幻想殺しと電脳少女のボンゴレ生活   作:軍曹(K-6)

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第三十九話 アジト

「じ、十代目!」

「や」

「っと・・・助っ人は要らなかったみたいだな」

「あ、山本・・・は、まだ入れ替わってない、と」

「・・・? あぁ、十年バズーカ!」

「それそれ」

「まぁ、行こうぜ。アジトまで」

「おい・・・。走らないのか? 歩いていては朝までかかるぞ」

「そっか。言ってなかったな。お前の知ってるアジトの在処の情報はガセなんだ」

「・・・・・・?」

「もし敵に捕まって情報を抜き出されてもウソの情報が渡るように、だね」

「ん。オレを見失わないように着いてきてくれ」

 

スーツから小箱を取り出しす山本。そこから何かが飛び出すと、ポツポツと雨が降り始めた。

 

「防犯対策のカモフラだ。よそ見はするなよ?」

 

山本の言葉と同時に、雨がシャワーのように強く激しく降り始めた。

 

「いって! イテテッ!」

「こっちだ」

 

山本の言葉に導かれて、そこに向かえば草むらに隠れて地下通路の入り口があった。

 

「え」

「マジか・・・」

「アジトって地下にあるの?」

「ああ、そうだぜ」

 

ツナは物珍しそうにキョロキョロ見回す。

 

「ここはボンゴレの重要な拠点として、急ピッチで建造中だったんだ・・・。今んとこ六割方できてるってトコだな」

「ボンゴレスゲー・・・」

「ハハハ。いいこと教えてやろっか? この時代のツナがぜーんぶ決めて、作らせたんだぜ」

「え? つ、つまり・・・。予想してたけどこの時間軸の俺、ボンゴレ継いでんのーっ!?」

 

うわーっ。とかあんまりだーっ。とか叫びながらゴロゴロ転がるツナ。リボーンがいたら突っ込んでいただろうが、守護者達はツナの突然の行動に慌てるばかりだった。

 

「・・・ま、俺がボンゴレを継がなきゃいいだけの話か」

「ハハハ」

「おい、あの装置はなんだ?」

 

 ラルが指さす方を見れば、ゲートのようなモノに光の柵が張ってある。

 

「ああ、あれはメカニックのジャンニーニの作った、なんとかって物質をさえぎるバリアだそうだ」

「・・・・・・。うっ。うぐっ・・・」

 

突然倒れたラルを見て、山本がその傍にしゃがみこんだ。

 

「おまえもだったのか・・・!」

「えーと? もしかしなくてもこのバリアのせい?」

「ああ・・・、環境の急激な変化のせいでショックを受けたんだ。・・・ここは彼女達にとって外界とは違う作りになっているからな」

「ふーん」

 

山本の案内でさらに基地内を進み、ツナと獄寺は応接室のような部屋に通される。

 

「おせーぞ」

「!」

「ちゃおっス」

「り、リボーン!」

「だきしめて~♡ ・・・こっちよ!!」

 

背後から攻撃する気満々でリボーンが飛び蹴りをしているのに気づいてから、ツナは行動を開始した。流れるような動作で彼の攻撃を避けたツナは、その頭を鷲掴みにして宙ぶらりんにする。

 

「こっちが心配になって探していれば、そっちはコスプレして楽しんでたってのか? いったいどういう了見だ。あ゙ぁ゙!?」

「あ、いや。その・・・ちょっとした出来心で・・・」

 

殺気よりも怒気を強く放出するツナに、思わずリボーンも敬語になる。

 

「へぇー。何だかとっても危険な状況だっていうのに、随分と余裕だね。流石最強の殺し屋といった所かなぁ? センセイ?」

「いや、ホント。スイマセン」

「うん。別にそんなに怒ってないし。いいよ」

 

家光が怪我を理由にイタリアから帰ってこなかったため、ツナに作文の練習として家光宛の手紙を書かせたリボーンは、原稿用紙数百枚分(二百からは数えていない)にぎっしりと書かれたツナの日頃やリング争奪戦の件の不満、文句を綴ったお手紙をイタリアにいる家光に送る羽目になった。(途中書きながらツナがクフフとか笑っていたがリボーンは無視した)

後でリボーンは知ることになるのだが、ツナが書いた手紙の最後には送られた相手が読み終わると同時、用紙全てが発火するという術式が書かれていて、その事でまた一悶着あるのだが。(この事を知ったリボーンはこれまで以上にツナに対して節度を守って接しようと決めるのだった)

 

「悪かったな」

「ま、いいよ」

 

ツナはリボーンの体を比較的柔らかそうなソファーに向かって軽く投げる。

 

「よっと。・・・危ねぇ」

 

綺麗に着地したリボーンだったが、その時足元が少しふらついた。

 

「調子・・・悪いのか?」

「まぁな。このスーツを着てないと体調最悪だったんだ。外のバリアもオレのために作らせたんだぞ」

「そのスーツ意味があったんだ・・・」

「そうだぞ。まぁ、期待してたらワリぃがオレにも分からない事だらけでな」

「ここは? 並盛? 並盛だよね?」

「・・・そうだぞ。ここは並盛。だから、お前達の問題だ」

「何が起きてるのさ」

「現在、全世界のボンゴレ側の重要拠点が同時に攻撃を受けている。もちろん並盛(ここ)でもボンゴレ狩りは進行中だ」

「ボンゴレ・・・」

「狩り・・・?」

「お前達も見たはずだぞ。ボンゴレマークのついた棺桶を」

「あ、俺が出てきたヤツか」

「平行世界の十代目は軟弱なんですかね」

「多分ね。殺されてはないと思うけど。黙って殺されるような人間じゃないからね。沢田綱吉って人間は」

「・・・・・・なんかツナがチゲーのな。昔だってのに今のツナを相手にしてる気分だ」

「平行世界だからね。違う部分も多々あるさ」

 

ツナはあっけらかんとそう言った。そして、急に真剣な顔になるとこう言った。

 

「向こうの人間の目的はボンゴレ陣営の人間を全員消すことでしょ? だったらまず・・・こっちの世界にもいるであろう、守護者を集めないとね」

「他の奴らは?」

「ランボ&イーピンは、俺がラル・ミルチを迎えに出て行くのと同時に、笹川とハルを迎えに行った。ビアンキとフゥ太は情報収集に出ている」

「ふーん。何か情報はないの? 特に雲雀さんとか」

「あるぜ。といってもこれだけだけどな」

「・・・これってバーズの鳥・・・?」

「今はヒバリが飼っていて、ヒバードって言うらしいぞ」

「それ誰の命名だよ・・・」

「ま、並盛大好きのアイツのことだ、この辺りにいるに違いねぇぞ」

「うん、そだね。とりあえず外に出る前に・・・、山本、匣兵器とリングを見せてもらえる?」

「ん? 良いぜ」

 

山本から手渡された物を見るツナと獄寺。

二人してあーでもないこーでもないと言いながら仕組みを理解しようとするその姿は、どこか子どもらしさを感じた。

と、そこで山本は獄寺の持つアタッシュケースに目を向けた。


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