幻想殺しと電脳少女のボンゴレ生活 作:軍曹(K-6)
第六十九話 至門中学の転校生
ある日の朝。
「ツっ君、今日は楽しみね~。集団転校生が来るんでしょ?」
「シューダンテンコーセイって何? どんな味なの?」
「食べ物じゃねーよ、ランボ」
「ほら、ちょっと前に地震があったでしょ? また地震が起きるかもしれない場所に住んでいる子ども達は、安心して学校に通えなくて困ってるのよ。そこで、並盛町みたいな地震が起きにくい土地に、みんなで一緒に転校してくるの」
「ふーんっ。あ、そ―――っ」
「説明求めといて途中から聞いてないな、ランボ!」
ツナはとりあえず支度をすませると、声をかけて家を出る。
その通学路の途中で、見慣れない制服を着た生徒を見かけた。
(至門中学・・・だったっけ? なんでシモンなんだろーなー。アーデルいるし・・・)「君子危うきに近寄らず。また、触らぬ神に祟りなしともいう」
「自分から話しかけろ、ダメツナ」
「久しぶりに言われたなぁ、それ。・・・で? 学校にお前が来たって事は厄介ごと?」
「違ぇ。こいつがボンゴレ九代目からこいつが届いた。ボンゴレファミリー、継承式開催の通知だ」
「継承式? 一応聞いておく・・・・・・・・・誰の?」
「決まってんだろ。お前が正式に十代目ボンゴレボスの座を九代目から引き継ぐ式典だ。世界中のマフィアが盛大に集うぞ」
「やっぱりぃ? 俺がぁ?」
―――教室。
「任せてください! もし転校生の中に十代目になめた口聞くよーな奴がいたら、十代目の右腕、この獄寺隼人がシメてやります! 腕が鳴るぜ」
「いやいやいや。んな事しなくて良いから」
「俺は転校生、すんげー楽しみだけどなっ」
「あぁ?」
「おはよう武」
「野球好きで野球部入るやつがいつかも知んねーだろ?」
「野球のことしか考えられねーのか、オメーは!」
「私も楽しみだな♪ 友達になれると良いよね」
「あ、うん。そだね」
ツナは簡素に答えると、そのまま精神世界に潜っていく。
「えぇ、知っての通り今日から我が校に八人の至門中学の生徒が授業を受けに来るが、我がクラスには二人編入することになった、仲良くするように。では、自己紹介して貰おうか。入りたまえ、古里君と・・・シッ・・・シッと・・・・・・ん~?」
お爺ちゃん先生がもう一人の転校生の名前に何故か苦戦する中、教室の外から手が伸びてきて言葉を制止する。
「マイ・ネーム・イズ、
「ほあ?」
(何してはるん。しとぴっちゃん・・・)
「なっ」
「トクギはハッコー」
「八個!?」
「「発光!?」」
「発酵!?」
「コウブツ、ピッ・プププ・ピ―――ッ・・・ブツッ」
「方言かしら・・・」
「フランス語かも・・・」
「・・・・・・シグナル!?」
(いや、ほん。何してはるん。あ、何かに気付いた顔してるね、不思議大好き隼人・・・。何書いてんの・・・・・・)
ツナは自分の守護者と、友人の守護者にため息をついた。
「シット君・・・ご、ご苦労さん。え~、では次君の自己紹介だ・・・」
「・・・・・・。古里・・・炎真・・・」
「ん? 聞こえないよ、もう一度」
「・・・こざと・・・えんま・・・」
「声が小さい!! もう一度!!」
「先生もう耳が遠いんじゃないですかぁ?」
「何だとぉ!? 誰だ。今の言ったの! こらっ笑うな!!」
その場を誤魔化して、一人ほくそ笑むツナだった。
―――帰り道。
「リボーンのやつ、学校に着いてきたくせに帰りは着いてこねーのかよ」
「金出せオラァ!!」
「・・・カツアゲ?」
曲がり角の向こうからそういった風な脅し文句が聞こえてきた。普段のツナなら面白そうだからという理由で絡んでいただろう。金を巻き上げる不良から逆に金を奪い去るという絡み方で。
だが、それはドスがきいてはいるが少女の声だったので、ツナは『スケバン?』などと考えながら曲がり角の向こうを覗く。
そこには―――
明らかに不良といった風貌の並中生が、至門中の制服を着た少女に踏みつけられ、立ち上がることもままならない状態で、必死に抵抗していた。
そばには、どこか諦めたような目で遠くを見る古里炎真の姿もあった。
「・・・・・・何やってんの? 真美ちゃん・・・」
「え!? お兄ちゃん!!」
「グフッ!」
ツナが声をかけた途端、勢い良く振り返り目を輝かせて彼の腹部にダイビングヘッドした少女を、彼は許さないと決めた。
「ゲッ! あれ2-Aのダメツナだ!」
「お兄ちゃんってどういう・・・グエッ!!」
真美が左手を不良生徒に向けただけで、彼等の体は再度地面に埋まる。
「ガッ・・・!」
「しに・・・たくない・・・」
「あなた達・・・私のお兄ちゃんに何だって・・・? 炎兄をカツアゲするだけじゃ飽き足らず、お兄ちゃんをダメ呼ばわり!? ぶっ殺す!!」
「わー、俺殺すとか言っちゃう女の子は嫌いだなー(棒)」
「あれ? 私何か言った?」
「あっはは・・・。俺から嫌われたくないから発言を揉み消したよこの子。どんだけ好かれてんの俺」
「・・・少なくても、部屋中写真だらけになるぐらいには・・・」
真美から少し離れた所で、棒読みでぶつぶつ言っていたツナに、そんな言葉が炎真から投げかけられた。
「それって
「少なくとも真美がいる間は部屋に入ることも出来ないよ」
「OH・・・ヤバいやつぅ」
「お兄ちゃん! あの人達私にお金渡していった!」
(真美ちゃん君中学一年生だよね!? どうしてそんな怖いことになってるの!? ちょっと前まで可愛らしい女の子だったのに!)
(多分、ツナ君に会えたから・・・)
(炎真?! お前、直接脳内に!?)
「と、とりあえず・・・うちくる? 炎真君ボロボロだし・・・」
「あ・・・、う「うんっ! 行く行く!」
「あー・・・じゃあ案内するよ・・・」
―――沢田家。
「ツっ君。よかったじゃなーい。新しい友達が出来て」
「あ、うん」
「不束者ですがよろしくお願いします」
「よろしくね~」
「真美ちゃん! 三つ指立てて挨拶しない! 母さんも母さんで、ただの挨拶としてしか理解してないし!?」
「なん・・・・・・だと・・・!?」
「そこまで驚かなくてもいいんじゃない? 真美」
「炎兄は黙ってて! これは死活問題なの。まさか・・・お兄ちゃんのお母さんが天然だったとは・・・!」
頭を抱えて唸る真美に、ツナと炎真は顔を見合わせて思わず笑った。