幻想殺しと電脳少女のボンゴレ生活   作:軍曹(K-6)

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第七十七話 殻を脱いだ神上の統魔

「さぁ、そろそろ登場してくれますか? 愚かな真打ち」

「―――なぁ、さっきから誰に断り入れて俺の事愚かっつってんの? 俺の事を愚かっつっても良いのは後にも先にも忍野扇ただ一人しかいないんだけど」

 

「・・・誰だ?」

「影組最高幹部の一人ですよ。雰囲気が真っ黒な少女、マスターと似たような体術を使い彼よりも拳の威力は高い。まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そんな風ですけど」

「たまにボスでも負けるぐらい強い」

「・・・マジか」

 

「ヌフフ。・・・少しばかり雰囲気が変わったようですが。出来ればあなたと直接戦いたくはないんですがねぇ・・・」

「知ってるさ。俺も直接拳をぶつけ合ったらつまらない戦いになるのは知ってる。だから()()()()()()()()()()戦ってるから安心しろ」

 

ツナはそう言うと、ゆっくりとその歩を進めて行く。右手の甲に出現した蠅王紋を基点にし、身体中にエネルギーが流れていく。それをハッキリと表すように刺青のような者が刻まれると同時、沢田綱吉が崩れていく、今まで沢田綱吉という殻で縛り付けていた化け物が姿を現した。

 

「『OK。レッツパーリィィィィィィィィィ!!』」

 

そこにいたのは上条当麻その人だった。四方八方に跳ねまくった寝癖だらけの黒髪に、楽しそうに歪められた目と口。一番慣れ親しんだ、手加減も本気も最も調整がしやすい肉体だった。

 

「さぁ、お前の罪を数えろ」

「ヌフフ。数えるほどありませんね」

「数え切れないほどある。の間違いだろ。クソガキ」

「あなたの方がよっぽどガキじゃあないですか」

「Dのヤツ、嵐と雷のボンゴレギアを同時に!」

「行くぞ―――連続・普通のパンチ」

 

上条が放った拳は拳圧で風を生み出し、投げられたダイナマイトを弾き返した。それだけでも驚くべき事だが、リボーン達は慣れてしまっているため、特に何も言う事は無かった。

 

「さーてD。お前には色々と借りがあったなぁ?」

「おやおや。あんな幼少期の事まで覚えているんですか。私の計画の邪魔をしてくれたあの日の事を」

「・・・まさか!」

「そう、そのまさかですよ。炎真、君の両親と妹を殺すはずだったあの日の事です」

「・・・キサマッ」

「真美ッ」

「は、ハイッ!」

「邪魔するな。オレはコイツを潰す」

「は、はぃぃぃ」

 

上条が放った威圧で、真美はその場にへたり込む。上条はそのまま鋭く細められた眼で、Dを睨んだ。

 

「おぉ、怖い。『潰す』言ってくれるじゃあありませんか。わざわざ枷をつけて挑みにくる理由が君にはあると?」

「そっちの方が、俺が満足出来る可能性も上がるし、お前だって勝てる可能性が万が一にでも出来るかもしれないだろ? 俺はそう言うギリギリの闘いがしたいんだ」

「ヌフフ。強くなりすぎた故の悩みというやつですか。面白くない。全くもって面白くない。君という人間はとてつもなくつまらない人間です!」

「良いんだよ他人にどう思われようと! 俺は俺の道、“我道”を行くって決めてんだ!」

 

上条は息を軽く吸うとその眼の色を変える。文字通り変えたわけではないが、車のギアを変えたという言い方が適切だろうか。

 

「なぁ、一つだけ聞かせろ」

「?」

「お前、本当にボンゴレが嫌いなのか? 違うよな。お前が嫌いなのは穏健派だ。何故だ。ボンゴレは元々自警団だろ!? どうして、街の皆を守る組織が、世界中の裏社会を牛耳るような首領に変わっちまったんだよ! どうしてお前は、一世に弓引く必要があったんだ!」

 

『(ご主人の説教キタコレ―――! ろ、録画機器録画機器・・・)』

「はい」

『おぉ、流石なじみさん』

「いやいや、ぼくも気になるからね。この世界で生きる人間とは異なる摂理で生きてきた、彼が放つ説教が」

 

「私とて、最初から一世に反旗を翻していたわけではない。私も、そしてエレナも。あの頃のボンゴレファミリーを何より愛していたのだから」

「それじゃあ、なんで!」

「・・・私は貴族だった。だが、堕落した貴族達に嫌気がさし、地位は泣くとも優秀な人間が社会の中心にあるべきだと考えていた。そんな私の考えに共感してくれたのが、公爵の娘エレナだ。彼女は太陽のように微笑み私を癒やした―――

 

 

 

―――エレナの望み通り、ボンゴレは弱き者達に平和をもたらしたのだ」

「・・・そん」

「ふざけるんじゃねぇぞ!!」

「「「「!!」」」」

「弱き者達に平和? 力を振るって強者弱者関係なく弾圧する事がか?! 良いか、良く考えろ、今のボンゴレがなんなのかを!」

「・・・マフィアだ」

「そうだ。それも、裏社会のトップに立つ幾重の業を背負っている・・・な。そんなお前等はD・・・お前が嫌っていた貴族達と同じだよ」

「なッ!」

 

上条の言葉にDは眼を見開く。そして足を止めていた。

 

「弱者の事は微塵も考えず、自身の保身のためえに力を振るう。そうなるのが肥大化した組織の辿る未来だ。自分達が力を持っているものだから、力を持たないものを虐げる。弱者を踏みつけ豪遊する。D、アンタが嫌っていた貴族を、アンタがその手で作り上げたんだ!」

「そんなはずが無いッ!」

「今のボンゴレを見たらきっとエレナさんは哀しむぜ。弱者に平和なんかありゃしない。リボーンが言ったな。泣く子も黙るボンゴレだと。黙るんじゃない。黙らせるんだ。拳銃やナイフで脅して、黙らなければ殺す。それがマフィアだ。それが血に塗れた力というものだ」

「戯れ言を!」

「現実を見ろ! アンタも、結局は堕落してるんだ。権力という力に溺れ、正しいものが見えなくなってるんだ」

「沢田・・・綱吉・・・。貴様・・・」

「エレナさんが言っていたボンゴレは、マフィアを目指せば絶対にたどり着けない道だ。やるなら皇帝陛下にでもならなきゃ無理な事。綺麗事さ」

「き、キサマァ!!」

「それでも、出来る事はあったはずだ。力で虐げるんじゃなく、優しさで包み込む事ぐらいは出来たはずだ。それを怠ったD、お前は目的を間違えたんだよ」

「貴様にエレナの何が分かるッ」

「何も分かるわけがないだろっ!」

 

Dの攻撃を真正面から受け、右手を振り抜きかき消した上条は歩き出す。

 

 

「ただ、これだけは言える、アンタが覚えていてくれた事、自分のために生きていてくれた事には感謝してる。だけど、間違った方向に導いた事には怒ってると思うぜ。なにせ、望みを叶えてはくれなかったんだからな」

「え、エレ・・・ナ・・・。そん・・・な。嘘だっ」

「信じたくないのは分かる。でも、それが現実だッ!」

「ヌオオ!!」

 

地面を蹴って跳びだしたDに、上条も走り出して接近する。

 

「いいぜ! テメェが、自分の間違いに気付かないフリをし続け、これ以上間違いを犯し続けるって言うんなら―――」

「殺すっ!」

 

 

 

「―――まずはその幻想をぶち殺す!」

 

力を最大限抑えた上条の拳が、Dの顔面に叩き込まれた。甲高い破壊音を響かせ、Dと骸の身体の結びつきが剥がれ、Dの精神が地面に投げ出された。

 

「ガハッ!」

「・・・・・・D」

「沢田綱吉。私は初めから、勝つ気は無かった・・・。ただ、不安だったのだ。エレナが、私の作ったボンゴレを見て、何と言うか・・・怖かったんだと思います・・・。なるほど、怒っている。当を得ている」

「怒られてこい」

「そうします。お前のやり方を見せてもらうましょうか、沢田綱吉。ただし、名を汚すような事があれば許しませんよ。エレナの愛したボンゴレなのだから」




キリが良い気がしたので一時更新を停止して、ため書きをしようと思います。

次再開する時はため書きを一気に消費する。そんな感じになると思います。

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