幻想殺しと電脳少女のボンゴレ生活   作:軍曹(K-6)

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第十話 山本 武

「チーム分けは終わったか?」

「あと一人です」

「だから、ダメツナはお前達のチームにくれてやるって」

「やだね! 負けたくねーもん」

「バレーは凄かったけど野球が超下手なのは分かってるからな」

(はっはー! ならその幻想をぶち殺してやろうじゃないか。さあ、どちらかのチームに入れてくんろ)

「いーんじゃねーの? こっち入れば」

「!」

「?」

「マジで言ってんの山本~っ。何もわざわざあんな負け男」

「ケチケチすんなよ。俺が打たせなきゃいーんだろ?」

「山本がそう言うんなら、まいっか」

(山本・・・一年なのに野球部レギュラー。クラス全員から信頼も厚い・・・。リボーンが目をつけそーだなぁ)

 

ツナは華麗に現実逃避していた。

その後。

 

(見よ! 俺もバカスカ打ってバシバシ守って。だがトンボ掛けを買って出る! このパシリ精神!! あれ? ダメツナってこんなんだっけ?)

 

ツナが自分の存在意義について頭をひねっていると。後ろに人の気配がした。

 

「助っ人とーじょーっ」

「山本・・・。野球部期待の星が何の用だい? こんな負け体質の俺によ」

「気にすんなって。頼むぜ俺の注目株!」

「?」

「最近お前スゲーだろ? 剣道の試合でも球技大会でも、今回の野球でもさ。俺、お前に赤丸チェックしてっから」

「え? いやいや・・・そんな」

「それに引き換え俺なんて、馬鹿の一つ覚えみたいに野球しかやってねーや」

「何言ってんだ。お前はその野球がすごいんだろ?」

「それがどうもうまくなくってさ」

「?」

「ここんとこいくら練習しても打率落ちっぱなしの守備乱れっぱなし。このままじゃ野球始めて以来、初のスタメン落ちだ」

(スランプ?)

「ツナ・・・。俺どうすりゃいい?」

「おおう?」(俺に聞くの?)

「なんつってな。最近のツナ、頼もしーからついな・・・・・・」

「そうだな。山本。まずはしっかり休んでみたらどう?」

「なっ! そんな事言うのか?」

「野球の選手。イチローが言ってたことだよ。『まず、身体をゆっくり休めて、野球がやりたくなるまで待ちます』ってね。ひとまず自分の気持ちを整理するために、積極的休息は大切なことなんだと心に決めて、休息をとってみたらどう? そして野球がやりたくなるまで待つ。「野球が好き」「野球がしたい」「こういうプレーができる野球選手になりたい」という気持ちが湧いてきたら、自分は何がしたいのか言葉にしてみるのさ。で、その言葉を書き出して見えるところに貼りだしたりする。よく目にする日誌の表紙の裏などに記してもいいと思うけどね。気持ちの切り替えができたら、新たな気持ちで練習に復帰する。スランプってのは悪い状態のスクリュー状態だからね。一度別の練習メニューを試してみるのも吉だけど、でもやっぱり休息は悪い事じゃないんだから。誰だって疲れたら休まないと体が壊れちゃうんだから」

「・・・・・・なるほどな! しっかり休んで気持ち新たに、か! よし。でも今日は練習していいか?」

「俺に聞くなよ。やりたいならやればいい。俺がしたのはあくまでアドバイスだからね」

「おう、ありがとな!」

 

 

 

―――その夜

 

「お前、本当にダメツナか?」

「言っただろリボーン。俺はお前に殺されて生まれ変わった。神ツナだって」

厨二病(そっち系)でも止めはしねーが、聞いていた情報と全く違うからな。それと、お前のクラスの山本だがな」

「何? 部下にしろとかいうつもり?」

「・・・・・・俺のセリフをとんじゃねぇ」

「知るか!! で? お前は俺のクラスメイトまでマフィアにする気か? 山本は野球をやってるんだ。邪魔するのも悪いだろ」

「そんなの俺には関係ない」

「相手の都合を考えろド阿保!!」

 

 

―――次の日。

 

「大変だー!! 山本が屋上から飛び降りようとしてる!!」

「「「エェッ?!」」」

「山本ってうちのクラスの?」

「あいつに限ってありえねーだろ!」

「言っていい冗談と悪い冗談があるわ」

「あいつ昨日一人で残って野球の練習してて、無茶して腕を骨折しちまったらしいんだ」

(・・・阿呆かアイツは・・・)

「とにかく屋上に行こうぜ」

「おう!」

(えー。元気だなぁ中学生)

「ツナ君いこっ!」

「おーう・・・」

 

やる気のない声で返答し、ツナも現場に向かう。

 

「オイオイ。冗談きついぜ山本ー!」

「そりゃやりすぎだって」

「へへっ。わりーけどそーでもねーんだ。野球の神さんに見捨てられたら俺にはなーんにも残ってないんでね」

「まさか・・・」

「本気!!?」

「ったく。休まないと体壊すって言ったろ。山本、オマエ人に助言頼んどいて全部無視したね?」

 

人の波をかき分け、ツナがため息をつきながら登場する。

 

「ツナ・・・。止めに来たなら無駄だぜ。お前なら俺の気持ちがわかるはずだ」

「お?」

「ダメツナって呼ばれてるお前なら。何やってもうまくいかなくて死んじまったほーがマシだって気持ちわかるだろ?」

「・・・例え分かっても、分かりたくない気持ちだな。それは」

 

ツナのその言葉に山本はムッとしたようで。

 

「さすが最近活躍目覚ましいツナ様だぜ。俺とは違って優等生ってわけだ」

「否定はしないけどさ。治ったらまた野球ができるって言うのに。この場で死んじまって未来を無にするっていうその気持ちは俺には理解できないな」

「!?」

「昨日言ったろ? 休息が大切だって。その骨折、こうは捉えられないか? 野球の神様が頑張り過ぎのお前に、少し休めって言ってるってよ」

「・・・!」

「どうしても死ぬって言うなら俺は止めないさ。山本武っていう一人の人間の一生。どう生きようが君の勝手だからね、山本。んじゃ、やめるならフェンスを乗り越えてからみんなに謝るんだよ」

「待てよツナ」

 

背を向けて立ち去ろうとしたツナを山本が袖を掴んで引き止める。そこで運悪くツナの足が滑った。

勢いよくフェンスにぶつかった彼の体は、もろくなったフェンスを突き破り、山本と一緒に空中に投げ出された。

 

「おっっと!!」

 

空中での高速機動“雷迅”。一瞬の発動しかできない技だが、山本を掴んで屋上の床を掴むのには十分だった。

 

「ちょっ! 誰か・・・引き上げて・・・・・・ッ!!」

「おわっ!? つ、ツナ大丈夫か!!」

「大丈夫じゃないから! は や く助けて!!」

「お、おう!!」

 

こうしてツナと山本は屋上へ引き上げられた。

 

「はぁ~。死ぬかと思った」

「ツナ! お前すげーな」

「そう?」

「お前の言う通りだ。少しは休まなくちゃな。オレ、どーかしちまってたな。せっかくアドバイスもらったのに。馬鹿が塞ぎ込むとロクな事にならねーってな」

「ま、思い直してくれて良かったよ」

 

こうしてツナに親友が出来た。

だがもちろんリボーンはそうは思ってなかった。

 

(ファミリーゲット)

 

ちなみにその後。

一瞬の雷迅でほぼ外れた全身の骨をはめ直す作業をツナは細々とやっていた。

 

「いってー」




貴音が再度かけ直したので骨は外れます。

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