ガンダム0082鉄黒の狼   作:木乃 薺

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忙しくて書けない日が続いてしまい申し訳ありません、これからは少なくてもいいから書いていきたい


密林戦

ナキ少尉は、ジャブローに向かうと宣言し機体を乗せたトラックに揺られていた

彼が目指す場所は連邦軍基地ジャブロー、地球連邦軍の中心拠点と言われる鉄壁の基地である

ナキ少尉が乗って性能面の実験用に使っていたジムカスタムの機体性能情報を本部に提出するために向かっていた

暗号通信による機体情報の提出でもいい気がするが、ジャブロー基地周辺の密林地帯にはひっそりと息を潜めるジオン残党が情報を奪取し本国に渡しかねない

それと、このジムカスタムを設計した博士が情報で見るより実物を見た方が早いという理由らしい

連邦にも頭がおかしい科学者もいるもんだな、情報だけで充分だろうにな

フライ中尉が居たなら…きっとそう皮肉を言っているんだろうな……

フライ中尉はジャブローには同行しなかった、ガタンゴトンと揺れるトラックの中でナキ少尉は彼の忠告を思い出していた

「ナキ少尉、あんまり気を落とすなよ、フライのおっさんがいない分は俺がカバーする、心配することねぇよ」

隣に座るレイン少尉はナキ少尉の暗い顔を見て、そう言ってフォローした、レイン少尉は人を励ましたり、フォローするという経験はなかったが、彼女なりの精一杯の励ましの言葉だった

「あぁ、ごめん、レイン少尉、別に落ち込んでる訳じゃない、フライ中尉の考え方は正しいよ、俺は自分の意思で生きるか死ぬかの戦地に向かっている、常人の発想じゃない、下手をすれば戦闘狂のような判断だ、フライ中尉は正しいよ…」

ナキ少尉はレイン少尉の言葉に対してそう答えた、戦力や技術の話ではなく、フライ中尉からは精神的に支えられていたところがあったのかもしれない、今さらだが痛感させられる

「…………自分の判断に評価つけてんじゃねぇよ、お前の判断に俺もついて来た、俺はそれを間違いだとか、馬鹿げてるとかそんな風に思わねぇ、やるなら最後まで付き合ってやるから精々感謝しな」

レイン少尉は暗い顔をしているナキ少尉に対して軽く肩を叩き、ニッと笑ってそう言ってくれた

レイン少尉の励ましのための言葉ではなく、レイン少尉がナキ少尉に対して思っている素直な意見だった

「ありがとう、レイン少尉」

ナキ少尉の心はその言葉と笑みで軽くなり、微笑みながらレイン少尉を見た

「ば、バカ、別に俺はてめぇみたいなザコに感謝されても嬉しくねぇっての…」

ナキ少尉の微笑みに対しレインは少し顔を赤らめながら目線を落とし強気な発言をしていた

と、その時だった、ナキ少尉の頭の中に強い痛みとこちらをすり抜ける光の筋のようなものが見えた

どこかで、見覚えがある………この光は……

ナキ少尉の頭の中に一つのトラウマが甦る、コロニーに侵入したジオン軍を銃撃戦で一掃しようとした時に味方が何人も殺られた、スナイパーライフルのレーザーサイトに近い、人を狙う時に現れる光がレイン少尉の額に当たっていた、レイン少尉の額だけじゃない、自分の後ろの機体の装甲、トラックのタイヤ、バックミラーとバラバラだった

恐怖を感じたナキ少尉は隣に座るレイン少尉を押し倒した

「な、何しやがる!?てめぇ!?」

押し倒されてレイン少尉がナキ少尉に声を荒げて顔が真っ赤になった、その直後、いや、直後というには少し0.5秒ほど遅れて、さっきの場所に銃弾が当たっていった

「レイン、さっきのレーザーサイトの光だけど……」

「レーザーサイト?そんなはずはねぇよ、あれの光は感覚で分かるように覚えさせられた、それにさっきの銃弾の着弾地は全部バラバラだが一斉放射じゃなく、連発式でどこでもいいから攻撃したように見える、そんなやつがレーザーサイトなんか使うようには思えねぇ」

ナキ少尉がレイン少尉にレーザーサイトの光が見えた事を話すと、レイン少尉は今までの訓練や戦地で経験した事を元に解説した

「じゃあ、あの光は一体………」

ナキ少尉はそう言うと、一人の少年を思い出した、そう、さっきの感覚はゲルググのパイロットと通じあった時と似ていた

自分が徐々に人間ではなくなり、違うなにかになっていくような感じがして考えることをやめた

「大丈夫か、二人とも、ここからはジャブロー基地周辺の密林地帯になる、ジオン残党からの攻撃に注意してくれ」

前の運転席の窓からナキ少尉たちが乗っている荷台に話しかけた

ジャブローから逃げ遅れたジオン残党……、彼らはなぜ戦うんだろうとナキ少尉は考えた

 

生きたいからだ、生きたいと思うからだ、勝敗は二の次だ

ふと、その時、頭の中に他人の声が流れた、しかもこの声は聞き覚えがある

それでも俺は、勝敗を一番に考える

そう、ゲルググと戦い、頭の中を流れた、少年の声

 

俺は勝利し、博士に功績の光を与えて見せる、それが俺の生きる意味だ

 

それが聞こえた、その瞬間、レーザーサイトの光が無数に現れた

「レイン!」

ナキ少尉はそう叫んで銃弾の当たらない機体の影にレイン少尉を引っ張り隠れた

さっきまで居た場所に銃弾が当たっていく

ナキ少尉は居ても立ってもいられず、アサルトライフルを構えてトラックを降りて声を元に密林の奥深くへと駆けていった


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