幻想殺しと電脳少女のボンゴレ生活   作:軍曹(K-6)

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第二十話 新アイテム

一方、フゥ太を追っていたツナは森の中でフゥ太を見失ってしまう。

 

「・・・フゥ太! ・・・まったく、どこ行っちゃったんだよ!」

 

明らかに様子がおかしかったフゥ太。それに嫌な予感を覚えたツナはどうしても探し出し、フゥ太と話をしなければいけないと思っていた。

なかなか見つからないことに焦りを覚え始めた頃、草むらから人影が出て来る。

 

「フゥ太!? ・・・何だ骸か・・・」

「マスター!」

 

ツナは楽しそうな笑みで骸に近づいていく。

 

「計画は順調そう?」

「え、えぇ・・・。しかし、本当に良いのですか?」

「大丈夫大丈夫。全部上手く行ってるはずだから」

 

ちなみに。あの場にフゥ太がいたのも、フゥ太を探しにツナが一人で森に入るのも、森の中で骸と会うのも、全部ツナの書いた筋書き通りである。

 

「先に謝っておくね。復讐者の牢獄に入っちゃうことになるから・・・」

「ええ。構いません。それがマスターの計画を進めるためであるならば、影組一同でサポートさせてもらいます」

「大丈夫? その後のことも分かってる?」

「任せてください」

「なら、よし!」

 

ツナは微笑むとその場を後にした。

 

その後、演技で骸を悪い奴と全員に認識させたツナは、みんなで黒曜ヘルシーランドへ向かう。

 

(しかし、骸に確実に復讐者に捕まってもらうためとはいえ、ランチアさんのファミリーには悪いことをしたなぁ・・・。ま、いいか)

 

楽観的に人の生死を捉えたツナは獄寺に千種を任せ、六道骸と対峙していた。

 

「クフフ。六道輪廻という言葉をご存知ですか? 僕の身体にはその全ての冥界を回った記憶が刻まれていましてね? 六つの世界から、六つの戦闘スキルを授かったんです」

 

ギン! と見開かれた右の紅い瞳の中に一の数字がうかびあがる。と同時に建物が音を立てて崩れ始める。

 

「ん? んん? 頭が痛・・・、幻覚かっ! 確か第一の道は地獄道・・・」

「ほう。面白い見破り方をしますね。確かに幻術は脳に作用する。そこから見破るとは・・・」

「・・・・・・」

 

リボーンには恐らく言葉通り聞こえている。しかしツナには、いつも通り骸が自分をべた褒めしているようにしか聞こえない。

 

「・・・では、これはどうです?」

 

骸はそう言って瞳に三の数字をうかばせる。するとツナの上から毒蛇が降ってきた。

 

「幻覚? ・・・いや、本物! 第三の道は・・・畜生道」

 

ツナはこの蛇たちをどうするか悩む。零地点突破を使っても良いが、それだとつまらない。

 

「さぁ、生徒が危機を迎えましたよ? ・・・先生は攻撃しないんですか?」

「・・・掟だからな」

「クフフ、マフィアらしいお答えですね」

 

クツクツと笑う骸に突如何かが投げつけられ、骸はそれを咄嗟に振り払う。

 

「っ・・・トンファー?」

「10代目! 伏せて下さい!!」

 

その声と共にツナの頭上でダイナマイトが爆発する。その爆風で蛇が吹き飛び、煙の向こうから声がかかる。

 

「遅く・・・なりました!」

「・・・獄寺君。・・・雲雀さんも!?」

 

そこにいたのは雲雀と雲雀に支えられて立っている獄寺だった。

 

「ふ、こういうことだ。・・・俺の生徒はツナだけじゃねぇ」

「ほう・・・これはこれは外野がぞろぞろと。犬と千種はどうしました?」

「へっ、あいつらは外でノびてるぜ? ・・・ま、俺がやったわけじゃないけどな」

 

獄寺の視線は雲雀の方を向いている。それだけで状況を把握したツナはホッと息をつく。

 

「よかった・・・」

「・・・借りは返したよ?」

 

雲雀が呟き、獄寺の身体を放り出す。

 

「のわっ!?」

(うわぁ・・・。投げ捨てたよ、この人。慈悲ないなー)

 

こんな状況であるのに思わず呆れてしまったツナは、呆けたまま骸に殴りかかる雲雀を見つめる。

酷い怪我のせいでいつものキレはないが、骸を圧しているのは確かで。その時骸の右目に一の数字がうかぶ。

現れたのは天井一面の桜。それを見上げて目を見開く雲雀に骸は得意げに言う。

 

「クフフ・・・さぁ、もう一度跪いて戴きましょうか?」

「・・・雲雀はシャマルのトライデント・モスキートでサクラクラ病にかかってやがったからな」

「あ、そっか。・・・それで一度は負けて捕まってたんだ」

 

圧倒的に雲雀が不利な状況で二人が余裕なのは、雲雀のサクラクラ病への処方薬を獄寺が持っていたことを知っていたからだ。

だから、二人一緒に現れた時点で既に回復しているだろうことが知れて安堵したのだ。

そんな会話をしている間に雲雀のトンファーが骸を殴り飛ばす。沈黙する骸を一瞥した雲雀はそのままふらりと倒れ込んだ。

 

「・・・こんな重症でよくやるよ。雲雀さんマジすげー」

 

倒れた雲雀の傷の確認をしたツナが呆れた声で呟く。

 

「最後の方はほとんど無意識で戦ってやがった。・・・一度負けたことが余程悔しかったんだろうな」

「雲雀さんって負けず嫌いそうだもんね。・・・で、リボーン。医療班は?」

「もうすぐ到着する予定だぞ」

「クッフフフフ・・・その必要はありませんよ? なぜなら生存者は誰もいなくなるからです!!」

「しぶてぇやつだ。まだ動けるのか?」

 

復活した骸を睨み、リボーンは呟く。

ツナも身構えていつでも応戦できるようにしていたが、そんな彼らに笑みを見せ、骸は己のこめかみにその銃をあてた。

 

「・・・では、また後ほど・・・Arrivederci(さようなら)

 

銃声が響き、骸はその場に倒れた。

 

「・・・できれば・・・生かして捕らえたかったんだがな」

 

リボーンのその言葉にツナは首をひねる。

 

「先生。特殊弾って死ぬ気弾だけなの?」

「? どういう事だ?」

「いや、もしアレが死ぬ気弾だったら復活して面倒だなーって」

「・・・なるほどな。ツナ、何か感じねーか?」

「骸が増えた?」

「やっぱり。憑依弾は禁弾のはずだぞ。どこで手に入れやがった」

 

憑依弾。それはエストラーネオファミリーが製造していた悪魔の武器。今は危険視されて廃棄されたハズのもの。

そしてほぼ同時に、ビアンキや獄寺、更には獄寺と雲雀に倒された犬や千種までもが骸に“乗っ取られて”ツナに襲い掛かる。

 

「ツナ! レオンはもうマユなんだ。後はお前の言葉で羽化させろ! お前の気持ちを言え、それがボンゴレの答えだぞ!」

「・・・・・・だったら、昔から決まってる俺はやるべき事がある。こんな所で負けてられない!」

 

ツナのその言葉で、レオンの変化が始まった。

 

「ついに羽化したな。あの時と一緒だ。ディーノが“跳ね馬”になった時とな」

 

ツナ専用のニューアイテムを吐き出す準備段階のレオンは蛹のような状態になっている。

 

「・・・非常に邪魔ですね」

 

余裕を見せるリボーンによからぬ気配を感じたのか、犬を乗っ取った【骸】がつっこんで来てレオンを真っ二つにする。

 

「レオン!」

「大丈夫だ。レオンは形状記憶カメレオンだからな。・・・それよりも上を見ろ、何か弾かれたみたいだぞ」

 

ひらりと落ちてくるものを見てリボーンが笑みをうかべ、それを手にしたツナはキョトンとする。

 

「これ・・・毛糸の手袋!? これで・・・どーやって・・・たた・・・か・・・。あー、なるほどね」

「何か分かったのか?」

「まーね」

「最後まで面白かったですよ、君達は」

 

とりあえずで着けた手袋ごと、ツナはその攻撃を防ぐように手をかざした。

金属同士がぶつかるような、毛糸の手袋ではありえない音がする。

 

「攻撃を、弾かれたのか・・・?」

「いってー・・・。あれ? 痛くない? ・・・何か入ってる。・・・・・・指輪?」

 

ツナが右手の手袋から取り出したのは綺麗な宝石がついた指輪だった。

 

「何に使うのさ」

「さーな。とりあえず手袋と一緒で着けとけ」

「う、うん。あと・・・これ弾だよね?」

(特殊弾!?)

「そいつだな・・・。よこせツナ」

「撃たせるわけにはいきませんよ」

 

【骸】が三叉の剣を振りおろす。リボーンはそれを避け、ツナから弾を奪って銃に変化したレオンに装填する。

 

「仕方ない――ボンゴレの身体を無傷で手に入れるのは諦めました」

「ツナ!!」

 

獄寺を乗っ取った【骸】は己がダイナマイトを放り投げた後にリボーンが銃を構えるのを見て、せせら笑う。

 

「間に合うものか!!」

 

派手な爆音と爆煙にリボーンは目を眇める。

煙が晴れると同時、そこには額に炎を灯したツナが膝をついてだが起き上がっていた。

 

「骸・・・。お前を倒さなきゃ・・・・・・死んでも死にきれねぇ!」




新アイテムは手袋と指輪。

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