幻想殺しと電脳少女のボンゴレ生活   作:軍曹(K-6)

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第四十五話 Ver.V.R.

「《XグローブVer.V.R.》って言った所かな」

 

「この時代の沢田は指に装着したリングを手の甲に宿し、力を引き出していたという・・・。それが、まさか試練の末の形態だったとはな」

「俺もあまり自信はなかったけどな。飛躍的なパワーアップと言われて、この伝説の試練くらいしか思いつかなかった、というのが正直なところだ。もっとも、ボンゴレをぶっ壊すなんて(あんな無茶苦茶な)答えで試練を乗り越えたのは歴代ボンゴレでツナだけだろうがな」

 

ツナがグローブに力を込めると、澄んだオレンジ色をした綺麗な炎が燃え上がる。

 

「ワオ。少しだけ、僕の知ってる君に似てきたかな。赤ん坊と同じで僕をワクワクさせる君にね」

「一緒にしないでくれるかな。そのダメツナとさ」

「・・・ここから先は好きにして良いんだろ? 赤ん坊」

「ああ・・・・・・。そういう約束だからな」

「じゃあ。始めようか」

 

雲雀は懐から匣兵器を取り出し、そこに雲の炎を注ぎ込む。そうして開いた匣兵器から出てきたのは、紫の炎をまとったトンファー。そのトンファーを構えた雲雀から、凄まじい殺気が放たれる。

 

「ふーん」

「ひっ」

「なっ」(なんて炎!! ・・・・・・いや殺気!! 今まで抑えていたというのか・・・!! これが、雲雀恭弥!!)

「この闘いにルールはない。君に選べるのは、僕に勝つか・・・・・・死ぬかだけだ」

「じゃあ雲雀さんも死ぬ覚悟はあるんですよね?」

 

そう言ったツナから重力が放たれた。巨大な手で上から押さえつけられるような感覚。だがそれは、

 

(ツナの・・・殺気!)

「へぇ。やっぱり時間軸が違うとそこまで違うものなんだ」

「当たり前です。しかし雲雀さんも成長したんですね。十年前は何度かこの殺気だけで沈んだというのに」

「ワオ。誰それ」

「ま、これ以上強くすると()()()()()雲雀さんが倒れてしまうかもしれないので、マジメにやるとしましょうか」

 

ちなみに、Ver.ボンゴレリングよりずっとピーキーな特性のVer.ウラヌスリングに慣れているツナからしてみれば、この程度はじゃじゃ馬の内にも入らない。

そして、そんな会話の最中にもツナは動いていた。

 

「よし。特性は掴んだので、さ。瞬殺ですよ!」

「やれるものならね」

 

その場に炎の形跡を残してツナの姿がかき消える。そして、視認できなくなった。

 

「・・・ツナの奴、所々で自分の足で加速してるな」

「・・・? どういう事だ?」

「よーく耳をすませてみな」

「・・・・・・・・・」

 

ほとんど音がしないトレーニングルームの中に、小さな足音が所々で混じる。

 

「!?」

「アイツは死ぬ気の炎も使わず、肉体一つで音速を叩き出す。この勝負、俺達の世界の雲雀ならどうなったかしらねーが。こっちのヒバリにツナが負けるわけがねー」

「それを分かってて、好きにさせたのか!」

 

その言葉のすぐ後には、トレーニングルームの床をヘコませる一撃をモロにくらい雲雀は床に倒れていた。

 

「ほらな」

「・・・」

「リボーン。ちょっと提案があるんだけど!」

「何だ?」

「ちょっと一人で練習しててもいい? 久しぶりに()()()暴れたい」

「・・・・・・(汗) ちょっと待て、ジャンニーニに一番硬いトレーニングルームを聞いてみる・・・」

「あ、うん・・・・・・」

 

と、数分後にツナが連れられてきたのは、先程までいたのとは二回り程小さいトレーニングルーム。

 

「ここは匣兵器などの試運転も兼ねてますので、死ぬ気の炎のコーティングもしてあります。十分暴れられるかと」

「うん。それだけ分かれば十分だよ」

 

そう言ったツナは、魔術を使い部屋を囲う金属をとある少女達と合同で作り上げた演算型・衝撃拡散性複合素材(カリキュレイト=フォートレス)に変える。これは、例え沢田綱吉が全力で拳を振るっても、その衝撃を零にしてしまうと言う言うなれば彼()専用の建材だ。

 

「さて、じゃあ視てることだろうし正真正銘俺の本気でやるかな・・・付き合ってくれるよね? 扇ちゃん」

「・・・もちろん。私が先輩の頼みを断るわけがないじゃないですか」

「一応僕も出ておくよ。万が一もあるしね」

「ん。頼む」

 

そしてツナはその姿を上条当麻に戻すと、忍野扇と向かい合う。

 

「さぁ、扇ちゃん。やろうか」

「ええ。言っておきますが、私も強くなりましたよ?」

「はいはい」

 

そして、二人の人外がぶつかった。

 

「うっはー。相変わらず二人の戦闘は激しいね・・・。カリキュレイト=フォートレスにしていなかったら位置バレしてたかもね」

「「連続普通のパンチ」」

「これカメラ捉え切れてないだろうな・・・。何が起っているのか分かるのは間近にいる僕と、当の本人達だけだろうね」

 

二人の人外の攻撃は空気を叩き潰し衝撃波を生む。その衝撃波単体でも地球を割ることができる威力だというのに、演算型・衝撃拡散性複合素材はその衝撃までも零にしてしまった。

凄まじい速度と力の拳と蹴り。死ぬ気の炎や現代兵器。様々なものがぶつかり混沌とした空間を作り出す。

 

「「・・・フッ。CHAOSだな」」

 

上条と扇は口を揃えてそう言った。科学と魔術、炎と冷気、拳と蹴り。様々な力がぶつかり立ったカオス空間で三人の人外は笑っていた。

 

「いや、僕は確かに人外だけど。彼等を視てると認識を改めざるおえなくなる。僕は人外・・・彼等は人の身に甘んじてる神様だと思うよ」

「クハハ」

「はっはー」

「「必殺マジシリーズ」」

「お、こりゃマズいかも。対象を防御するスキル「全力警護(オールリフレクター)」・・・あ」(ま、反射しても彼等なら大丈夫だろ・・・)「対象はこの部屋の内壁と外壁。外に振動を漏らさないように」

 

人外の二人の両拳に力が溜まっていく。

 

「「両手連続マジ殴り!」」

「うおっ! 僕を守り忘れた。まぁ、いいか。僕は死なないよ「腑罪証明(アリバイブロック)」彼の影の中に避難」

 

そして、部屋の中のカメラは壊れ、壊れる直前に拾った音だけがアジト内に響いた。

 

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「ふぅっ。何とかなったみたいでよかったぜ」

「・・・つ」

「・・・疲れましたね・・・」

「はぁー・・・、久しぶりに全力で体動かしたぜっ」

 

上条と扇は隣り合って寝転がる。

 

「記憶が飛んでるみたいだから報告しとくけど、一時間程戦っていたからね。君達は」

「「WoW」」

 

二人の少女が影の中に戻ると、体を沢田綱吉に戻してから少年はトレーニングルームから出て行った。


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