幻想殺しと電脳少女のボンゴレ生活 作:軍曹(K-6)
ジンジャーを倒した仲間と合流したツナは、敵の警備システムを爆破し先へと進む。
(心配しなくてもアイツのことだ。とっくの昔にメインコンピューターぐらいまでは進んでるんだろうな・・・)
そんな事を考えながら、現在ツナは
(ストゥラオ・モスカが四機・・・。ま、大丈夫かな)
ツナは炎の加速で一機のモスカを掴むと、そのまま膝蹴りを頭部に叩き込んだ。
(人型の兵器っていうのは総じて、頭部に重要なセンサーを集めてしまう。だからそこを破壊すれば、行動不能って訳さ。・・・悪かったね。俺、この時空の沢田綱吉じゃないの)
そう、全体的に見て“沢田綱吉”用に造られているであろうこの時空の兵器達が、別時空の“
追撃をスルスルとかわし、催涙ガスを食らってなおものともしていなかった。
(催涙ガスとはまたこしゃくな手を・・・)「ズズッ・・・」
訂正。涙は出ているようだ。
「・・・・・・・・・。あの男は本物のボンゴレ十代目だ。パンチの炎圧9300FV。推定戦闘力はストゥラオ二機より高い。・・・でも、四機合わせた戦闘力ならウチのモスカ達の方がずっと上だな」
(さて、原作通りだと。どれかにスパナが載ってるからな・・・キング・モスカはX BURNERで倒さないとダメな気がするから・・・どこかであのナノコンポジットアーマー相手に素の拳を叩き込みたいな・・・)
と、そこで水中にツナは引きずり込まれた。
「
上から三機、追撃を仕掛けにやってきている。ツナは脱出するために、拳を握った。
(用水路ごと破壊する! いたって普通のパンチ!)
振るった拳はいとも容易くモスカの腕をヒジから千切る。その後、切断機を優に超す水圧まで圧縮された用水が、用水路の壁を抉る。
が、ツナはそんな事は気にせず、一気に浮上すると初代零地点突破で水路をモスカごと凍らせた。
そのすぐ後、撃ち出された死ぬ気の炎を零地点突破 改でツナは吸収する。
『何でモスカのレーザーが死ぬ気の炎だと分かった?』
「・・・初代零地点突破を溶かすことが出来るのは、死ぬ気の炎以外に考えられない」
『やっぱり、そうだよな。零地点突破改で吸収したエネルギーをどれぐらい戦闘力に変換してる?』
「闘る気は、ないのか?」
『ある』
氷が割れ、モスカが襲いかかってくる。ツナはそれに対して容赦なく、拳の連撃を浴びせることにした。
「連続 普通のパンチ」
ウラヌスリングを介して炎を灯した、純度100%ツナの覚悟の拳を。
『データ・・・・・・とれた・・・』
「・・・・・・。まだ、壊されたいのか」
『731%だ』
「?」
『零地点突破改で吸収した炎を自分のエネルギーに変換することで、あんたの戦闘力は約7.3倍に跳ね上がった。・・・一つ聞かせて欲しい。あんた人か?』
「何が言いたい」
『まあ、それでもウチのモスカの方が強い』
そして、キング・モスカが生まれた。
何とか善戦するツナだったが、スピードに翻弄される振りをしながら(人間アピール)そのタイミングを計っていた。
背中に受けた打撃で空中をゆっくりと飛ぶその間に、ポツリと呟く。
「・・・・・・X BURNERさえ・・・・・・」
『【ジジ】・・・【ザー】・・・【ガガー】・・・撃ちゃあいいじゃねぇか』
「!!」
『あるのは剛と柔の炎だけだ。地上も、空中も関係ねぇはずだぞ』
(この声・・・)
『神ツナと言い張るんならやって見せろ。オメーにはそれが出来るはずだぞ』
(・・・そうだな。そうだよな、リボーン。・・・・・・決めてやるぜ)
ツナは空中で上下反転したままその構えをとる。
「・・・
しっかり決め、キング・モスカを倒したツナだったが、その反動で以前と同じように後方へ吹き飛び、気絶してしまっていた。
―――十数分前。
ツナとモスカ達が交戦を開始したちょうどその頃。
「オラオラオラァ! 邪魔だ見た目だけのスライムセキュリティ!」
エネは電脳世界でメローネ基地のセキュリティを簡単に捻っていた。
「弱っ・・・。え、弱っ・・・。良くこんなので今までセキュリティ機能させてましたね・・・。ま、サクッと仕事を済ませてしまいますか」
エネはその言葉通り、数分後には順調にメインコンピューターのハッキングを完了させ、メローネ基地の面々に違和感を気取られずにコピー体を海外のメインコンピューターにさえ侵入させて終わっていた。
「ハァ・・・楽勝でしたね・・・。どれだけ派手に暴れても奴さんは何の対抗もしてきませんでしたし・・・少し派手に動いてみますか!」
エネが動こうと重い腰を上げたのと、ツナのX BURNER AIRが炸裂したのはほぼ同時だった。
結果。第一通信指令室では大きな混乱が起きていた。
「入江様! 全てのコンピューター、応答しません!」
「なに!?」
「この通り、先程からこの画面を映すだけで、メインコンピューターにすらアクセスできません!」
「まさか・・・ハッキングか!?」
「「!?」」
映し出される画面にはデフォルメされたような青髪少女の顔が描かれていた。
「そうだ! 通信は!?」
「辛うじて、生きています。・・・というよりこれは、意図的に生かされていると言った方がいいぐらい、完全に向こうの掌の上です・・・!」
「何だって・・・!?」(まさかこれも綱吉君達の・・・!? イタタ・・・胃が・・・。って、どうやってハッキングを!? いったいどんな技術者が!)
入江正一のその疑問に答えるとしたら、この短時間でそんな事ができる技術者はボンゴレにはもちろんいない。ただ、電脳少女と呼ばれるCP相手には最強の相棒が、その時空の沢田綱吉にはいただけだ。
と、その時。
『レッディ――――――ス・ゥア――――――ン・ジェントルメンッ! 並びに紳士でもなければ淑女でもない愚劣凡庸たる一般兵士どもコンバンワ! 突然の侵入者策をお楽しみのところ大変申し訳ございませんお邪魔しまーす!』
メローネ基地内の全てのスピーカーから活発な少女の声が響き渡った。
『私めが誰か―――はハズカシーのでカット除外省略ッ! 乙女の秘密だこの野郎! もっと好感度を稼いでから出直して! ぶっちゃけわたくしもうとっくにオネムの時間でございますれば、とっととおやすみココアを飲んで布団にダイブしたい所存! でも駄目チェケラッ!』
声はメローネ基地隊員を置いてけぼりにして酔ったディスク・ジョッキーのような調子でひたすら一方通行のトークをまくし立てていく。
『アーアー、ご存じの通り? 今現在我々がいるミルフィオーレ基地の全コンピュータシステムが何者かの手によりダウンしているのが状況でございますが―――さァてさて? 皆様のオツムに詰まっていらっしゃるのが人間の脳味噌であればもう答えには辿り着いていると思うのですがァ―――どうなのそこんトコ!?』
―――まさか。
混乱に混乱を重ねた少女の声を、正しく理解できた者、事態を把握していたわずかな者達は、そろって小さくつばを飲み込んだ。
『イエ―――――ァッ! まさかと思った賢いアナタ! ピンポンピンポンちょー正解! まさしくそのまさかでファイナルアンサーでッす!』
一斉に停止した通信機構。少女の声を配信し続けるスピーカー。稼働はしているが管理者の制御を外れているメインコンピューター。それらが導くのは、ある一つの結論。
声の主が尊大かつ愉快に肯定する。
『本日! 只今! この時をもって! わたくしはこのメローネ基地を中心に全世界のミルフィオーレのコンピューターを掌握いたしましたッ! いえー!』
それは死刑宣告にも等しい敗北へのカウントダウンだった。