Fate/stay night Ideal alternative(アイディール・オルタナティヴ)   作:紗代

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四日目・昼2 お使いのご褒美

 あれから式波を伴いながら卵以外にもさまざまな品物を買うのに奮闘した俺は、彼女とともに一息つくため公園のベンチに腰掛けた。

 

「悪いな、付き合わせて。」

「いいえ、このくらいは―――――――それで、戦果は?」

「ああ、おかげで一週間分くらいの買い物ができた」

「そうですか、それはよかった」

「と、そうだ」

 

さっきの商店街で買った大判焼きの袋を開けた。

 

「式波はあんことクリームどっちがいい?」

「それじゃあクリームを」

「クリームな、ほい」

 

熱々の大判焼きを物珍しそうにみる式波。

 

「いい匂い・・・あの、これはなんていう食べ物ですか?」

「大判焼き。さっき味を聞いたときはすんなり答えたのに、知らないのか?」

「クリームは大抵生クリームかカスタードクリームって決まってますし、あんこより馴染み深いのでつい・・・」

「そっか、熱いから気を付けろよ」

「はい・・・あむ・・!」

 

熱々のそれに苦戦しながらも嬉しそうに顔を綻ばせる。なんだかこうしていると小動物を餌付けしてる気分になってくる。

 

「あ、の・・・」

「ん?」

「そんなに見られると、食べ辛いんですけど・・・なにかしましたか私」

「え、あ、ああ。悪い、うまそうに食べるなって思って、つい」

 

小さい口で懸命に咀嚼してるところとか、熱くて小刻みに冷まそうとしてるところとか。こう、いちいち俺のツボをついてくる。

すると式波は恥ずかしそうに俯いた。

 

「そう、ですか」

「そうそう。そうだ、大事なこと言い忘れてた」

「?なんですか」

「昨日の夜。バーサーカーたちを止めてくれただろ。ありがとう。おかげで命拾いした」

 

その話題を切り出すとやや表情が硬くなり、緩んでいた空気もどこか張り詰めたものになる。

 

「・・・・敵対者にお礼を言う人には初めて会いました。でも気にしないでください。あの時は作戦も立てないまま出ていったイリヤたちを連れ戻すためにいたに過ぎません。こんな運の良さがいつまでも続くと思わないほうがいいです。イリヤは確実にあなたを殺しに来るでしょうし、他の陣営もそろそろ動いたっておかしくないですから」

「けど俺が言いたいんだ。あの時おまえがいなかったら間違いなく俺は死んでた。だから、ありがとう」

 

式波はその言葉に一瞬面食らうと少し雰囲気が和らいだ。

 

「変な人ですね、あなた。・・・・そういえば名前聞いてませんでした。」

「衛宮士郎だ。よろしくな、式波」

「はい、よろしくお願いします。」

 

敵意を感じさせないその笑顔に不意を突かれる。

 

「っ―――――――」

「じゃあ、私はこれで、大判焼きありがとうございました。ではまた今度」

 

そう言って去っていく式波は、魔術などと無関係の普通の女の子のような足取りだった。

 

「なんだ、普通に笑えるんじゃないか」

 

一人残った俺も、セイバーたちの待つ家へ帰るのだった。

 


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