お前らがなにをやろうとも僕は絶対家から出ないからな!!!!   作:ウエストロード

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甘くて辛い1日

「ん…ん〜」

目が覚めた。意識が定まっていない。何があったんだ?とソファーで横になったまま記憶を探る。

「えっと?莉緒に着替えを持って行って?雷がなって?そしたら莉緒が裸で突撃してきたんだっけ?…はっ裸…」

雄はしっかり記憶を取り戻すと同時に真っ赤になり顔を押さえた。

 

「あっ雄ちゃん、目覚めたんだ!良かった!」

莉緒が笑顔で近付いてきた。今度はちゃんと服を着ている。

「莉緒!ゴメン!あれは不可抗力だったんだ!悪気はない!!」

慌てふためく雄は必死に全力で莉緒に謝罪する。ソファーの上で土下座。

 

「気にしてないよ!私の方こそごめんなさい!私が雄ちゃんに勢いよく雄ちゃんに抱きついたらそのまま倒れて頭をぶつけちゃって気絶したみたいなの。それなのにビンタまで…本当にごめんなさい…」

莉緒は雄のことを本気で心配していた。立ったまま俯き両手で服の裾を握り締め今にも泣きそうな顔をしている。そんな莉緒を見るのが心苦しくなったのか雄が口を開く。

「べっ別になんてことないよ。気にすんな!ほら!ピンピンしてるから!」

雄は立ち上がり腕を曲げ伸ばししてみせる。

そして悪い笑顔になった。

「それに良いもの見れたしなぁ」

雄がニヤニヤしながら自分の顎に手を当て、ウンウンと頷く。莉緒が真っ赤になり目を見開く。そして構える。雄は目を瞑って気付かずに続ける。

「にしても莉緒、お前意外に良い身体して…」

雄が喋り終わるのを待たずに莉緒の蹴りがみぞおちに入っていた。

「ぶふぁっ!?」

雄はお腹を押さえたまま崩れ落ちプルプル震えている。

 

「雄ちゃんのバカ!変態!引きこもり!!」

「!?」

「あっ」

莉緒はしまったと口を両手で塞ぐがもう遅い。しっかり雄に聞こえていた。

「なんでお前が僕が学校行ってないって知ってんだ?」雄は立ち上がりソファーに座りなおす。

 

「いやっあのっ知ってるとかじゃなくてたまたま言っただけで…」

必死に取り繕おうとするが雄には通じない。

「下手な嘘はやめろよ。お前、昔から嘘つけないだろ。それにさ、お前が知ってても何とも思わないよ!気にすんな」

雄は莉緒をフォローしながら頭を掻く。

「ごめんなさい…」

莉緒が小さく謝った。

 

 

2人はソファーに座りジュースを飲んでいる。そして雄から切り出した。

「で?どこで僕が引きこもってるって聞いたんだ?」

莉緒は少し考え口を開く。

「祥子って覚えてる?私、引っ越した後も祥子とちょこちょこ連絡取ってたんだ。雄ちゃんは気付いてないかもだけど、祥子は雄ちゃんと同じ学校なの。だから雄ちゃんが学校に来てないっていうのは聞いてたんだけど、理由までは知らない」

莉緒は俯いたまま顔を上げない。

「なるほどな」

雄は少し遠い目をしていた。

そして莉緒の方を向く。

「理由は…まぁ話せる様になったら話すよ…とにかくさ!」

雄は莉緒の髪をクシャクシャにしながら言った。

「そんなしみったれた顔すんなよ!お前はバカみたいに笑ってる方が可愛いぞ!」

すぐさま莉緒は顔をトマトのように真っ赤にして反撃した。

「なんで!雄ちゃんは!そんな恥ずかしいことを!言うのかなぁ!もー!!」

まるで張り手の様な莉緒の平手打ちが雄の顔を何度も打つ。なんだかんだ2人は笑ってる。どうやら以前の関係に戻れたようだ。

色々あって疲れたのだろう。莉緒は雄にもたれて寝ている。

 

ガチャ

「ただいまー」「ただまー!」

ここで茉奈と紗奈が帰ってきた。

 

この時雄は頭が高速回転していた。

(ますいー!!!2人が帰って来やがった!えっ!?なんで?まだそんな時間じゃ……………僕気絶してたんだ!!いやいや、そんな事よりこの状況をどうするかだ!)

 

「雄ー?見た事ない靴あるけど誰か来てるのー?」

茉奈が尋ねるが雄は返事がない。いや出来ない。

 

雄は小声で莉緒を揺さぶって起こそうとする。

「おいっ!莉緒!起きろ!茉奈と紗奈が帰って来たんだよ!流石にこの状況はまず…」

 

「んー…もうしゅこしだけぇ」

莉緒は寝言を言いながら身体を反転させ雄の首に両手を回しギュッとした。つまり抱き締める形に悪化した。

 

(まずいまずいまずいまずい!!!状況が余計悪くなった!どうする?…どうす……)

雄の思考が停止した。ある柔らかいものが押し付けられる事によって。

(ふむ、やはりこいつ良い身体してる。D…いやEか!!!!ってバカ!今はそれどころじゃないだろ!こんなとこ見られたら家にいられなくなる!!)

それはある意味茉奈と紗奈の思惑ではあった。

 

(おさまれー僕の中の僕…そもそもなんでこいつ下着してないんだよ!無防備すぎるだろ!とにかくなんとかしないと!)

 

「あれー?寝てるのかなぁ?」

「ねー」

茉奈と紗奈の足音が近付いてくる。

 

莉緒の腕を無理矢理外そうとすると余計にギュッとされ首が締まった。

「ちょっ力強っしぬ…死ぬってマジで…」

意識が朦朧としながら後ろに手をつく。はずだったが目測を誤りバランスを崩してソファーから転がり落ちる。

ガタン!

ドスン!

「ぐぁ!」

首を締まる腕は弱まったが、莉緒が雄に被さる形で抱き付いているという状態だ。風呂場での再現の様になってしまった。

そしてついにその時が来た。

 

ガチャ

「兄ちゃん、ただいまー!」

「雄ー。今のなんの音ー?」

 

(あぁっ…終わったぁ〜)

「あぁ…おかえりー」

雄は引きつった笑顔で力無く茉奈、紗奈を迎える。

 

「雄!?これどういう状況!?」

「兄ちゃんが女の子連れ込んでる…」

そりゃこの光景を見たら誰でも驚くよな。と雄は半ば諦めていた。

(さらば。僕の堕落した生活…)

 

「んー…雄ちゃんおはよー。ガッツリ寝ちゃったよー」

やっと起きた莉緒は目をこする。

「よく寝たー!!」

と背伸びをする。そして周りを見渡して2人に気が付く。

「あー!!茉奈ちゃん!紗奈ちゃん!お久しぶりー!!」

莉緒は満面の笑みで2人に手を振る。

「莉緒ちゃん!?」

茉奈と紗奈がハモった。

そして莉緒は自分が座っているところにようやく目をやり気付き莉緒は再び顔を真っ赤にして乱れた服装を整える。そして叫んだ。

「イヤァァァァーーー!!!!!!」

 

 

パシィーーーン!!!

 

 

莉緒が雄の頬をビンタする音が家中に響き渡った。


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