ナキは声の方に走っていた
彼と、あの少年と会って話がしたい、コックピット越しではなく、正面から
密林地帯の足場の悪い道を走っている、滑りそうな湿った道を踏みしめながら無我夢中で走っている
どっどっどっと心臓の音が徐々に早くなるのを感じる
アサルトライフルを握る手が熱い、そして重い、人を殺す道具の重さだ
重い、これじゃ、彼にたどり着けない!
そう思い、護身用のアサルトライフルを捨てて走り出し、しばらくして密林の少しだけ開けた場所に来た
「………いるんだろう、出て来てくれないか、俺はお前と話がしたいんだ」
正直、勘だった、なんとなくであり、動物的直感のようなものでもあるような感覚だった
「見ての通り丸腰だ、それはお前もわかっているんだろ、俺はお前と話がしたくて来たんだ」
見えない相手に対して、そう説得した、というか事実を伝えただけだった気もしなくもない
「俺はお前と話す義理はない、死にに来たなら殺してやる」
頭を流れた少年の声と同じ声が木々の向こうから聞こえたが、なんだ、この感じはどこかで聞き覚えがある、それもこの前とかじゃなく、もっと前に
「俺は、お前のこと、この前よりもっと前に会ってる気がするんだけど……
「あり得ない、俺は強化人間、0082の作戦のために、博士に勝利の栄光をもたらすために造られた、お前のことなど知らない」
ナキの疑問に対して、少年は切り捨てた、そして強化人間という聞きなれない言葉が聞こえた
「そして、お前も人間じゃない」
「!どういう意味だ………」
少年はナキに対し、そう続けて、最後に「時期に分かる、この言葉の意味が」と言って木々の向こうから走り
去る足音が聞こえて、慌ててナキは走って行った彼を追いかけようとした瞬間、足を何かで刺された感覚と、体が痺れて動かなくなっていく感じを味わった
ここは………………どこだ……………
手足が動かない…………縛られているのか…………
頭の中で様々な言葉が行き交っている、混乱しているのか、冷静なのか分からないが客観的に感じていた
するとガチャンと音がなり、足音がこちらに近づいてくる、頑張って目を開けてその相手を見ようと考えた
足音は小さく、目を開けると長い金髪を揺らして肌が黒く、深い青い瞳を持った少女が目の前に立っていた
服は麻のワンピースを模した服装をしていた
「えっと…………英語分かる?」
ナキは目の前の少女に意志疎通をとろうと試みた、ここがどこで、目の前の少女は誰で、今の自分の状況はどういう状況にあるのか、様々な疑問が行き交っている脳内をどうにか処理したいと思っていた
目の前の少女はコクリと頷いた事に対し、少しの安心感を覚えた、しかし、一つ疑問に思ったことを彼女は答えてくれた
「あなたの、話している、日本語、分かる、大丈夫」
少女の澄んだ声が狭い部屋に小さく響いた
「そっか、じゃあ、まずは君の名前を教えてくれるか?俺の名前はナキ、ナキ・ナズナだ」
コミュニケーションの初歩として、まず、名前を知り合うことから試みた
「私は、アンリ」
アンリという少女は自分の名前に続けてこう言った
「ナキ、あなたは、私の、婿に選ばれた、ボスが決めた」
それをナキは聞いてしばらく時が止まってしまった