ガンダム0082鉄黒の狼   作:木乃 薺

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密林作戦3

あの後、バルドはケンイチさんに凄く怒られたが、ナキはケンイチさんを頑張って説得し、駆けつけたアンリの手伝いもあり、ケンイチさんを説得出来た

「以外とケンイチさんって怒ったら恐いんだな……」

人は見かけによらずとは、昔の人は今でも実感するような言葉を残してくれているものだなどと考えながらバルドにアサルトライフルのあった場所を聞いて、二人でその場所に向かっているのだった

そして歩いているとアンリと最初にあった質素な小屋に戻ってきたのだった

バルドは小屋に入り、慣れた手つきで椅子の下に敷いていた敷物を退かすとマンホールの蓋のようなものがあり、その中から俺の所持品を出してくれた

「よくここにあるってわかったな、ありがとう、バルド」とナキがバルドに向かっていうと、バルドは満足げに頷いて

「あいつら、ここに入れる、見た、まとめて、売るため」とかなり片言に答えてくれた

そして、蓋を外された穴を見ると、他にも三丁ほどライフルや拳銃があったのでなんとなく疑問に思い「……これらの持ち主は?」とナキは聞いた

するとバルドは俯きながら

「連れて、いかれた、嫁にされた、女も、連れて、いかれた、あと、お前の、報告、行った」と片言に答えた

「………俺は連れ戻すまでは出来ない……でも、戦うよ、守るために…」と言ってバルドの頭をわしゃわしゃと撫でると、バルドは嬉しそうに目を細めて

「死亡、フラグ」とまだ軍人じゃなかった頃によく聞いた単語が出て来てナキは笑った

「誰だよ、それ教えたの」

ふたりで笑いながら蓋と敷物を治して小屋を出て、村へと歩きだした

「そうだ、他に武器はないの?なんでもいいから」とナキはなんとなくバルドに聞くとバルドは嬉しそうに立ち上がりナキの手を引いて走った

ジャブローの森林を走り、村より少し離れた開けた所に出たと思ったが、そこは地面ではなく人工芝や広い集めた葉などでカモフラージュされたジオンのMSや戦艦の射出ハッチだった

「こっちだ」とバルドはそれだけ言って近くにあった地下に降りるための階段を使い、中に入ると、使われずに廃棄されたジオンのザクやドム、そしてかなりの大きさの戦艦があった

「このデカいの、ワニ!」とバルドはかなり大きな戦艦を指差して

「わ、ワニ?」とまたナキは首をかしげて復唱する

「クラカディール、ワニ!」とバルドはそう言うと大体意味がわかった、クラカディールとはロシア語でワニという意味だ、確かに言われてみるとワニに見えなくもないような気がする

「あぁ、なるほど、この戦艦の名前がクラカディール、だから、ワニなのか」と再確認するようにバルドに向かってそう言うと、バルドは頷いていた

そして、またクラカディールという戦艦を見ると、装甲にルナチタニウム合金が使われて居た所を見ると連邦軍基地の用にも思えるが置いてあるモビルスーツがそれは違うと訴えている

という事はジオンの人間がここでルナチタニウム合金をかき集めて作ったんだろうか、だとしたら凄い執念だなぁと感じずにはいられないなとナキは思った

「こいつを動かせるの?」とバルドに聞くとバルドは首を横に振ってかなり古く使い込んであるようなノートを渡してきた

そのノートには事細かく、操縦の仕方や武装の使い方等が日本語で書いてあった

「俺、その字、読めない、だから、わからない」とバルドは申し訳なさそうに言いながら、言ってきた、確か、あの村の人々の言葉はケンイチさんに教えてもらってるらしいし、ケンイチさんに読んで皆に分かるように説明してもらうのが一番だが

「これはケンイチさんには言ってるの?」とナキが聞くと

「言ってない、大人達、怖がり、だから、これバラして、奴らに、持っていく、思った」とバルドは答えた

それを聞いて、やっぱり村の人々を縛り付けているのは恐怖か、でも、バルドはその恐怖に立ち向かおうとしている、この子は強いんだとナキは心の中で思った

「バルド、君はこの村を救うために、人殺しになったとしても、ヴェンデッタと戦う覚悟はある?」

そう、ヴェンデッタが悪であってもヴェンデッタと戦うという事はすなわち人を殺す悪に染まるという事なのだ

だが、バルドはその問いかけに対してぶれずに、力強く頷いた

「俺、兄ちゃん、守れなかった、だから、もう、守れないの、嫌だ!」

ナキを見上げるバルドの瞳には決意の熱がこもっていた

「わかった、これの操縦を教えるから、まず村の大人達を呼んでくるんだ」

そう言うとバルドは少し戸惑った、やはり大人達をまだ信用できてないようだ

「大丈夫、今のバルドなら大人達を味方につけられるはずだから」

そう言ってバルドを村の方に向かわせてクラカディールの状態を細かく見ていると後ろから声が聞こえてきた

「お疲れ様、です、ナキさん」

そう、アンリだった

「アンリか、バルドはどうなったんだ?」と信じて送り出したものの、やっぱり気になるようでアンリに聞いてみて

「ケンイチさんに、話して、村の人達、集めて、話し合ってる、けど、もう答えは、出たと思う」と片言に返答を返した

「そっか、なら良かった、後さ、無理して片言にしなくて良いよ」

ナキがそう言うと、アンリは少しビックリしたような表情をして

「気づいていたんだ…」と片言ではなく普通に言ってみせた

「まぁね、なんとなく、バルドと話してると、ケンイチさんに習ったと思うけど、単語を並べて喋るのに対して、アンリは無理やり区切りをつけてる感じがしたから」とナキはアンリに向かってそう言うとアンリは俯きながら

「父親がオーストラリア出身で母親が日本人だった、母親が生きている間は日本で過ごしたけど、母親が亡くなってからは父親の実家のあるオーストラリアに住んだ、コロニーが落ちたのはそれから三年程経ってからです」

そして、アンリは自虐的に笑いながら

「父親似で良かったですよ日系は人気があるみたいで順番は先延ばしになりました」

やっぱり、アンリの話し方はどこか自虐的だった

「私みたいなただ呆然と人の別れに冷たい人間が最初に行けば良かったんです……」

「………嘘だよね」とアンリに向かってナキは言うとアンリはナキを睨んだ

「ほら、やっぱり、諦めきれてないんだ」

「アンリは本気でそんな事を思ってない、自虐的な言動の後ろにあるのは後悔と取り戻したいっていう気持ちなんだ」

アンリはそれを言われると自分の本心を見透かされているような感じがして睨むのを止めてゆっくりとうつむいて少し恥らったようになった

「皆で取り戻そう、自由を笑いあえる日々を」とナキはアンリの顔を見ながら笑ってそう言うと、アンリは今まで我慢していた分、泣いた


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