幻想殺しと電脳少女のボンゴレ生活   作:軍曹(K-6)

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第四十八話 武器

本日、ツナはまた雲雀と戦っていた。身体能力・攻撃方法に制限をつけ、純粋な死ぬ気の力のみのコントロールを上げるために。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

床に何とか着地したツナだったが、息も切れ切れで膝をついていた。

 

(くっそ。このまま機動力上げても勝てる相手じゃないとか、どんだけ化け物なんだよこの人は!)

「・・・いつまで草食動物の戦い方をするつもり? 君はまだ、武器を使っていないよ。沢田綱吉」

(? 武器?)

「眠くなってきた。そろそろ帰る」

「あ、はい」

「お前三日ほど寝てないだろ。休め、沢田」

「あ、はい・・・」

 

クロームを迎えに行った日の前日からツナは睡眠をとっていない。常人ならそれで限界が来るが、ツナは雲雀と善戦ができるほどには元気だった。

自室まで戻ってきたツナは、ベッドの上に寝転んで目を瞑って思考状態に入る。

 

(武器・・・か)

(「武器って一体どうしたら良いんだろうね」)

(「攻撃方法を変えてみるとかはどうでしょうか」)

(「愛気を使ったら意味ないぞ?」)

(「ですから、炎の使い方を変えるんです」)

(「「炎の使い方?」」)

(「先輩の炎は推進力や焼きゴテとしてしか使えないんですか?」)

(「いや、そんな事はないと思うけど」)

(「・・・なるほど。つまり扇ちゃん。君はこう言いたいわけだね。当麻君の炎をXANXUSのように撃ち出せば良いと」)

(「Exactly! 同じの炎を使う者として、参考にするべき相手です」)

(「うーん・・・。一度やってみるべきかな」)

(「・・・悩んでおっても仕方なかろう。さっさと実行して沈んでこい。あるじ様」)

(「・・・・・・そう、だな。やってみなくちゃ分からねーよな」)

 

ツナはベッドから転げ落ちるように飛び起きると、時間を確認する。

 

(あれから四十分弱)

 

手袋と二個のリングを装備し、服を着替えてツナはトレーニングルームへと駆け出した。

 

 

―――トレーニングルーム。

 

「さて。じゃあまぁ右手から大出力の炎でも撃ち出してみるか」

 

ツナは水平に持ち上げた右手から剛の炎を撃ち出した。が、

 

「ッ!?」

 

勢いが強すぎて後ろへ吹き飛ばされる。何とか両足を地面に着けて踏ん張った彼の元へ声が届く。

 

(「One More Time♪」)

「?」

 

ツナは首を傾げながらも声の通り、再度炎を撃ち出した。

 

「ギャンッ!」

 

踏ん張った後だったので力が入らず後ろに強く吹き飛び、反対側の壁に激突した。

 

(「One More Time♪」)

「は?」

(「「One More Time♪」」)

「おい?」

(「・・・何となく分かりました?」)

「・・・あぁ、剛の炎をただ前方に撃ち出すだけじゃ、後方に強く吹っ飛んじまう」

(「なら、壁を背にしてみるかい?」)

「壁を支えにして、か・・・。いや、戦闘場所が平野だったら意味がない・・・。ん? 支え・・・。それだ!」

(「なにか思いついたのかい?」)

「バッチリな」

 

ツナはウラヌスリングを嵌めた左手を後ろに、ボンゴレリングを嵌めた右手を前に出す。

 

(強力な炎を、前方に撃ち出すには。それを受け止める、支えが必要ってワケだ)

(なるほど)

(柔の炎で支え、剛の炎を―――放つ!!!)

 

そのすぐ後、トレーニングルームを中心に振動が広がった。

 

「いってー・・・。あーいっててて・・・。柔と剛の炎のバランスがこんなに難しいとは、ね」

「ツナ! 大丈夫かよ!?」

「武、リボーン。ハハッ・・・新技を試してみてたんだけど・・・」

「新技!? ど、どーやったらこうなるんだ?」

「おい、ツナ。ものにできそーなのか? その技は」

「難しいと思うよ。でも、できないものじゃあないよ・・・た・・・ぶん・・・・・・」

「おいツナ!」

「バテて寝ちまっただけだろ」

 

ツナはそのままおやすみモードへと突入した。

 

(袖が焦げてやがる。Ver.V.R.の本気の炎を使ったんだな・・・。こりゃあツナの新技、ひょっとしたら、ひょっとするぞ・・・。できればあまり酷い技じゃないと良いが・・・。ま、死ぬ気の炎で出来る範囲内のことなんだと思うけどな・・・)

 

 

 

―――――――――――――――

――――――――――

―――――

 

 

「ここ・・・、は?」

 

ツナは暗い場所で目を覚ました。まだその暗闇に目が慣れていない。

 

(んー・・・。頭の下が柔らかい。・・・ここどこだ・・・?)

「ボス、起きた?」

「・・・・・・? ・・・え!?」

 

ツナは慌てて上半身を起こす。どうやらクロームに膝枕されていたようだ。

 

「なっ・・・こっ・・・!?」(なんでこんな事を!?)

「ボスが倒れてたから・・・膝枕。男喜ぶ・・・!」

「誰情報よ、それ」

「骸様」

「・・・平行世界の未来だから、殴れねぇ・・・」

 

ツナは己の拳を見つめてプルプルと震えた。基本的にツナと凪はボケたり突っ込んだりするどっち付かずなのだが、骸や犬を主とするボケ担当に対しては容赦ないツッコミをしていた。だがここは平行世界で罪のない骸には手出しが出来ないので、ツナは両手膝をついて項垂れる。

 

「・・・ボス。これ」

「骸の槍の先端じゃん。じゃあここは残留思念というか、なにかを伝えるための場所ってことか」

「うん。そうだと思う」

「・・・・・・。・・・凪、その服似合ってるよ」

「・・・?! ・・・ボス、話す話題がなくなったからってそれは卑怯」

「そう?」

「うん」

 

と、そこで三叉槍の残骸が砂のように崩れ、クロームの掌からこぼれ落ちていった。

 

「・・・なるほど、これを伝えたかったのか」

「骸様、素直じゃない」

俺達の世界(こっち)の骸は素直なんだけどなぁ・・・」

 

真っ暗だった空間に、白くて丸い何らかの装置のようなものが出現した。

どうやら起動したらしいそれの中身を二人は目撃した。

 

「へぇ・・・」

「ボス、悪い顔してる」

「当たり前じゃん。何のためか知らないけど、ボンゴレの情報網かいくぐってこれの情報を隠してるんでしょ? 信じてる情報がウソってことになる」

 

ツナは情報を解析しようと、神々の義眼を開いて近づこうとして、とっさに後ろに体を反らした。

 

「近づくな!!」

「危ないなぁ・・・」

「大丈夫? ボス」

「入江、正一? そう、か。これはお前の夢か」

「・・・・・・っ」

 

少年のような風貌だったのが、大人の。現在の入江正一の姿に変わる。

 

「この装置はお前の元にあるのかな? って言うことは俺達を未来に閉じ込めたのもキミ?」

 

ツナの問いかけに、入江正一は息が詰まったような声を出す。

 

「そう、理不尽に俺を殺しあまつさえこんな所に閉じ込めたお礼をしてあげなきゃね」

「大丈夫。ボスは酷いことはしない」

「食べたりしないから。怯えるなよ」

 

胃の痛みを訴えるように入江正一が蹲ると同時、その世界が崩壊していく。

 

「タイムアップか・・・。次会う時はもっと楽しませてくれよ? 入江正一クン♪」

 

ツナの別れ際のその一言に、入江正一は全力で否定の意を表したのであった。


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