実は、打ち込みに使っていたPCが少し故障気味なので、次の更新も、少し間が空いてしまうかもしれません。ご了承ください。
では、第八話です。主人公目線でお届けします。
第八話
僕は、″個性″を持っている。
初めてこのことを知ったとき、ぼくは思った。
『もう僕は、これから独りぼっちだ。』と。
だけど、違った。
僕の昔の友達、天珠ちゃんと優星も″個性″を持っていた。
渚ちゃんも、形は少し違うものの、″サイドエフェクト″を持っていた。
僕は、独りじゃなかった。
この四人でいれば、これから楽しいことばかりが待ち受けているように思える。
こんなに心強い味方がいるから。
僕は今。
最高に幸せで。
心の底から今を楽しんでいる。
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今日は、狙撃訓練の日。
遠くにある的に向かって、いかに正確に射撃できるかという訓練だ。
最近、ようやくちゃんとできるようになってきたから、今日の訓練で結果を残したい。
「どうだったか、操志?上手くできたか?」
訓練後、僕に声をかけてくれたのは。
荒船隊隊長、荒船哲次さんだ。
「そうですね...。個人的にはもう少し上手くやりたかったんですけど...。」
そう言いながら、結果を見てもらう。
「う~ん...。前よりかはちゃんと形になってきてるじゃないか。練習の成果だな。」
「いえいえ。もっとできるようにならないといけませんから。」
と、そこで、荒船さんがふっと思い出したように手を打って、質問を投げかける。
「そうだ、操志。これから暇か?」
「え?これからですか?まあ、予定はないですけど...。」
「よし、それならこれから攻撃手の仮想訓練施設へ行かないか?」
「攻撃手の?誰かと約束してるんですか?」
「いや、そういうわけじゃないが、少し練習に付き合ってくれねえかな、と。」
僕なんかで練習相手になるんだろうか?
そう思いながらも、一緒に行くことに。
荒船さんは、元攻撃手という共通点のある僕に、何かと教えてくれる、頼りになる先輩だ。
しかも、攻撃手でも、現在の本職である射撃手でも、マスターランク越えしていて、ゆくゆくは完璧万能手になるという野望を持っている熱い人でもある。
「荒船さん、なんで急に攻撃手の練習を?」
思い切って聞くと、
「操志、この間のランク戦は見たか?」
と、逆に聞かれた。
この間のランク戦...。
「あ、あの東隊と柿崎隊との試合ですか?」
「そうだ。俺は柿崎隊の瑠璃川に負けて、攻撃手の練習も、もっとちゃんとやっておかないといけないなって思ったんだよ。」
なるほど。新参者に負けてしまったのを気にしてるということだろうか。
仮想訓練施設に着いた。
そこで何試合かやった後に、僕が、荒船さんの対トリオン兵の練習の様子を見ていたとき。
「あれ?操志くん?どうしてここに?」
後ろから声をかけられた。
振り返ってみると、そこには優星がいた。
「いや、ちょっと荒船さんの練習に付き合って、って優星は誰かと待ち合わせか?」
「いや、俺は出水さん探してるんだけど...。」
「あ~、合成弾の件?」
「そうです。でもお願いしても聞いてくれるかは分かんないんすよね~。」
と言って、僕のほうを見た後、ポンと手を打つ優星。
「操志くん、荒船って人と一緒って言ってませんでした?その人から通してもらうっていうのは無理ですかね?」
僕は考える。
荒船さんと出水さん。
もちろん知り合いではあるだろうけど射手と射撃手ってそこまで交流ないしなあ...。
そんなことを思っていると、荒船さんが出てきた。
とりあえず事情を話すと、声をかけるところまでは手伝ってくれると言ってくれた。
さすが、兄貴。頼りになります。
出水さんはいつも見かける三人組で、個人戦をやっていた。
そのうちの槍弧月を使っていた人に荒船さんは声をかける。
「なあ、米屋。」
「おお、荒船さん!どうしてここに?」
「いや、ちょっとな。出水は個人戦中か?」
「そーすね。緑川とやってます。」
「交替のタイミングになったら少し来てくれと伝えてくれ。頼む。」
「別にいいですけど...。なんか用事でも?」
「俺は用事ないんだが、こいつらがなんかお願いがあるとかで。」
「ふ~ん...。まあ、分かりました。伝えておきますね。」
「ああ、ありがとう。」
少し待っていると、出水さんが出てきた。
「荒船さーん。呼ばれてるって来ましたけど、何ですか?っていうか、この二人は?」
優星と僕のほうを見て、小首をかしげる出水さん。
荒船さんが質問に答えるよりも先に、
「俺、源優星って言います!突然なんですけど、合成弾教えてくれませんか?」
張り切って自己紹介とお願いをする優星。
出水さんは、え?という表情を浮かべている。
優星は、そこから詳しく説明していった。
自分が射手だということ。合成弾を知ったこと。などなど
途中で、米屋さん、緑川さんも来て、話を聞いていた。
一通り話し終わると、出水さんが口を開いた。
「合成弾、お手軽にできるものじゃねえぞ?お前がどれくらい戦えるか分かんねえのに、教えることはできねえよ。」
そういわれた優星は、
「それなら一回!見せてもらうだけでもいいので!お願いします!」
そこから、優星の懇願タイム。
そのお願いは実を結び、見せてもらうことに。
他の関係ない四人で、見届けてあげることに。
僕はひとり考えていた。
優星なら、見せてもらえればできるようになる。
それに対して、先輩方はどういう反応をするのだろうか、と。
出水さんが実践し、イベントは終わったと思っている他の四人の先輩方。
優星は、一人で何やらぶつぶつ言っている。きっとイメージしているんだろう。
小声で、OK。とつぶやいた後、
「出水さん!多分できるので見ててもらえませんか?」
と、今にも帰ろうとしていた先輩方に声をかける優星。
「はあ?できるってお前、俺の話聞いてたのか?ちょっとやそっとでできるものじゃねえって...」
「お願いします!一回!一回でできなかったら諦めますから!」
渋々という感じで許可した出水さん。
その結果は―――。
もちろん、成功だった。
成功した瞬間、四人の先輩方はただただあ然としていた。
そりゃそうだ。
B級隊員なりたての奴が、合成弾を成功させたのだから。
僕と優星は顔を見合わせて。
なんでできるんだ?という顔をしている先輩方に、優星の個性について話すことにした。
話し終わった後も、先輩方は驚きの顔をしていた。
一番早く復活したのは緑川さんだったが、彼は突拍子もないことを言ってきた。
「ということは、君が、少し噂になってた『洗脳』の人?」
と、僕のほうを指さして聞いてきた。
僕がうなずくと、彼は目を輝かせていった。
「個人戦しよ!」
「へ?」
「いや~、噂を聞いてたときから気になってたんだよね~。ここで会ったのも何かの縁だしさ、個人戦、やろう!」
困った。
僕は、『洗脳』が嫌で、攻撃手は卒業したのに、誘われては...。しかも、なんか断りにくいし。
黙っていると、荒船さんが助けてくれた。
「緑川、悪いけど、操志は洗脳してしまうのが嫌で攻撃手をやめてるんだ。あんまり無茶させないでやってくれ。」
神ですか、あなたは。
一方、優星のほうも交渉は少し難航しているようだった。
やはり、″個性″があるといっても、初心者は初心者だ。
あまり、最初から高度なテクニックを教えるのは、教える側も気が引ける。
しかし、何とか教えてもらえることになったようだ。
優星と出水さんはその練習を、米屋さんと緑川さんは個人戦の続きをしにそれぞれブースへ。
僕は、荒船さんとその様子を眺めることにした。
「操志、攻撃手はもう二度とやるつもりはないのか?」
唐突な荒船さんからの質問。
「そうですね。この個性を使うことにやっぱり抵抗感があるので...。」
「そうなのか。でも、いざってときに近接戦もできたら強いんじゃないのか?」
「そうは思いますけど...どうでしょう?人が寄ってきた段階で洗脳すれば、相手を傷つけることなく追い払うことはできるので...。」
少し黙る荒船さん。そして、言った。
「操志は優しいんだな。」
涙が出そうになった。
それほどまでに、思いやりを感じる言葉だった。
「それでも、」続けて言われる。
「時には無慈悲に相手を斬る、くらいの覚悟は持たないといけないからな。」
「・・・はい。そうですね。」
満足そうにうなずいた後、
「ところで、お前は部隊、チームを作る気はないのか?」
と言われた。
言われてみればそうだ。
これまで、周りに気を取られて忘れかけていたが、B級になった今、部隊を作る必要がある。
言われてみればそうですね。忘れてました。と言おうと思ったその時。
「ソウくん?ソウくんだ~!なんでソウくんがここに?」
聞きなれた声がした。
これは、天珠ちゃんの声だ。
第八話、読んでいただきありがとうございました!
原作キャラとの絡みをできるだけしっかり描きたいと思い、こんな感じに...。
いかがだったでしょうか?
次話も、主人公目線です。
感想などなど、お待ちしています!
P.S.荒船哲次、かっけえなあ。