Fate/stay night Ideal alternative(アイディール・オルタナティヴ)   作:紗代

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五日目・朝 侵入者

朝食を終えて各自自由に過ごす。セイバーは道場、遠坂は母屋にて占拠・・・いやあてがわれた部屋でなにやら作業をしている。俺はというと

 

「よいせっと」

 

庭に洗濯物を干していた。シーツとかそういう大きめの物が中心で服とかそういう小物類は別である。天気予報では今日も一日晴れるそうなので、こういった手間と場所を取るものを洗濯するには持って来いの日である。

 

「これでラスト」

 

最後のシーツを干し終わる。と同時に

 

「衛宮さん」

「どわわ!?」

 

ここにいるはずのない人物がそこにいた。

 

「し、式波!?おま、どうして俺んちに」

「ええと、ちょっとお話ししたいことがありまして。この場所に関しては衛宮さんの苗字と昨日の消えかけの魔力の残滓をあてにして特定しました。結構苦労しましたけど、いてくれてよかった。頑張ったのでもしいなかったらどうしようかと思ってました。」

 

昨日と同じように少し嬉しそうにしながら話す式波を前にとんでもないことを聞いてしまった気がして呆然とする。消えかけの魔力をあてにしたって言ったかこいつ。家の結界も感知してないし・・・とまあ、そんなことはとりあえず置いておくとして。

 

「立ち話もなんだし、上がっていけよ」

「え、こっちとしてはありがたいですけど・・・いいんですか?これでも一応私、敵なのに」

「いいっていいって、家主権限だ」

「・・・・じゃあ遠慮なく」

 

そういうと式波は玄関のほうまで歩いて行ったので、俺もお茶の支度をしに台所へ向かうのだった。

 

 

 

「それで?どういうことか説明してくれる?衛宮君」

 

不機嫌そうな遠坂とセイバー。

 

「話があるっていうから上がってもらったんだ。式波、お茶はほうじ茶でいいか?」

「お気遣いありがとうございます。」

 

式波は座布団に綺麗に正座し、お茶を置くと俺へ軽く頭を下げる。

 

「あの確認してもいいですか?衛宮さんはセイバーのマスターで遠坂さんはアーチャーのマスター、でいいんですよね」

「あら、なんで私がアーチャーのマスターであることが確定しているのかしら。まだ姿を現したこともないのに?」

 

遠坂が警戒半分、挑発半分で式波に問いかける。しかしその睨みは全く効いていないかの如く式波は柔らかい物腰で反証する。

 

「だって、どうなるか分からない不確定要素の多い戦争のほぼ始まりからサーヴァントを付けずに行動するなんて命知らずな真似、一流の魔術師でもしないようなことをしていたでしょう?それがもし作戦だったとしても最初からそれを立てることが重要視されるのは遠距離・中距離・魔術・隠密などの正攻法ではやや難のある性能を持つサーヴァント・・・アーチャー、ライダー、キャスター、アサシンでしょう。あなたは隠し事が続けられるようなタイプには見えませんし、マスターのいろはも知らない衛宮さんと一緒にいる時点で卑怯な不意打ちは嫌いそうですし、キャスターはそもそも魔術の家系としてしっかり成り立っている遠坂が狙って召喚する必要性を感じません。ライダーに関しては火力はあっても基準のステータスがややバランスに欠けていますから。となると消去法でいけば、アーチャーでしょう。クラススキルとして「単独行動」があり、尚且つ狙撃のできそうなサーヴァント、狙撃ができるということはより視野が広いという事。ならマスターから離れて行動することも可能、マスターの危機を察知したらすぐに狙撃するか駆けつければいい。いざとなったら令呪という手段もあるし、ほら、理に適ってる。———————まあ一昨日は何故か現れませんでしたけど」

「っ――――――」

 

遠坂が息を吞む。いや遠坂だけじゃない、俺もセイバーもその場にいる式波以外の全員が凍り付いた。一昨日の夜の、たった一回の接触だけでここまで分析してしまっている。明らかに自分たちとは格が違う、戦いに慣れた者の分析ほど理に適い当たるものなどない。そう、痛感せずにはいられなかった。

 

「それで、あなたの用件は何?これが宣戦布告なのだとしたら余程の自信ね、結果が出ないうちからもう勝利したつもりでいるのかしら」

「いいえ、ただ用件を伝える前の前提の確認です。衛宮さん、衛宮切嗣という人は知っていますか?」

 

遠坂の苛立ったような問いに否定で返しつつ式波は俺を真っ直ぐに見つめる。

 

「ああ。知ってるも何も、俺の親父だ」

「ではその衛宮切嗣はどこに?ここにはあなた方とアーチャーの魔力しか感じ取れませんが」

「親父はもう死んだんだ。5年前に」

「嘘・・・・」

 

ここにきて初めて、式波は驚いたように目を見開いた。そしてすぐに憂いを含んだ目が伏せられた。

 

「そう、死んじゃったのね」

 

ぽつりとこぼされた言葉。無機質なようで、どこか悲しみ交じりの響きを感じさせるそれはここにはいないだれか(切嗣)に向けられたものだった。

そして目を閉じ一拍おくと、整理がついたのか、またさっきと同じように真っ直ぐ俺たちを見据える。

 

「前提も確認し終えましたし、用件を言わなければなりませんね。私のこの聖杯戦争での役割と目的は「イリヤスフィールを守ること」と「衛宮切嗣の抹殺」です」

「親父の、抹殺だって?!」

「衛宮さんの苗字からひょっとしたらと思って、確信はありませんでしたけど昨日衛宮さんと別れてから調べてみたらここに住んでるってわかったから、一応様子見も含めて今日出向いてきたんです。」

 

淡々と話す式波にいままで黙っていたセイバーが問いかける。

 

「セツナ、それはアインツベルンや式波からの依頼ですか?それとも貴女個人のものですか?」

「・・・・・」

「答えなさい。少なくともあなたを信用しこの場に通したシロウには説明する義務がある筈だ。」

 

どういうことだ?切嗣は魔術師だった。だからどこかしらでアインツベルンか式波の家との関わりがあったのだとしたら前者の依頼に関しては納得できる。しかし後者の式波個人としてとなると全く思い当たる節がない。

 

「・・・・わかりました。ここに通してくれた衛宮さんと、そしてあの人の一番の被害者だったかもしれないあなたに免じて説明します」

 

観念したように式波は肩をすくめた。

 


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