Fate/stay night Ideal alternative(アイディール・オルタナティヴ)   作:紗代

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七日目・朝 異変

学校に着いて校内に入る、とすぐ異変に気付いた。建物はなんともない。だが

 

「なんだ、この感覚・・・」

 

身体に感じる違和感。身体がややだるい。なんとなく息苦しく感じるここは間違いなく結界の内部だ。校舎の入り口を閉じていなかったのは空気が澱むからだというのは分かる。ただこの結界の用途が分からない。遠坂のように魔術師の見分けがつく奴ならば遠坂や俺を狙って戦いやすい場に作り替える、もしくは空間を囲って閉じ込めるというならわかる。しかし、なんだかこれは少し違う気がした。例えるならそう、狙った獲物を確実に囲いゆっくりと咀嚼していくような、そんなどろりとしたもの。ここの空間、いやひょっとしたらこの校舎全体がまるで

 

「生き物の腹の中みたいだ」

と、つぶやいたところで足音がする。振り返ると今来たばかりで険しい顔をする遠坂と目が合った。

 

「衛宮君、これは」

「ああ、間違いなくサーヴァントとマスターの仕業だ」

「そう・・・・この結界、見たところ相当やばい代物よ。何処かにある起点を探し当てて破壊しないと校舎にいる全員の命がないわ」

「俺も今来たばっかりだけど気付いた。無関係な人間まで巻き込むなんてな」

「おそらくだけど、この結界の性質からして――――」

 

と、遠坂が説明しようとしていると一気に身体が重くなる。そしてそれとほぼ同時にそばの教室から大きな物音がした。

二人で目配せし急いで教室のドアを開けると、そこに広がる光景に目を見開く。教室にいる人間は全員が倒れ伏しており、そのうえ身じろぐことさえしていない。俺と遠坂は一番近くにいた男子生徒に駆け寄って助け起こす。しかし呼吸も聞こえずただ目が虚ろに開かれたままの状態だった。

 

「・・・ひどいわ。きっとこの結界を張ったやつが結界を発動させたのね。この分だとおそらく他の教室も。人の生命力を吸い上げてってる・・・・まずいわね」

「とにかく今は起点探し、もしくは術者を倒すっていうことでいいのか?」

「そうね、手っ取り早いのは術者を倒して結界維持の魔力を根こそぎ奪うっていうのだけれど、ただここまでの規模でこれほど強力で濃い結界を張れる存在よ。そう簡単にはいかないでしょうね・・・となると起点の破壊が一番かしら。でも起点の場所が――――」

「この結界の起点なら、知ってる」

「は?何言ってるの衛宮君。あなたも最近学校休んでたんだから知るわけないでしょうが」

「いいから。ここに入ってきたとき、大体全部理解した」

「何それって、こら、待ちなさい!」

 

俺は遠坂よりも先に教室を出て廊下を歩き階段を上る、そして2階廊下の突き当りには―――――女がいた。

 

「おまえ、サーヴァントか」

「————————」

 

女は何も言わずに鎖の付いた短剣をこちらに投擲する。

 

「っ!」

 

それを間一髪で避け、相手の手元に戻る際のことも考慮して制服の上着を強化する。

 

「これでも、喰らいなさい!!」

 

そこへ追いついた遠坂がガンドを放ち、それは女に命中しよろける。が、女は容赦なく俺に短剣を放つ。俺はそいつを避け、短剣に付いた鎖をひっつかんだ。

 

「なぜ、なぜこの空間でそんな動きが―――――」

 

女の理解できないものに対する声色でふと気づいた。なぜ俺はこの空間でこんなにも影響を受けずにいつも通り動けるのだろうか。そして思い出したように手首を見るとそこにはここに来る前に刹那からもらったリボンがあった。もしかして、こいつが俺をこの空間から守ってくれているのだろうか。

すると、俺に結界の効果がないことを覚ったのか相手はおもむろに鎖を引き寄せたかと思うとどこにそんな力があるのか俺を引きずり窓に叩きつけた。

 

「が、っづ、ぅ」

 

前もって上着を強化していたため衝撃で散らばるガラス片で傷つくことはなかった。しかし相当勢いがあったのか衝撃を殺しきることが出来ず激痛と吐き気に襲われる。

 

「衛宮くん!」

「来るな・・・遠、坂」

 

壁にへたり込んだ俺、そして俺をふっ飛ばしたことで手元に短剣を取り戻した女が近寄ってくる。

だめだ、このままじゃ確実に、殺される。けど衝撃とさっきの当たり所が悪かったのか動けない。

 

こんなところで終わるのか、俺は/彼女に従わなかったくせに。

何もできないまま/彼女を失望させて。

―――――それはできない/彼女の心に触れてさえいないのに。

途端に左手の甲が熱くなる。

 

「来い、セイバー!」

「シロウ!」

 

女が短剣を振り下ろすもそこにセイバーを呼んだことで短剣が弾かれる。

 

「逃がすものか!」

「っ!」

 

女が後退り距離を置くもセイバーはいとも簡単に追いつき剣を振り下ろした。短剣を弾かれ抵抗する術を持たない女はセイバーによって深手を負い血まみれだった。そしてそんな隙を逃すまいとセイバーは不可視の剣に風を纏わせ―――――

 

風王結界(インビジブル・エア)

 

一気に振りぬいた。それにより廊下や教室の窓は強風に耐えられず砕け散り、至る所に切り傷や壊れた校舎の扉などが散乱している。女の方に目をやるともうこれは、見るからに致命傷だった。ただでさえ深手を負っていたのに更に切り傷などで赤く染まった姿は敵ながら痛々しく思える。

 

「———————さよなら、サ、ク」

 

小さく何かを囁くようにして光の粒子になっていく女。その粒子が完全に消えて、結界が解除されたのを感じ取って、やっと俺は肩の力を抜いたのだった。

 




 士郎が起点を把握しているのは言わずと知れた彼の「構造把握」で結界と校舎の構造を把握していたため。
 あと、ここで令呪一画をセイバーを呼ぶのに使いました。前回刹那に言われたことと彼女への想いとでいろいろ思うところがある模様。
 刹那のくれた礼装には彼女の言った効果だけではなく実は治癒促進などの効果+彼女の魔力が込められています。

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