もしもあの時……   作:匿名作者Mr.ハチマソ

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最終回後編(エピローグ)

 

 炬燵の幸福な魔性に降伏し、まどろみのなか年を越した瞬間の出来事である。

 遠くで、俺の鼓膜を否応なしにくすぐってくる、女性の声が聞こえたような気がした──

 

 

 青春とは嘘であり、悪である。

 青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺く。

 自らを取り巻く環境のすべてを肯定的に捉える。

 

 

 ──ん? なんだ?

 なんかアホみたいな主張を声高々に読み上げる声が……

 

 

 彼らは青春の二文字の前ならばどんな一般的な解釈も社会通念もねじ曲げて見せる。彼らにかかれば嘘も秘密も、罪科も失敗さえも青春のスパイスでしかないのだ。

 

 

 ──あっれー? おかしいな。俺テレビ点けっぱなしで寝ちゃったっけ?

 ん? いやいやいや、確かテレビなんか点けてなかったよな。だって俺の耳には除夜の鐘が響く音と、ズルズルと蕎麦をすする音しか届いてなかったのだから。

 

 

 自分たちの失敗は遍く青春の一部であるが、他者の失敗は青春でなくただの失敗にして敗北であると断じるのだ。

 

 

 ──うむ。まだ炬燵ちゃんのぬくもりにぬくぬくし過ぎて思うように頭が働らかないが、とはいえ……ぷっ、なんだよこの主張。小難しい単語を並べれば頭が良さそうにみえるとか思ってる上に、捻くれた物の見方をする俺かっけー! ってな具合の、典型的な高二病患者の作文じゃねぇか。

 

 

 それは欺瞞だろう。嘘も欺瞞も秘密も詐術も糾弾されるべきものだ。彼らは悪だ。

 

 

 ──いやー、聞けば聞くほど顔から火が出そうになるくらいの患いっぷりですこと。

 胸張ってこの主張を垂れ流してる奴、このあとベッドで悶えまくるんだろうな。ざまぁ! プークスクス。

 

 

 ということは、逆説的に青春を謳歌していない者のほうが正しく真の正義である。

 

 

 ──あれ? でもこのフレーズ、どっかで聞いたことなかったっけ。

 てかさっきからどっかで聞いたことあるフレーズばっかだったわ。……ん? え? ちょっ……待て待て待て、これって──

 

 

 結論を言おう。リア充爆発しろ。

 

 

「俺の作文じゃねーか!」

「あん? 小僧、ふざけているのか……? 当たり前だろうが。私がこうして君のアホな作文をわざわざ読み上げてやっているのだから」

「……は?」

 

 え、えーと……なんだこれ? 全く理解が追い付かないんだけど。

 

 まぁそりゃそうだろう。こんな状況、一体どこの誰がすぐさま理解出来るというのか。

 

 だって俺、つい今しがたまで炬燵のぬくもりの中でうたた寝してたんだよ? それなのになんで目が覚めたら急に麗らかな春の日差しのぬくもりの中、三十路教師に説教食らってんだよ。わけが分からないよ。

 

「おい、どうした比企谷、君がおかしいのはいつもの事だが、今は特別おかしいぞ?」

 

 ………………あ、あぁ、あれか。そうだよな、お約束なテンプレとはいえ、これはあれだ、あれに決まっている。

 

「なんだ夢かイダダダダダダぁぁぁ!」

「貴様、その度胸は褒めてやるが感心はせんな。下らん課題を提出して説教を受けている最中に、なにを夢オチで誤魔化そうとしてるんだね。それともあれか? まさか私が君のしょーもない作文を朗読してやっている最中に、本当に居眠りしてしまったとでも言うつもりかね。だとしたら余計由々しき自体なのだが?」

「ま、待って先生! ギブギブギブ!」

 

 まるで万力のような強さで俺の額をギリギリと締め付けてくる三十路教師のアイアンクローの激痛に、恐ろしい事にこれが夢ではなく現実なのだという事実を思い知らされてしまう。あまりの強力な攻撃に、その現実からもどこかへ逝ってしまいそうになったけども。

 

「……はぁ、君は本当にどうしようもないヤツだな。やれやれ、まぁいい、今回だけは見逃してやろう。…………なぁ、比企谷。私が授業で出した課題は何だったかな?」

「っ!?」

 

 今の先生の台詞に、全身がびくんとひと揺れした直後、緊張により硬直してしまう。

 だってこれはあの時の……始まりの台詞ではないか。

 

 嘘、だろ……? なんかよく分からないまま、力ずくでコレが現実であると認めさせられてしまったが、本当に、本気で現実なのか……?

 だとしたらアレこそが夢だったという事なのか……? 進級してからの、あの、九ヶ月間が……?

 

 

 いやいや待て待て、そんなわけあるか。だって、ついさっきまでの年末を、ついさっきまでの九ヶ月を、俺はこの肌に生々しく感じたままなんだぞ? あんな夢、あるわけないだろうが。

 

「……おい比企谷、二度言わすなよ?」

「は、はひっ、た、確か高校生活を振り返ってというテーマだったような気がっ……」

「確か……? だった気が……?」

「い、いえ! 高校生活を振り返って、でしゅ」

「うむ」

 

 だって仕方ないだろ! なにせその課題が出されたのは、俺にとっちゃ九ヶ月前の話なんだから!

 

 

 ──マジ、かよ……、これはもうマジのヤツだ。

 という事はアレは本当に夢、だったのか?

 

 いや、夢だとしたら些かおかしな点がある。それは先ほどの平塚先生の台詞「私が授業で出した課題は何だったかな?」だ。

 なぜなら“それ”は夢で聞いたあとにこうして現実でも聞いたという事になる。つまりあれが夢であったと仮定するのであれば、それは予知夢という事になる。

 という事はあれは夢ではなく、俺がこの時間に逆行したという可能性だってなきにしもあらず、だよな。

 アホか、なんだよ逆行って。なろう系とかの見すぎだろ。

 

「そうだな。それでなぜ君は犯行声明を書き上げてるんだ? テロリストなのか? それともバカなのか?」

 

 ……ま、この際そんな事どうだっていいか。今更そんな事を考えるの自体がなんかもう馬鹿馬鹿しい。

 こうして目の前で未だ非現実的な現実が繰り広げられているのだ。夢だろうが逆行だろうが、そんなのはもうどっちだっていい。

 

「はぁぁ……。よく分かった。つまりやはり君はバカなのだな」

 

 今俺が考えなくてはいけないのは、この状況をどうやって乗り切るかのみ。

 未だ混乱冷めやらぬ頭ではあるが、俺はまるであの日をなぞるように、先生との会話を紡いでいく。

 

「それともうひとつ分かった。君は友達が居ないという事がな。まぁわざわざ言われなくとも、そうなんだろうなぁとは薄々気付いてはいたがね」

 

 ああ、やはりそうか。俺が返したら、平塚先生がそう返してくることは知っていた。なぜなら、俺はこのやり取りを一度経験しているのだから。

 だから分かってしまう。このあとに続く展開が。

 

「……なぁ、比企谷」

 

 呆れ果てた表情と弛緩した空気から一転、平塚先生は暖かさを帯びたとても真剣な表情で俺の目を真っ直ぐに見つめる。

 でも、この思考だってこの表情だって、俺はすでに経験済みだ。

 

「……はい」

 

「部活に入れ」

 

 ですよね、やっぱりそう来ますよね。

 九ヶ月前にも思った事だが、やはり今でも分からない。なぜこの人が突然こんなことを言い出したのか。

 ……いや、今なら少しだけ分かるのかも知れないけれど。

 

「この歳でこんなふざけた作文を書いてそんなふざけた受け答えをしているようでは、君はこの先ろくな人生を歩めないだろう。君には更正が必要だ。私が受け持っている部活ならば、君のその荒んだ思考回路を良い方向へと成長させてくれるかもしれん。悪いようにはしないぞ、どうだ?」

 

 そうあの時と同じ言葉を口にして、平塚先生は俺の目の前にすっと手を差し出した。

 だとしたらここから俺が取るべき行動は簡単だ。なぜなら俺は九ヶ月前、ここですでに模範解答を出しているのだから。

 さぁ、あの時と同じようにこの手を振り払え。そうすればもう一度あの平和で退屈で最高の日々が手に入るのだから。自分の好きで選んだ誇らしくさえ思えるあの安寧の日々が、もう一度楽しめるのだから。

 

 そして俺は口にするのだ。自分の意志で考えて、自分の好きに選んだこの言葉を。

 

 

 

「……よ、よろしゅくお願いしましゅ」

 

 噛みまくりの末にようやく絞りだした情けない台詞と共に、なにを思ったか、俺は平塚先生が差し出してくれていた手をそっと握ってしまった。まるで、救いの手にすがる子供のように。

 

「はぁぁ……まったく君というヤツは、どうしてこう下らん理屈を捏ねてまで…………って、えぇぇえぇぇ!? ちょ、ちょっと待て比企谷、今お前、よ、よろしくお願いしますって言ったのか!? てててていうか、しょ、職員室で女性の手をいきなり握ってくるとか、それはちょっと恥ずかし……こ、困るぞ……っ!」

 

 いやなんでだよ、あんたが手を差し伸べてくれたんだろうが。

 

「す、すみましぇん」

 

 とは言うものの、なんかつい勢いで女性の手を握ってしまった俺も超恥ずかしいです。なので即座に離しました。

 にしてもなんだよこの人、ちょっと手を握っちゃったくらいでこんなに真っ赤になってモジモジしちゃうとか可愛いな。三十路だけど。

 

「げ、げふんごふん! あぁ〜……ビ、ビックリしたぁ……」

 

 なにその咳払い、材木座かよ。

 この人こんなに美人で可愛らしいのに、なんで結婚出来ないんだろうな〜とか思ってたけど、この残念なところが原因か。てかよくよく見ると残念オーラが湧きだしているまであるな。

 

「おい、なにか失礼な事を考えてないだろうな」

「滅相もございません」

 

 怖え〜よ……なんで分かるんだよ……

 

「……し、しかしだな」

 

 未だ頬をほんのり染めたまま、この三十路美女は疑問を投げ掛け……い、いえ、まだまだ若手の美女です、はい。

 

「私はてっきり下らんごたくを並べて断ると思っていたぞ? まぁなにをぬかそうが首根っこ捉まえて引きずってでも連れて行くつもりだったがね」

 

 だからなんで力ずくなの? やっぱり世紀末覇者なのん?

 

 

 ──九ヶ月前には下らない妄言に愛想を尽かした平塚先生。

 でもあれはやはりただの夢まぼろしだったのかも知れない。だってこの先生なら、俺がどんなに下らない事を吐き出してもぶん殴ってでも調教してくれそうだしな。

 やだ! ぶん殴ってでも調教してくれそうとか、完全にMに目覚めちゃったみたい!

 

「……まぁ、あれですよ」

 

 なんにせよ平塚先生の疑問がもっともな以上、少しでもその疑問を解消してあげましょうかね。

 だって俺自身だって、自分でその理由を口にでも出さないと、なんでこんな行動を取ってしまったのかよく分からないのだから。

 

「先生が思っていたよりは、俺が人生経験を重ねてたっつーことで」

「フッ、成る程よく分からんな」

「ですよねー」

 

 しかもその人生経験は今まさに繰り返しちゃってる経験なんだから、まったくもって手に負えないっすよ。ゼロから始めちゃったって説明した方が分かりやすかったかな?

 

「でもまぁ、君が乗り気であるのなら私も楽でいいよ。では着いてきたまえ」

「……うっす」

 

 そして俺は平塚先生の背中に着いていく。

 繰り返しではない、未知なる先の未来へと。

 

 ※

 

 

 かつかつとヒールを響かせながら先を行く先生の背中を追うと、そこは普段あまり足を踏み入れない特別棟の廊下。

 俺は、教室棟と違いひっそりと静まり返った特別棟の冷たいリノリウムを踏み締めながら、ゆっくりと思考を巡らせる。

 

 

 ──なぜ俺は九ヶ月前に拒否したわけの分からない部活勧誘を受けてしまったのだろうか? なぜ俺は平塚先生の手を……差し伸べてくれたあの手を取ってしまったのだろうか。

 黙って九ヶ月前と同じようにしていれば、あの安寧の日々を同じように過ごせていたのかもしれないというのに、なぜ俺は俺らしくもなく、自ら面倒ごとに足を突っ込んでしまったのだろうか。

 

 安寧の日々──か。

 そうだな。確かにあれは楽だった。平和だった。傷付きもしなかった。なによりも俺が大好きな安心で退屈な日々だった。

 

 でも俺は思ってしまったのだ。ついさっき……いや、九ヶ月後に訪れるのであろう大晦日に、俺は確かに思ってしまった。

 

『もしもあの時、平塚先生の手を取っていたとしたら……もしもあの時、由比ヶ浜の優しさを素直に受け入れていたとしたら、俺のこの八ヶ月は違う毎日になっていたのだろうか?』

 

 なんて、ありもしない……いや、ありもしないはずだったタラレバのお話を。

 それにそれだけじゃないだろ。素直になっちまえよ、俺。

 いつぞやのテニスコートでの一幕だってそうだったろ。俺は雪ノ下雪乃と由比ヶ浜と女テニの子が笑い合う姿を見て、密かに羨ましいと思ってしまった。あの中に自分が交ざっている姿を想像してしまったりもした。そして眩しすぎてそこから逃げ出した。

 

 さっきはそれは認めたくなかったから気付かないフリをしたけれど、でも本当は気付いていた。そう思ってしまった時点で、それは後悔なんだろう、と。

 

 一人で居るのは楽しい? 一人で居るのは楽だから好き? 一人で居るのは最高?

 アホか。心の底から本気でそう思っているようなヤツは、新生活に期待を膨らませて、張り切って誰よりも早く登校しちゃおうなんてこと思わねぇよ。

 

 俺は本当は一人じゃなくなる事をどこかで期待していたのだ。……いや、今だってどこかで期待している。

 でも世界がそれを許してくれないから、期待して傷付くのが恐いから、だから一人が楽しいんだと思い込もうと捻くれていただけの、ただのしょうもない高二病患者なのだ、俺は。

 

『……だからさ、お兄ちゃんはもう、選択を間違えないでね』

 

 だからなんだよな小町。だからお前はさっきあんな事を言ったんだよな。

 

 もしもあれがただの夢だったのなら、さっきの小町もさっきの台詞も深層心理の中で俺が勝手に作り出しただけの幻影に過ぎないし、もしもこれが逆行とかいうフィクションじみたふざけた現象だったのだとしても、それは俺がこの場面に後悔という感情を置き忘れてきてしまったが故に起きた現象。

 つまりどちらにせよ、ここでのこの選択が誤りだったと、俺自身が深く思っているからこそ起きたこと。

 

 そう、俺はどこかで後悔していたんだ。あの時先生の手を取っていれば、あの時由比ヶ浜の優しさを受け入れていれば良かったと。

 そしてもう一つ。確かに平和だった。確かに傷付かなかった。

 でも、そんな楽で楽で仕方がなかったこの九ヶ月を、もう一度同じように繰り返すのはまっぴらだと思ってしまったのだ。だって、もう一度あのなんにも無かった一年生の学生生活をそのままやり直せとか言われたら、冗談じゃねーよって思うもん。

 

 だから俺は平塚先生の手を取ったのだ。この手を取れば、期待する事を諦めていた自分に、別に無理して諦める事はないんじゃねーの? と言ってやれそうで。

 

「……そう、か」

 

 そこで俺はある事に気付いてしまい、すぐ前を歩く平塚先生の耳にも届かないくらいの小さな声で呟いてしまった。

 

 ──ああ、だからさっき、小町にお世話になりましたってちゃんと言っとかないと後悔するって思ったのか。

 だって、あの小町とは……あの九ヶ月を共に過ごしたあの小町とは、あれで永遠のお別れだったのだから。

 

 だからかよ小町、だからお前はあんな最高の笑顔でお世話になりましたって言ってくれたのか。

 だからお前は最後に「……頑張ってね」って、こんなダメダメなごみいちゃんの背中を押してくれたのか。

 分かってたんだな、これで一旦お別れだよ、って。

 

 夢だろうが幻だろうがもうどうだっていいわ。夢でも幻でも、そうやって余計なお節介を焼いてくれてサンキューな小町。

 今の小町には意味は分からないだろうけれど、帰ったらめっちゃくちゃに頭撫で回してやるぜ! どんなにウザがられようが、どんなにキモがられようが……

 

 

「着いたぞ」

 

 

 平塚先生の声にハッとする。色んな事を考えている間に、いつの間にか目的地に到着していたようだ。

 

 そこは、元よりあまり人気のないこの特別棟においても、より一層人の気配を一切感じない、とてもとても静かな場所だった。

 そしてその先にある一つの教室が本日の……いや、違うのか。これからの俺の目的地となるらしい。

 

 そこは何の変哲もない教室。プレートには何も書かれていない。

 この扉の先には、一体なにが待ち受けているのやら。

 

 がらり。

 

 え、ちょっと?

 先生はなんの躊躇もなくその扉を開けた。おいちょっと待て、少しは気持ちの整理をさせてくれませんかね。てかノックとか一声かけるとかねぇのかよ、この女教師。男らし過ぎだろ。

 

「平塚先生。入る時にはノックを、とお願いしていたはずですが」

 

 やはりその部屋の主も同じ感想のようで、とても不機嫌そうな、でもとても美しく凛とした声を不躾な教師へと投げつける。

 ……なんだろう、どこかで聞いた事があるような声だ。例えば、そうだな……ちょうどひと月くらい前、体育館の壇上で公約を訴えていたとんでもない美女のような、そんな声に似ている気がした。

 ま、ひと月前っつっても夢の中のひと月前だから、そんなのはただの勘違いなんだろうけれど。

 

 すると、そんな思考に耽っている俺に、不躾で男らし過ぎる女教師からお声が掛かるのだった。

 

「ノックをしても君は返事をした試しがないじゃないか。……ん? おい比企谷、いつまでもそんな所につったってないで早く入りたまえ」

 

 

 

 ──さてと、この扉を潜ると、この先俺の安寧な高校生活にどんな試練が待ち受けているのやら。

 そしてそれは間違いなく大変で、間違いなく面倒なものになるのだろう。もしかしたらまた嫌な目に合うかもしれないし、深く傷付いてしまう事だってあるかもしれない。

 ……ああ、めんどくせぇなぁ。

 

 

 しかし、俺はそれでも臆せずに一歩を踏み出すのだ。

 後悔に気付いてしまったから。タラレバを妄想してしまったから。そしてなによりも、小町に応援されてしまったから。

 

 だから俺は臆せずその扉を潜る。いや、ホントは超臆しまくってるけどね。なんならとっとと逃げ出したいまである。

 でもそれは出来ないから、せめて神様に祈ろう。ここまできて他力本願とか、俺ってば超男前!

 

 

 

 

 シリアスの神様でもラブコメの神様でもトイレの神様でもこの際なんでもいいや。めんどくさい事も傷付く事も、ある程度は我慢してやるよ。

 だからせめて九ヶ月後の大晦日の夜、まだ一年以上も高校生活残ってんのかよ……なんて、早く終わってくんねぇかな……なんて、そんな事を思わないでいられるような、そんな日々を送っていけますように。

 

 

 了

 

 




というわけで安易な夢オチ(もしくは逆行?)という結末となりまして、誠に申し訳ないです。
でもこれは別にただ安易なオチに逃げたというわけでは決してなく、こうする事によって『俺ガイル』という物語の中で、一体なにが八幡にとっての救いの手なのかを分かりやすくしたかったからです。

最終回前編を八幡の幸せと捉えた人はもう後編は読んでないだろうとの判断で言っちゃいますが、変な悪意を持った一部の方を除いて普通に俺ガイルを青春ラブコメとして楽しんでいる原作読者なら普通に分かる事だとは思いますが、八幡にとっての救いの手って、他でもない平塚先生なんですよね。
さらには奉仕部での経験や出会いであり小町のお節介だと思うんです。

だって期待して傷付くのが嫌だからと、他人に一切興味を持たず関わりもせず信じもせず見下したままの比企谷八幡という人物のままでは、今はまだ良くても、将来的には本当に大変な人生になってしまいますもん。

なぜなら八幡のこの先の人生で、平塚先生や奉仕部のような出会いと成長があるとは限らないし、当然都合のいいオリジナルヒロインが都合のいい救いの手を差し伸べてくれもしないのですから。

それでは最後までありがとうございました。


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