バージルとレムは屋敷の外に移動し、ある程度距離が離れていたところに立っていた。
「覚悟はいいですか?」
「私が勝てば魔女教について吐いてもらいますよ」
レムが遠回しの勝利宣言をする。
「そうか。魔女教など知らんが俺が勝てば俺を今後おとなしくすると誓え」
バージルは閻魔刀を構える。一方レムも自身の武器のモーニングスターを構え、戦闘態勢に入る。
先に先制攻撃を仕掛けたのはレムだった。だがバージルは動かない。レムは勝機と見てモーニングスターをバージルに振りかざす。だがバージルはそこにはいなく蒼い残像だけが残った。
(!?一体何処にーー)
レムはバージルを見失った。一体どうやって移動したのかと思案していると
「よそ見とは余裕だな」
バージルはエアトリックを使い上空に瞬間移動していた。
「ッ!アルヒューマ!!」
レムは巨大な氷の塊をバージルに打ち込んだ。
「!」
バージルは自身の魔力で精製した幻影剣を作り、地面に刺した。するとバージルはその幻影剣の元に瞬間移動した。
「……只者では無いと思っていましたがまさかここまでとは」
レムが少し冷や汗をかきながらそう呟く。
「貴様もその歳にしてはやるな」
「貴様はなぜ闘う?貴様の魂はなんと言っている?」
バージルが問いかける。レムは少しイラつき
「………もう死んで下さい」
レムはモーニングスターを振りかざす。バージルはそれを刀で弾く。金属と金属がぶつかり合い、耳障りな音を出す。だがレムはニヤリと笑いモーニングスターを閻魔刀に絡ませた。
(あの人は武器を一つしか持っていない。武器を奪えばこっちの勝ちです)
バージルは閻魔刀を取られモーニングスターがもう一度バージルの方に向かってきている。だが、
「そんな戦法で俺を倒せると思っていたのか?」
バージルの手が突然光り出した。レムは驚きを隠せずにいる。
(……ベオウルフ。使うのは久しぶりだな。感は鈍っていないだろうか)
閃光装具ベオウルフ。以前バージルがテメンニグルいた時に手に入れた魔具で元々は上級悪魔だったもの。悪魔を魔具に変えるためには方法がある。一つは上級悪魔に己の強さを証明する事。2つ目は上級悪魔に勝ち心の底から勝てないと思わせる事。バージルは後者のやり方で魔具を手にした。
バージルはベオウルフでモーニングスターを打ち返した。
「………あなた本当に何者なんですか?しかもその武器、嫌な匂いがすごくします。」
「それもそうかなにせこいつは元々は悪魔だったのだからな」
「悪魔?ルグニカには魔獣はいても悪魔は………」
バージルが幻影剣を飛ばした。
「!?不意打ちとは卑怯なーー」
が、当たったのはレムではなくレムに攻撃しようとしていた異形の存在だった。
「少しは後ろを警戒しておけ」
レムは背後を振り向くと人とはかけ離れたモノが倒れていた。
(まさかこの世界にも悪魔がいるとはな)
バージルは自身の周りに円陣幻影剣を作り出し悪魔に近づいた。悪魔共は逃げようとしたが半分が消し飛んだ。
「これもあなたが呼び寄せたのですか?」
バカを言うなとバージルが一蹴する。
「こいつらは俺の世界にいた悪魔だ」
(まさか向こうからやって来たのか?)
いや、今は考えている場合ではないと思いバージルはベオウルフを構えた。目の前の悪魔共を一掃しなければならない。
「レム!貴様は右をやれ!俺は左をやる」
そうバージルは言うとレムは不服そうに
「………わかりました」
バージルはベオウルフで悪魔を一方的に蹂躙していた。
近づいてくる悪魔を殴り蹴り逃げる悪魔は空高く飛翔し、
空から蹴りを放った。一方レムも少女とは呼べないほどの
戦闘能力を有していた。モーニングスターであたりの悪魔をミンチにしていた。と言っても悪魔は死ぬと肉体が消滅してしまうが。
「そろそろ数が減って来たか……」
あらかた悪魔は片付けた。周りが静かになる。だが
「やはりこの程度の下級悪魔では貴様を殺しえなかったか逆賊スパーダの息子」
突然声が聞こえた。そこには下級悪魔とは違う雰囲気の悪魔がいた。自我があるということは上級悪魔だろう。
「親父を知っているということは貴様も同じ世界から来たのか」
「ああ、我は時空を操る能力を持っていてなその能力のおかげでな」
レムは何が何だか分からないと言わんばかりの表情で2人の会話を聞いていた。
「我はお前を許さぬ!!兄を殺した貴様の弟を!!」
「弟だとまさかダンテか?」
バージルは少し驚いたように反応した。
「兄を殺した貴様の弟に貴様の首を送ってやる!!我の兄を奪ったことを同じように後悔させてやる!!」
悪魔はバージルに憎しみをぶつけて来た、それもそのはず悪魔は兄を殺されたのだ。怒りが湧かないわけはない。
「だが今はまだその時ではない、奴が来た後に奴に兄の無念を晴らさせてもらうその時までせいぜい震えて眠るがーー」
奴?と悪魔が意味深な事を言ったのでどういう事だと聞こうとした。だが、
悪魔の体に何かが当たった。
「お話は終わりましたか?貴方には消えていただきます」
だが悪魔は大して効いていない様子だった。
「……そうか余程死にたいようだな、だが貴様は我の相手には務まらん貴様にはこいつらで十分だ」
そう悪魔が嘲ると森の中から犬が出て来た。
「!魔獣……」
「先程我を襲って来た畜生共でな、我が此奴らを返り討ちにしたら我に服従したようだ」
悪魔はそう言うとバージルとレムに
「貴様らはそこの畜生共と戯れてろ。次に会った時が貴様の最後だ、また会おう」
そう言うと悪魔は手から何か波動を撃ち込み空間を歪ませた。
「待て。貴様から聞くことはまだーー」
「……まずはこいつらを片付けるか」
あたりには魔獣と呼ばれる犬と酷似したものがそこら中にいた。
「おいレムまずはこいつらを片付けるぞ」
だがレムは返事をしない。もう一度レムに声を掛けようとすると、
「アハハハハ!アハハハハハハハハ!!」
突然レムは笑い出し、そして頭から角が生え始めた。
「魔獣!魔獣!魔獣!魔女!魔女!魔女ォ!!」
一心不乱にレム?は魔獣を殺し続けた。その乱暴な力で滅多打ちに屠る姿はまるで、
「鬼……」
だがレムは気づいていなかった背後から襲いかかろうとする魔獣に。
「いかんこのままではやられてしまうな」
バージルは襲いかかってくる魔獣を閻魔刀で斬り伏せながらレムの元へ向かう。だが間に合わない。
「あぶねぇー!!!」
突然スバルがレムにぶつかりレムを吹き飛ばす。
「グァァァァァァ!!」
魔獣はレムからスバルに変わっても御構い無しに噛み続けた。
「Scum」(クズが)
バージルはスバルに噛み付いていた魔獣だけ斬り伏せた。
(……あそこにいる奴がボスか)
バージルは一匹だけこちらに攻撃せずじっと見ていた魔獣に注目していた。
するとその魔獣がみるみる内に大きくなりさっきの何倍にも大きくなった。
「Huhでかくなっただけで俺に勝てると思っているのか?」
「Cut off!」(斬る!)
魔獣はバージルに嚙みつこうと近づいたがいつの間にか斬られていた。魔獣は気が動転してしまったせいで冷静な判断が出来なかった。それからは一方的な戦い、で斬られ続けた。魔獣はバージルに爪を振りかざそうとしたがその手も斬られ、嚙みつこうとすれば斬られ文字通り手も足も出ない状態だった。
「これで仕舞いだ」
斬り終わったバージルは静かに閻魔刀を鞘に納める。キンッという澄んだ音が聞こえた。
「凄い……あの量の魔獣をたった一人で……」
「どうしたの!?大丈夫スバル!?」
外の音が気になって来たエミリアはスバルの傷ついた体に酷く驚いた。
「私はなんということを……」
(なぜ殺そうとした私を助けてくれたのですか?)
レムは分からなかった。何故殺されそうになっていたスバルがレムを助けたのか。
「ていうかなんで3人とも外に出てるの?」
スバルを介抱しているエミリアが聞いてきた。
(私はメイド失格ですね……)
「私がーー」
「俺がレムに声をかけた、近くに魔獣がいるから狩らないかと。だがそれを聞いていたソイツが一緒にやると言い出してな困ったものだ」
バージルはレムの声をかき消すようにそう言った。
レムは少しだけ驚いている。
「バージルさん!!」
レムは説得するように言うだが、
「さあな俺には貴様が何を言いたいのかまるで分からん」
「ではバージルさんとスバル君に言います。ごめんなさい」
「フン……」
バージルはいかにも気に食わんという表情で鼻で笑った。
「あのさぁ……2人で盛り上がるのもいいけど少しはこっちの心配もしてくれよな………」
「あれは貴様がいきなり飛び出したからだろう」
「ええ!?怪我人なんだから少しは心配してくださいよ!!」
「スバル君大丈夫ですか?何か私に出来ることはありますか?」
「おおうお前は心配してくれんのな………」
バージルはため息を吐いた。だが表情はどこか少し、笑っていた。
いつスバル殺そう………(サイコパス)