幻想殺しと電脳少女のボンゴレ生活   作:軍曹(K-6)

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第六十三話 ファレノプシス・パラドックス

「チョイスバトルが終了いたしましたので、全通話回線を開放します」

 

そう言ってツナ達の勝利を祝おうと、観覧席のみんながボンゴレベースの方へ駆けだした。一方で・・・・・・ん? 流れ変わったな。

 

そう、「unicorn」が流れ始めた。

 

改めて、ツナもボンゴレベースの方に移動し、正一達と合流した。

 

「綱吉君! 勝ったんだね!」

「うん」

「やりましたね、十代目!」

「うんっ」

「流石ツナなのな!」

「へへっ。でも、多分()()()()()()()()()恐らく負けていたと思うよ」

「・・・確かにな。もしデイジーが標的になるのがチョイスの運命だとしたら、ツナの最後のあの技がねぇと勝ちはなかったからな」

「ホントギリギリだったんだね・・・」

 

ツナはえへへ~と可愛らしく笑ってみる。その笑顔で何人かがツナを女性と見間違えたのは余談だろう。

 

「いや、負けちゃったね♪」

「そう、僕達の勝ちだ。白蘭サン」

「あーぁ。・・・でもマーレリングを渡したくないな」

「別に欲しくないよ。これ以上奪わないようにして欲しいだけだし・・・」

「それが出来ると思ってるのかな? 案外楽観的なんだね綱吉君って」

「仕方ねーだろ。ツナはこんなんだからな」

 

リボーンがツナの方を見ると、右手を天高く突き上げ空を見上げるツナがいた。恐らく、BGMもクライマックスだろう。

 

「さて、と。じゃあ約束通り7³の所有権は別に要らない。その代わり・・・お姫様は攫っていくよ!」

「ん?」

 

ツナはバックステップでその場を駆けると、どこかへ消える。ビルの曲がり角の先で少女の悲鳴が聞こえた気がするが、理由は分からない。

 

『守護者総員に通達! 全力を持って直ちに現地点を離脱! 並盛に帰還するぞ!』

「はいっ!」

「おう!」

「分かったよ」

「了解」

「んじゃ、リング超炎システムを起動させなくちゃならねーな」

「何をするか分からないけど、逃がすと思ってる?」

「思ってる訳ねーじゃん。だから逃げるんだよ」

 

そう言って笑うツナは、イカロスに抱きかかえられた上でユニをお姫様だっこしていた。

 

「ハハハッ。これは一本とられたよ。いやあびっくりした。ユニを攫うなんてどういうつもり?」

「言っただろ? 俺はお姫様を貰うって。チョイスに買った俺は約束通りこの子の所有権をミルフィオーレから奪取する。それが意味するのはブラックスペルの脱会。かな?」

「・・・あ、はい。その通りです」

「あれ? ユニちゃんすっかり顔色もよくなっちゃって。元気を取り戻したみたいだね♪」

「みんなー、準備良い?」

 

会話中に撤退の準備をすませていた仲間から完了の返事が来たツナは、ユニを抱える手に力を入れ、イカロスに指示を出して飛び出す。

 

「匣、開匣!!」

 

超炎リング転移システムに、来た時同様炎をぶつけた彼等は、並盛町に無事転移した。

 

「よし、イカロス。あれ落とせ」

「了解。アルテミス発射」

 

翼から放たれたミサイルが超炎リングシステムを完全に破壊し、跡形も残さずにボロボロにした。

 

「は・・・はは・・・。つくった本人が言うのも何だけど・・・何あの子」

「ツナのエンジェロイドだろ」

「「「ああ」」」

「ああって何だよ」

「ツナと同類って話だ」

「何それ納得しそう」

 

ツナ達は一度ボンゴレアジトに帰ってきていた。

 

「・・・さて、正一君。今更だけど聞いておくよ? 白蘭に何で勝たなきゃいけなかったのさ」

「あ、そうだね。話さないといけない。本当に簡潔に、一言で言うと白蘭さんの能力によって世界が征服されてしまうからだ」

「能力、だと・・・?」

「どんな能力なのさ」

「普通の人間は平行世界の自分と関わったり交わったりすることはないよね? だけど白蘭さんは同時刻のパラレルワールドにいる全ての自分の知識と思惟を共有できるんだ」

「横の時間軸・・・マーレ・・・海・・・」

「沢田さんは察しが良いですね。もう、分かってしまったんでしょう?」

「うん。マーレは海、幾重に広がる平行世界。ボンゴレは貝、年を重ねる伝統の継承。アルコバレーノは分かんないんだけど・・・ね。ボンゴレは分かった。プリーモが言ってた、リングには時間が刻まれてるってね」

「・・・そう、そして今僕達がいるこの世界だけが白蘭に滅ぼされていなかった世界なんだ」

「・・・それはおかしい。俺達がいた世界も無事だったんだぞ?」

「それは多分、7³によって厳重に秘匿された上でただのもしもじゃ片付けられないほどの何かが君達の世界にはあったんだと思うよ。リボーン君」

「そうか・・・」

(それって・・・)

(十中八九タルカスに殺されるぞ!)

(マジメに答えてあげなよ扇ちゃん。そう、当麻君が憑依していると言うことがイレギュラーだ)

 

ツナが脳内で会話をしている中、正一の昔話が進んでいた。

 

(で、いつぐらいに決着がつくんですか?)

(明日つくよ明日)

(明日っていつの明日ですか・・・)

(さあ?)

「それでお前は、白蘭を倒すにはこの世界しかねぇって言ってたんだな」

「ああ。他のどのパラレルワールドでも7³は奪われ、ボンゴレファミリーも壊滅してるだろうからね」

「他だけじゃなくてこの時代の俺も死んでるじゃん」

 

ツナはため息をつきながらそう言った。そんなツナに反論する声が上がる。

 

「それは違うよ綱吉君。ミルフィオーレで射殺された時に使われたのは“特殊弾”だ。僕がすり替えた“死ぬ気弾”のような弾で、未来の君は仮死状態だったんだ」

「じゃああの棺桶は、敵の目を欺くカモフラージュってこと?」

「十代目は・・・生きてた・・・・・・」

「仮死状態ではあったけど、彼は棺桶の中で綱吉君が来るのを楽しみに待ってたはずだ。彼は処刑の前日に言ってたよ。

 

「もうすぐ彼等がやってくる。この世界の俺じゃないけど、白蘭を確実に倒せる実力を持ったオレが来る」

 

って」

「「「「あー」」」」

「あー。って何さ!」

「・・・・・・それより、これからどうするんだい? 綱吉君」

「そう、だね。とりあえず各自の判断に任せて自由に修行かな。いつ白蘭達がこっちに追い付いて襲ってくるか分からないから、こっちも出来るだけの準備をしとかないとね」

「そうっスね!」

「だな」

 

ということで残されたわずかな時間でのツナ達の最終修行が始まった。


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