英雄王と劣等生   作:がんきゃりあー

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繋ぎ、でいいのかな?


追憶編 #5

二週間のバカンスもあと7日間となり残り半分となった。最近は兄の事で悩むことが多くなり、昨日、一昨日と

私は相変わらず、あの人を振り回してばかりいた。英雄王?である彼は振り回される達也を見て笑っていたけれど。

兄を振り回している自分が情けなく思えた。

一週間前までは、こんなことは、気にもならなかったのに。私は一体どうしてしまったのだろうか?自分の心がわからなくて、何を望んでいるのか分からない。

ですがそんな事を悩んでる場合ではなくなっていた。

何故かは、それは全ての情報機器から緊急警報が流れ出たからだ。

 

『西方海域より侵攻』

『宣戦布告は無し』

『潜水ミサイル艦を主兵力とする潜水艦隊による奇襲』

『現在は半浮上状態で慶良間諸島を攻撃中』

 

耳慣れない言葉だったが、『潜水ミサイル艦』と言う単語が引っかかった。

クルージングの最中に襲っていた潜水艦は、もしかしてこの前触れだった?

「便宜を図っていただけるよう真夜様にご依頼します!」

「えぇ、お願い」

桜井さんが焦りを隠せない口調で提案して、お母様も緊張感気味で承諾していた。

「それと、王様に連絡は...」

「一応しておきましょう。彼なら大丈夫だと思うけど」

彼は私が朝食を取る前には朝食を食べ終わっており、外へ出かけていた。

..と言うより敵が攻めて来ているのに彼なら大丈夫って、どういうことですかお母様。

桜井さんが彼に連絡をしようとすると

私の通信端末が鳴った。よく見ると何件も彼から連絡が来ていた。

「も、もしもし?」

『出るのが遅いぞ深雪よ!我を待たせるとはどういう了見だ!...まぁよい、深夜に伝えよ、軍の雑種供が基地のシェルターとやらに避難しないかと言われたのだ』

「!」

私は直ぐにお母様に声をかけた。

「お母様、王様が基地のシェルターに避難しないかって...」

直後、桜井さんが受話器をお母様に差し出し

「真夜様からお電話です」

それを聞き、お母様は受話器を取った。

「もしもし、真夜?...えぇ、私よ...そう、貴女が手を回してくれたのね...でもかえって危険ではなくて?...そうね...わかりました。ありがとう」

お母様は通話を終えて桜井さんに差し出す。

「奥様。真夜様は、何と?」

「国防軍のシェルターにかくまってもらえる様、話を通したそうよ」

「しかし、かえって危ないのでは?」

「私もそう言ったのだけれど、明確な敵対状態ですらなかったのに、いきなり奇襲をかけて来るような相手に、ルールの遵守は期待出来ないそうよ」

「それは...そうかもしれませんが...」

「大した労力じゃないとはいえ骨を折ってもらったんだし、真夜の言う通りにしてみましょう」

「それと深雪、彼にシェルターに避難すると連絡しなさい。」

「わ、わかりました」

私は彼にシェルターに避難する事を連絡した

『そうか、では軍の雑種供にそう伝えておこう。シェルターとやらで落ち合おうではないか』

と彼からの連絡が切れ、私達は、車で迎えに来てくれた桧垣上等兵にシェルターまで送ってもらった。

 

 

国防軍の連絡車両に乗った私達は、検問に止められる事もなく、無事に基地へ到着した。意外だったのは、基地に避難している民間人が私たちだけでなかったこと。100人近く人が逃げ込んでいる様にも見えた。...あれ?彼が見つからない。100人、いや、一万人の人混みの中でも彼を見つけれる自信があるというのに見つけれないのは何故だろう。居ないからかな?

それはさておき、敵が攻めて来ているのに、基地の中へこんなに大勢で、無関係で役に立たない人間を集めて大丈夫なのかしら?

もしかして、私も戦わなければならなくなるかもしれない。

私達は魔法師、国では兵器という扱いにされる。彼は...どうなんだろう?

なので人を殺さなければ自分が殺されてしまう立場になるのでは?

と思い悩んでいると、

「大丈夫だよ、深雪。俺がついている」

 

……それ、反則……!

 

どんな顔していいか分からず、今どんな顔しているか分からない。いきなりそんな事を言われるなんて!いや、彼の事を考えよう!彼が私に向かって『フハハハハハ、何だそのザマは。貴様、道化の才能があるのではないか?』とバカにされていた時を思い出すのよ!そうすれば心は落ち着くはず!

と一人で奮闘していると兄と桜井さんが急に立ち上がった。

「達也君、これは...」

「銃声ですね。それも拳銃ではなく、フルオートの、おそらくアサルトライフルです」

「状況は分かる?」

「いえ、ここからでは、それにこの部屋の壁には、魔法を阻害する効果があるようです。部屋の中で魔法を使う分には問題無いようですが。」

この二人の会話が分からない。すると

「おい、き、君たちは魔法師なのか」

と不意に、少し離れて座っていた男の人が声を掛けてきた。

「そうですが?」

「だったら、何が起こっているのか見てきたまえ」

何言ってるのこの人は?使用人扱いの物言いじゃない。

「私達は基地の関係者ではありませんが」

「それがどうしたというのだ。君たちは魔法師なのだろう?ならば人間に奉仕するのは当然の義務ではないか」

 

こ、こんな人を平気で口にする人がいるなんて...彼がいれば『黙れ雑種』と言って黙れさせれるのに、なんでこんな時に居ないのですかね...

殺気といえるオーラを桜井さんが出している。が、お母様は

「達也、外の様子を見て来て」

兄は珍しく、難色を示した。

「しかし状況が分からぬ以上、この場に危害が及ぶ可能性を無視できません。今の自分の技能では、離れた場所から深雪を護ることは」

「深雪?」

兄の反論を、お母様は冷たい声で遮った。

「達也、身分を弁えなさい」

口調だけは優しく、ゾクッと背筋が震えるような声音。

「ーーー失礼しました」

兄は一言謝罪して、反論をしなかった。本当なら兄を弁護しなくてはならないのに...

「...達也君、この場は私が引き受けます」

桜井さんが横から口を挿んだ。

「わかりました。様子を見て来ます」

兄はお母様の横顔に一礼して、部屋を出た。

 




ギル君、今回出番少なかったのは許して()

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