ガンダム0082鉄黒の狼   作:木乃 薺

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久しぶりの投稿です、しばらく前回の書き方で書いていきたいと思います


密林作戦2

ケンイチさんは机に肘をつけて自分の頭を両手で抱えながら震えて

「奴等は遊んでいるんだ、私達、戦争難民で…」

「戦争難民?」とまた聞きなれない単語というか、そういう人たちが居ることは知っていたが疑問に思い復唱すると、ケンイチさんは自分の頭から手を放して頷きながら

「えぇ、オーストラリアだとか連邦軍とジオン軍との戦争で出ていくしかなかった人達、それが私達、戦争難民です」

話には聞いたことがあったがまさか、彼らがそうとはとナキは内心、驚きながら

「ここに来る途中、畑仕事をしている子供がいたの気づきましたか?」

それを聞いてあの少年を思いだしナキはコクンと頷く

「彼は両親をコロニー落としで失ってね、さらに兄さんが連邦に召集でジオンと戦って死んでしまったんだよ、まだMSが公式導入される前だから61式戦車に乗ってて連邦の指揮官の指示で囮に使われた…」

「彼はこの事実を知らない、でも、この話をすれば、きっと彼はジオンも連邦も恨み続けるでしょう……」

ナキはその話を聞いた時に当たり前だが、こんな時代だからこそ忘れてしまうような事、ジオンも連邦も、どちらも結局、正義じゃない、彼らからすれば両方悪なんだと気づかされた

そして、そんな当たり前な事を今さらだが、知ってヴェンデッタという強大な悪の存在がいること、そんな事実を今まで、俺は知らなかったんだと思うと避けていたような感じがしていた

ナキがそんな事を考えている間にもケンイチは話を続けて

「そしてヴェンデッタはモビルスーツを使って居ます…力を持たない私達ではとても太刀打ちできませんよ…」

ナキはモビルスーツという単語が出てきた時にびっくりしながら「モビルスーツ!?じ、ジオンのモビルスーツですか?」と焦ったように質問をした

「い、いえ、ジオンでも連邦でもない、でも……デザインは連邦の物に似てますね…」

その言葉でアンリの言っていた月に本拠地があるというのと、連邦軍の手回しという推理は外れていない事がわかった、そして、その推理から新たな推測、ヴェンデッタと連邦との関係性には、"過激派連邦軍が荷担しているのではないか"というのがナキの頭のなかを過っていた

 

そして、そんな事を考えていると外から喧騒が聞こえて来た、かなり近い、この小屋の真ん前でおきているようだ

「なにか起きたんですかね……少し見に…」とケンイチさんが立ち上がろうとすると畑仕事をしていた少年はドアを蹴り開けて入ってきて、アサルトライフルを向けて、銃口はナキの方を向いている

「お前………俺の……俺の、兄ちゃん、殺した!」

少年は震える手で、自分の身長と見合わないような大きさのアサルトライフルを抱えている

「!バルドっ、やめなさい!それを下ろすんだ!」としばらく反応できなかったケンイチさんはバルドという少年にそう言うが、バルドはアサルトライフルを下ろさない

「兄ちゃん、死んだ、お前らのせい!」

 

 

そうだ、俺が知らないだけで一年戦争という戦争は、連邦は、多くの人間の命を奪ってきた

 

俺が知らないだけで

 

知らないんじゃない

 

知ろうとしなかっただけじゃないか

 

俺は過激派連邦の事も戦争難民の事も

 

知っていても、深入りしないように、目を塞ぐようにしていたんだ

 

だが、もう塞ぎたくない

 

ナキの中で何かが弾けながら、銃口をこちらに向けて構えて震える少年のアサルトライフルを恐れる事なく近づいて、震える体をナキは抱き締めていた

「……ごめん………お前の兄ちゃんの隣に居れないでごめん……お前の兄ちゃんを助けられなくて、本当にごめんな…」

ナキが優しく抱き締めたままそう言うと少年はアサルトライフルをゆっくりと手放して泣きじゃくった

「でも、もう助けられないのは嫌なんだ」ナキはそう言って少年と顔を見合わせて

 

 

「俺に君たちを助けさせてくれ」

 

 

そう言って泣きじゃくっていた少年を見ると少しだけジオンのあの少年のように見えたのは、どうしてだろうかとナキは思った


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