PSO2 Extend TRIGGER   作:玲司

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今回は、サブタイトル通り2話と3話の間となります。本当は2話と共に付けるつもりでしたが、投稿した時との読みやすさ話しの管理、理解などを自分で考えて、これの方が良いのでは?と思いこの形にしました。


PHASE2.5 「蠢く深淵の中で」

 

空を見上げれば無数の星空、足元を見れば砂利とクレーターが広がる世界。

 

「月」

 

その世界の一部に建設された居住と研究を目的とした施設があった。無骨な骨組みとガラス張りの壁面。床はリノリウムの様な素材で出来たその施設には。現在14人NPCが、ホームベースとして使用していた。

そんな施設の中に設けられた地下施設エリアの一角に、黄色と水色の液体が流れ、部屋の壁には直径にして5mはあろうかという大きな機械の枠で作られたリング状のゲートが、設置されている。其処はこのゲーム世界でストーリーを楽しんでいる者ならば、誰しもがわかるマザーシップの最深部へと向かうゲートに酷似していた。

 

前触れもなくゲートの境界面が波打つ。中央から広がる波紋は最初は静かなものであったが、段々と激しさを増すとともに、その中から何かが境界を破る様に出て来た。

白くスラッとした指に白い衣服の袖が見えて来る。そこまで出て来るとスルリと全身が境界面を通り抜けて出てくる。その姿は殆どの者が知っているであろう、ルーサーのモノだ。

上機嫌に鼻を「フフン」と鳴らしながらカツカツと足音を立てて施設内を進んで行く。この施設を利用している者達が使い、自分にも割り当てられている個人の部屋ではなく、自分が果たすべき役目として成した成果を報告するために。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

モニターとサーバーコンピューターが置かれた大部屋にて、少女がモニターの前でパネルを叩いていた。

気品あふれる白を基調とした、レディーススーツの様な衣装に、深い青の流れるロングヘア―。見た目は幼くとも、マザークラスタの頂点に立つマザーその人であった。

モニターに映される情報を眺め、パネルで何か数値を打ちこんだり、文字を入力しながら、データを弄っていた。

「集まってきているデータの方は如何だい?」

モニターに映っては消えていくデータを見ながら面白そうに、ルーサーはマザーに尋ねた。その声にマザーの手は一瞬止まったが、再び動き出しパネルを叩いていく。

「概ね順調ではある。しかし、私達の存在からすれば本来はこのような端末などいらぬのにな・・・」

何処か皮肉めいた調子で呟きながらマザーはデータの整理を続けていく。まるでモニターに何が映るのかあらかじめ分かっている様に、映る情報を目では追わず、映る全体の像を「ぼう」と見つめているようである。

その様子をとても面白そうにルーサーは見つめながら、胸ポケットを弄る。其処から取り出したのはコンビニなどで売っているようなフラッシュメモリであった。

「だけど、僕達はこうして行動する事は、とても生物・・・人間に近いとは思わないか?」

マザーの視界を遮る様に、メモリをチラつかせ、邪魔だと言わんばかりにマザーがメモリをルーサーの手からむしり取った。そして、すぐ様にモニターとつながっているデスクトップPCの様な端末に接続してデータを抽出していく。

「しかし、人間とは面白いものだね」

転送されるデータの状況を現したパーセンテージを見ながらルーサーは呟いた。

「怯える者、怒る者、喜ぶ者・・・反応は様々だ。だけど、そんな彼らはとても順応と対応が早い」

先ほどまで体験したデータ・・・いや、記憶をゆっくりと味わう様に蘇らせる。一番最後に会ったのは、流れる深く、黒に近い青髪を靡かせた鬼と漆黒の機械の竜人だった。どちらも戦闘能力は、並みより高い程度であったが、それだけでは言い表せない、信念の様なモノを感じさせるほど、強く戦っていた。

「しかし、クリエイター酒井も厄介なデータをプレイヤーPLに与えてくれたものだ」

そう、渋い顔をしながらマザーは呟いた。モニターに映るのは、ヴァルキュリアになった鬼と爆炎を纏う黒い竜人の姿だった。

「だからこそ・・・さ」

とても、上機嫌になりながらルーサーは更に呟く。まるで、恍惚に浸る様に。

「酒井の作った能力自体を完全には縛らず、装備条件の緩和。これこそが彼らが、不満から戦闘しない事を回避するための今の上策なのさ」

ルーサーがマザーの隣の端末を操作し始める。其処に映るのは、PL達の事細かな情報であった。HP・PPから始まり、名前をクリックすれば受けているバフ、デバフから装備情報まで映し出される。

「僕らの悲願成就の為には彼らに少しでも強く、多くのデータを提供してもらわないとね」

更新されていくモニター情報をそのままにしながらルーサーは、部屋を後にしようとドアへと向かう。データの整理はマザーがやっているだからこそ違う仕事を擦る為に。

「・・・そうそう、仮面(ペルソナ)とアーデムの様子は如何だい?」

出掛けに思い出したように、一応聞いておくかと言う様に、ルーサーはマザーに尋ねた。

「彼らを目覚めさせるにはまだだな、解析完了した分は15%程だ」

冷たく、煩わしいと言いたげに呟くマザーの言葉に、ルーサーの口角は吊り上がる。ニンマリと笑うその表情はとても楽しそうであった。

「私からも一つ良いか?」

マザーがルーサーを何とか視界の端に映るような位置に体を向けて尋ねた。その言葉にこたえるようにルーサーは手の平を「どうぞ」と言う様に返して見せた。

「貴様は今から何処へ行く?」

その問いにくつくつと肩を震わせながら、声を抑えてルーサーは笑った。

「手駒を増やすのさ。ダークファルス(ぼくら)ときみたちマザークラスタ(きみたち)だけじゃ、PL(かれら)の相手は務まらないからね」

そう言い残してルーサーは部屋を後にした。

一つため息をマザーは吐いて、指を止めてモニターの情報を見つめる。

「本当に、この手段が最善であれば良いが・・・」

モニターをなぞる指、映っているのは人型のシルエットにパーセンテージが映されている。数字は14.78%から少しずつ増えていた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

月施設の地下に設けられた収容施設に、アークス達は捕らえられていた。自分の状態から上下位は分かるが、何処を剥いても暗闇でこの場所はどれ程大きな場所かは分からず、それだけではなく当然ではあるが時間すらも解らない。

そこに、両手を両足を広げX字の様な状態で張り付けにされた2人のアークスが居た。

「オイラ達を解放しろーっ!」

ツンツン金髪ヘアーに黒衣を纏った男のアークスが悶えながら叫んでいた。どれ程拘束を外そうと動いても、この程度では外れない事も武器が無いから脱出の足掛かりにならない事も分かる。だが、動かなければと心の底からの衝動に身を任せて必死に叫び、逃げ出そうとしていた。

「やぁやぁ・・・ご気分如何かな?」

闇を切り裂いて、ではなく闇の中から這い出るように、アークスの視界に入って来た。

「ルーサー!」

名前を叫ぶアークスの目の前で、「お静かに」と口に人差し指を当てて促す。思わず口を噤むアークスではあるが、歯をグッと噛み締め、隙があれば襲い掛かると言いたげに睨み付けている。

「まぁ、落ち着き給え。僕としては、その拘束を解いてあげても良いんだけどね。ただ今解いても暴れるだろ?」

そうルーサーが聞くと「当たり前だ!」と返され、少し困ったように、だが何処か嬉しそうに表情を歪めながら背を向ける。

「ジャオン・レイヴズ君・・・君の気持は変わらなくても僕の話を聞いてみないか?」

ゆっくりと焦らない様にと言いたげな口調で、ルーサーは語り始めた。

「最も君が聞いてくれないなら、こっちに聞いてもらうがね?」

ジャオンの隣で気を失っているアークスに手を伸ばそうとするルーサー。

流れる様なロングなライトブラウンヘアー。自分が望んで欲しいのであろうメリハリのついたボディライン。この世界では大して気に留めてはいないだろうが、現実では誰もが目を止めるであろう。

「エクレアさんに触るな!:

ジャオンの声が轟く、先ほどまでとは違う、とても強い怒りの色を乗せて。

「じゃあ、お話しをしようか?」

手を引きながら、ジャオンを見るルーサーに、「フン」と鼻を鳴らし、ジャオンはそっぽを向いた。

聞く気などない。そうは思っていたが、彼の言葉が紡がれて行く度にジャオンは、一言、また一言と言葉を受け入れ始めていた。

 




リアル/ゲーム
名前  加嶋秀介 / 菊花

性別  男    / 女

身長  177   / 182cm

体重  56    / 49kg

メインクラス   HuBr

カンストクラス  Hu、Fi、Ra、Gu、Te、Br、Bo、Su

オープンβからの玄人プレイヤー。
ビジュアル的には冷たい印象を受けるが、とてもフレンドリーでビジュアルはほぼ一緒でヒューマン、キャスト、デューマンを持ちカンストクラスも同じである。
普段から他人に優しく接するのであるが、先天的にS気があるのか時々、心を抉る様な言葉が飛び出す時があり、他人に嫌な汗を掻かせる事がある。

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