幻想殺しと電脳少女のボンゴレ生活   作:軍曹(K-6)

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第七十二話 継承式

―――継承式当日。

 

「すごいな・・・。城を一つ貸し切りか」

「マジでマフィアって感じだな」

「ったりめーだろ! 十代目の継承式だぞ!」

「・・・ボス、大丈夫?」

「うん、人混みに当たった・・・」

「情けないよ綱吉」

「・・・もう少し多くを想像しておけば・・・、こんな事には・・・」

 

どうやら暫くツナは使い物にならなさそうだ。

 

「・・・ふぅ」

「大丈夫っスか?」

「無理・・・帰る・・・」

「元気か、弟分!」

「ディーノ・・・さん・・・。うっぷ」

「大丈夫か!?」

「人に酔いまして・・・」

「あー・・・。でもまさか、こんなに早くこの日が来ちまうとはな。兄貴分としても鼻が高いぜ!」

「は・・・はは・・・」

 

ディーノの優しさでツナが少し回復していた。

 

ゔお゙ぉい!!

「」

「久しぶりでもねぇかあ!! カス共ォ!!」

「久しぶりか? 沢田綱吉」

「いや、聞かれても・・・困るんだけど」

 

XANXUSに軽く殴られてツナの酔いは完全に冷める。

 

「ふぅ・・・」

「おいゴラ!! 舐めてんのか? クソガキ!! シモンファミリーなんざ聞いたことがねぇ!! ここは青っ白いガキの来る場所じゃねーぞ!」

「我々もちゃんと招待状を貰っている!」

「だとぉ!?」

「そう、彼等もちゃんとした招待客。俺の友達に無礼を働かないでくれるかな? オッサン」

「ッ! ボンゴレ・・・十代目・・・」

「どっかに行け。それで見逃してやる」

「チッ!」

 

ツナの本気の目に、彼等は踵を返して去って行く。

 

「大丈夫?」

「うん」

「弱小だからって酷いよねぇ・・・。というか、真美ちゃんよく耐えたね」

「まぁね。ここで暴れておに・・・ツナ兄の晴れ舞台を邪魔するわけにはいかないから。ね、炎・・・お兄ちゃん」

「うん。ツナ君の邪魔は出来ないよ」

「そっか。ありがとう」(するくせに)

「ごめんね」

「気にしないよ」

 

 

そして、準備が整い、各国のマフィアが揃った式場の扉が開いて、ツナの守護者が入ってきた。

ある程度で一列に並ぶと、三人三人で分かれて立つ。その間を通り抜けて、額に死ぬ気の炎を灯したツナが、周りに立つマフィアに目も向けずまっすぐに、ゆっくりと九代目に向かって歩いていく。その堂々たる雰囲気は、Ⅰ世(プリーモ)の再来と言われるツナが、本当にボンゴレⅠ世に見えるぐらいだ。

ツナに続いてそれぞれの守護者も歩き出す。初代守護者に似ていると、未来で言われた彼等の姿は、まるで初代ボンゴレファミリーがもう一度継承を行うようだった。

 

(・・・ツナ君)

(お兄ちゃんカッコイイ・・・!)

 

「これより、Ⅰ世の時代より受け継がれしボンゴレボスの証である小瓶を、ボンゴレⅨ世(ノーノ)より、ボンゴレⅩ世(デーチモ)へ継承する」

 

座布団のような物に乗せられて、箱が黒服に運ばれてくる。

 

(あの中に罪が・・・? ・・・・・・入ってないね。あの中にあるのは偽物の罪。か)

「では・・・継承を」

 

九代目の手に箱が渡り、その中に入った小瓶と、その血が観衆の前に現われる。

 

「受け継いで貰うよⅩ世」

 

その瞬間、甲高い音が響く。ツナが身につけているヘッドフォンからは、ノイズキャンセラーが流れ始めた。

音波兵器のような物で、人の耳を使い物にならなくし、辺りの無機物を爆発する物。それが何か分からなかったが、とりあえずツナは行動に移る。神々の義眼で辺りを見渡したツナに映ったのは、

 

【ツナ君に“(これ)”は背負わせられない】

 

という、炎真の心の一文だけだった。

音がやんで、煙幕も晴れたところで、ツナは目を元に戻す。

 

「大丈夫ですか、九代目」

「なあに、この程度。かすり傷じゃよ。建物を完全封鎖せよ! 何人も逃がすな!」

「封鎖、完了しました。監視カメラの録画映像の分析を始めます」

「犯人の割り出しには五分とかからないでしょう」

「ボンゴレスゲー・・・」

「しかし綱吉君。君は本当にⅠ世に似ているんだね」

「はい?」

「入ってきた時そう思っただけじゃ」

「はぁ・・・」

 

九代目のほんわかした空気に、ツナも飲まれそうになる。

 

「九代目! 大変です!! 金庫が・・・破られています!!」

「なに!?」

(大地の七属性スゲーな。大空に打ち勝つとか。ま、俺の大宇宙は一属性で十四属性に勝つけど)

「ありえん!! 七属性のシールドはどうした!?」

「破られたようです!!」

 

その後、使用者の手から銃が逃げ出し空中分解したり、氷が跳んできて、雷のシールドを貫いたりしたが、ツナはとりあえず気にしてはいなかった。

 

「七属性の炎で守るなど、“罪”の場所を教えているようなもの」

「!!」

「奴らは・・・」

「シモン」

「炎真君・・・」

「“罪”は返してもらうよ。この血は僕らシモンファミリーの物だから」

「え?」

「はあ?」

「なっ」

「どういう事だ?」

「わからん・・・・・・」

「初代シモンの血なんじゃないの? “罪”っていうのは」

 

ツナの推測にボンゴレ側が驚いてツナの方を見る。

 

「どうしても必要な物だったんだ。力を取り戻して、ボンゴレに復讐をするために」

 

そこから怒涛の炎真達によるボンゴレⅠ世の糾弾が始まった。ツナの方をなるべく見ようとしない炎真だったが、最後の最後でツナの方を向いた。

 

「どうだいツナ君、君の体には裏切り者のボンゴレの血が流れているんだ」

「なっ。てめー、なんてことを!」

「ボンゴレの血が流れているのは否定しない」

「「「「!!」」」」

「過去にボンゴレファミリーとシモンファミリーの間に起きたことは、タイムマシンでもない限り確かめる術はない。絶対無いとは言い切れない・・・だが、それでも俺の魂をかけて言えることが一つだけある。ボンゴレⅠ世はそんな事をする男じゃない!!」

「「!!」」

「兄弟ファミリーを囮に使うなんてことは愚か、助けに行かないなんてことは絶対にしない!!」

「ふざけたことを!! まるであったことがあるかのような物言いだな!!」

「嫌というほど会ってるよ、どれだけ拒絶しても俺の夢の中で自分の武勇伝を聞かせてくるクソジジイにな!!」

 

ツナのその一言でその場が凍った。そうとしか言い表せなかった。


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