ONEPIECE~エピソード・オブ・クリューギュロス~ 作:与麻奴良 カクヤ
ここは新世界ログに乗らない人口の島
ポツリと建つ家と少し広い程度の庭しか無い島。
その家の二階、階段を上がって直ぐにある部屋に向かってそのメイドは出来うる限りの速さで優雅に素早く歩いていた。
通常時でなら灰色の短い髪の毛を一切揺らさずに歩いてであろうが今日だけは珍しく揺らしキリっとした表情も焦っている。
普段なら乱れ一つない素朴な黒を主張したメイド服も今だけは乱れていた。
いつもなら起こらないはずのメイドとしての行いを気にしないくらい焦っていた。
そのメイド、ティカ・ヴァントが目指している部屋はティカのご主人様の部屋である。
数分前ティカはご主人様の部屋に呼ばれた。
ティカはご主人様の部屋にお呼ばれされたことに焦っているわけではない。
そんな事十一年前にはむしろ頻繁に呼ばれていた部屋だ。
ではなぜ焦っていているかと言うとそのご主人様は少なくともあと半年は目覚めないはずだからだ。
それが家の手入れをしている最中に頭の中に部屋に来なさいと感じたのがほんの数分前。
ご主人様の部屋は二階の階段を上がってすぐの所にある。
奥には三部屋、自分の部屋と今は部屋の持ち主のいない二部屋だ。
そして着いたご主人様の部屋。
ノックし声を掛ける。
メイドとしての基本だ。
「お嬢様?お呼びでしょうか。入りますよ」
部屋からは返事はしない。
眠っている間に部屋に入る事は禁止されていないのでドアを開けてみる。
部屋の端に見た目は普通なでも寝心地は天竜人ですら味わえない程に最高なベッドがある。
この家にはそんなベッドが四つこの家に住んでいた人数分ある。
ご主人様ご自身が創られたものだ。
そんなベッドに眠っている見た目が子供に見える姿をした女性がティカのご主人様である。
寝息なんてない。
それどころか寝ていない。
生きている状態を停止させたのが十一年前から続いている。
寝返り一つしないその姿を見て間違いだったのか?と思い庭の手入れに戻ろうと後ろに振り返ったその時
「あれ、ティカ?」
ティカがもう一度ベッドに振り返って見たのは生命活動を停止していたはずのご主人様が起きていた。
「お嬢様、約束の時間まであと半年はありますがよろしいでしょうか?」
ティカが尋ねると答えは直ぐに返ってきた。
「今日はいいの!」
子供らしくはしゃいだ声だ。
「今日は何かお嬢様が起きられ程の日でしたっけ?」
ティカは思いあたる事がなく素直に尋ねる。
「ふふ~ん。聞きたい?聞きたい?しょうがないなぁ~ティカは。え~とねぇ今日で二十周年なのだ!」
本当はかなり後に登場予定の二人。
今、公開しても問題ない情報で作りました。