を合わせる様にする。

モモンガの姿が自分には魅力的すぎる女性でもたじろぐこと無く言葉を続ける……

 

「モモンガさん。今日は本当にありがとうございます。久し振りに仲間に会えて楽しかったです!」

 

「いえいえ、こちらこそ。ヘロヘロさんがそんなに疲れているのに無理言って来て貰ったんですから、お礼は此方からするべきなのに…」

 

「俺達がこのゲームをあれほど楽しめたのはモモンガさんのおかげです。来ない訳がないじゃ無いですか」

 

「ありがとうございます。このんな風に思って頂いてると、何だか照れますね…」

 

話がしぼんで来たのでヘロヘロは悪戯っぽく…

 

「念願のモモンガ様の女体化が観れたので眼福です!明日からまた仕事頑張れますよ!」

 

「あ、あはは……」

 

モモンガは苦笑し、ヘロヘロもクスッと笑う…

 

「それでは改めて、今まで本当にありがとうございました。」

 

「またどこかでお会いしましょう」

 

モモンガの妄想、または幻なのか、ヘロヘロが笑っているように見えたのだ。

 

ーー来てくれたメンバー三人のうちの最後のメンバーが搔き消える。

 

静けさが戻ってくる。

 

モモンガは暇潰しに超位魔法で得たステータスを見てみた…

 

全ステータスが全て今より40%アップしており、特にMPはユグドラシル内の最高の魔力量になってしまっている。

だが、モモンガにとっては今更の話…少し目を見開く、ぐらいで終わってしまった。

 

続いて得られる種族を見る。モモンガは職業レベルを六十ほど取っているが、その中にある職業がある。

 

"エクリプス"

 

ユグドラシル内でもごく少数しか就いていない希少価値の高い職業だ。

そんな職業をモモンガが習得している訳は、彼の強さを無視した、ロールプレイの一環で死霊系統を極めんとして来たお陰である。

強いキャラクターを作ろうとする者には発見出来ない、偏った構成が生んだ偶然…

 

前提条件は死の支配者五レベル、更に死霊系統の魔法職を特化さ過ぎた者だけが辿り着ける死霊系統の最高クラスである。

 

そんな自分に、まだ上が有るとはワールドディザスター以外思いつかなかった。その為か、モモンガの好奇心が唆られる…

 

 

 

 

 

 

一つだけ、有ったのだ……

 

モモンガはその種族を凝視する。

 

 

 

 

 

 

 

「"終焉の女神"?」

 

 

 

(なんだこれ?)

 

モモンガは見た事も聞いた事も無い種族に困惑する。

女神が付く種族は結構知っているのだが…終焉と付く女神は本当に分からないのだ。

 

 

「まぁ、いいや…」

 

そう、幾らモモンガの好奇心を唆る種族でもユグドラシルのサービスは後30分程度で終わってしまう。

モモンガは自分が得た種族よりも、自分達のギルドの象徴に目をやる。

 

 

 

 

ーースタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン

 

 

 

 

 

ギルドの象徴、ギルド武器。七匹の蛇が絡み合った形をしている杖で、口にはそれぞれ違った色の宝石を咥えていた。

 

誰が見ても一級品では収まらない程の一品である。

 

基本、ギルド武器は伝説級アイテム以上であり、世界級アイテムには届か無い。

 

しかし、ギルドアインズ・ウール・ゴウンのギルド武器は世界級に匹敵する。ギルド武器の中では、最高位のギルド武器である。

 

(これ作るのに、よく無茶したよなぁ…)

 

モモンガは思い出に少し浸り、スタッフ・アインズ・ウール・ゴウンに手を伸ばす…

 

「行こうか、ギルドの証よ。」

 

無事に装備され、モモンガは自分のステータスが激的に上がるのをコンソールで確認する。

 

だが、違和感があった。ステータスの下には自分が使えるスキルの個数がいつも載っているのだが、一つ枠欄が多い。

しかも、その枠欄には『ワールドスキル』と表示されていた。

 

モモンガは疑問に思いその枠欄をタップする。

 

 

 

 

終焉之告針(しゅうえんのこくしん)

 

終焉の女神のみが使う事が出来る"終わり"の告針。

 

告針が告げるのは全ての終焉…

 

 

 

今まで語られ続けた物語も……

 

 

 

小さき未来を望む者も……

 

 

 

この世の全てを支配した強者も……

 

 

 

永遠と繰り返される次元も……

 

 

 

不老不死の者にも……

 

 

 

死を知らない原子も……

 

 

 

無限に有るとされる平行世界も……

 

 

 

全てを覆う空間さえも……

 

 

 

 

 

 

 

平等に終焉を与える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を操ってもなお、逃れられない"それ"は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終焉の女神の慈悲と哀しみによって、刻まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世に、悲しみが無くなるように祈りながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(((重っ!!!!!!)))

 

「…はぁ」

 

モモンガは複雑になった気持ちを落ち着かせる為、溜め息をつく。

 

「いやー、運営凝ってるなー」

 

最後の欄には、敵が複数の場合の最大捕捉は星一個分、もしくは"究極の一"と記されている。

しかも、これを食らったら蘇生不可能&120時間に一度使用可能と書いてあった。

 

「これ、ウルベルトさんが欲しがっていた世界を悪魔で覆い尽くす世界級アイテムよりタチ悪いんじゃ…」

 

よく考えてみるとこれは、とんでもない事が起きている事はモモンガも分かっている。

だからこそモモンガは冷静なのかもしれない。

ユグドラシルというゲームは基本的に未知を冒険し、ゲームに隠された未知のマップやダンジョン、アイテムなどを解き明かしたり、手に入れるゲームである。

モモンガが手に入れた『ワールドスキル』も、その未知の一つだろう。

 

気付けばもうサービス終了10分前だった。

 

モモンガは少し急ぎ目に玉座へ向かう。

 

やがて十人以上が手を広げながら降りる事も可能な巨大な階段が、モモンガの前に姿を現す。

 

赤を基調とした絨毯が敷かれている立派なものだ。

 

そんな階段をシンデレラの様に下り、最下層ーーナザリック地下大墳墓第十階層へと到達する。

 

玉座の大門の前に着くと其処に7人のNPCが待機していた。

6人のメイドと1人の執事はメイドの方は一人一人個性のあるメイド服や風貌である。

一方、執事の方は紳士の中の紳士という感じであり、鋼の様な貫禄や彫りの深い顔立ちに皺が目立ち、温厚そうに見えるが獲物を狙う鷹のような目などはモモンガも少し憧れてしまう。

 

7人のNPC達は、まるでモモンガが来たのに気付いた様に頭を下げる。

 

(名前…なんだっけな…)

 

モモンガはコンソールを指を伸ばし、ギルドメンバーのみに許されているページを開く。

 

「確か、そんな名前だったか」

 

モモンガは軽く笑った。

覚えていない事に対する苦笑であり、記憶の片隅から蘇ってきた名前を決めた際の悶着を懐かしむ微笑であった。

 

執事の隣に並んでいるのは戦闘メイド"プレアデス"。先頭に立つ執事セバスチャンの、執事助手の立場にあるメイド達だ。

プレアデスの産親のホワイトブリムはモモンガが今装備している"夜空の宝石"をデザインした人物でもある。

 

「『メイドは俺の全て!』でしたっけ…ホワイトブリムさん……」

 

懐かしいその名を呼び、モモンガは少し満足する……

 

「ギルド長たるもの、NPCを働かせるべきだな」

 

モモンガは内心よしっ!と自分にかけてNPC達に命令を下す。

 

「付き従え」

 

凜とした声があたりに響き、セバスとメイド達は一度頭を下げ、命令を受諾したことを示す。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

玉座の大門は、主人を迎え入れるかのようにゆっくりと開く……

 

「おおぉ……」

 

モモンガですらこの部屋には感嘆のため息が漏れる。

この作り込みは恐らくユグドラシルにおいても一、二を争うスケールだとモモンガは確信している。

 

そんな部屋こそ、最後の時を迎えるに相応しい場所だ。

 

モモンガは足音を全て飲み込むような広大な部屋へと踏み出し、視線を玉座の横に立つ女性NPCへと向けた。

 

モモンガが着ているドレスと対なる純白のドレスを纏った美しい女性だ。

 

(確か、アルベドだっけな…)

 

モモンガの目の前にいる絶世の美女は、モモンガのこの姿をデザインしたメンバーの1人タブラ・スマラグディナである。

ちなみに、守護者統括というNPCの最高の地位にいる。

 

「ここに世界級アイテムがあるのは知っていたが、二つもあるというのは如何なものかな?」

 

「まぁ、良いっか」

 

アインズ・ウール・ゴウンは多数決を重視するギルド。皆で集めた宝を自分勝手に動かして良い筈がない。

しかし今日は最終日。アルベドに渡した仲間の思いも汲むべきだろうと思ったのだ。

 

「特別ですよタブラさん…」

 

モモンガは自分について来たNPC達を待機させ、玉座へ向かう…。

 

歩く度にカツン、カツンという音がしてよく作られてるなぁーとしみじみ思う。

 

モモンガは玉座に座ると、コンソールを開き、目の前にいるアルベドの設定を見る。

すると視界に膨大な文字の洪水が降り注いて来た。一大叙事詩のごとき長大な文章だ。

 

モモンガは顔を引きつりながら、一気にスクロールしていく。

 

長い文章を飛ばし、ようやくたどり着いた最後の文句でモモンガ思考は停止した。

 

 

『ちなみにビッチである。』

 

 

目が点になる。

 

「……え?ナニコレ?」

 

何度も見返すがやはりこの文句しかない。

 

「ビッチって…タブラさん幾らでもこれは…」

 

タブラがギャップ萌えなのは知っているが、NPCの頂点に立つ者が、これではなんというか救われない。

 

「変更した方が良いよね…」

 

モモンガはギルドマスター権限でアルベドの設定を変更する。

 

『モモンガを愛している。』

 

「うわ、恥ずかしい」(もにょもにょ)

 

モモンガは自分の顔を手で覆う。

 

自分の理想の恋人の設定を作って恋愛話を書いたような気恥ずかしさに悶絶するが、モモンガは重大な事に気付く。

 

今の自分の姿は女だという事に…!

 

(ヤバイ…このままだと俺はただの○ズじゃ無いか!)

 

想像して見ると絵面的に完全にアウトである。百合の花が周りに咲きそうだった…

 

モモンガは自分でやっといて、あたふたしているが深呼吸して自分を落ち着かせる。

 

「いやーまぁ男としての俺に惚れて欲しいしぃ〜し。リアルでは男だしぃー!」

 

どう見ても開き直っている様にしか見えないがモモンガは自分でも馬鹿馬鹿しいと思ったのか、ブツブツ言うのをやめた。

 

モモンガはもう一度アルベドを見つめる。

 

常に完璧なボディと微笑がそこにある。

 

もう一度書き換えようとも思ったが、今日でサービス終了だ。

 

今の恥ずかしさもすぐに消えてしまうもの。

 

モモンガはコンソールを閉じ、上を見上げる。

 

そこにはギルドメンバー、一人一人の象徴の旗が飾られておりモモンガはそれらを指刺しながら読む…

 

(※以下略)

 

四十人の仲間達全員の名を挙げるのにさほど時間は掛からなかった。

 

今なお、モモンガの脳裏にしっかり焼きついている。その友人達の名前を。

 

モモンガは疲れたように玉座にもたれ掛かる。

 

あらかじめ用意しといたアラームが鳴る。サービス終了1分前のアラームだ。

 

静けさが辺りを支配している中、モモンガは頭のランプが付いた様に閃く。

 

どうせ終わるなら自らの手で終わらせようと思い、丁度いいスキルが有るのに気付く。

 

 

ワールドスキル『終焉之告針(しゅうえんのこくしん)

 

 

終焉の女神という種族に付いたから貰えたスキルだとモモンガは確信している。

 

モモンガの仮定ではあるが、この種族はもしかして"エクリプス"がワールドディザスターを獲得したら得られるのでは無いかと考えているのだ。

 

実際、モモンガの様に何かに偏った構成をしているアバターも沢山ある。運営が種族や職業が一つに偏った人がワールドチャンピオンになった時に用意した物かも知れない。もしこれが本当なら、改めて超位魔法《星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)》はえげつないと認識するしかなくなってしまう。

 

モモンガが思いついたのは告針をサービス終了12秒前になったら発動し刻み始め00:00時になったら発動する仕組みなのだ。

 

モモンガはすぐさま作業に取り掛かりいつでも発動出来るようにする。

 

12秒前……

 

時間停止した時の練習が実を結んだのか、モモンガはほぼピッタリ12秒前に発動させる事が出来た。

 

 

23:59:48

 

 

発動と共に広大な効果音が鳴るが、肝心の告針を見る事が出来ない。

 

すると、モモンガの左下に小さな画面が浮かび上り、告針を映す。

 

それは星一つを覆う程の巨大な時計であった。直径5000kmは有るだろう告針の針は1秒ごとに終焉への時を刻む。

 

 

23:59:49

 

 

23:59:50

 

 

23:59:51

 

 

23:59:52

 

 

23:59:53

 

 

23:59:54

 

 

23:59:55

 

 

23:59:56

 

 

23:59:57

 

 

23:59:58

 

 

23:59:59

 

「そうだ、楽しかったんだ……」

 

 

00:00:00

 

サービス終了の所為なのか、またはモモンガの告針の所為なのかはわからないが画面が白く塗り潰される。

 

 

200以上の世界を持ちながら9つまで怪物に喰い減らされた世界樹ユグドラシル……

 

 

数多の伝説が残された世界樹は今終わりを迎える……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終焉の女神と共に……

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「……えっ」

 

モモンガが目を開くと、そこは辺り一面森だった。

 

急にバサバサッ!と飛び立つ鳥達に少しビクッとなるがひとまず現状を把握しなければならない状態だった。

 

「さ、サーバーダウンが延期になった?」

 

可能性としてはあり得なくは無い。

 

「焦りは禁物でしたよね……ぷにっと萌えさん…」

 

モモンガは此処にはいない友に語りかけるように呟く。

 

だが違和感がさっきから半端ない。胸元がなんか落ち着かない感じがするし、髪もまた同様。

そして一番問題のある所に直面する……

 

そう、声だ!

 

さっきから、高い女性の声しか出ないし、体も膨らみがあり馴染まない。と言うか馴染めない!

モモンガはアイテムボックスから鏡を取ろうとしたら手がまるで空間に沈むように中に入る。

 

自分が何を使いたいか思い浮かべるだけでそのアイテムが取り出せるのだ。

 

そして2メートルの豪華な鏡を取り出し、自分の前に置く。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「…マジか……」

 

なんとなく、自分でも予想はしてみてたが当たってしまった事にショックを受けてしまう。しかも風や花の匂いなども感じ取れる。

 

しばらく現実逃避中……

 

(と、取り敢えず気分転換に散歩でも……)

 

そう言うとモモンガは一歩踏み出す。

 

 

この一歩は、異世界への始めの一歩であり、最悪な一歩でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

モモンガは自分がヒールを履いている事を忘れ……

 

 

ヒールの踵が木の根元に引っかかり、顔からダイビングするのであった。

 

 

 

 

 




最悪の一歩(物理)でしたねw


皆さんお気づきだと思いますがオリジナルのスキルや種族やアイテムを追加しています。

オリジナル物の説明は出来るだけ本編で書きたいのですが忘れてしまった場合は、感想欄で質問して頂けると幸いです。

最初のプロローグはオーバーロード寄りでしたが、次回からちゃんとアカシックレコードに入るので……




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