Fate/stay night Ideal alternative(アイディール・オルタナティヴ) 作:紗代
朝、目が覚めた。昨日の夜は色々なことが立て続けに起こりすぎて正直あまり寝られなかった。というよりほとんど寝ていない。
「よっ、と」
とにかくずっとこうしているわけにはいかないので早々に支度をして居間に向かう、とそこには―――――
「あら、起きた?おはよう、衛宮君」
我が学園のアイドル、遠坂凛がいた。
「と、遠坂!?なんで遠坂がウチに」
と、そこで思い出した。昨日一緒に教会まで行ったこと、その帰り道にバーサーカーとバーサーカーのマスターそしてその協力者の魔術師殺しと遭遇して―――――――――。思い出すだけで背筋が凍る。
「その様子だと思い出したようね。まったく、昨日の夜にあんなに危険な目にあっといてそのまま思い出せないままだったら相当よ。それで、調子は?大丈夫そうならいろいろ話したいことがあるんだけど」
「ああ、大丈夫だ。と、長くなりそうならお茶入れるけど」
「お構いなく、それと一応アーチャーは部屋の外で待機させてるし、あなたに危害加えないことを条件にセイバーにも見張っててもらってるから万が一他のマスターが来ても対処できるようにしてあるわ」
「それはありがたいけど・・・・そこまでするほどの話ってなんなんだ?」
「そうね、衛宮君は昨日の夜のこと、どう思う?」
「どう思うって・・・」
昨日の夜。凶悪なまでに強いサーヴァント・バーサーカーと幼くも冷酷なそのマスター。そして、魔術師殺し。彼女の介入がなければ、きっと俺はあの時死んでいた。
「あの怪物、バーサーカーは正直言って俺一人の手には余る。いくらセイバーが強くてもきっと昨日の二の舞だ」
それが正直なところだった。そして遠坂も同じことを思っていたのか頷き話を切り出した。
「私のアーチャーもきっと正攻法では勝てないわ、相手はギリシャ神話最高にして最強の英雄とアインツベルンのマスター、そして魔術師殺し。・・・・アインツベルンは今回の聖杯戦争に相当入れ込んでいるようね」
「そこで、提案なのだけれど」と遠坂はそのまま続ける。
「衛宮君、私と同盟を組まない?」
「遠坂と?俺が?」
「そう、あくまでもバーサーカーを倒すまでのものだけど。あなた、見たところ魔術に関しては知識も技術もせいぜい半人前がいいところだし、そんなんじゃいくらいいサーヴァントを引き当ててもすぐに殺されるわ。私はアーチャーの傷を治すためにもなるべく消耗したくないし、いざとなったらあなたのセイバーに協力してもらって敵を迎撃すればいい。忙しいから障り程度しか教えられないだろうけどあなたの魔術の修行を見てあげられるわ。—————どう?悪くないと思うけれど」
それは願ってもない提案だった。
「俺としては条件が良すぎるくらいだけど遠坂はそれでいいのか」
「あのね、あくまでバーサーカーがいなくなるまでよ。いなくなった後は敵同士なんだから私の心配は無用よ。あなたはあなたの心配をすることね、昨日のバーサーカーのマスターみたいに真っ向から狙ってくるようなサーヴァントばかりなわけないじゃない。そういう白兵戦が苦手なキャスターやアサシンみたいな搦め手や策略を使って相手の裏をかくような連中もいること、忘れないでよね」
「ああ、恩に着るよ。遠坂」
そう答えると「ふん」とそっぽを向くように遠坂は腕を組んだ。そして手始めにこの聖杯戦争についての講義が行われ、大体内容を理解し終えたところで講義は終わった。