″個性″という『呪縛』   作:kwhr2069

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予告通り今回は、源優星目線でお送りします。


第一章ーvol.2

第六話

 

 

 俺は、源優星。中学三年生だ。

 

 

 俺は昔から、なんでもすぐに出来るようになる子だった。

 

 

 "個性"。

 

 それは、他の人にはない、自分だけの特別な能力。

 

 

 俺は、"個性"を持っている。

 

 『模倣』という個性だ。

 

 

 俺がこのことを知ったのは、小四の時。

 

 その当時、野球をしていた俺は、上手な上級生やプロ選手のプレーを見よう見まねでなんとか上手くなろうと頑張っていた。

 

 数日間の練習でコツをつかみ、できるようになった。

 

 全て、完璧に。

 

 

 ピッチャーをやってみると、変化球も投げられた。

 

 利き手ではない、左投げまでできるようになった。

 

 

 数日間でのこの急成長。

 

 さすがに少し変だと思って病院に行ってみると、"個性持ち"だと言われた。

 

 

 "個性"。

 

 自分だけが持つ能力。

 

 それを自分が持っている。

 

 素直に嬉しかった。

 

 

 

 ただ、それは最初の頃だけ。

 

 なんでもすぐにコツをつかみ、上達する。

 

 そんな人は、人気者にはなれない。

 

 僕の周りから、一緒に遊んでくれる友達は減っていった。

 

 野球もやめた。

 

 僕は、独りだったんだ。

 

 

 独りになって思い出すのはいつも、小学生に入る前の記憶。

 

 天珠、操志くん、ナギちゃん。

 

 あの三人と遊んでいたころが一番楽しく、最も輝いていた。

 

 その三人と、最近再会した。

 

 しかも、三人とも俺が目指しているボーダー隊員になっていた。

 

 

 

 俺は今、最高の気分だ。

 

 今までに感じたことのない幸せを感じている。

 

 

 今日は、C級隊員として初の合同訓練の日。

 

 天珠と操志くんも見に来てくれるらしいし、下手な姿は見せられない。

 

「よし!行くか!!」

 

 気合を入れ、俺は本部へと向かう。

 

 

 

 

 余裕だ。

 

 何度か、こっそり練習してたから、しっかりとイメージ通りできている。

 

 あ、これ秘密ね。

 

 

 合同訓練も終わった。

 

 今は皆それぞれブースに入って、個人戦をしてポイントを上げている。

 

 かくいう俺も。

 

 

「アステロイド!!」

 

「くっ...。」

 

「まだまだぁ!オラァ!!」

 

 

 吹き飛ぶ相手の身体。

 

 

 これで、四連勝。

 

 俺のトリガーは、アステロイド。

 射手用のトリガーだ。

 

 俺は射手を一番やってみたかったし、実際使ってて超楽しい。

 

 

 と、対戦の申し込みが。

 

 『レイガスト 2950』

 

 初のレイガスト使いとの戦いだ。

 

 

 転送。

 

 レイガストは重いかわりに、防御でも攻撃でもそこそこ使えるトリガー。

 

 まずは、

 

「アステロイド!!」

 

 とりあえず、開始早々ぶちかます。

 

 予測していたのか、相手は(シールド)モードでがっちりガードしていた。

 

 こうなると、手が出ない。

 

 いくら攻撃しても盾モードのレイガストは堅いから、勝ちようがない。

 

 俺は、攻撃を四隅に集中させる。

 

 角の方が削れるかなと思ったのだが、あまり変わらないようだ。

 

 

 少し諦めかけていると、ようやくヒビが入ってきたように見えた。

 

 相手もしびれを切らしたようで、俺が攻撃を止めた途端、

 

「盾モード解除!」

 

 と、攻撃する気満々だ。

 

「スラスターON!!」

 

 そのまま、突っ込んでくる。

 

 何とか、ぎりぎり避ける。危ねえ。

 

 

 射手は、近接戦があまり得意ではない。弾を発射するのにも手間がかかるからだ。

 

 だから、近接戦は避けたかったんだが。

 

「アステロイド!!」

 

 とにかく近寄ってこれないようにけん制する。

 

 しかし、じりじりと二人の距離が縮まる。

 

 そして、

 

 

「オラァ!」

 

「おっっと!」

 

 振ったらかするくらいの距離間になる。

 

 上手くレイガストで俺の攻撃をしのぎながら、攻撃の機会をうかがっている相手。

 

「(このままじゃジリ貧だ。ここは潔く負けるっていうのも...)」

 

 こんな考えが頭を巡ったとき、

 

 一つひらめいた。

 

 

「(一旦離れないと。...よし。)」

 

 そして俺は、

 

「アステロイド!!」

 

 地面にそれを打ちつけ、相手から距離を取る。

 

 

 そして、相手と見合う。

 

「(チャンスは、一回。集中。)」

 

 

 相手が動く。

 

「アステロイド!」

 

 しかし、かわされ、

 

「スラスターON!!」

 

 飛んでくる相手。そして、

 

 

「アステロイド!!」

 

 僕は思いっきり上に飛んだ。

 

 背後の壁に弾をぶちかまして。

 

 

 視界を失った相手に、

 

「アステロイド!!!」

 

 上からの弾撃。相手は防ぎきれず、俺の勝ちだ!

 

 

 それにしても、長かった...。

 

 

 戦いにつかれた俺は、天珠と操志くんのところへ。

 

「オッス~、お二人さん、どうよ、俺の戦いっぷりは。」

 

「うん!かっこよかったよ、ユウくん!」

 

「なかなかいいんじゃねえか?優星は、射手なんだな。」

 

「まあね。てか、まだまだ、こんなもんじゃないっすよ。」

 

 

 と、とりとめもないやり取りをしていると、個人戦をしている一人の男の人が目に入る。

 

 俺と同じ、射手。手に巨大なキューブを抱えて弾を撃ちまくっている。まるで、弾バカ...コホン

 

「ねえ、あそこの、個人戦してる男の人って誰?」

 

 気になった俺は名前を聞いてみた。

 

「ああ、あの人?射手2位の出水公平さんだよ。」

 

 2位か。なるほど。通りで強そうなわけだ。

 

 

 その、出水さんの戦いを見ていた次の瞬間、出水さんが両手に抱えていたトリオンキューブを一つにして、撃った。ものすごい強烈な弾撃が相手を襲い、勝利した。

 

「なあ、さっきのあれ!あれってなんなんだ?」

 

 気になった俺は、すぐに天珠に聞いてみた。

 

「あれって、、たぶん合成弾のことだよね?合成弾は、2つのトリガーを合成してより強力な攻撃をするための技みたいなもの、だと思うよ。」

 

「合成弾?俺にもできるんかな?」

 

「難しいらしいよ。あと、少なくともB級に上がらないと無理、なんじゃないかな。」

 

 そうか...難しいのか...

 

「出水さん、優しいから、聞いてみたら?もちろんそれは、B級にあがってからだけど。」

 

「ありがとう!!天珠!じゃ、とりあえずB級になってくる!」

 

 

 こうして俺は、射手界の天才、出水公平さんを知った。

 

 

 俺には、個性『模倣』がある。

 

 教えてもらえれば、数日でできるようになるだろう。

 

 だから、まずそこまでいけるように、とにかくはやくB級にあがろうと決めた。

 

 

 

 それからはや1週間が経ち、俺はB級隊員となった。

 

 これで聞きに行ける!

 

 そう思って本部に行ったが、あいにく出水さんは見当たらなかった。

 

 

 どうしようか迷っていると。

 

「あれ、ユウくん?」

 

 声のした方を見てみると、

 

「ナギちゃん!久しぶり!」

 

「久しぶり~!B級昇格したらしいね。おめでと~!」

 

「ありがとう!これからまだまだ強くなるから!

 

「期待してるよ~。で、誰か探してたみたいだけど、どうしたの?」

 

 おお、聞いてくれましたか。

 

 答えようとして、口が止まる。

 

「(待てよ。B級になったばかりの奴がいきなりランク2位の人に用があるとか、調子乗りすぎって思われたらいやだなあ...)」

 

 そう思った俺は、はぐらかすことにした。

 

「いやあ、なんでもないよ~。それよりも、ナギちゃんはなんでここに?」

 

「私?私は今日、B級ランク戦なの。」

 

「ランク戦?」

 

「知らない?チーム戦なんだけどね、20くらいあるのかな?B級のチームの順位を決める試合なんだ。」

 

「それに、ナギちゃんが?」

 

「うん。試合は夜なんだけど、打ち合わせとか調整もあるから、今から準備しておくの。」

 

「夜に試合が?」

 

「午前、午後、夜の3回に分けて行われるんだよ。見ていったら?B級の人たちを、さ。」

 

「そうだね、せっかくだし見ていこうかな。ナギちゃんが戦ってるとこも見てみたいし。」

 

「私じゃなくて、他の強い人を。ね!試合の様子は、大型スクリーンで映し出されて、実況と解説をしてくれるから、すごく良いよ。夜の部は確か...実況が栞ちゃん、解説が歌川くんと出水くん、だったかな。」

 

 

 なんですと!!出水さんが実況を!?ってことは会える可能性も...。

 

 

「・・・そっか。いろいろ教えてくれてありがとう、ナギちゃん!!おかげで助かったよ!」

 

「そう?それなら、良かった。」

 

「ごめんね。大事な試合前だったのに時間かけてもらっちゃって。ありがとう、応援してるから!」

 

「大丈夫だよ~。後輩をしっかり育てるのも先輩の役目だからね。じゃ!応援、よろしくね!」

 

「任せといて!じゃあね~、また!」

 

 

 そうして、ナギちゃんと別れる。

 

 

 B級ランク戦、夜の部。見に行かない手はない!

 

 

 

 そして、夜。

 

 俺は、B級ランク戦の中継が行われる部屋に来ていた。

 

 天珠と操志くんも隣にいる。俺が誘った。

 

「実況の人が、宇佐美栞さん。今は、玉狛支部の2チームのオペレーターだけど、前は今のA級3位チーム、風間隊のオペレーターしてたんだよ。」

 

 天珠ちゃんが、何も知らない俺に、いろいろ教えてくれてる。

 

「で、その隣に座ってるのが、その風間隊のメンバー、歌川遼さん。元チームメイトだから、宇佐美さんと仲良いみたいだね。」

 

 確かに、歓談していらっしゃる。

 

「そして、端に座ってるのが、出水さん。所属してる太刀川隊は、A級1位だよ~。」

 

 

 知ってる。・・ってえ??

 

 

「A級1位って?」

 

「A級1位だよ。」

 

 

 ・・・合成弾のこと聞くの、やめようかな。

 

 

「あっ、始まるみたいだよ!」

 

 

 そうだな。とりあえず今は、ナギちゃんの試合に集中しよう。

 

 

B級ランク戦、『柿崎隊VS荒船隊VS東隊』スタート!!!




第六話、いかがでしたか?

個人戦は、無理のない展開になっているでしょうか?
コメントお待ちしています!

次回は、瑠璃川渚ちゃんの目線からお送りする予定です。
とうとう、彼女の能力が明らかに...! お楽しみに!

それでは、このへんで。
読んでいただき、ありがとうございました!


P.S.原作を知らない人でも楽しめる作品を目指しています!

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